近藤 沖田 オトナになりたい
お名前
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その逞しくて大きな背中をずっと見つめていた。いつか振り向いて、私を見てほしい。
ー武州ー
道場の縁側に座っている近藤を見つけ、名前は竹刀を持ったまま駆け寄った。
「勲お兄ちゃん!」
「お、どうした名前?」
「聞いて!さっき総悟に勝ったの!」
「総悟に!?すごいじゃないか!稽古がんばってたもんなー!がっはっは!!」
近藤は豪快に笑いながら名前の頭をガシガシと撫でた。名前はその大きくて無骨な手が大好きで、何かいい事があると近藤に頭を撫でてもらうため、いつもこうしていの一番に報告しに来ていた。
「名前!汚ねーぞ!砂を投げるなんて!そんな勝ち俺は認めねー、もっぺん勝負しやがれ!」目を擦ってしまったのだろう、先の勝負の結果に不服を申し立てる沖田の目は真っ赤に腫れている。
「(チッ面倒なヤツが来た…)いいけど、目がウサギちゃんみたいになってるよ?そんなんで勝てるの?」
「関係ねーでさァ、卑怯な手を使わねえと勝負出来ねえヤツに俺が負けるはずねえからな。」
「そう言って、さっき私に負けたのは誰かなあ?それに実戦じゃ卑怯でもなんでも、勝ちは勝ち。」
お互いに手に持っていた竹刀を構える。殺してやる、と言わんばかりに睨み合う2人をアワアワと見ている近藤。
「それならお望みどおり実戦形式でさァ。」
「・・・望むところよ。」
ジリジリと間合いをはかる。
(こ、このままじゃマズイ!)
2人は同時に動いた!
「待っ…!」
《バシィッ!!》
「「!!!」」
「痛っでェェーーー!!!」
※
「ッ痛ーー!」
「・・・。」
「名前、湿布貼ってくれてありがとな。」
「勲お兄ちゃん…」
「ん?どうした名前?」
「なんで飛び出してきたの?」
「あー、」
泣きそうな顔で自分を見る名名前に少しバツが悪くなった近藤はポリポリと頭を掻きながら答えた。
「あのままだと、2人とも大怪我してたかもしれないだろ?」
「それでお兄ちゃんが怪我したら元も子もないよ!」
「がっはっは!俺はいいんだよ!」名前は優しいなあ、と言って名前の頭をガシガシと撫でる。
「俺は2人を預かってる立場だからな、2人に何かあったら名前の親御さんやミツバ殿に合わせる顔がない、無事で良かったよ。」
「うん、ありがとうお兄ちゃん。・・・怪我させてごめん。」
(勲お兄ちゃんはオトナだ、総悟とは違う。・・・そして、私とも。)
「なに、もう気にするな!俺は人一倍丈夫だからな!」ニヤリと笑って力こぶを作る近藤に泣きそうになって俯いた。
「・・・そうだよね、ゴリラお兄ちゃんは丈夫だもんね。」泣きたくなくて、からかってしまった。ごめんね。
「え、今ゴリラって言った…?勲の聞き間違い…?」聞き間違いだよね!?名前はそんなこと言わないもんね!?
