短文ノック
ここいらはビルが多いから、あれができると思った。瀬呂の好きなあのアメリカのヒーローの真似事。ベストジーニストの個性はそれが可能なようにも思えた。そう思って観察していた。
「最近どうにも視線が熱烈だな」
「やっと気がついたかよ」
「おっと。……その返しは予想していなかった」
日中いちヒーローとそのサイドキックとして二人で顔を合わせているわけだと言うのに、改めて夜に会うとベストジーニスト、というか袴田の雰囲気が柔らかいものだからいつもちょっとこそばゆい。爆豪だって昼と夜で切り替えているないはずだが、まだ少し昼の感覚を引きずっているのかもしれない。二人の関係はどこにも発表していないし、そうするべきだとも思っていない。でも事務所以外の人間にもバレているんだろうなと思う。それかこの間飲んだ瀬呂やなんかの感が良すぎるかだ。
「あんたの繊維で紐作ってさ、何キロくらいまでなら重さ支えられる?」
「個性の話だと……」
一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに嬉々として喋りだした。個性を使ってヒーロー活動をしている人間だ。多かれ少なかれ自分の個性には愛着がある。「ファイバーマスター」なんて仰々しい名前をつけているんだから当然この男も自分の個性がとても気に入っているクチだろう。ちなみに爆豪がどうかなんて話は言うまでもない。
一通り概算を出して、最後に付け加えたのは「まあ当然量と素材によるわけだが」と言う言葉だった。そりゃあそうだ。
「蜘蛛の糸なら」
「ふむ。素材として優れているという話は私も知っている。十分な量が確保できれば余程の強度になるだろうね」
その質問で爆豪が何をイメージして喋っていたかは通じてしまったらしい。
「妬くぞ」
「はー? じゃあオールマイトにも嫉妬しろよ」
「実を言うとね、少し羨ましくは思っているよ。今の君を形作った大事な人だから色々言うのはあまりに大人気ないと思って。一方的に強く感謝の気持ちがあると言うのもあるし」
今の自分を形作ったと言うのなら袴田だってそうだ。そう言おうかと思って、気恥ずかしくてすぐに口が動かなかった。
「でも『彼』にできることなら私にもできるからな」
袴田がそういうと急に体が浮かされた。いつの間にか部屋中に繊維が張り巡らせられている。
「は? ちょっ……、なあ! おい!」
視界の上下が反転して、天井のライトに少し目が眩む。見上げているんだか見下ろしているんだかわからなくなったところで、袴田の顔が近づいてきて、唇にゆっくりささやかに触れた。逆から見ると現実味のない整った顔をしているものだなと思った。
床の上にゆっくり降ろされる。
「あんたが逆さになる方だろ……」
「天井の照明蹴ってしまったらまずいと思って」
「人を小せえみたく扱うな」
悪かったよ、と袴田はあまり悪びれずに頷いた。
「いつか『スイング』してやってもいいぞ」
「いーわ」できることがわかっただけでなんだかもうお腹いっぱいだ。多分その光景において爆豪は揺れでブレないよう袴田に括り付けられている気もするし、
「俺があんた抱えて飛ぶほうがたぶん早いし」
「それはすごく興味がある」
袴田は普段鋭く相手を見る目をきらきらと光らせて言った。
「君が猛スピードで移動する時、君の目にどんなふうに世界が見えているのか、ずっと気になっていたんだ」
わくわくした調子で喋るから、なんだか嬉しくなってしまって、いつか本当にやってやろうと思った。
「最近どうにも視線が熱烈だな」
「やっと気がついたかよ」
「おっと。……その返しは予想していなかった」
日中いちヒーローとそのサイドキックとして二人で顔を合わせているわけだと言うのに、改めて夜に会うとベストジーニスト、というか袴田の雰囲気が柔らかいものだからいつもちょっとこそばゆい。爆豪だって昼と夜で切り替えているないはずだが、まだ少し昼の感覚を引きずっているのかもしれない。二人の関係はどこにも発表していないし、そうするべきだとも思っていない。でも事務所以外の人間にもバレているんだろうなと思う。それかこの間飲んだ瀬呂やなんかの感が良すぎるかだ。
「あんたの繊維で紐作ってさ、何キロくらいまでなら重さ支えられる?」
「個性の話だと……」
一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに嬉々として喋りだした。個性を使ってヒーロー活動をしている人間だ。多かれ少なかれ自分の個性には愛着がある。「ファイバーマスター」なんて仰々しい名前をつけているんだから当然この男も自分の個性がとても気に入っているクチだろう。ちなみに爆豪がどうかなんて話は言うまでもない。
一通り概算を出して、最後に付け加えたのは「まあ当然量と素材によるわけだが」と言う言葉だった。そりゃあそうだ。
「蜘蛛の糸なら」
「ふむ。素材として優れているという話は私も知っている。十分な量が確保できれば余程の強度になるだろうね」
その質問で爆豪が何をイメージして喋っていたかは通じてしまったらしい。
「妬くぞ」
「はー? じゃあオールマイトにも嫉妬しろよ」
「実を言うとね、少し羨ましくは思っているよ。今の君を形作った大事な人だから色々言うのはあまりに大人気ないと思って。一方的に強く感謝の気持ちがあると言うのもあるし」
今の自分を形作ったと言うのなら袴田だってそうだ。そう言おうかと思って、気恥ずかしくてすぐに口が動かなかった。
「でも『彼』にできることなら私にもできるからな」
袴田がそういうと急に体が浮かされた。いつの間にか部屋中に繊維が張り巡らせられている。
「は? ちょっ……、なあ! おい!」
視界の上下が反転して、天井のライトに少し目が眩む。見上げているんだか見下ろしているんだかわからなくなったところで、袴田の顔が近づいてきて、唇にゆっくりささやかに触れた。逆から見ると現実味のない整った顔をしているものだなと思った。
床の上にゆっくり降ろされる。
「あんたが逆さになる方だろ……」
「天井の照明蹴ってしまったらまずいと思って」
「人を小せえみたく扱うな」
悪かったよ、と袴田はあまり悪びれずに頷いた。
「いつか『スイング』してやってもいいぞ」
「いーわ」できることがわかっただけでなんだかもうお腹いっぱいだ。多分その光景において爆豪は揺れでブレないよう袴田に括り付けられている気もするし、
「俺があんた抱えて飛ぶほうがたぶん早いし」
「それはすごく興味がある」
袴田は普段鋭く相手を見る目をきらきらと光らせて言った。
「君が猛スピードで移動する時、君の目にどんなふうに世界が見えているのか、ずっと気になっていたんだ」
わくわくした調子で喋るから、なんだか嬉しくなってしまって、いつか本当にやってやろうと思った。