負け犬
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とある居酒屋、カウンター席に飲んだくれている女がひとり...
「ぐっぞぉぉぉ!まじでムカつくぅぅぅ!なんなんだよぉぉぉ
!あーーーもう!おやじさん!!もういっぱいぃぃぃ!!」
3年間付き合った彼氏にフラれた。理由は「お前、つまんねぇんだよ。」だそうだ。なんなんだよつまらないって!じゃあテメエはつまらなくねぇのかよぉ、しがないバンドマンのくせにさぁ!ナマ言ってんじゃねぇぞ!!あまりに腹が立ったのでビンタをくれてやったら100倍やり返された。
「名前ちゃん、あんたさっきからずっとこの調子じゃねぇか。あんまり飲み過ぎなさんなよ。ほれ、これで最後にしときな。」ありがどぉぉぉごれでざいごにずるねぇぇぇと言い、ついでもらったお酒を勢い良くかっくらった。
「でもさぁ、ひどくない?ふつうさぁ、おとめのかおにあざができるまでなぐりかえすかね!?ありえなくない?いーーやありえない!ありえないよ!このあざをみるたびにはらがたってしゃーないんだけどお!」
「え、痣なんてあるのかい?俺にゃあよく見えねえんだが。」
「そりゃあね、いまはね、おけしょうでかくしてるからね?おけしょうをおとしたらそりゃあヒドいんだから!しかも、おけしょうでもかくしきれてないぶぶんもあるんだからぁ。ほら、めのまわりとか!」ほら!よくみて!とおやじさんに迫っていると、「あ、ホントでさァ。よく見たら痣があらあ。アンタ、こっぴどくやられやしたねィ。」横から男がニヤリと笑いながら乱入してきた。
「は、え?えっと、だ、だれですか...?てか顔近いんですケド。」
「俺ですかィ?俺は沖田総悟ってもんでさァ。」
あれ、この話いつから聞いてたの?ていうかいつからいたの?え、なんで急に割り込んできたの?え、てかキミちょう可愛いね、何歳?お姉さんと一緒に飲んじゃう?とか、色々言いたい(って最後の2つはナンパか!なはは!)ことはあったが、「全部口に出てますぜ。」まじかぁぁぁ!ちょっと恥ずかしいんだけどお。
「ちなみに、アンタが入ってきた時にはもういやした。」
「ま、まじですかー。」
「まじでさァ。明日は久々のオフだからってんで一人静かに飲もうと思ったんですけどねィ...隣にうるせえ女が来たんで、その面拝んでやろうと思ってな。」そう言って沖田は自分の席に座り直し、お猪口に残っていた酒をグイっと飲みほした。
(えええ、なんなのこの人、可愛い顔してめっちゃ毒舌じゃん...あ、でも質問にはちゃんと答えてくれてるし、意外といい人なのかな...?いや、ナンパはしっかり無視されてるわ!全然いいんだけどね!?気にしてないし?まあこんな見ず知らずのうるせえ女なんて興味ありませんよねー!?むしろ忘れてほしいぃぃぃ、もう帰ろ。)情緒はめちゃくちゃである。
おやじさん、お勘定...と立ち上がろうとした瞬間、「で、きっちりやり返したんですかィ?」声をかけられた。
「…え?あ、いや...」隣を見た名前に沖田の視線が刺さる。
もちろんやり返してなどいない。いや、正確に言えばやり返すことなど出来なかった。3年も付き合った相手に殴り返されたショックや痛みでそれどころではなかったのだ。「やり返してない...ケド。」と視線を逸らし小さく返すと、ハァ、とでっかい溜息をつかれた。
「なーんでィ、アンタつまんねぇ女だな。」おやっさん勘定置いときやすぜ、と言い残しさっさと出て行ってしまった。
「…。え、なっ!!」なにぃぃぃ!?つまんねえだとぉぉぉ!?今の私に「つまんねえ」は禁句なんだかんなぁぁぁ!?
