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それから、あたしは総司くんとお菊ちゃんの様子を伺いながら、五平に走り方のフォームを教えた。
二人は、談笑したり、小さい子を集めて隠れん坊をしたりしている。
その間も、五平に何度も競走をさせられて、さすがにあたしも汗だくになってきた。
「──ちょっと、タンマ」
「なに、たんま、って」
「えーと、タイム……とちごて、休憩」
えー、と五平は不満そうだ。
「ちょっと、一回帰ってくる。
行ったっきりやと、また土方さんにも怒られるし」
五平は腕組みで、「しゃあないなぁ、もう」とため息をついた。
「すぐ、戻ってこいよう?」
「うん、分かった。すぐ戻ってくる」
あたしは、手を振って壬生寺を後にした。
「あっつーーー!」
屯所に戻ってきたあたしは、庭に誰もいないのをいいことに、襟をがばっと開いた。
縁側から部屋に上がり団扇を掴むと、ガランとした屯所を巡って井戸端へとやって来た。
「喉乾いた……」
釣瓶を落として水を汲み上げるのも、今やお手のもの。
顔を突っ込むようにして水をたらふく飲んだ。
生ぬるい水道水と違って、地下からくみ上げる井戸水はきんと冷えていて、ジュースのないこの時代には一番の飲み物だ。
「ぷは~~~~っ、生き返った」
残った水で顔をバシャバシャっとやって、再度井戸の中に釣瓶を落とす。
汲みあげた水を、いつぞや鼻緒ズレで足を洗った桶に移し替えた。