近藤 沖田 オトナになりたい
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ースナックすまいるー
「お妙さぁぁーーーん!」
「てんめェェェ!!また来てやがったのかァァ!!」ドガシャーーーン!!!
「ぎゃあああ!!」ガクッ
「ふー、これでスッキリしたわね!」
これは、スナックすまいるでの日常だ。ここで働くお妙に近藤が惚れ込み、もはやストーカーと化しているのだ。
「おーおー毎度の事ながらコイツも飽きねーよなー。よくもまあ、こんな色気のねー絶壁、」ゴシャアッ!!!お妙は銀時の頭を鷲掴みにし、勢いよく机に叩きつけた。
「あら、銀さん。いらしてたんですか?」
「ばあだ、びざびざにびばびがばっだがら。(まァな、久々に依頼があったから。)」
「良かったですねえ、何飲まれます?ドンペリ?それとも…ドンペリ?」
「どんべりじゃばぐで、じょうじゅぶびずばびでぼべばびじばず。(ドンペリじゃなくて、焼酎水割りでお願いします。)」
「すみませーん、ドンペリ入りまーす。」
(あ、ゴリラにツケてもらお。)
「すみません、近藤を迎えに上がりました。」
お妙に沈められた近藤を迎えに来るのもまた、名前の日常となっていた。
「あら、名前さん。いつもありがとうございます。近藤さんなら、まだあそこで…」お妙が指をさした方を見ると、まだ気絶している近藤の姿があった。
「今日はちょっと早かったみたいですね。少し待たせてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろん。何か飲まれます?」近藤さんのツケでとお妙が言うと、では烏龍茶をと名前も返す。
「隣いいですか?」「おー、名前ちゃん。いいぜー。」
お妙から烏龍茶を受け取り、近藤が目を覚ますまで銀時と話す。
「毎度毎度、おめーも大変だな。」
「んー、好きでやってる事ですから、平気です。」実は、迎えに来なくてもいいって言われてるんですよー、と笑う名前。「それに、傷心の近藤さんをほっとけないですから。」
「ふーん、そんなもんかねぇ。にしてもこのゴリラもよォ、こんな別嬪さんから想われてるってのに、ツレねぇよな。」
「全くです!銀時さんからも言ってやってください!」いつまでもコドモ扱いされてイヤになります!歳もお妙さんと一緒なのに、とブーたれる名前。
(ま、こーゆーところは少しガキっぽいけど…見た目は…なかなか…)名前をジロジロ見る銀時。
《カチャリ…》
「旦那ァ、ウチの隊士を舐め回すように見ないでもらえやす?」「ヒィッ!」
「総悟!総悟も来てくれたんだね!ありがとう!」「名前ちゃーん!?首!首見て!そんな悠長にしないで!」
銀時の首筋に当てた刀をスッと外す沖田。近藤を迎えに来た名前を迎えに来る沖田、これもまた日常となっていた。
「近藤さんは?」「まだあそこで寝てる。」「ハァ…仕方ねェ、担いで帰るか。」
「うん。皆さまお騒がせしました。失礼します。」名前はペコリとすまいるの皆に頭を下げ、近藤を担ぐ沖田を追った。
「名前さんも、あんなゴリラのどこがいいのかしら?」私には理解できない、と首を振るお妙。
「そーだな。」
(ゴリラも、名前も、沖田くんも、報われねェよな。)銀時は今日の依頼料を使い果たすべく、おかわりを頼んだ。
※
「えー、では本日の会議だが…」
ワイワイガヤガヤ
「か、会議…」
ワイワイガヤガヤ
「・・・トシ。」
「・・・。」ドガァァァーン!土方がバズーカをぶっぱなし、ようやく朝の会議が始まる。
プスプス…
会議に出席した隊士たちは、こんがり焼けた。
「えー、では会議を始める。」
「はーーい!」
「『はーーい!』ってなんだコラ、コドモかテメェら。やり直せ。」
「トシィ、もう始めたいから!」
