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夜明け(宵サカ)

2024/07/25 20:07
text仕分け済み
 スポーツが好きだ。
 どっかの誰かさんみたいに愛してるっていうと仰々しいし、ちょっと照れる。でも好きだ。本当に。

 勝たねーと面白くない。ここに居るやつなんて多かれ少なかれその感情を抱えてると思うけど、それが通るのは場所は特殊なんだなって気がついたのは結構年を取ってからだ。いつも勝てるわけじゃない。でも絶対全部勝ちたい。本気で言ってる。普通に生きていくのには窮屈なその気持ちが、ここではありふれた意地になる。
 負けるのは悔しい。悔しいって一言で言うんじゃ不足だ。試合に出られないのはもっと、どうしようもない気分になる。
 研究するつもりで見るならともかく、観戦ってやつが俺には難しいのかもしれない。この熱はどうしたって俺を動かしてしまう。じっとしていられないんだ。燻ったままじゃいられない。

 最善を尽くすっていうのは言葉で言うより難しい。軽い気持ちで言うやつもそう居ないだろうけど、最善ってのは時によっても人によっても違う。その瞬間最善のつもりでも後からみたら愚の骨頂だったなんてことザラにある。なんたって俺はアレで中学の時最善を尽くしてたつもりだったんだ。俺が幼い頃サッカーにおいてかなり最善に近いところに置いて貰えて、ひとつひとつ努力の道筋を答え合わせして貰えたのは選手生命を俯瞰で見てくれてた親のお陰だったし、そんな環境はそうそうない。もう親の庇護下にはいない。でもあれから、また一つずつ積み重ねて、ここまで来た。それが一つ、俺にもう一歩を踏み出す勇気をくれる。

 芝はいちめん今日も瑞々しい。目の前に相手、足元にはボール。大抵の動きなら意識よりするより先、認識した瞬間に身体が処理する。この脚は、いつだって俺に応える。
 相手の目線がパスコースを読むのがわかる。俺がわかったことを相手がわかった。その事がわかった。仲間が動いているのが見える。仲間の動きの一つ一つが、俺に無数の選択肢をくれる。嬉しいな。ありがとう。あいつらは俺を信じてる。応えなくちゃ、なあ、不倒?
 向かい合う相手と目が合う。いま、どうやって考えてる? あんたも最善を選ぶだろ。俺はそう信じてるよ。知ってるって言ってもいい。
 息が切れている。髪から汗が滴になって落ちたのが妙にはっきりわかった。視界の端がぼやけてて、口のなかが苦い。頭ん中はフル回転で発火しそうだ。

 外では漫然と流れていく一瞬がひとつひとつ致命的な瞬間になる。この一瞬を掴む。このたかが百五かける六十八メートルの世界が全てになって、フィールドの外では道理にならないルールがただ一つ絶対の枷になる。どこからかこんこんと熱が湧く。最善は何だ。きっと俺になら。

 好きだ。俺と相手の交錯が。スタジアムの外じゃ拡散してしまうこのどうしようもない熱が。思考が仲間と同期して、一つの生き物になったみたいな心地がある。予想も期待も何もかも越えられてなお、それでもまだ俺にだってできることがあるとこの身体は叫ぶ。この空間でなら通じる意地がある。好きだ。仲間が見える。そうだよな、おまえらならそうしてくれる。楽しい。楽しいな。来いよ、俺にできること全部やってやるから、なあ、もっと、熱く!

 一歩。重心をずらす。フェイント、じゃないぜ、このまま行く! 正面から相手が消えて、パスはまっすぐ仲間のもとへ届いた。

 これで終わりじゃない。次、次は何をする?

 走り出す。まだ試合は終わっていない。まだここに居られる。たぶん今俺は笑っている。ああ! 最高だ!
 俺の人生、これ以上のものを知ることってあるんだろうか。あるかもな。思いもよらないところから出会う。そういうことは実際あるものだ。身をもって知ってる。

 でも今は、これが一番だって信じていたい。
 やっぱこういうのを愛って呼ぶのかな。

 選手宣誓の言葉ってあるだろ? 我々選手一同は、スポーツマンシップに則り、正々堂々、全力で戦い抜くことを誓います、ってやつ。定型文だけど、本気で、そうしたいんだよ。俺はその世界の中に居たい。
 誓うよ。スポーツマンシップに則り、最善を尽くして、俺はこの灼熱を走り尽くします。

追記
愛、あるいはあなたの瞳に写る鮮やかな朝焼けによせて

知識が無いせいで草稿未満メモ いつかなんかちゃんと書けたらいいよな 勉強しなきゃ あと1000字越えちゃったわ
タイトル候補のもう一つは「スポーツマンズ・ラヴ」だった そうしなくて良かった

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