「おやじさん!!お勘定置いとくね!」「あいよー、また来とくんな!」「うん!絶対また来る!ありがとお!」
※
さっさと出て行ってしまった沖田の後を急いで追いかける。…は、はやい!
「はぁ、はぁ!待って...!」
「ん?何でィ、アンタか。俺に何か用事でも?」
「はぁ、はぁ、よ、用事も、はぁ、はぁ、何も...!はぁ、はぁ」「え?何です?はぁはぁうるさくて良く聞こえねえや。」うるせぇちょっと待てぇぇぇ!こ...呼吸が!すーはーすーはー!
「用事も何も!あ、あんなこと言われて引き下がれるわけないじゃない!」
「…ふぅん、それで律儀に追いかけて来たんですかィ?アンタを殴ったヤロー相手にはすごすご引き下がったのに?」
「な!?そ、それは...その...」
「これ以上用がねーなら、俺はもう行きやす。」ごにょごにょしている姿に呆れたのか沖田はまた溜息をついてくるりと踵を返した。そんな沖田の着物の襟を名前はグッと掴んだ。
「ぐえっ!おいテメエ!何しやがんでィ!離しやがれ!」「だって!…だって仕方ないじゃない!」
「…。」
「そりゃ、先に手を出したのは私だけどさ!あんなに殴り返されるなんて思わないじゃない!そりゃあ私だってやり返したかったけど!けど、すっごく痛かったんだもん!!動けなかったんだもん!!仕方なかったんだもん!!…う、うわーーーん!!」
タガが外れてしまった...今日、さっき会ったばかりの男の人の前なのに...涙が止まらない。
「たく、しかたねぇお人でさァ。…もう泣き止んでくだせえよ、これじ
ゃあまるで俺が泣かせてるみたいでさァ。」
沖田はよれてしまった襟をきちんと直した後、名前の方を向き頭をポンポンと優しくなでた。
「へ...?」「ふ、間抜け面。」間抜け面、と言われてムキーーッ!沖田の方を見ると、言葉とは裏腹に優しい表情をしていて、思わず涙も引っ込んだ。
「ところでアンタ、まだやり返したいって気持ちはありますかィ?」
「も、もちろん!もちろんあるに決まってる!」
「なるほど。なら、俺が手伝ってやりまさァ。」こう見えて結構強いんですぜ、と沖田はニヤリと笑った。
(ど、どゆこと...?)困惑する名前をよそに沖田は続ける。
「と言っても俺が直接やるわけにはいかねえんで、アンタを鍛えやす。」聞いてもよく分からなかったわ。
「ま、兎にも角にも明日かぶき町公園に来なせェ。」
「あ、はい。」
「朝10時な。」
「あ、はい。」
「動
きやすい格好で。」
「あ、はい。」
「化粧禁止な。」
「あ、はい...え、何で?」
「アンタの痣がよく見えねーだろィ。」なんと、乙女の顔の痣が見たいとは、さてはドSだな...?
「…まあ、分かりました。」
「ああ、そういえばまだ名前も聞いてやせんでしたね。」
「あ、そうでしたね。すみません。名前です。」
すでにこれでもかというくらい恥をさらしているのに、名前も名乗ってなかったとは。申し訳ない。ちょっと反省。
「分かりやした、負け犬って呼びやすね。」
「なんでぇぇぇ!?たった今名乗ったよね!?どうしてそうなったのぉぉぉ!?」
「うるせえ、今何時だと思ってるんでさァ。」
「あ、ごめんごめん。っていやいやいやいや!!!お姉さんびっくりしちゃったよ!?」
「誰がお姉さんでィ。アンタなんて負け犬で十分でさァ。俺は帰りやす、アンタもせいぜい気を付けて帰るんですぜ。じゃあな...『負け犬』。」
今度こそ沖田はくるりと踵を返し、呆然としている名前を残し颯爽と帰って行った。
この時の、反対側を向いた沖田の表情なんて名前には知る由もない。
ー(面白れえオモチャ見ィーっけた。)
ー(こんの、ドSやろーー!!)
