もう一度スマホを確かめてみたいが、あたしのバッグは今は【山崎】が手にしている。

（はぁ、男前に気が緩んだんがアカンかった……）

全くもって裏切られた気分。
勇気を出して、電話を貸してくれと頼もうか？
でも、先ほどの【電車、ってなんだ？】という言葉を思い出した。

（まあ、でもたぶん、そういう設定なんやろうな）

家に帰してくれる気があるなら、いい加減真面目な話に戻してほしい。

（一応あたし、緊急事態に陥ってる感じなんやし……）

やっぱり、電話を貸してもらえるよう頼んでみよう。

「──あの、」

声をかけると、【土方さん】が振り返った。

「あの、すみませんが電話をお借りできませんか？スマホが圏外になってしもてて」

【土方さん】は、うっとうしそうに眉を寄せた。

「何だと？」
「あの、電話代やったらちゃんと払いますし。
申し訳ないですけど、電話を使わせてもらえないですか」

彼は仲間に視線を送る。
そのとき、【ヘースケ】が恐る恐るといった風にきいていた。

「電話ってなに？」