負け犬
お名前
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今度は銀時がベンチで打ちひしがれてしまった。
「あーあ、どうすんだよコレェ、まだ痛ェよコレェ。ちょっとどうなってるか確認してくんない?」
「銀時サン、セクハラは困ります。」
「いやだってよォ、自分じゃ怖くて確認出来ねぇよコレェ。」
「じゃあ新八クンに頼んでくださいよ。」
「新八ィィィ!ちょっと来てくんなーーい!?」
「無理に決まってんだろォォォ!!僕だって眼鏡取り返すのに必死なんだよォォォ!!見てわかんねぇのかァァァ!!」
「ちっ使えねぇな、ダメガネが!ペッ!」
「んだとゴラァァァ!!」
「ほーら新八ィ!早く定春から眼鏡取り返さないと大変なことになるアルヨーー!ギャハハハハ!」
「キャンキャン!!」「やめてェェェ!!!」
「ったくよォ、こっちの気も知らねぇでいい気なもんだよなぁ。」
「・・・あの、卑怯な手を使ってしまってすみませんでした。」
「あー、まあ気にするこたぁねえよ。(沖田くんからたんまり依頼料もらってるしな。それにちょっと下心も…無くはなかったし?)」
「銀時サン…!」「ちょっとその顔でこっち見ないでくれる!?トラウマが癒えるまではさァ!・・・って!嘘嘘!だからそんなに悲しそうにしないでェ!?こっち見て!銀さんぜーんぜん怒ってないからァ!ね!?」少し俯いた名前の顔を覗き込む銀時、必死に笑いをこらえる名前「おいィィ!おもっくそ笑ってんじゃねぇかァァ!!」
「あー、おもしろ!」
「ったく、どいつもこいつも…」
最初は顔にヒデェ痣はあるし、なんでか金的を狙う特訓してるしでとんだ訳あり女だと思ってたのによぉ…そう思ったところでふと気づいた。
「・・・そういえば痣、だいぶキレイになってんな。」良かったなと言うと、あーとかうーとかなんとも煮え切らない反応が返ってきた。え、痣がカッケェとかそんな感じの年頃ですか?
名前はひとしきり唸った後、ちょっと聞いてくれます?とこれまでの経緯を話し始めた。
「ってな訳で、この痣が消えるまでがリミットでして、それはたぶん明日明後日くらいな訳です。特訓が終わって、元カレっていうか憎きアンチキショーにやり返したら沖田クンとの関係?接点?がまぁ無くなってしまう訳でしてぇ、それは私としてはなんか張り合い?的なものが無くなってしまいそうっていうか、ちょっと寂しい…いやほんのちょっとですよ?寂しいかなあ、なんて思ったり思わなかったり?でもでもー沖田クン最初の1回しか来てくれてないし、沖田クンにとって私はその程度なのかな?みたいな…いやでもお、仕事忙しい的な感じのこと言ってたしー、無理させちゃうのも悪いかなぁとか思ったりい。えー、銀時サンどう思います?」「あっそふーん、って思う。」人が真剣に悩んでるのにぃぃぃ!きぃぃぃ!
「ばかあ!銀時サンなんて…銀時サンなんて…!嫌いになんてなれないぃぃぃ!だって、お師匠さんなんだもんんん!」誰がいつてめぇの師匠になったんだよ!ばかはてめぇだよ、このばか!