ー(これでしばらくは退屈しないで済みそうでさァ。)
「ぐっぞぉぉぉ!まじでムカつくぅぅぅ!なんなんだよぉぉぉ
!あーーーもう!おやじさん!!もういっぱいぃぃぃ!!」
3年間付き合った彼氏にフラれた。理由は「お前、つまんねぇんだよ。」だそうだ。なんなんだよつまらないって!じゃあテメエはつまらなくねぇのかよぉ、しがないバンドマンのくせにさぁ!ナマ言ってんじゃねぇぞ!!あまりに腹が立ったのでビンタをくれてやったら100倍やり返された。
「名前ちゃん、あんたさっきからずっとこの調子じゃねぇか。あんまり飲み過ぎなさんなよ。ほれ、これで最後にしときな。」ありがどぉぉぉごれでざいごにずるねぇぇぇと言い、ついでもらったお酒を勢い良くかっくらった。
「でもさぁ、ひどくない?ふつうさぁ、おとめのかおにあざができるまでなぐりかえすかね!?ありえなくない?いーーやありえない!ありえないよ!このあざをみるたびにはらがたってしゃーないんだけどお!」
「え、痣なんてあるのかい?俺にゃあよく見えねえんだが。」
「そりゃあね、いまはね、おけしょうでかくしてるからね?おけしょうをおとしたらそりゃあヒドいんだから!しかも、おけしょうでもかくしきれてないぶぶんもあるんだからぁ。ほら、めのまわりとか!」ほら!よくみて!とおやじさんに迫っていると、「あ、ホントでさァ。よく見たら痣があらあ。アンタ、こっぴどくやられやしたねィ。」横から男がニヤリと笑いながら乱入してきた。
「は、え?えっと、だ、だれですか...?てか顔近いんですケド。」
「俺ですかィ?俺は沖田総悟ってもんでさァ。」
あれ、この話いつから聞いてたの?ていうかいつからいたの?え、なんで急に割り込んできたの?え、てかキミちょう可愛いね、何歳?お姉さんと一緒に飲んじゃう?とか、色々言いたい(って最後の2つはナンパか!なはは!)ことはあったが、「全部口に出てますぜ。」まじかぁぁぁ!ちょっと恥ずかしいんだけどお。
「ちなみに、アンタが入ってきた時にはもういやした。」
「ま、まじですかー。」
「まじでさァ。明日は久々のオフだからってんで一人静かに飲もうと思ったんですけどねィ...隣にうるせえ女が来たんで、その面拝んでやろうと思ってな。」そう言って沖田は自分の席に座り直し、お猪口に残っていた酒をグイっと飲みほした。
(えええ、なんなのこの人、可愛い顔してめっちゃ毒舌じゃん...あ、でも質問にはちゃんと答えてくれてるし、意外といい人なのかな...?いや、ナンパはしっかり無視されてるわ!全然いいんだけどね!?気にしてないし?まあこんな見ず知らずのうるせえ女なんて興味ありませんよねー!?むしろ忘れてほしいぃぃぃ、もう帰ろ。)情緒はめちゃくちゃである。
おやじさん、お勘定...と立ち上がろうとした瞬間、「で、きっちりやり返したんですかィ?」声をかけられた。
「…え?あ、いや...」隣を見た名前に沖田の視線が刺さる。
もちろんやり返してなどいない。いや、正確に言えばやり返すことなど出来なかった。3年も付き合った相手に殴り返されたショックや痛みでそれどころではなかったのだ。「やり返してない...ケド。」と視線を逸らし小さく返すと、ハァ、とでっかい溜息をつかれた。
「なーんでィ、アンタつまんねぇ女だな。」おやっさん勘定置いときやすぜ、と言い残しさっさと出て行ってしまった。
「…。え、なっ!!」なにぃぃぃ!?つまんねえだとぉぉぉ!?今の私に「つまんねえ」は禁句なんだかんなぁぁぁ!?
「おやじさん!!お勘定置いとくね!」「あいよー、また来とくんな!」「うん!絶対また来る!ありがとお!」
※
さっさと出て行ってしまった沖田の後を急いで追いかける。…は、はやい!
