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最近のあたしの日課。
朝食後のお膳の片付け──これは台所まで持って行くだけでいい。
あとは、女中の女の子たちがやってくれる。
次いで、試衛館道場チームの部屋の掃除。
芹沢たちの部屋は、女中たちや、気が向けばお梅さんもやっているようだ。
掃除を終える頃、タイミングがいいと誰かに外へ連れて行ってもらえるが、それを逃すと一日屯所で過ごすしかない。
だから、仕方なく、手習いをする。
──実は先日、
「お前ぇも女子なら、女子の書いた文を手本にした方がいいだろう」
とか言って、土方さんはあたしに大量の手紙を押し付けた。
「なんですか、これ」
「島原、祇園、遠くは大坂の遊女が送ってきた恋文だ」
そういえば、なんかオバハンくさい臭いが手紙から漂っている。
「それをあたしにどうしろっちゅわはるんです?」
「いつも、俺の口上ばかり書き写してると、男っぽい文章しか学べねぇだろう」
なぁにが、【たまには女っぽいことでもしてみたらどうだ】──やねん。
(エロじじいが!!)
要は、自分が読むのはめんどくさいラブレターを読んで、肩を揉みながらでも誰からどんな内容の文が送られてきたか大体を教えてくれ──という実にしょうもないミッションなのだ。
ここ何日か、平助くんと一くんに付き合ってもらって解読を続けていたあたしだが、脳というのはえらいものだ。
続けていると、パターンがつかめてきた。
(要は、外国語の勉強や、思たらええんや)
朝ごはんのときに間食用にと作っておいたおにぎりを一人でかじって、あたしはつらつらと筆を動かしていた。
すると、どんどんどん、と足音が近づいてくる。