「・・・チッ、分かったよ。」
三日後、過激派攘夷浪士たちによる闇取引が行われる。場所は、かぶき町。
「という訳でさァ。」
「へー。・・・ところで何で焦げてるの?」
「・・・会議でイロイロ。」
「ふーん、そうなんだ。」会議に出席していない名前は内心、どんな会議?と思う。
「場所はかぶき町、ってずいぶん範囲広いけど、どうするの?」
「あー、闇取引までにある程度絞り込むつもりらしいぜ。一番確率が高そうなところに、近藤さんと俺たち一番隊が討ち入りでさァ。」
「分かった。」大仕事になりそうだね、と名前が顔をしかめた。
あの試合の後、驚くほどあっさり名前の両親から許可がでた。『この子は近藤さんや総悟くん、皆さんのことが大好きですから。今置いていかれたとしても、追いかけていくでしょうね。なら、今一緒に行った方がいいでしょう。』とのこと。そして現在、一番隊の隊士として死と隣り合わせの場所に身を置いている。
名前は現場に出ると傷を作って帰ってくることが多く、その身体には無数の傷跡が残っている。沖田は名前に生傷が増えるのを見る度、「もう身をひいて、女中にでもなればいい。」と口に出そうになるが、愚痴もこぼさず頑張る名前を見ると何も言えなくなる。それは、近藤や土方も同じだ。
「総悟、ぼーっとしてどうしたの?見回り行くよ。何か情報が掴めるかもしれない。」
「・・・ああ、そうだねィ。」
※
三日後、深夜。
「ここで攘夷浪士たちの闇取引が行われている。廃墟であるからして、足元が悪く、死角も多くなることが予想される。いいか、皆気を引き締めてかかれよ!」「おう!」近藤の言葉に隊士たちは気合を入れて応える。
討ち入り班と包囲班に分かれることとなった。近藤や沖田は討ち入り班で、名前は包囲班。戦闘のほとんどは討ち入り班が行い、中から逃げてきた浪士をしょっぴくのが包囲班の仕事だ。
「名前、そんな怖い顔をするな。」
「近藤さん。」
「大丈夫だ!俺たちが絶対に外には逃がさないから!」名前を安心させようと近藤が声をかける。
「ふふ、そうだね、ありがとう。でも、そうじゃないの。私は近藤さんや総悟のことが心配なの。いつも戦いの最前線に行っちゃうから、いつか会えなくなっちゃうんじゃないかって。」
「・・・なんだ、そうだったのか。それなら心配いらんよ、俺たちは人一倍丈夫だからな!がっはっは!それに、名前を置いてどこにも行ったりしないさ。」
近藤は力こぶを作ってニヤリと笑って見せた。
「・・・私を置いていこうとしたくせに。」
「わぁーー!!あの時はごめーーん!!もう許してェェ!」ワタワタと慌てる近藤を可愛いと思う。本当はそんな事、もう気にしていないのだ。
「冗談だよ!じゃあ私はそろそろ持ち場に行くね。近藤さんも気をつけて!」
「おお、ありがとな!」
(・・・「近藤さん」か、俺から離れていってるのは名前、お前の方じゃないのか…?)
真選組結成時、名前は近藤の呼び方を改めた。それは、組織のトップを下の名前で呼んでは他の者に示しがつかないという配慮であったが、近藤はそれを少し寂しいと感じていた。
「近藤さん、行かねーんですかィ?」
「いや、今行く。」
※
「真選組だァァ!神妙にお縄につきやがれ!!」
近藤の掛け声と共に隊士たちが次々と取引現場に流れ込む。
「いいか!逃げようなんざ思うなよ!退路はすでに絶ってある!!」
「し、真選組だァー!」「クソッ、どうしてここが分かったァ!」
ギィン!ギィン!激しく刀を打ち合う音が廃墟に響く。それは、外で茂みに潜んでいる名前にも聞こえてきた。
(始まった…。近藤さん、総悟、無事でいて…!)
しばらくすると、中が静かになり、捕まった攘夷浪士たちが次々と運び出されてきた。
(もう終わったのかな…?いや、まだ気を抜いちゃダメだ!)