「じゃあ私帰るね。」立ち上がり扉へと向かう。
「お、おう。もう暗いから気をつけて帰るんだぞ!」
「・・・分かった、また明日ね。」
「おう、また明日な。」
《パタン》
名前が近藤の部屋を出ると沖田がすぐそばで待っていた。
「ずいぶん遅かったじゃねーか。」
「総悟、待っててくれたんだ。」
「まぁな、おめーと一緒に帰らねえと俺が姉上に叱られちまう。」ホラ、と沖田がいつもどおり手を差し出す。
「そうだね。」名前もいつもどおりその手を取った。
喧嘩をしても、喧嘩が終わればいつもどおり。それがコドモの喧嘩というヤツだ。
※
名前と沖田は家が隣同士で一緒に道場に通い始めた。行く時も帰る時も手を繋いで並んで歩く。それがいつもどおりだった。
今も、いつもの帰り道。
「ねえ総悟、今日はごめん。私が卑怯だった。」
「なんでィ急に。しおらしくて気味が悪い。」
「明日からは総悟に喧嘩売るの、やめる。ううん、誰にも喧嘩なんか売らないし、買わない。」
「頭でも打ったか?」
「・・・手も、もう繋がない。」そう言って名前は繋いでいた手をパッと離した。突然手を離された沖田は名前に対し怒りをあらわにする。
「どういう事ですかィ?ああ、俺が謝ってねえのが気に食わねえのか?」
「・・・。」
「チッ、分かりやした。謝ればいいんでしょ。ったく名前もガキですねィ。」
「っ違う!・・・そうじゃない。今日のことは本当に私が悪いと思ってる。だから総悟は謝らなくていい。」
「だったら、「私はもう、コドモでいたくない、オトナになりたいの。勲お兄ちゃんみたいなオトナに。」はぁ?なんだそりゃと沖田は不思議に思う。
「今日みたいな、私たちコドモの喧嘩に勲お兄ちゃんを巻き込みたくないの。私たちのために怪我なんてさせたくない。私たちもうオトナにならなきゃ。」ねえ、総悟なら分かってくれるよね?だってあんたも勲お兄ちゃんのこと大好きじゃん、そう言って名前は自分の母親のように、ミツバのように笑って見せた。
(何だよ、それ。気にくわねえ。そうやって俺の手を離すとこも、大人びて笑う表情も。)
「・・・勝手にしろィ。」
「・・・うん。」
※
次の日から名前は本当に変わった。沖田と一緒に暴れ回らなくなったし、私が一番強いと言わんばかりに誰彼構わず喧嘩を売るのをやめた。立ち居振る舞いもオトナのようになった。
「沖田先輩。」「なんだよ土方コノヤロー。」
「・・・名前最近様子違くないスか?何かあったんスか?」
「俺はなーんも知らねえ。気になるなら自分で聞きやがれ。」
「沖田先輩!どこ行くんスか!?」
「便所。」
(・・・悪ぃ、近藤さん。聞き出せなかった。)
いきなり態度が変わった名名前に、最初は皆戸惑っていたが数日も経てば次第に慣れていった。それどころか、俺はこっちの方が良いだの、やっぱ女子は穏やかな方が良いだの好き勝手いう始末だ。
(気にくわねえ。名前のヤツ、ちょっと前まで俺と同じで土方のヤローに先輩って呼ばせてたクセに!それに、近藤さんだってテメエみたいなガキ、好きになるわけねえだろ!)
沖田が近藤の部屋の前を歩いていると、中から近藤と土方の話し声が聞こえた。障子に指でソッと穴を開け、中を覗く。
「そうかー、聞き出せなかったか。」
「悪ィな、近藤さん。」
(近藤さんの差し金だったのか…。)
「いや、いいんだ。すまんな、こんなこと頼んで。・・・俺も名前に聞いてみたんだが、はぐらかされちまってな!がっはっは!」
「・・・。」
「やっぱり俺が原因なのかなあ、あの時俺が総悟と名前の喧嘩を止めちまったから…。」
「・・・。」
「なァトシィィ!?トシはどう思う!?」近藤は土方の肩をガタガタと揺らす。
「痛ェよ、近藤さん。」
(名前、見てみろよ。コレのどこがオトナなんでィ。)
《ガラッ》
「そんなに知りてえなら教えてあげます。」
「「!!」」
「そ、総悟。聞いてたのか?」
「オトナになりたいそうですぜ。近藤さんみたいな。」沖田は、あの日名前から聞いたことを2人に打ち明けた。
「なるほどな、そういう事だったか。ありがとな総悟、教えてくれて。」
