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「平助、先ほどから背中に悪寒を感ずる。夏風邪をひいたやもしれん……」
「しっかりしなよ、一くん。
悪寒がするのは、さっきから
のぞみが恨めしそうな目でこっちを盗み見てるからだろ?」
そう──諦めが悪いとは思いながら、さっきから平助くんと一くんの部屋をこっそり覗き見ているのだ。
「──な、
のぞみが?!」
「ほら、そこ」
一くんは振り返り、あたしを見つけると、びくっと肩を揺らした。
「い、一体いつからそこに……!」
「お着替えしてるとこから見てたけど?」
「──な、?!」
一くんは絶句して顔を赤らめた。
柱の陰から出て、二人の部屋へ近付きながらあたしは言った。
「一くん、顔赤いで、熱あるんちゃう?
お部屋でじっとしといた方がええと思うけどなぁ」
自分の額に伸ばされたあたしの手を、ぱしん、と払いのけて一くんは言った。
「熱などない。
あんたが恥じらいもなく俺たちの着替えを盗み見ていたと言うから、俺の方が恥ずかしくなっただけだ」
「
のぞみ、近藤さんの部屋に行かなきゃいけねぇんだろ?
こんなとこで油売ってると、また土方さんに怒られるぞ?」
平助くんが呆れた調子で言う。
「なぁ、三人で留守番しようさぁ。
なんで、あたしと近藤さんだけ置いてきぼりなんよぅ~」
「だから、仕方ねぇって言ってんだろう?集会があるっていうんだからさ」
「ただの集会に、そんなおしゃれっぽい恰好で行くんはなんでなん?」
なんか知らんが、【絽】というのだろうか、ちょっと透けたような羽織に、いつもとは違うパリッとした袴まで着けている。