ガサガサ…
背後から茂みが擦れる音が聞こえ、振り返り刀を構える。
「おいおい、何でこんなところに女がいるんだ?」
(攘夷浪士?・・・何で背後から?)
「真選組よ!神妙にお縄につきなさい!」
「真選組ぃ?」
目の前の相手に集中する名前は、背後からのもう一人に気付かなかった。
「・・・ぐ!!」背後から肘で首を絞められ、もがく。
「本当だ、隊服着てやがる。真選組に女がいたなんて知らなかったぜ。」
「だな、しかもエラい別嬪さんじゃねぇか。真選組なんざ切り捨ててやろうと思ったが…こりゃ楽しませてもらえそうだ。」
「っ来るな!!」名前は、前から近づいてくる男を蹴り上げた。
「・・・く!おい!縄で縛れ!」
「おい、ここでするつもりか?ったく、見張っといてやるから早くしろよ。」背後の男は名前の口と手を縄で縛り、見張りのため去っていった。
「さっきはよくもやってくれたなァ。」男の手が名前に伸びる。
(・・・嫌!触らないで!!)ジタバタと暴れる名前。
「おい!大人しくしねぇか!」
(助けて!!総悟!!・・・勲お兄ちゃん!!)
《ザシュッ!!》
「名前!!大丈夫か!?」
(勲お兄ちゃん!!)
「・・・!!」
近藤は名前が縛られていることに気付き急いで駆け寄る。名前はそれを止めようと首をブンブンと振りながら、なんとか伝えようとする。
「んーー!んーー!!」
(来ちゃダメ!!もう一人いるの…!!)
近藤が名前の口の縄を外している間に、その背後からもう一人が忍び寄って来た。刀を構えている。
「んーー!!」「もうちょっとだ、すぐ外してやるからな。」
「・・・ぷはっ!お兄ちゃん!後ろ!!」「!?」
言うが早いか、名前は近藤を体当たりで押しのけて前に飛び出た。
《ザシュッ!》
「・・・っっぐあぁ!!」
「名前ーーー!!!」近藤の悲痛な叫びが辺りに木霊した。名前の肩から胸にかけて大きく斬り裂かれ、鮮血がドクドクと流れる。
「名前、名前!!あああ!!」
近藤は倒れた名前を抱え、必死に呼びかける。
「チッ!女の方か。次は近藤、キサ…」
《ザシュッ!!》
二人を探しに来た沖田が近藤の叫びを聞いて駆け付け、男を斬った。
「近藤さん!名前!大丈夫ですかィ!?」
「そ、総悟!名前が!」
「・・・!!すぐ救護班を呼んできやす!!」
「頼む!!ああ、名前、目を開けてくれ…!」
近藤の呼びかけに応えるように、名前がうっすらと目を開けた。
「・・・勲お兄ちゃん、怪我は無い…?」
「名前!ああ、俺は大丈夫だ。それより名前が…ううっ…。」近藤の目から涙が零れる。
「泣かないで…お兄ちゃん。無事で、良かった…。わたし、お兄ちゃんを守れたんだね…。」
そう言って、名前は再び目を閉じた。
「名前…名前?しっかり!目を開けてくれ!あああ!!」
「こっちでさァ!!」
「分かりました!局長!名前さんをこちらへ!はやく!」
その後すぐに到着した救護班に引き取られ、応急処置を施された名前はなんとか一命を取り留めた。
ー「おい総悟、根詰めすぎだ。名前を斬った派閥の連中を根こそぎ潰して回ってるらしいじゃねェか。」
ー「土方さん…ほっといてくだせェ。俺に出来るのはこれくらいなんで。」
ー「ふぅーー。いいから、少し休め。名前だけじゃなくお前まで倒れたらどうすんだ。これ以上近藤さんに心配かけんじゃねェ。」
ー「・・・分かりやした。30分仮眠取って出かけやす。」
ー「(ぜんっぜん分かってねーな。)ったく、ぜってー倒れんじゃねェぞ。」
ー「言われなくとも。」
「お妙さぁぁーーーん!」
「てんめェェェ!!また来てやがったのかァァ!!」ドガシャーーーン!!!