「いえ。」
「名前がそんなことを思ってくれてたとは知らなかった。でも、そういう事なら急いで大人になる必要はない。俺からそう言ってみよう。」
沖田は内心ほくそ笑んだ。近藤からそう言えば名前は元の名前に戻るだろう、そう思ったからだ。
「・・・待ってくれ近藤さん。」
「!」
「どうした、トシ?」
「俺は…このままでもいいと思う。」
(何言ってやがんだ、土方のヤロー。)沖田はギロリと土方を睨んだが、土方は意に介さず続けた。
「俺たち男はいつまでもガキのままだが、女は違ェだろ。というより少し遅ェくらいだと思うぜ。それに名前も今はガキだが、あと数年もすりゃ年頃の娘さんだぜ。結構なことじゃあねえのか?」意志を尊重してやりゃあいいと思うぜ、などと抜かしやがった土方に腹が立って仕方ない。それを真に受け「そうかなァ!?そうした方がいいのかなァ!?なァトシィ!?」などと抜かす近藤さんにも。俺を置いてオトナってヤツになろうとする名前にも。
「そ、そうだ、総悟!総悟はどう思う!?」
腹が立って歯を食いしばると、奥歯がギリギリと軋んだ。
「そ、総悟…?」
「知らねェ!!」
《バンッ!!》
「え、総悟のヤツ急に怒って…どうしたんだ?」
「さァな。でもまあ大方、いつまでも名前とバカやれると思ってたんじゃねーの?」
※
「あ、総悟ー!やっと見つけた!どこ行ってたの?」
「名前…。近藤さんの部屋。」
「そうなの?いーなー、私も着いて行けば良かったなー。」
「それよか、俺を探してたんじゃねーのか?」
「そうそう。なんかね、ちょっとお腹が痛くて。もう帰ろうかなって。」
「ふーん、どうせ変なもんでも拾って食ったんだろ。」「失礼な!私はオトナだから、そんなことしないの!」「へいへい。」
(さっき土方のヤローが名前はガキだって言ってたとも知らねーで、バカなヤツ。)
次の日名前は道場を休んだ。その次の日、休みはしなかったが「調子が悪い」と言って稽古場を座って眺めていた。そして、月に数回そんな日が起こるようになった。
周りのオトナたちは何か知っているようだった。
(何なんだよ、どいつもこいつも…気にくわねえ。)
沖田がその理由を知る(ミツバから聞き出した。)のは数年後のことであるが、その頃には名前はすっかりお姉さんとなり、町でウワサの別嬪さんと言われるまでに美しく成長した。
ー「なあ、時々来る名前さん、キレイだよなあ。」
ー「お前、それ沖田さんの前で言うなよ。殺されっぞ。」
ー「え、なんで?」
ー「よく知らねーけど、姉貴取られるみたいでイヤなんだろ。」
ー「オイ、テメエら、無駄話する元気があるみてェだな。」
ー「「ひっ、沖田さん…!」」
ー「立てねーようにしてやるから来い。」
ー武州ー
道場の縁側に座っている近藤を見つけ、名前は竹刀を持ったまま駆け寄った。
「勲お兄ちゃん!」
「お、どうした名前?」
「聞いて!さっき総悟に勝ったの!」
「総悟に!?すごいじゃないか!稽古がんばってたもんなー!がっはっは!!」
近藤は豪快に笑いながら名前の頭をガシガシと撫でた。名前はその大きくて無骨な手が大好きで、何かいい事があると近藤に頭を撫でてもらうため、いつもこうしていの一番に報告しに来ていた。
「名前!汚ねーぞ!砂を投げるなんて!そんな勝ち俺は認めねー、もっぺん勝負しやがれ!」目を擦ってしまったのだろう、先の勝負の結果に不服を申し立てる沖田の目は真っ赤に腫れている。
「(チッ面倒なヤツが来た…)いいけど、目がウサギちゃんみたいになってるよ?そんなんで勝てるの?」
「関係ねーでさァ、卑怯な手を使わねえと勝負出来ねえヤツに俺が負けるはずねえからな。」
「そう言って、さっき私に負けたのは誰かなあ?それに実戦じゃ卑怯でもなんでも、勝ちは勝ち。」
お互いに手に持っていた竹刀を構える。殺してやる、と言わんばかりに睨み合う2人をアワアワと見ている近藤。
「それならお望みどおり実戦形式でさァ。」
「・・・望むところよ。」
ジリジリと間合いをはかる。
(こ、このままじゃマズイ!)
2人は同時に動いた!
