団子屋の男
夢小説設定
名前変更名前の変更ができます。
※苗字は固定となっています。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
すごすごと立ち去ろうとすると、襟首をつかまれた。
「字が読めねぇってのは問題だな」
「そんなこと言うたって。
そもそも、なんでもっと誰が見ても一目瞭然な楷書で書かないんです?」
「さっきも言ったろう、そういうものなんだ。仕方ねぇだろう」
「はぁ、……」
「暇なら手習いでもしたらどうだ」
「手習い、ですか?」
投げやりな言い方になってしまった。
「今のままじゃあ、恋文もらっても読めねぇし、返せもしねぇぞ」
「いいです。恋文もらったら、誰かに読んで解説してもらいます」
「何を馬鹿なこと言ってやがる」
土方さんは、ため息を落とした。
「しかし、手習いといっても誰に習うのがいいかな」
「──あ、ほんなら平ちゃんに教えてもらいます」
「平助ねぇ……」
土方さんは考え込む。
「──あ、それか、土方さんが書いたもんをお手本にします」
「──何?」
「代筆するんやったら、字が似てた方がいいでしょ?」
「なるほど、そりゃあそうだな」
珍しく土方さんは、少し間抜けな顔でぽんと手を打った。
「それに、土方さん部屋にいはることが多いし、そこにあたしもいたら独りぼっちにならへんし、一石二鳥じゃないですか?」
「んん?──ああ、そうか」
土方さんは、ぐるりと自室を見まわして、
「しかし、文机は一つしかないが、どうする」
「あれでいいです」
あたしは柳行李を指さした。