SSS
ボツ供養(ジニ爆)
2025/02/12 01:23仕分け前
歳末。繁忙期である。ちなみにハロウィンもクリスマスも年始めも年度終わりも春も夏も秋も繁忙期である。常に波が高いところにいるのだからわざわざ繁忙期という言葉を使う意味はないと言われればその通りだ。それはそれとして、クソ忙しい。揺るがしようもない事実である。年毎にデータを取り纏めると決めたヒーロー公安委員会の方針に過去四年で六回ほど文句をつけたが変わらなかった。変えたら変えたで調整に忙しくなるのはわかるが、それはそれとして、この時期は事務方の眉間の皺がひどい。それがわかる程度には爆豪も近くの人間の顔が見れるようになった。
一年目はすべて自分でやっていたからそれよりはマシだ。見かねた周囲……というかベストジーニストなのだが、流石に無理があると爆豪のことを説き伏せて、手伝いがジーニアスから一人出向してきた。それから今年に至るまでジーニアスの誇る事務の新人が一人、爆豪の事務所を手伝いに十二月始めからやってくる。出向してきた面々の間で、爆豪の事務所が『千尋の谷』と呼ばれていることを知ったのは去年のことだ。去年の担当は事務処理は鬼のように早かったがあまりの疲れでうっかり口が緩んだようで、千尋の谷を越えれば一人前ですからねと自分にぶつぶつ言い聞かせていた。自分のことだかジーニストのことだか聞かなかったので知らないが、獅子に例える気概があるというならプライドが高くて結構なことだと思う。
「ダイナマイト」
「なんだ」
今年の新人は一つ一つの仕事が丁寧だ。悪く言えば時間がかかるのだが、慣れてしまえば問題ないだろう。爆豪の最終チェックで文句のつけようがない段階まで仕上げてくる。一つ一つの手続きについていちいち聞かれた時は今年は苦しいかと思ったものだが、一度聞かせたことは二度と違えない。いつからか声をかけられるのは爆豪の書類の不備があるときだけになった。だから今回もまた爆豪のミスだと思い向き直る。
「ファックスです」
「あ?」
「ダイナマイト宛にファックスです」
爆豪のミスじゃないらしい。コピー用紙が一枚こちらに向けて差し出されている。ファックスっつったかこいつ今?
「どこから」
流石にこの時勢でほとんどペーパーレスになっているというのに、ヒーロー事務所には未だにファックス設置義務がある。事務所によっては俄然現役だという。爆豪が学んだ事務所も雄英も世話になっているサポートアイテム会社も電子メールが主であるからそれほど使わない。それほどは。嫌な予感がしている。
「ヒーロー公安委員会からです」
そう、あそこだけは道楽としか思えない頻度でファックスを使うのだ。『機密ではない連絡だから、お手隙の際に対応してね』等と現公安委員長は笑う。あの野郎、トップヒーローだったのだからこの時期もヒーローに「お手隙の際」がないことは重々承知しているだろう。年のいったヒーローへの忖度だか何だか知らないが、全く腹の立つ話だ。コピー用紙もタダじゃねえんだぞ。
年の瀬の労いを省けば内容はこうだ。護衛任務の依頼。不向きだろうけど先方の希望に合致するヒーローが少ないから大・爆・殺・神ダイナマイトに頼めないか。今年その手の案件少なかったでしょ?
伺うような文章にはなっているが断られるつもりなどそうそうないのだろう。公安案件は断ったら干されるとかそんな仕組みにはなっていないが、情報を回す優先順位に多少関わるのは事実だ。ため息が出た。
「今から行ってくる。こっちはてめーに任せる」
「承知しました」
それ以上に優先順位の高いものがあるわけではない。というかどれも順位としては甲乙つけ難いので目の前にあるものをいち早く解決していくのが正しい。ここ数年で学んだことだ。
事務所のビルの窓から、指定された駅までひとっ飛びする。
道中で一件迷子を捕まえて保護者に引き渡し、目的地についた。そこには背負う翼を剣に変えた男が手を振っている。めちゃくちゃ目立ってんじゃねえか。何してんだあいつ。
「いやあ早くて助かるよ」
「なんで委員長サマ本人が来てんだよ。暇なのか?」
「そうじゃなくてねえ」
ワン、と吠える声が足元からした。見下ろすと持ち運びケージがある。
「まさか」
「そうなんだよ」
護衛対象はこのわんちゃんです、とホークスは言った。
「女の子だよ。名前はコットンキャンディ」
「嘘だろ」
「そうだね。まあ多分ご想像の通りで」
どこぞの要人が個性で姿を変えられたとかいうところが関の山だろう。そう言うことは稀にある。姿を変えられるだとか、ビー玉状に圧縮されて閉じ込められて攫われるだとか。
「犬として扱やいいんか」
「うん。迷子なんかにしないでね」
「何で俺。アニマがいいだろ」
「あのね……、大変言いにくいんだけど、あのー、」
「まどろっこしい」
「金髪の男にしか懐かないっぽくてね」
