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遠見真矢夢

2024/07/13 15:00
仕分け前
 名前の通りの人だったから、横顔ばかり思い出す。
 よく、遠くをなにか探すように見つめていた。話しかけるとこっちを向いてくれて、なあに、って笑ってくれるから心が浮き立った。
 それでも、思い出すのは横顔ばっかりだ。遠見真矢。弓道部だった。ぴったりだ。あとから名前を誂えたんじゃないかと思うくらい。
 入学式の日、よろしくお願いします、と隣から声をかけられて、慌てて返事をした。よ、よろしくお願いします。曖昧に頭を下げてから相手の顔を窺うと、明るい笑顔があって目が離せなくなった。教壇で担任が話し始めてす、と前を向いた彼女の横顔を、わたしはチラチラ盗み見ていた。
 綺麗な人だ。
 わたしだけがそれを知っているような気がしていたけど、当然そんなことはなかった。真矢ちゃんのことを知っている人はみんな少なからず彼女に好感をもっていたように思う。
 好きな人が真矢ちゃんのことが好きらしいと聞いて泣いていたクラスメイトがいた。次第に怒りに変わっていったらしくて、私だって真矢ちゃんのことが好きだ、あいつには高嶺の花なんだよ、と言い出したので慰めていた子が思わず笑ってしまっていた。思われ人は勝手にそんなこと言われて災難だろうけど、わたしは少し遠くに聞こえるその声にかなり同意していた。
 教室移動一緒に行こうといえば連れ立って歩いたけど、真矢ちゃんとつるんでるって言える人は居なかった気がする。回りは笑い声が絶えない明るさをもっていたけど、一人で歩いている彼女の姿勢も当然みたいに美しかった。誰だって彼女と仲良くなってみたかったし、実際真矢ちゃんは誰とでも仲が良かった。
 クラスマッチで大きな声を出して回りを鼓舞する姿なんかは間違いなく中心人物だった。でも彼女は気付くと、少し遠くをなにかを探すように見つめていた。
 一度、真矢ちゃんの弓道の試合を見に行ったことがある。
 普段の笑顔がかき消されて、ピンと張り詰めた横顔は、今まで見た中で一番美しかった。わたしは話しかけられなくて、差し入れしようと思って持っていたお菓子をそのまま自分で持って帰った。寂しかったような気もするけど、それだけで、別に惨めではなかった。
 彼女の視線を辿ることができたら、そこには何が見えていたんだろう。知れば、もう少し真矢ちゃんに踏み込むことができたのかも知れない。でも無理な話だ。わたしは彼女の横顔に見惚れていた。そこから目を離したくなんてなかったから。


追記
転生パロみたいな…こう…
遠見さん……好きだ………………

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