「ぎゃあああ!!」ガクッ
「ふー、これでスッキリしたわね!」
これは、スナックすまいるでの日常だ。ここで働くお妙に近藤が惚れ込み、もはやストーカーと化しているのだ。
「おーおー毎度の事ながらコイツも飽きねーよなー。よくもまあ、こんな色気のねー絶壁、」ゴシャアッ!!!お妙は銀時の頭を鷲掴みにし、勢いよく机に叩きつけた。
「あら、銀さん。いらしてたんですか?」
「ばあだ、びざびざにびばびがばっだがら。(まァな、久々に依頼があったから。)」
「良かったですねえ、何飲まれます?ドンペリ?それとも…ドンペリ?」
「どんべりじゃばぐで、じょうじゅぶびずばびでぼべばびじばず。(ドンペリじゃなくて、焼酎水割りでお願いします。)」
「すみませーん、ドンペリ入りまーす。」
(あ、ゴリラにツケてもらお。)
「すみません、近藤を迎えに上がりました。」
お妙に沈められた近藤を迎えに来るのもまた、名前の日常となっていた。
「あら、名前さん。いつもありがとうございます。近藤さんなら、まだあそこで…」お妙が指をさした方を見ると、まだ気絶している近藤の姿があった。
「今日はちょっと早かったみたいですね。少し待たせてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろん。何か飲まれます?」近藤さんのツケでとお妙が言うと、では烏龍茶をと名前も返す。
「隣いいですか?」「おー、名前ちゃん。いいぜー。」
お妙から烏龍茶を受け取り、近藤が目を覚ますまで銀時と話す。
「毎度毎度、おめーも大変だな。」
「んー、好きでやってる事ですから、平気です。」実は、迎えに来なくてもいいって言われてるんですよー、と笑う名前。「それに、傷心の近藤さんをほっとけないですから。」
「ふーん、そんなもんかねぇ。にしてもこのゴリラもよォ、こんな別嬪さんから想われてるってのに、ツレねぇよな。」
「全くです!銀時さんからも言ってやってください!」いつまでもコドモ扱いされてイヤになります!歳もお妙さんと一緒なのに、とブーたれる名前。
(ま、こーゆーところは少しガキっぽいけど…見た目は…なかなか…)名前をジロジロ見る銀時。
《カチャリ…》
「旦那ァ、ウチの隊士を舐め回すように見ないでもらえやす?」「ヒィッ!」
「総悟!総悟も来てくれたんだね!ありがとう!」「名前ちゃーん!?首!首見て!そんな悠長にしないで!」
銀時の首筋に当てた刀をスッと外す沖田。近藤を迎えに来た名前を迎えに来る沖田、これもまた日常となっていた。
「近藤さんは?」「まだあそこで寝てる。」「ハァ…仕方ねェ、担いで帰るか。」
「うん。皆さまお騒がせしました。失礼します。」名前はペコリとすまいるの皆に頭を下げ、近藤を担ぐ沖田を追った。
「名前さんも、あんなゴリラのどこがいいのかしら?」私には理解できない、と首を振るお妙。
「そーだな。」
(ゴリラも、名前も、沖田くんも、報われねェよな。)銀時は今日の依頼料を使い果たすべく、おかわりを頼んだ。
※
「えー、では本日の会議だが…」
ワイワイガヤガヤ
「か、会議…」
ワイワイガヤガヤ
「・・・トシ。」
「・・・。」ドガァァァーン!土方がバズーカをぶっぱなし、ようやく朝の会議が始まる。
プスプス…
会議に出席した隊士たちは、こんがり焼けた。
「えー、では会議を始める。」
「はーーい!」
「『はーーい!』ってなんだコラ、コドモかテメェら。やり直せ。」
「トシィ、もう始めたいから!」
「・・・チッ、分かったよ。」
三日後、過激派攘夷浪士たちによる闇取引が行われる。場所は、かぶき町。
「という訳でさァ。」