短い金髪をかき混ぜながらホークスは言う。
「変態?」
「あんましそんなこと言わんでやって」
「チャージズマ! テイルマン! ファントムシーフ! キャンスト! つーか髪ぐらいブリーチしろ!」
「いいじゃない、君のところなら安全は確かだろ。解決数の数を年末に一つ足しとくのも悪くないだろうと思うんだけど」
一年目はすべて自分でやっていたからそれよりはマシだ。見かねた周囲……というかベストジーニストなのだが、流石に無理があると爆豪のことを説き伏せて、手伝いがジーニアスから一人出向してきた。それから今年に至るまでジーニアスの誇る事務の新人が一人、爆豪の事務所を手伝いに十二月始めからやってくる。出向してきた面々の間で、爆豪の事務所が『千尋の谷』と呼ばれていることを知ったのは去年のことだ。去年の担当は事務処理は鬼のように早かったがあまりの疲れでうっかり口が緩んだようで、千尋の谷を越えれば一人前ですからねと自分にぶつぶつ言い聞かせていた。自分のことだかジーニストのことだか聞かなかったので知らないが、獅子に例える気概があるというならプライドが高くて結構なことだと思う。
「ダイナマイト」
「なんだ」
今年の新人は一つ一つの仕事が丁寧だ。悪く言えば時間がかかるのだが、慣れてしまえば問題ないだろう。爆豪の最終チェックで文句のつけようがない段階まで仕上げてくる。一つ一つの手続きについていちいち聞かれた時は今年は苦しいかと思ったものだが、一度聞かせたことは二度と違えない。いつからか声をかけられるのは爆豪の書類の不備があるときだけになった。だから今回もまた爆豪のミスだと思い向き直る。
「ファックスです」
「あ?」
「ダイナマイト宛にファックスです」
爆豪のミスじゃないらしい。コピー用紙が一枚こちらに向けて差し出されている。ファックスっつったかこいつ今?
「どこから」
流石にこの時勢でほとんどペーパーレスになっているというのに、ヒーロー事務所には未だにファックス設置義務がある。事務所によっては俄然現役だという。爆豪が学んだ事務所も雄英も世話になっているサポートアイテム会社も電子メールが主であるからそれほど使わない。それほどは。嫌な予感がしている。
「ヒーロー公安委員会からです」
そう、あそこだけは道楽としか思えない頻度でファックスを使うのだ。『機密ではない連絡だから、お手隙の際に対応してね』等と現公安委員長は笑う。あの野郎、トップヒーローだったのだからこの時期もヒーローに「お手隙の際」がないことは重々承知しているだろう。年のいったヒーローへの忖度だか何だか知らないが、全く腹の立つ話だ。コピー用紙もタダじゃねえんだぞ。
年の瀬の労いを省けば内容はこうだ。護衛任務の依頼。不向きだろうけど先方の希望に合致するヒーローが少ないから大・爆・殺・神ダイナマイトに頼めないか。今年その手の案件少なかったでしょ?
伺うような文章にはなっているが断られるつもりなどそうそうないのだろう。公安案件は断ったら干されるとかそんな仕組みにはなっていないが、情報を回す優先順位に多少関わるのは事実だ。ため息が出た。
「今から行ってくる。こっちはてめーに任せる」
「承知しました」
それ以上に優先順位の高いものがあるわけではない。というかどれも順位としては甲乙つけ難いので目の前にあるものをいち早く解決していくのが正しい。ここ数年で学んだことだ。
事務所のビルの窓から、指定された駅までひとっ飛びする。
道中で一件迷子を捕まえて保護者に引き渡し、目的地についた。そこには背負う翼を剣に変えた男が手を振っている。めちゃくちゃ目立ってんじゃねえか。何してんだあいつ。
「いやあ早くて助かるよ」
「なんで委員長サマ本人が来てんだよ。暇なのか?」
「そうじゃなくてねえ」
ワン、と吠える声が足元からした。見下ろすと持ち運びケージがある。
「まさか」
「そうなんだよ」
護衛対象はこのわんちゃんです、とホークスは言った。
「女の子だよ。名前はコットンキャンディ」
「嘘だろ」
「そうだね。まあ多分ご想像の通りで」
どこぞの要人が個性で姿を変えられたとかいうところが関の山だろう。そう言うことは稀にある。姿を変えられるだとか、ビー玉状に圧縮されて閉じ込められて攫われるだとか。
「犬として扱やいいんか」
「うん。迷子なんかにしないでね」
「何で俺。アニマがいいだろ」
「あのね……、大変言いにくいんだけど、あのー、」
「まどろっこしい」
「金髪の男にしか懐かないっぽくてね」
短い金髪をかき混ぜながらホークスは言う。
「変態?」
「あんましそんなこと言わんでやって」
「チャージズマ! テイルマン! ファントムシーフ! キャンスト! つーか髪ぐらいブリーチしろ!」
「いいじゃない、君のところなら安全は確かだろ。解決数の数を年末に一つ足しとくのも悪くないだろうと思うんだけど」
追記
続かない