「待っ…!」
《バシィッ!!》
「「!!!」」
「痛っでェェーーー!!!」
※
「ッ痛ーー!」
「・・・。」
「名前、湿布貼ってくれてありがとな。」
「勲お兄ちゃん…」
「ん?どうした名前?」
「なんで飛び出してきたの?」
「あー、」
泣きそうな顔で自分を見る名名前に少しバツが悪くなった近藤はポリポリと頭を掻きながら答えた。
「あのままだと、2人とも大怪我してたかもしれないだろ?」
「それでお兄ちゃんが怪我したら元も子もないよ!」
「がっはっは!俺はいいんだよ!」名前は優しいなあ、と言って名前の頭をガシガシと撫でる。
「俺は2人を預かってる立場だからな、2人に何かあったら名前の親御さんやミツバ殿に合わせる顔がない、無事で良かったよ。」
「うん、ありがとうお兄ちゃん。・・・怪我させてごめん。」
(勲お兄ちゃんはオトナだ、総悟とは違う。・・・そして、私とも。)
「なに、もう気にするな!俺は人一倍丈夫だからな!」ニヤリと笑って力こぶを作る近藤に泣きそうになって俯いた。
「・・・そうだよね、ゴリラお兄ちゃんは丈夫だもんね。」泣きたくなくて、からかってしまった。ごめんね。
「え、今ゴリラって言った…?勲の聞き間違い…?」聞き間違いだよね!?名前はそんなこと言わないもんね!?
「じゃあ私帰るね。」立ち上がり扉へと向かう。
「お、おう。もう暗いから気をつけて帰るんだぞ!」
「・・・分かった、また明日ね。」
「おう、また明日な。」
《パタン》
名前が近藤の部屋を出ると沖田がすぐそばで待っていた。
「ずいぶん遅かったじゃねーか。」
「総悟、待っててくれたんだ。」
「まぁな、おめーと一緒に帰らねえと俺が姉上に叱られちまう。」ホラ、と沖田がいつもどおり手を差し出す。
「そうだね。」名前もいつもどおりその手を取った。
喧嘩をしても、喧嘩が終わればいつもどおり。それがコドモの喧嘩というヤツだ。
※
名前と沖田は家が隣同士で一緒に道場に通い始めた。行く時も帰る時も手を繋いで並んで歩く。それがいつもどおりだった。
今も、いつもの帰り道。
「ねえ総悟、今日はごめん。私が卑怯だった。」
「なんでィ急に。しおらしくて気味が悪い。」
「明日からは総悟に喧嘩売るの、やめる。ううん、誰にも喧嘩なんか売らないし、買わない。」
「頭でも打ったか?」
「・・・手も、もう繋がない。」そう言って名前は繋いでいた手をパッと離した。突然手を離された沖田は名前に対し怒りをあらわにする。
「どういう事ですかィ?ああ、俺が謝ってねえのが気に食わねえのか?」
「・・・。」
「チッ、分かりやした。謝ればいいんでしょ。ったく名前もガキですねィ。」
「っ違う!・・・そうじゃない。今日のことは本当に私が悪いと思ってる。だから総悟は謝らなくていい。」
「だったら、「私はもう、コドモでいたくない、オトナになりたいの。勲お兄ちゃんみたいなオトナに。」はぁ?なんだそりゃと沖田は不思議に思う。
「今日みたいな、私たちコドモの喧嘩に勲お兄ちゃんを巻き込みたくないの。私たちのために怪我なんてさせたくない。私たちもうオトナにならなきゃ。」ねえ、総悟なら分かってくれるよね?だってあんたも勲お兄ちゃんのこと大好きじゃん、そう言って名前は自分の母親のように、ミツバのように笑って見せた。
(何だよ、それ。気にくわねえ。そうやって俺の手を離すとこも、大人びて笑う表情も。)
「・・・勝手にしろィ。」
「・・・うん。」
※
次の日から名前は本当に変わった。沖田と一緒に暴れ回らなくなったし、私が一番強いと言わんばかりに誰彼構わず喧嘩を売るのをやめた。立ち居振る舞いもオトナのようになった。
「沖田先輩。」「なんだよ土方コノヤロー。」
「・・・名前最近様子違くないスか?何かあったんスか?」
「俺はなーんも知らねえ。気になるなら自分で聞きやがれ。」
「沖田先輩!どこ行くんスか!?」
「便所。」
(・・・悪ぃ、近藤さん。聞き出せなかった。)
いきなり態度が変わった名名前に、最初は皆戸惑っていたが数日も経てば次第に慣れていった。それどころか、俺はこっちの方が良いだの、やっぱ女子は穏やかな方が良いだの好き勝手いう始末だ。
(気にくわねえ。名前のヤツ、ちょっと前まで俺と同じで土方のヤローに先輩って呼ばせてたクセに!それに、近藤さんだってテメエみたいなガキ、好きになるわけねえだろ!)