銀時にそう言った後、名前は「じゃあね!また遊ぼうねーー!」と新八、神楽、定春に告げ、手を振りながら走り去っていった。
「またネーー!名前!」「名前さん、またーー!」「わぅーーん!」仲良しだなおい。
「はーあ、元気で明るくてバカなヤツだよなぁー。でもよぉ、そんなヤツがあんたのことで真剣に悩んでるんだとよ。なァ、総一郎くんは今の話どう思った?」ガサガサ、とベンチの後ろの茂みから沖田が姿を現した。
「なんでィ、気づいてたんですかィ?あと、総悟でさァ。」
「まぁな。ていうか毎回いたよね?仕事しろよ税金ドロボー。なんで顔出してやらなかった?」
「・・・。」
「だんまりですかぁ?まあいいけどよ。・・・案外あんたもあいつと同じなんじゃねぇの?」痣が薄くなる度に関係性も薄れちゃう〜!そんなの寂しいヤダヤダ〜!ってやつ?銀時が下品に笑う。
「旦那も意外と下世話ですねィ。そんなんじゃねえでさァ。けど、まあ明日は顔出しやすよ。」
「そうしてやんな。あんたのその憎たらしい顔でも見ないとサミシイって言うやつがいるんだからよ。じゃ、今度ともご贔屓にー。」
「・・・そんなんじゃねえや。」
※
次の日名前がいつものように公園に行くと、すでに沖田が待っていた。
「沖田クン!!」
「おせーでさァ、この俺を待たせるたァどういう躾されてるんでィ。なァ負け犬。」
「沖田クンだぁ!久しぶりだねえ!元気にしてた!?沖田クンが来ない間に私はすっかりこの公園の常連さんよ?ここのみんなと友だちだよ?」そう言って沖田に駆け寄る名前に尻尾があれば、ちぎれそうなくらいブンブン振られていただろう。
「(ホントに犬みてえなヤツでさぁ。)聞きやしたぜ、昨日旦那相手に一発ぶち込んだってな。」「そう!そうなの!」いや〜、沖田クンにも見せてあげたかったな!まあでも自分的にはまだまだ鍛錬が足りないかな?みたいな?「ま、旦那も相当油断してたらしいですからね。ギリギリ及第点ってとこでしょう。特訓は今日で終いでさァ。痣もキレイになったみてぇだし。・・・なんでィ、嬉しくねーのか?」「ま、まさか!わーいわーい!嬉しすぎて涙でちゃう!あは!」明らかに空元気な名前を見て、分かりやすいヤツと思う。
「という訳で、今日は最終試験でさァ。お相手はコチラ。」
「オイ。オフに理由も言わずに上司を呼び出すたァてめえもどんな躾されてんだ?ああ?」
(誰…?あれ、デジャブ?)
この煙草をふかした瞳孔の開いてるクールガイは土方サンというらしい。沖田クンの上司なんだって。え、沖田クンの職場顔面偏差値高くない?私も就職させてもろて?なんてねー!
「オイ、てめぇが俺とオフを合わせるなんて嫌な予感しかねーんだけど。」
沖田は無言で土方にマヨを渡す。「ナニコレ?どういうこと?」「土方さん、コレあげるんで、何も言わずここに立っててもらえやせんか?」(マジで何考えてんだこいつ。)
「いいですかィ、負け犬。」沖田は土方に聞こえないよう名前に耳打ちする。
「何ですか、沖田クン。」
「土方さんには特訓のことは何も伝えてやせん。何されるか知らねえで突っ立ってやす。」
「・・・!それは、大丈夫なの…?」普通に申し訳ないんだけど。私、後で殺されたりしない?
「心配すんな、先に懺悔アイテム(マヨ)は渡してある。」沖田クンがそういうなら…まあいいのか?いやでもなあ。「いかに土方さんに警戒させずに近づき素早く打つかがキモでさァ。それが出来たら合格でィ。」「なるほど。」
「旦那相手に出来たんだ、完全に油断してる土方さん相手に出来ねえなんて思っちゃあいやせん。もし、わざと打たねえなんてことしたら、分かりやすね?」と言って私と土方さんをその場に残し、離れていってしまった。なんてことだ、沖田クンには私の考えなんてお見通しだったのだ。もしわざと負ければ特訓を続けてくれるかもしれないと思ってしまったコトくらい。それにたぶん私の気持ちも。
今日で終わってしまうか、土方サンの土方サンを打ち、憎きアンチキショーに復讐するまで期限を延ばすか二つに一つなのだ。それなら私は、後者を選ぶ…!!
(ったく、オフに総悟に呼び出されるなんて絶対にロクな事じゃねーんだよ。それに、あの汚ねえジャージの女は何者だ?やけに総悟と親しいようだが。ま、警戒しておくに越したことはねーだろう。・・・近づいてきやがった。)土方の眉がピクリと動く。勤務中であれば、腰の刀に手をやっていただろう。
「あの、」
「・・・。」
「いい天気ですね。」いや今日めっちゃ曇りですけどォォ!?
「今日は突然呼び出してすみません。実は、私が沖田クンに頼んだんです。」
少し照れくさそうに俯きながらコチラをチラチラ見る名前の顔を見て、土方の警戒心が少しずつ緩んでいく。名前が少し距離を詰める。
「お、オイ…」
2人の距離、約30センチ。
名前はグッと顔を上げ、戸惑う土方と目を合わせる。名前の瞳は僅かにうるみ、頬は赤く染っている。その表情はまるで恋する乙女のようだ。
また少し距離を縮める。約10センチ。土方の心臓がドクドクと早鐘を打つ、警戒心はもう無い。
「お、おまえ…「土方サン…御免!!」「キャァァァ!!??」また1人、女の子にしてしまった。
1!2!3!土方ダウン!カンカンカーーーン!!
