ジニ爆
いい加減諦めてほしい、というのが正直なところだった。
好意を向けられるのは嫌じゃない。それでも部下は部下で、さらに言えば学生の頃からよく知っている。どうにかなることはない。それをわかっているだろうに向けてくる視線はいつも少しの温度を持っている。
昔はもっと隠そうとしていたはずだ。いつからこうなってしまったのか。微笑ましいななどと考えていた過去の自分がもはや憎い。何をやるにも頂点を目指すのと同じ熱心さを眼差しの中に見出だして、袴田はため息をついた。
「そんな目で見られてもね」
「どんな目だ」
「言っていいのか?」
爆豪はふいと顎をあげてみせた。視線は鋭い。退いたら敗けだとでも思っている顔だ。
「言えよ」
いっそ嫌われる方が早い、とすら思う。
「……例えば、」
こちらを向く視線を避ける。少し椅子を引いて言う。
「君が欲しいだろう言葉を言うことは出来るよ。君のモチベーションを保つためなら、私は、なんとでも」
なるべく注意深く、落胆を誘うような言葉を。
「ただ、それでは嘘をつくことになってしまう」
顔を背けて部屋を出るのが関の山だろう、と予想を立てていたものだから、少し反応が遅れた。そして、爆豪に対して少しの遅れは決定的だった。
ガン、と音を立てて爆豪がデスクを乗り越え、一瞬で袴田に迫った。肘置きを蹴るようにして足を掛ける。
「足を降ろ――」
「じゃあ嘘ついて言えよ」
目を合わせてしまったのが運の尽きだ。瞳の赤は明るさを増して、爆豪の内包する嵐の音が聞こえるようだった。
「俺の目を見て『おまえが一番』って」
袴田は察した。
しくじった。
敬遠失敗ホームラン打点一点あとがき・メモ
好意を向けられるのは嫌じゃない。それでも部下は部下で、さらに言えば学生の頃からよく知っている。どうにかなることはない。それをわかっているだろうに向けてくる視線はいつも少しの温度を持っている。
昔はもっと隠そうとしていたはずだ。いつからこうなってしまったのか。微笑ましいななどと考えていた過去の自分がもはや憎い。何をやるにも頂点を目指すのと同じ熱心さを眼差しの中に見出だして、袴田はため息をついた。
「そんな目で見られてもね」
「どんな目だ」
「言っていいのか?」
爆豪はふいと顎をあげてみせた。視線は鋭い。退いたら敗けだとでも思っている顔だ。
「言えよ」
いっそ嫌われる方が早い、とすら思う。
「……例えば、」
こちらを向く視線を避ける。少し椅子を引いて言う。
「君が欲しいだろう言葉を言うことは出来るよ。君のモチベーションを保つためなら、私は、なんとでも」
なるべく注意深く、落胆を誘うような言葉を。
「ただ、それでは嘘をつくことになってしまう」
顔を背けて部屋を出るのが関の山だろう、と予想を立てていたものだから、少し反応が遅れた。そして、爆豪に対して少しの遅れは決定的だった。
ガン、と音を立てて爆豪がデスクを乗り越え、一瞬で袴田に迫った。肘置きを蹴るようにして足を掛ける。
「足を降ろ――」
「じゃあ嘘ついて言えよ」
目を合わせてしまったのが運の尽きだ。瞳の赤は明るさを増して、爆豪の内包する嵐の音が聞こえるようだった。
「俺の目を見て『おまえが一番』って」
袴田は察した。
しくじった。
敬遠失敗ホームラン打点一点あとがき・メモ
1/1ページ