沖田が近藤の部屋の前を歩いていると、中から近藤と土方の話し声が聞こえた。障子に指でソッと穴を開け、中を覗く。
「そうかー、聞き出せなかったか。」
「悪ィな、近藤さん。」
(近藤さんの差し金だったのか…。)
「いや、いいんだ。すまんな、こんなこと頼んで。・・・俺も名前に聞いてみたんだが、はぐらかされちまってな!がっはっは!」
「・・・。」
「やっぱり俺が原因なのかなあ、あの時俺が総悟と名前の喧嘩を止めちまったから…。」
「・・・。」
「なァトシィィ!?トシはどう思う!?」近藤は土方の肩をガタガタと揺らす。
「痛ェよ、近藤さん。」
(名前、見てみろよ。コレのどこがオトナなんでィ。)
《ガラッ》
「そんなに知りてえなら教えてあげます。」
「「!!」」
「そ、総悟。聞いてたのか?」
「オトナになりたいそうですぜ。近藤さんみたいな。」沖田は、あの日名前から聞いたことを2人に打ち明けた。
「なるほどな、そういう事だったか。ありがとな総悟、教えてくれて。」
「いえ。」
「名前がそんなことを思ってくれてたとは知らなかった。でも、そういう事なら急いで大人になる必要はない。俺からそう言ってみよう。」
沖田は内心ほくそ笑んだ。近藤からそう言えば名前は元の名前に戻るだろう、そう思ったからだ。
「・・・待ってくれ近藤さん。」
「!」
「どうした、トシ?」
「俺は…このままでもいいと思う。」
(何言ってやがんだ、土方のヤロー。)沖田はギロリと土方を睨んだが、土方は意に介さず続けた。
「俺たち男はいつまでもガキのままだが、女は違ェだろ。というより少し遅ェくらいだと思うぜ。それに名前も今はガキだが、あと数年もすりゃ年頃の娘さんだぜ。結構なことじゃあねえのか?」意志を尊重してやりゃあいいと思うぜ、などと抜かしやがった土方に腹が立って仕方ない。それを真に受け「そうかなァ!?そうした方がいいのかなァ!?なァトシィ!?」などと抜かす近藤さんにも。俺を置いてオトナってヤツになろうとする名前にも。
「そ、そうだ、総悟!総悟はどう思う!?」
腹が立って歯を食いしばると、奥歯がギリギリと軋んだ。
「そ、総悟…?」
「知らねェ!!」
《バンッ!!》
「え、総悟のヤツ急に怒って…どうしたんだ?」
「さァな。でもまあ大方、いつまでも名前とバカやれると思ってたんじゃねーの?」
※
「あ、総悟ー!やっと見つけた!どこ行ってたの?」
「名前…。近藤さんの部屋。」
「そうなの?いーなー、私も着いて行けば良かったなー。」
「それよか、俺を探してたんじゃねーのか?」
「そうそう。なんかね、ちょっとお腹が痛くて。もう帰ろうかなって。」
「ふーん、どうせ変なもんでも拾って食ったんだろ。」「失礼な!私はオトナだから、そんなことしないの!」「へいへい。」
(さっき土方のヤローが名前はガキだって言ってたとも知らねーで、バカなヤツ。)
次の日名前は道場を休んだ。その次の日、休みはしなかったが「調子が悪い」と言って稽古場を座って眺めていた。そして、月に数回そんな日が起こるようになった。
周りのオトナたちは何か知っているようだった。
(何なんだよ、どいつもこいつも…気にくわねえ。)
沖田がその理由を知る(ミツバから聞き出した。)のは数年後のことであるが、その頃には名前はすっかりお姉さんとなり、町でウワサの別嬪さんと言われるまでに美しく成長した。
ー「なあ、時々来る名前さん、キレイだよなあ。」
ー「お前、それ沖田さんの前で言うなよ。殺されっぞ。」
ー「え、なんで?」
ー「よく知らねーけど、姉貴取られるみたいでイヤなんだろ。」
ー「オイ、テメエら、無駄話する元気があるみてェだな。」
ー「「ひっ、沖田さん…!」」
ー「立てねーようにしてやるから来い。」
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