※
「す、すみませんでしたー!」
ベンチに座り煙草をふかしながら未だにガタガタと足を震わせている土方の前で、名前は渾身の土下座をした。
「謝って済む問題じゃねーんだよ。」その顔には青筋が浮かび瞳孔は開ききっている。あ、殺されるわ。
「そうですぜ、名前。男の純情を弄ぶなんてヒデェまねしやがる。」
「そっちじゃねェェ!言っとくがテメエも同罪なんだよ!」
「ヤダなァ土方さん、先に謝罪の品を渡してやしたでしょ。」
「あ?何のこと…あのマヨネーズかァァ!あんなんで許せるわけねぇだろ!!」沖田クンー!?マヨネーズで許してもらおうと思ってたの!?それはどんなマヨラーであっても無理無理の無理だよー!?
「す、すみませんでしたー!!」名前はもう一度地面に頭を擦り付けた。
「ちっ、テメエはもういい。どうせ総悟のヤローに巻き込まれたんだろ。」そうとは言いきれないところに良心が痛んだが、殺されたくないので黙っておくことにする。「だが総悟、テメーはダメだ。切腹だ。」「土方さん…イヤに決まってんだろィ。あと、もう用事済んだんで帰っていいですぜ。」ブチブチブチブチィ!!(あ、10本はイッたな。)「・・・総悟マジで明日覚悟しとけよ…俺ァ本気だからな…」土方サンは怒りで声が震えていたものの怒鳴る気力は無いのか、切腹だ、切腹しかねぇ、と物騒なことを呟きながら帰って行った。オラやっぱりこんな物騒な職場はイヤだ!
「さて、土方のヤローも帰ったことですし、行きやすか。」
「…?」はて?どこへ?
「その腑抜けたツラはなんでィ。決まってんだろ、憎きアンチキショーのところでさァ。」沖田は不敵な笑みを浮かべ、グッと名前の手を引いた。
「善は急げでさァ、行きやすよ。」
「う、うん!」
ー「ところで、どこにいるかは知ってるの?」
ー「・・・。」
ー(まさか、無計画なの…?)
「あーあ、どうすんだよコレェ、まだ痛ェよコレェ。ちょっとどうなってるか確認してくんない?」
「銀時サン、セクハラは困ります。」
「いやだってよォ、自分じゃ怖くて確認出来ねぇよコレェ。」
「じゃあ新八クンに頼んでくださいよ。」
「新八ィィィ!ちょっと来てくんなーーい!?」
「無理に決まってんだろォォォ!!僕だって眼鏡取り返すのに必死なんだよォォォ!!見てわかんねぇのかァァァ!!」
「ちっ使えねぇな、ダメガネが!ペッ!」
「んだとゴラァァァ!!」
「ほーら新八ィ!早く定春から眼鏡取り返さないと大変なことになるアルヨーー!ギャハハハハ!」
「キャンキャン!!」「やめてェェェ!!!」
「ったくよォ、こっちの気も知らねぇでいい気なもんだよなぁ。」
「・・・あの、卑怯な手を使ってしまってすみませんでした。」
「あー、まあ気にするこたぁねえよ。(沖田くんからたんまり依頼料もらってるしな。それにちょっと下心も…無くはなかったし?)」
「銀時サン…!」「ちょっとその顔でこっち見ないでくれる!?トラウマが癒えるまではさァ!・・・って!嘘嘘!だからそんなに悲しそうにしないでェ!?こっち見て!銀さんぜーんぜん怒ってないからァ!ね!?」少し俯いた名前の顔を覗き込む銀時、必死に笑いをこらえる名前「おいィィ!おもっくそ笑ってんじゃねぇかァァ!!」
「あー、おもしろ!」
「ったく、どいつもこいつも…」
最初は顔にヒデェ痣はあるし、なんでか金的を狙う特訓してるしでとんだ訳あり女だと思ってたのによぉ…そう思ったところでふと気づいた。
「・・・そういえば痣、だいぶキレイになってんな。」良かったなと言うと、あーとかうーとかなんとも煮え切らない反応が返ってきた。え、痣がカッケェとかそんな感じの年頃ですか?
