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ペイパームーンに手を伸ばす(ジニ爆)

2024/08/06 19:30
仕分け前
「金がいるんだよな」
 まず始めに言われたことがそれだったので、まさか借金でも抱えているのかと思った。
「そういう個性でもなきゃ、屏風から虎を出すにも金が要る。莫大な」
 おまえが金銭面に困窮するようには思えないが、と問えば、当たり前だろう、と返ってくる。
「でも欲しいもんがあって、俺には諦められないから、金が必要なんだよ」
「幾らだ」
「高額納税者ランキングに入るだけじゃ足りないくらい」
「融資は受けないのか」
「賭けだし、みんなでやってやろうって決めたから」
「それが独立を急ぐ理由か?」
「ああ」
「独立するにも金はかかるが」
「そーなンだよなぁ」
 ダイナマイトにしてははっきりしない様子で、ソファの背にもたれてため息をついた。
「二十年先じゃ、それじゃ遅いんだよ。なるべく早く金が必要」
「貸してくれって話でもないことはわかった。つまりおまえは」
「稼ぎ方教えてくれよ、ベストジーニスト」
「そういうことだね。だがヒーローは出来高制だし、うちは無理はさせないことを望む事務所だ」
「てなるとな。っぱ独立の方が自由がきくよな。めんどくせえがどうせ行く道だし」
 ダイナマイトは少し黙った。
「全部無駄になる可能性だってあるにはあるんだ。でもそれが限りなくゼロに近いって俺は知ってる」
 あのさあ、とダイナマイトは言った。
「これから、ギリギリまで仕事させてくんね。悪いようにはしないから」
「すでに事務方からは心配の悲鳴が上がっているんだが」
「人徳でなだめてくれよ、ベストジーニスト」
「なあひとつ聞かせてくれ、ダイナマイト」
「なんだ」
「おまえがそれだけする価値のあるものが、金で買えるのか?」
 ダイナマイトは答えた。
「金以外の全部はいけそうなんだよ、みんな手を貸してくれてる。あとは元手さえあればたぶんあんただって見たい景色が実現する。賭けには勝つ。……金も一人じゃ無理だから、みんなで出しあうんだ。みんなもそれを見たいから」
 その瞳がいつか見た光を宿しているから、ベストジーニストも少し、乗せられてみたくなってしまった。
「では、独立に関して、最大限の援助はするよ。ヒーローが世話になったヒーローにできる中でのベストを」
「マジで」
「マジだ」
「ありがとうございます」
「おお……」
「礼言ったくらいで感動すんな」
「それで、期待して良いんだな?」
「ああ、いいよ。最高の景色を見せてやる。楽しみにしてろよ」




(そして月にも手が届く)





追記
かっちゃんたちまず誰が発案してどうやって話し合っていったんだろう 最終回嬉しかったなー

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