屯所
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あたしは、なに食わぬ顔で彼らの間を通り抜けたところで畳を蹴った。
買ったばかりのサンダルを引っ掴んで玄関を飛び出す。
幸い、袴姿なので走りやすい。
走りは決して速くはないけど──。
とにかく死に物狂いで走った。
後ろを振り向きたいが、そうすればスピードが落ちるのは必至だ。
背後からバタバタと複数の足音が響いてくる。
あの中で足が一番速いのは誰だろう?
恐ろしい想像が目の前に映し出される。
──絶対につかまってはいけない。
やけに虫の声がうるさい。
──が、あの通りがおそらく四条通だろう。
あたしは、交差点をアウトインアウトで曲がる。
(ひゅう、かっこいい!)
(レーサーみたい……!)
(とか、言うてる場合ちゃうし!)
火事場の馬鹿力というやつだろうか。
ありがたいことに、まだまだ走れそうだ。
軒先に吊るされた燈明がぼんやりと道を照らしている。
(ここ、ほんまに四条通?)
不安になりながらも、とにかく東に向かって走った。
どのくらい走っただろう。
バタバタと背後に聞こえていた足音がなくなっていた。
(まいた?)
祇園祭の灯りが見えるところまでやってきたという安堵感も大きい。
そういえば、往来の人も増えてきている。
おそるおそる後ろを振り向くと、そこには誰もいなかった。
というか、ぽつぽつと燈明の明かりがぼんやりと浮かぶ中に、祇園祭から帰っていく人々の後ろ姿が闇に飲まれるように消えていく。
その光景に一抹の恐怖を感じながらも、
「よっしゃ!!」
ガッツポーズを決めたところで背後から声がかかった。
「どうしたんや、追われてるんか?」
「ぎゃああぁぁあ!!」
振り返ると、背の高いの男性が立っていた。
彼が着ているのは浴衣というより着物だが、袴ははいていない。
きっと祇園祭から帰ってきた人だろう。
「大丈夫か?」
その言葉を聞いて、あたしは少し安心した。
関西弁だ。
(良かった、やっぱり祇園祭帰りの人や!)
「な、なんか、コスプレの人らにつかまってしもて。
ヤバい感じになってきたんで逃げて来たんです!」