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寄宿学校パロ(ジニ爆)

2024/08/17 22:27
仕分け前
前書いたののリベンジ!最初も最初のところだけ

 校舎の裏には死体が埋まっている!
 この学園で囁かれる一つの噂話だ。どう聞いても梶井基次郎の『桜の樹の下には』を読んで思いついたとしか思えないフレーズだが、それが事実であることを爆豪は知っている。旧校舎の裏には死体が埋まっている。爆豪には、その場に佇む黒い影の姿が見える。
 標高の高い、広大な森の中、とでも言うべき場所にこの学園は位置する。中等部と高等部からなる。その中で、独自の文化を持つひとつの生態系がつくられている。爆豪は高等部からの外来種だ。学年に数人はいるからそこまで珍しい存在でもない。全寮制というわけでもないのだが、わざわざ通学を選ぶ理由はない。ほとんどすべての学生が寮で暮らしている。

 隣の席の生徒がどうにもこうにも答えに詰まっていて授業の進行が完全に止まっている。教師はとっとと正解を言うか別のやつに当て直すかすればいいものを。爆豪は退屈のままに窓の外に目をやり、すぐに視線を戻した。ヤモリのような格好で窓を登っていたヒト型の黒い影と、目は合っていない。結局進まない黒板に目をやれば、教師に名前を呼ばれた。答える。やっと次の話に移る。隣が肩の力を抜く気配がする。

 爆豪にはこの世ならざるものが見える。幼少よりそれが当たり前だった。公園には白いふわふわした丸いものが居たし、道には時折黒い影が立っていた。盆には休みの人間に加えて気配の薄い人影たちでそこかしこが混み合うので外出は億劫だ。母親の実家では毎回知らない顔をした小さな子供がカラカラ笑いながら遊びに誘ってきたし、初詣では大抵願ったことに茶々をいれる声が脳内で響くので、次第に願うのでなく自分の予定を宣言するだけになった。
 自分の見える世界が普通だと思っていたから見えていないらしい幼馴染なんかを心底不可解に思っていたのだが、ある日自分の方が普通ではないことに気がついた。当然の日常だったから特に声高に公言することもなく、知らない相手に声をかけるような子供でもなかった。だから、目に見える振る舞いはさほど気付く前と変わっていない。結局爆豪の視界のことを知っているのは両親と件の幼馴染だけだ。
 気がついてからこれは何か問題なのではないかと思い両親に話したところ、母親に笑い飛ばされた。あんたやっぱマジで見えてたんだ、と言い、アタシもちっちゃい頃なんか見えてたらしいんだよね、と続く。
 大人になったら見えなくなったわ、トトロみたいなもんよ、と言うのが母親の談で、爆豪はその答えにいたく不満を覚えた。ついでにそれ以降どうにも気味が悪く感じられてトトロが苦手である。ファンシーでございみたいな顔をしているところも少し嫌だ。納得しないまま過ごしていたが、父親は気にしていたようで、ある日爆豪にお下がりのメガネを渡した。曰く、これをかけていると見えなくなる、と。実際そうなったので爆豪は驚いたし父親を尊敬した。数年後『初心者でもわかる!濫用厳禁 催眠術・自己暗示の本』を書棚で見つけて中身が当時の父親のやり方そっくりだった時は何とも言えない気持ちになったが、それでも今も、メガネをかけると見えなくなる。それは変わらない。普段はかけていない。度が入っているから視力のいい爆豪には煩わしいし、その効果があるメガネは父親のお下がりそれひとつきりだったので、壊したくなかった。
 メガネは今も爆豪の自室にある。
 この学校の寮の自室は一人部屋だ。高等部からの編入生はもう三人いるがそれぞれ別の寮にいる。同室がいたら息苦しくてたまらなかっただろう。

 爆豪と同じ高等部からの編入生たちはまずカリキュラムの洗礼を受ける。高校三年次には受験勉強に舵を切るために、中学時分から前倒しで授業が進められているのだ。そのために編入生には特別補習が放課後行われる。無くても良い。と爆豪は思う。この程度自分で追い付ける。
 しかし他の三人にはそれなりに真面目で、問題を起こさないよう親から厳命されている爆豪と共に毎日律儀に講義を受けている。
「はぁーあ。つっかれたあ」
 ぺちゃりと机に突っ伏して、隣の席ではため息がつかれた。隣席の上鳴は明るい性格をしていて、勉強が苦手だと言って憚らない。この学校に編入できている時点でそれなり以上には勉強ができるやつだというのに。今日も、質問あんだけど、といってこっちに来ようとするのを左手で散らした。
「なんでえ」
「早く帰りてえから」
「いっつもそれじゃん、てか寮じゃん。寮のおまえの部屋行ってい、……いーやそうな顔!」
 なんだよう、と言葉を続けようとするのをせき止める。
「とっととメシ食って風呂入って寝ンだよ」
「キャー理想的!」

 夕食に間に合うようにするには旧校舎の横を突っ切るのが一番早い。






追記
進まないよお

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