「はぁ、はぁ!待って...!」
「ん?何でィ、アンタか。俺に何か用事でも?」
「はぁ、はぁ、よ、用事も、はぁ、はぁ、何も...!はぁ、はぁ」「え?何です?はぁはぁうるさくて良く聞こえねえや。」うるせぇちょっと待てぇぇぇ!こ...呼吸が!すーはーすーはー!
「用事も何も!あ、あんなこと言われて引き下がれるわけないじゃない!」
「…ふぅん、それで律儀に追いかけて来たんですかィ?アンタを殴ったヤロー相手にはすごすご引き下がったのに?」
「な!?そ、それは...その...」
「これ以上用がねーなら、俺はもう行きやす。」ごにょごにょしている姿に呆れたのか沖田はまた溜息をついてくるりと踵を返した。そんな沖田の着物の襟を名前はグッと掴んだ。
「ぐえっ!おいテメエ!何しやがんでィ!離しやがれ!」「だって!…だって仕方ないじゃない!」
「…。」
「そりゃ、先に手を出したのは私だけどさ!あんなに殴り返されるなんて思わないじゃない!そりゃあ私だってやり返したかったけど!けど、すっごく痛かったんだもん!!動けなかったんだもん!!仕方なかったんだもん!!…う、うわーーーん!!」
タガが外れてしまった...今日、さっき会ったばかりの男の人の前なのに...涙が止まらない。
「たく、しかたねぇお人でさァ。…もう泣き止んでくだせえよ、これじ
ゃあまるで俺が泣かせてるみたいでさァ。」
沖田はよれてしまった襟をきちんと直した後、名前の方を向き頭をポンポンと優しくなでた。
「へ...?」「ふ、間抜け面。」間抜け面、と言われてムキーーッ!沖田の方を見ると、言葉とは裏腹に優しい表情をしていて、思わず涙も引っ込んだ。
「ところでアンタ、まだやり返したいって気持ちはありますかィ?」
「も、もちろん!もちろんあるに決まってる!」
「なるほど。なら、俺が手伝ってやりまさァ。」こう見えて結構強いんですぜ、と沖田はニヤリと笑った。
(ど、どゆこと...?)困惑する名前をよそに沖田は続ける。
「と言っても俺が直接やるわけにはいかねえんで、アンタを鍛えやす。」聞いてもよく分からなかったわ。
「ま、兎にも角にも明日かぶき町公園に来なせェ。」
「あ、はい。」
「朝10時な。」
「あ、はい。」
「動
きやすい格好で。」
「あ、はい。」
「化粧禁止な。」
「あ、はい...え、何で?」
「アンタの痣がよく見えねーだろィ。」なんと、乙女の顔の痣が見たいとは、さてはドSだな...?
「…まあ、分かりました。」
「ああ、そういえばまだ名前も聞いてやせんでしたね。」
「あ、そうでしたね。すみません。名前です。」
すでにこれでもかというくらい恥をさらしているのに、名前も名乗ってなかったとは。申し訳ない。ちょっと反省。
「分かりやした、負け犬って呼びやすね。」
「なんでぇぇぇ!?たった今名乗ったよね!?どうしてそうなったのぉぉぉ!?」
「うるせえ、今何時だと思ってるんでさァ。」
「あ、ごめんごめん。っていやいやいやいや!!!お姉さんびっくりしちゃったよ!?」
「誰がお姉さんでィ。アンタなんて負け犬で十分でさァ。俺は帰りやす、アンタもせいぜい気を付けて帰るんですぜ。じゃあな...『負け犬』。」
今度こそ沖田はくるりと踵を返し、呆然としている名前を残し颯爽と帰って行った。
この時の、反対側を向いた沖田の表情なんて名前には知る由もない。
ー(面白れえオモチャ見ィーっけた。)
ー(こんの、ドSやろーー!!)
ー(これでしばらくは退屈しないで済みそうでさァ。)
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