名前はひとしきり唸った後、ちょっと聞いてくれます?とこれまでの経緯を話し始めた。
「ってな訳で、この痣が消えるまでがリミットでして、それはたぶん明日明後日くらいな訳です。特訓が終わって、元カレっていうか憎きアンチキショーにやり返したら沖田クンとの関係?接点?がまぁ無くなってしまう訳でしてぇ、それは私としてはなんか張り合い?的なものが無くなってしまいそうっていうか、ちょっと寂しい…いやほんのちょっとですよ?寂しいかなあ、なんて思ったり思わなかったり?でもでもー沖田クン最初の1回しか来てくれてないし、沖田クンにとって私はその程度なのかな?みたいな…いやでもお、仕事忙しい的な感じのこと言ってたしー、無理させちゃうのも悪いかなぁとか思ったりい。えー、銀時サンどう思います?」「あっそふーん、って思う。」人が真剣に悩んでるのにぃぃぃ!きぃぃぃ!
「ばかあ!銀時サンなんて…銀時サンなんて…!嫌いになんてなれないぃぃぃ!だって、お師匠さんなんだもんんん!」誰がいつてめぇの師匠になったんだよ!ばかはてめぇだよ、このばか!
銀時にそう言った後、名前は「じゃあね!また遊ぼうねーー!」と新八、神楽、定春に告げ、手を振りながら走り去っていった。
「またネーー!名前!」「名前さん、またーー!」「わぅーーん!」仲良しだなおい。
「はーあ、元気で明るくてバカなヤツだよなぁー。でもよぉ、そんなヤツがあんたのことで真剣に悩んでるんだとよ。なァ、総一郎くんは今の話どう思った?」ガサガサ、とベンチの後ろの茂みから沖田が姿を現した。
「なんでィ、気づいてたんですかィ?あと、総悟でさァ。」
「まぁな。ていうか毎回いたよね?仕事しろよ税金ドロボー。なんで顔出してやらなかった?」
「・・・。」
「だんまりですかぁ?まあいいけどよ。・・・案外あんたもあいつと同じなんじゃねぇの?」痣が薄くなる度に関係性も薄れちゃう〜!そんなの寂しいヤダヤダ〜!ってやつ?銀時が下品に笑う。
「旦那も意外と下世話ですねィ。そんなんじゃねえでさァ。けど、まあ明日は顔出しやすよ。」
「そうしてやんな。あんたのその憎たらしい顔でも見ないとサミシイって言うやつがいるんだからよ。じゃ、今度ともご贔屓にー。」
「・・・そんなんじゃねえや。」
※
次の日名前がいつものように公園に行くと、すでに沖田が待っていた。
「沖田クン!!」
「おせーでさァ、この俺を待たせるたァどういう躾されてるんでィ。なァ負け犬。」
「沖田クンだぁ!久しぶりだねえ!元気にしてた!?沖田クンが来ない間に私はすっかりこの公園の常連さんよ?ここのみんなと友だちだよ?」そう言って沖田に駆け寄る名前に尻尾があれば、ちぎれそうなくらいブンブン振られていただろう。
「(ホントに犬みてえなヤツでさぁ。)聞きやしたぜ、昨日旦那相手に一発ぶち込んだってな。」「そう!そうなの!」いや〜、沖田クンにも見せてあげたかったな!まあでも自分的にはまだまだ鍛錬が足りないかな?みたいな?「ま、旦那も相当油断してたらしいですからね。ギリギリ及第点ってとこでしょう。特訓は今日で終いでさァ。痣もキレイになったみてぇだし。・・・なんでィ、嬉しくねーのか?」「ま、まさか!わーいわーい!嬉しすぎて涙でちゃう!あは!」明らかに空元気な名前を見て、分かりやすいヤツと思う。
「という訳で、今日は最終試験でさァ。お相手はコチラ。」
「オイ。オフに理由も言わずに上司を呼び出すたァてめえもどんな躾されてんだ?ああ?」
(誰…?あれ、デジャブ?)
この煙草をふかした瞳孔の開いてるクールガイは土方サンというらしい。沖田クンの上司なんだって。え、沖田クンの職場顔面偏差値高くない?私も就職させてもろて?なんてねー!
「オイ、てめぇが俺とオフを合わせるなんて嫌な予感しかねーんだけど。」
沖田は無言で土方にマヨを渡す。「ナニコレ?どういうこと?」「土方さん、コレあげるんで、何も言わずここに立っててもらえやせんか?」(マジで何考えてんだこいつ。)
「いいですかィ、負け犬。」沖田は土方に聞こえないよう名前に耳打ちする。
「何ですか、沖田クン。」
「土方さんには特訓のことは何も伝えてやせん。何されるか知らねえで突っ立ってやす。」
「・・・!それは、大丈夫なの…?」普通に申し訳ないんだけど。私、後で殺されたりしない?