「へー。・・・ところで何で焦げてるの?」
「・・・会議でイロイロ。」
「ふーん、そうなんだ。」会議に出席していない名前は内心、どんな会議?と思う。
「場所はかぶき町、ってずいぶん範囲広いけど、どうするの?」
「あー、闇取引までにある程度絞り込むつもりらしいぜ。一番確率が高そうなところに、近藤さんと俺たち一番隊が討ち入りでさァ。」
「分かった。」大仕事になりそうだね、と名前が顔をしかめた。
あの試合の後、驚くほどあっさり名前の両親から許可がでた。『この子は近藤さんや総悟くん、皆さんのことが大好きですから。今置いていかれたとしても、追いかけていくでしょうね。なら、今一緒に行った方がいいでしょう。』とのこと。そして現在、一番隊の隊士として死と隣り合わせの場所に身を置いている。
名前は現場に出ると傷を作って帰ってくることが多く、その身体には無数の傷跡が残っている。沖田は名前に生傷が増えるのを見る度、「もう身をひいて、女中にでもなればいい。」と口に出そうになるが、愚痴もこぼさず頑張る名前を見ると何も言えなくなる。それは、近藤や土方も同じだ。
「総悟、ぼーっとしてどうしたの?見回り行くよ。何か情報が掴めるかもしれない。」
「・・・ああ、そうだねィ。」
※
三日後、深夜。
「ここで攘夷浪士たちの闇取引が行われている。廃墟であるからして、足元が悪く、死角も多くなることが予想される。いいか、皆気を引き締めてかかれよ!」「おう!」近藤の言葉に隊士たちは気合を入れて応える。
討ち入り班と包囲班に分かれることとなった。近藤や沖田は討ち入り班で、名前は包囲班。戦闘のほとんどは討ち入り班が行い、中から逃げてきた浪士をしょっぴくのが包囲班の仕事だ。
「名前、そんな怖い顔をするな。」
「近藤さん。」
「大丈夫だ!俺たちが絶対に外には逃がさないから!」名前を安心させようと近藤が声をかける。
「ふふ、そうだね、ありがとう。でも、そうじゃないの。私は近藤さんや総悟のことが心配なの。いつも戦いの最前線に行っちゃうから、いつか会えなくなっちゃうんじゃないかって。」
「・・・なんだ、そうだったのか。それなら心配いらんよ、俺たちは人一倍丈夫だからな!がっはっは!それに、名前を置いてどこにも行ったりしないさ。」
近藤は力こぶを作ってニヤリと笑って見せた。
「・・・私を置いていこうとしたくせに。」
「わぁーー!!あの時はごめーーん!!もう許してェェ!」ワタワタと慌てる近藤を可愛いと思う。本当はそんな事、もう気にしていないのだ。
「冗談だよ!じゃあ私はそろそろ持ち場に行くね。近藤さんも気をつけて!」
「おお、ありがとな!」
(・・・「近藤さん」か、俺から離れていってるのは名前、お前の方じゃないのか…?)
真選組結成時、名前は近藤の呼び方を改めた。それは、組織のトップを下の名前で呼んでは他の者に示しがつかないという配慮であったが、近藤はそれを少し寂しいと感じていた。
「近藤さん、行かねーんですかィ?」
「いや、今行く。」
※
「真選組だァァ!神妙にお縄につきやがれ!!」
近藤の掛け声と共に隊士たちが次々と取引現場に流れ込む。
「いいか!逃げようなんざ思うなよ!退路はすでに絶ってある!!」
「し、真選組だァー!」「クソッ、どうしてここが分かったァ!」
ギィン!ギィン!激しく刀を打ち合う音が廃墟に響く。それは、外で茂みに潜んでいる名前にも聞こえてきた。
(始まった…。近藤さん、総悟、無事でいて…!)
しばらくすると、中が静かになり、捕まった攘夷浪士たちが次々と運び出されてきた。
(もう終わったのかな…?いや、まだ気を抜いちゃダメだ!)
