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オペラオー夢

2026/04/12 19:05
 "覇王"であるボクのトレーナーになれるだなんて、君は本っっっ当に運がいい!!
 彼女はそう言う。
 私もそう思う。
 テイエムオペラオーのトレーナーです、と名乗ると、初対面の人には十中八九お前が?と言う顔をされる。私もそう思う。
 テイエムオペラオーというウマ娘は一つの時代を蹂躙し尽くした稀代のウマ娘で、ゾッとするような戦績を持っているけど、本人の性格は愉快で案外人懐っこい。彼女の世界観に付き合ってくれそうだとみるや、絡まれること請け合いだ。どうにかしろと方々から言われる。特にアドマイヤベガのトレーナーからは丁寧な苦言をもらっている。どうにかしようとはしている。どうにかなったことはすこししかない。彼女のコントロールを持っているのはお前だろ、と昨日も言われた。そうなのかな、と思う。私は凡百の新人トレーナーであり、彼女以外の指導をしたこともない。趣味は音楽鑑賞。どこにでもいるだろう、いや、逆にいないだろうか。トレーナーという職につく人たちは大概一つくらい飛び抜けて得意なことがあったりするものだ。
 私にはない。彼女のことを、ひたすら眩しく思っている。彼女が迷惑をかけたら謝る。謝るのが得意になった。
 嫌になんないの、と聞かれたことがある。それはない。きっとこれからもない。
 時代、が、終わろうとしている。テイエムオペラオーが番外に入ることが増えた。これは当然だ。アスリートである以上、ピークというものがある。有馬記念が近づいている。彼女と話し合って、これを現役ラストのレースにすることを決めた。メイショウドトウもそうするという。彼女たちは仲がいい。羨ましいな、と思ったことがある。あのターフを共に走れることが。それを気が付かれてしまっているのだか、ドトウは私をみるといつも困った顔をする。トレーナー失格だ。ドトウのトレーナー曰く、それが彼女の通常運転らしいけど。
 彼女も幸運だ。共に走る相手に恵まれた。ここで私と出会ったことが彼女のためになったかはわからないけど、アドマイヤベガのトレーナー曰く、お前ほどあいつを放任できる奴はいない、らしいので、彼女の特別な一人ではあるのではないかと自惚れてみる。だったら、嬉しい。
 あの美しいウマ娘の、追い風の一部になりたい。彼女が走り終えてからのことも、一緒に考えたい。
 私は特別に運がいいから、彼女の一助になれるんじゃないかなんて思う。

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