「心配すんな、先に懺悔アイテム(マヨ)は渡してある。」沖田クンがそういうなら…まあいいのか?いやでもなあ。「いかに土方さんに警戒させずに近づき素早く打つかがキモでさァ。それが出来たら合格でィ。」「なるほど。」
「旦那相手に出来たんだ、完全に油断してる土方さん相手に出来ねえなんて思っちゃあいやせん。もし、わざと打たねえなんてことしたら、分かりやすね?」と言って私と土方さんをその場に残し、離れていってしまった。なんてことだ、沖田クンには私の考えなんてお見通しだったのだ。もしわざと負ければ特訓を続けてくれるかもしれないと思ってしまったコトくらい。それにたぶん私の気持ちも。
今日で終わってしまうか、土方サンの土方サンを打ち、憎きアンチキショーに復讐するまで期限を延ばすか二つに一つなのだ。それなら私は、後者を選ぶ…!!
(ったく、オフに総悟に呼び出されるなんて絶対にロクな事じゃねーんだよ。それに、あの汚ねえジャージの女は何者だ?やけに総悟と親しいようだが。ま、警戒しておくに越したことはねーだろう。・・・近づいてきやがった。)土方の眉がピクリと動く。勤務中であれば、腰の刀に手をやっていただろう。
「あの、」
「・・・。」
「いい天気ですね。」いや今日めっちゃ曇りですけどォォ!?
「今日は突然呼び出してすみません。実は、私が沖田クンに頼んだんです。」
少し照れくさそうに俯きながらコチラをチラチラ見る名前の顔を見て、土方の警戒心が少しずつ緩んでいく。名前が少し距離を詰める。
「お、オイ…」
2人の距離、約30センチ。
名前はグッと顔を上げ、戸惑う土方と目を合わせる。名前の瞳は僅かにうるみ、頬は赤く染っている。その表情はまるで恋する乙女のようだ。
また少し距離を縮める。約10センチ。土方の心臓がドクドクと早鐘を打つ、警戒心はもう無い。
「お、おまえ…「土方サン…御免!!」「キャァァァ!!??」また1人、女の子にしてしまった。
1!2!3!土方ダウン!カンカンカーーーン!!
※
「す、すみませんでしたー!」
ベンチに座り煙草をふかしながら未だにガタガタと足を震わせている土方の前で、名前は渾身の土下座をした。
「謝って済む問題じゃねーんだよ。」その顔には青筋が浮かび瞳孔は開ききっている。あ、殺されるわ。
「そうですぜ、名前。男の純情を弄ぶなんてヒデェまねしやがる。」
「そっちじゃねェェ!言っとくがテメエも同罪なんだよ!」
「ヤダなァ土方さん、先に謝罪の品を渡してやしたでしょ。」
「あ?何のこと…あのマヨネーズかァァ!あんなんで許せるわけねぇだろ!!」沖田クンー!?マヨネーズで許してもらおうと思ってたの!?それはどんなマヨラーであっても無理無理の無理だよー!?
「す、すみませんでしたー!!」名前はもう一度地面に頭を擦り付けた。
「ちっ、テメエはもういい。どうせ総悟のヤローに巻き込まれたんだろ。」そうとは言いきれないところに良心が痛んだが、殺されたくないので黙っておくことにする。「だが総悟、テメーはダメだ。切腹だ。」「土方さん…イヤに決まってんだろィ。あと、もう用事済んだんで帰っていいですぜ。」ブチブチブチブチィ!!(あ、10本はイッたな。)「・・・総悟マジで明日覚悟しとけよ…俺ァ本気だからな…」土方サンは怒りで声が震えていたものの怒鳴る気力は無いのか、切腹だ、切腹しかねぇ、と物騒なことを呟きながら帰って行った。オラやっぱりこんな物騒な職場はイヤだ!
「さて、土方のヤローも帰ったことですし、行きやすか。」
「…?」はて?どこへ?
「その腑抜けたツラはなんでィ。決まってんだろ、憎きアンチキショーのところでさァ。」沖田は不敵な笑みを浮かべ、グッと名前の手を引いた。
「善は急げでさァ、行きやすよ。」
「う、うん!」
ー「ところで、どこにいるかは知ってるの?」
ー「・・・。」
ー(まさか、無計画なの…?)