ガサガサ…
背後から茂みが擦れる音が聞こえ、振り返り刀を構える。
「おいおい、何でこんなところに女がいるんだ?」
(攘夷浪士?・・・何で背後から?)
「真選組よ!神妙にお縄につきなさい!」
「真選組ぃ?」
目の前の相手に集中する名前は、背後からのもう一人に気付かなかった。
「・・・ぐ!!」背後から肘で首を絞められ、もがく。
「本当だ、隊服着てやがる。真選組に女がいたなんて知らなかったぜ。」
「だな、しかもエラい別嬪さんじゃねぇか。真選組なんざ切り捨ててやろうと思ったが…こりゃ楽しませてもらえそうだ。」
「っ来るな!!」名前は、前から近づいてくる男を蹴り上げた。
「・・・く!おい!縄で縛れ!」
「おい、ここでするつもりか?ったく、見張っといてやるから早くしろよ。」背後の男は名前の口と手を縄で縛り、見張りのため去っていった。
「さっきはよくもやってくれたなァ。」男の手が名前に伸びる。
(・・・嫌!触らないで!!)ジタバタと暴れる名前。
「おい!大人しくしねぇか!」
(助けて!!総悟!!・・・勲お兄ちゃん!!)
《ザシュッ!!》
「名前!!大丈夫か!?」
(勲お兄ちゃん!!)
「・・・!!」
近藤は名前が縛られていることに気付き急いで駆け寄る。名前はそれを止めようと首をブンブンと振りながら、なんとか伝えようとする。
「んーー!んーー!!」
(来ちゃダメ!!もう一人いるの…!!)
近藤が名前の口の縄を外している間に、その背後からもう一人が忍び寄って来た。刀を構えている。
「んーー!!」「もうちょっとだ、すぐ外してやるからな。」
「・・・ぷはっ!お兄ちゃん!後ろ!!」「!?」
言うが早いか、名前は近藤を体当たりで押しのけて前に飛び出た。
《ザシュッ!》
「・・・っっぐあぁ!!」
「名前ーーー!!!」近藤の悲痛な叫びが辺りに木霊した。名前の肩から胸にかけて大きく斬り裂かれ、鮮血がドクドクと流れる。
「名前、名前!!あああ!!」
近藤は倒れた名前を抱え、必死に呼びかける。
「チッ!女の方か。次は近藤、キサ…」
《ザシュッ!!》
二人を探しに来た沖田が近藤の叫びを聞いて駆け付け、男を斬った。
「近藤さん!名前!大丈夫ですかィ!?」
「そ、総悟!名前が!」
「・・・!!すぐ救護班を呼んできやす!!」
「頼む!!ああ、名前、目を開けてくれ…!」
近藤の呼びかけに応えるように、名前がうっすらと目を開けた。
「・・・勲お兄ちゃん、怪我は無い…?」
「名前!ああ、俺は大丈夫だ。それより名前が…ううっ…。」近藤の目から涙が零れる。
「泣かないで…お兄ちゃん。無事で、良かった…。わたし、お兄ちゃんを守れたんだね…。」
そう言って、名前は再び目を閉じた。
「名前…名前?しっかり!目を開けてくれ!あああ!!」
「こっちでさァ!!」
「分かりました!局長!名前さんをこちらへ!はやく!」
その後すぐに到着した救護班に引き取られ、応急処置を施された名前はなんとか一命を取り留めた。
ー「おい総悟、根詰めすぎだ。名前を斬った派閥の連中を根こそぎ潰して回ってるらしいじゃねェか。」
ー「土方さん…ほっといてくだせェ。俺に出来るのはこれくらいなんで。」
ー「ふぅーー。いいから、少し休め。名前だけじゃなくお前まで倒れたらどうすんだ。これ以上近藤さんに心配かけんじゃねェ。」
ー「・・・分かりやした。30分仮眠取って出かけやす。」
ー「(ぜんっぜん分かってねーな。)ったく、ぜってー倒れんじゃねェぞ。」
ー「言われなくとも。」