短文ノック
爆豪はもうずっとベストジーニストというか袴田維のことが好きだった。
晴れて成人してしばらくの時間が経った。もうこの気持ちから解放されたくて告白をしたらお付き合いというのをすることになった。そういうこともあるのか。
そしてそれから初めて二人きりで会う。場所は袴田の家だ。
「邪魔する」
「ようこそ」
高そうな家財道具に囲まれている。案内されたリビングまでの間の廊下は長かった。そして大量にドアがある。廊下も曲がった先がある。
「それで今日は何をする?」
付き合っている二人がすることといえばまあ色々あるだろうが、それ以前に爆豪勝己と袴田維の二人でやることというのがなんだかしっくりこない。それでも何もしないのも変に思う。
試しに手を掴んでみた。袴田のすらりとした指は長く、撫でると少し乾燥している。初めて触れるからまず体温があるのに驚いた。何もかも新鮮な気がする。
「あんたこれで糸張って指切れねえの」
「皮が厚いんだ。鍛錬の結果として。それに操作できるんだからわざわざ指を絞めすぎたりすることもない」
それもそうか。一通り眺めて、少し逡巡すると、逆に掴まれる。違う。掴まれるじゃなくて、手を握られている。
少し手が熱くなる。じわと汗をかきそうな感覚があって嫌だった。この年になってこんなことで! ある程度手の汗のコントロールができる性質で助かった。しばらく二人ともそのままにしていた。
これでいいのか、と思って注視していた手から視線を移す。袴田を見上げると少し微笑んで首を傾げてみせた。気がついた。袴田はどうも爆豪に主導権を渡してどう出るか楽しんでいる節がある。
えいと手を握り返して、それから相手の指の間に指を滑り込ませる。あれだ。恋人繋ぎというやつだ。袴田は少し笑った。すり、と指の付け根を撫でられる。鳥肌が立った。なんだかこれは、なんか、あれじゃないか?
「変態……」
「嫌だったか?」
「嫌っつうかなんか、なんかさあ、いいのか?」
「それは私もずっと考えている」
「ちょっと良くない気ぃしねえ?」
「する。すごく」
「するんだよな……」
二人して考え込む羽目になった。その間も手は繋いだままだ。時折袴田の指が撫でてきて、その度にビクつきそうになるのを気合いで抑えている。
「でも俺たち付き合ってんのか」
「君は『そういう』意味で私のことが好きだって言ったな」
「それであんたはそれに応えた」
双方成人済み。責任能力あり。爆豪は自分の意思が自分のものであることを長い時間をかけて確かめた。好きだった。どうしても。何度改めて考えてみても。ずっとそれが後ろめたかった。
でも今ここにいるふたりは付き合っているらしい。急に何か実感のようなものが落ちてくる。爆豪は言った。
「じゃあするか、セックス」
「……飛ばし過ぎだ。ムードの作り方って知らないか?」
「誰にも教わってねえんでね」
「それじゃあ私が教えてあげよう」
そういうわけで、ふたりは恋人である。
晴れて成人してしばらくの時間が経った。もうこの気持ちから解放されたくて告白をしたらお付き合いというのをすることになった。そういうこともあるのか。
そしてそれから初めて二人きりで会う。場所は袴田の家だ。
「邪魔する」
「ようこそ」
高そうな家財道具に囲まれている。案内されたリビングまでの間の廊下は長かった。そして大量にドアがある。廊下も曲がった先がある。
「それで今日は何をする?」
付き合っている二人がすることといえばまあ色々あるだろうが、それ以前に爆豪勝己と袴田維の二人でやることというのがなんだかしっくりこない。それでも何もしないのも変に思う。
試しに手を掴んでみた。袴田のすらりとした指は長く、撫でると少し乾燥している。初めて触れるからまず体温があるのに驚いた。何もかも新鮮な気がする。
「あんたこれで糸張って指切れねえの」
「皮が厚いんだ。鍛錬の結果として。それに操作できるんだからわざわざ指を絞めすぎたりすることもない」
それもそうか。一通り眺めて、少し逡巡すると、逆に掴まれる。違う。掴まれるじゃなくて、手を握られている。
少し手が熱くなる。じわと汗をかきそうな感覚があって嫌だった。この年になってこんなことで! ある程度手の汗のコントロールができる性質で助かった。しばらく二人ともそのままにしていた。
これでいいのか、と思って注視していた手から視線を移す。袴田を見上げると少し微笑んで首を傾げてみせた。気がついた。袴田はどうも爆豪に主導権を渡してどう出るか楽しんでいる節がある。
えいと手を握り返して、それから相手の指の間に指を滑り込ませる。あれだ。恋人繋ぎというやつだ。袴田は少し笑った。すり、と指の付け根を撫でられる。鳥肌が立った。なんだかこれは、なんか、あれじゃないか?
「変態……」
「嫌だったか?」
「嫌っつうかなんか、なんかさあ、いいのか?」
「それは私もずっと考えている」
「ちょっと良くない気ぃしねえ?」
「する。すごく」
「するんだよな……」
二人して考え込む羽目になった。その間も手は繋いだままだ。時折袴田の指が撫でてきて、その度にビクつきそうになるのを気合いで抑えている。
「でも俺たち付き合ってんのか」
「君は『そういう』意味で私のことが好きだって言ったな」
「それであんたはそれに応えた」
双方成人済み。責任能力あり。爆豪は自分の意思が自分のものであることを長い時間をかけて確かめた。好きだった。どうしても。何度改めて考えてみても。ずっとそれが後ろめたかった。
でも今ここにいるふたりは付き合っているらしい。急に何か実感のようなものが落ちてくる。爆豪は言った。
「じゃあするか、セックス」
「……飛ばし過ぎだ。ムードの作り方って知らないか?」
「誰にも教わってねえんでね」
「それじゃあ私が教えてあげよう」
そういうわけで、ふたりは恋人である。
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