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こうして、あたしは芹沢に連行されるように角屋にやってきた。
通された大広間は、隊士という隊士で埋め尽くされている。
みんなの目の前に司会者のように立っているのはめずらしく新八さんだ。
芹沢に手を引かれたあたしを見るや、目を見開いて、多分マンガなら【ギョッ】とか書かれているだろうな顔付き。
新八さんに対面するように、隊士群の最前列に座った土方さんの顔にも、驚きの表情が張り付いていた。
「さあ、入れ」
芹沢があたしに言って、敷居をまたぎ、新八さんの斜め後ろに控えるように近づくと、ぱん、と袴を折って座った。
「さ、君も座りたまえ」
そう言われて、あたしも仕方なく芹沢の隣に小さくなって座る。
土方さんの双眸から放たれている怒りのビームで、ちりちりっ、と焼けてしまいそう。
口をぽかんと開けて、すっかり司会進行を忘れてしまっている新八さんに、芹沢が落ち着き払った声で言った。
「では、永倉くん、続けてくれたまえ」
新八さんは魔法が解けたように咳払いすると、今日の集会の次第を語りだした。
──が、例のごとく言葉遣いが難しくて、あたしには半分も理解できなかった。
事情がよく分からないうちに、会場には「異議なし」の声がそこここから挙がり、集会は終わってしまった。
この後は、席を変えて宴会が始まるらしい──そこだけは、分かった!
皆、立ち上がって、思い思いの席へと移動していく。
平助くんと一くんが、心配そうにあたしを見ていた。