新たなるお役目
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(ははん、土方さんやな)
夕べはお泊まりだったみたいで、会うのは昨日の夕方以来だ。
くるりと振り返って見ると、やはりその足音は土方さんで、こちらにやってくる。
「おう、やっぱりここにいたか」
【ここ】というのは、あたしの部屋ではない。
土方さんの部屋だ。
ここの方が部屋が明るいし、筆記用具も揃っているので、結局あたしはここに毎日入り浸っているのである。
(ま、【 MI CASA SU CASA(わたしの家は、あなたの家)】って言うしな──うしし、)
土方さんは、あたしが部屋に侵入していることを気に留める様子もない。
「手習いとは殊勝じゃねぇか」
どれ──と言ってあたしの背後から肩越しに手元を覗き込んだ。
「ほう、随分と女子らしい字も書けるようになったじゃねぇか──って、なに鼻をつまんでやがる」
左手で鼻をつまんで、右手は筆をさらさらと動かしているあたしに「ちっ、」と舌打ちする。
「酒臭くなんかねぇだろ?」
そりゃあそうだろう。そもそも、酒臭くなるほど飲めないのだから。
──そうじゃなくて、化粧クサイ。
「そのニオイ……」
土方さんは、「?」という顔つきで、自分の襟を持ち上げて、懐の中に鼻を突っ込んだ。
「なんか臭うか?」
「なんか、おばちゃんのお化粧のニオイがします……」
「──ああ、」
思い当たるような表情になると、
「白粉のにおいだな、きっと。
夕べ、会津のお偉いさんたちを島原で接待だったからな。
その時についたんだろう」
「すいませんけど、あたしに近寄らんといてください。
そのニオイ、気持ち悪なりそう」
鼻をつまんだまま言うと、
「ああん?そうか?いい匂いだろう」
あたしは、ふるふる、と首を横に振った。
「ちっ、だからお前ぇは餓鬼だって言うんだよ」
不機嫌そうに吐き捨てて、土方さんは部屋を出て行った。
「ぷはーーーっ」
詰めていた息を解き放って深呼吸する。
「くそエロおやじ」
あたしも悪態をついて、筆を動かした。
「エロおやじ、おしろひ臭いと指摘され──と」
我ながら笑える作だ。
あたしはくすくす笑いながら、その紙を、横にどけた。