短文ノック
かっちゃんてベストジーニストのこと好きなんだ。
そう気がついたので、ノートに書きました。そのことを。
くれぐれも誤解のないように強く言っておきたいんだけど、僕のヒーロー分析ノートはヒーロー活動に関することだけをまとめたノートで、個人的なことは自分の分しか書いてない。どんな感情の時個性の制御が効かなくなりました、みたいな自分のことは書いた。でも、誰々が誰々を好きとか、書いたことない。これまでは。だってプライベートじゃないか。
それでもヒーローノートのかっちゃんの章にそれを書き足してしまったのは、あまりにも衝撃だったからだし、なんていうか、なんだろう、聞かれたら絶対かっちゃん怒るんだけど、幼馴染だからってちょっとした甘えみたいなものなのかも。かっちゃんは絶対幼馴染だからってプライベートに踏み込まれるのを許してくれないけど。というか僕だけ特筆して締め出されているような気がしないでもないけど。
でもかっちゃんが人を好きになるっていうのが結構……びっくりじゃない? そうでもないかな? 僕はかっちゃんにその手の情緒があると思ってなかった。なんだか置いてかれた気分なんだけど、かっちゃんが僕を無視して勝手にズンズン進んでいくのは今に始まったことじゃないというのはまあ確かにそうだ。
その日は寒い日だった。かっちゃんや常闇くんはインターンに行っていた。寮内では梅雨ちゃんが冬眠しそうになってて部屋はポカポカ温められていた。ちょっと暑く感じるくらいで、僕は走りに出た。残り火がなくなっても筋肉がなくなるわけじゃないし、鍛える習慣はそのままにしといた方がいいぞ、と言うのが僕の残り火のことを知る人それぞれから言ってもらったアドバイスで、だから鍛えてる。それもあるし、なんか頑張ってるぞーって気分になるからトレーニングは好きだ。頑張れるのって、嬉しい。
校門の方までやってくると、スマートでかつ厳つい車が入ってくる所だった。ベストジーニストの車だ。助手席からかっちゃんが降りてきた。二言三言何か言葉を交わした後に、車はスムーズにUターンして帰って行った。かっちゃんはその車が去っていくのを見えなくなるまで眺めていた。それで気がついてしまった。
かっちゃんてベストジーニストのこと好きなんだ。
ノートに書いてしまったし、かっちゃんのインターン前後でなんか変わったことないかってちょっと観察していたんだけど、(普段とあまり変わったことをしたつもりはないけど、なぜかかっちゃんは観察されているのに気がついて気持ち悪ぃなと僕に怒った)かっちゃんに特別変化はなかった。テンションもいつもと変わらなく見える。リハビリも順調らしい。さすがだ。
まあかっちゃんのことは僕には結構難しいのでわかったようなことは言えないんだけど、かっちゃんは恋をしてもかっちゃんだ。なんだか安心した。安心すると下世話な興味が湧いてきたんだけど、あいにく僕らは気安く恋バナをするような幼馴染ではないのだった。
かっちゃんてベストジーニストのどんなとこが好きなんだろ。
一度大きな会議があって、先の大戦では恐れ多くも作戦の中心人物だったので僕も呼び出された。その場には元が付くひともいるけどトップヒーロー勢揃いで壮観だった。ホークスが会議の進行をしていく。会議で出てくる議題はそれなりに痛みを伴うものも多かった。どうにか終わって、すこしため息が溢れた。
「お疲れ様。デク」
声を掛けてきたのはベストジーニストだった。かっちゃんの好きなひとだ。僕はなんだか憧れのヒーローに初めて会った子供みたいな挙動不審になってしまった。だってさあ、かっちゃんの……。
「おひゅかれさまです」
「? 何か緊張をしている?」
「大丈夫! です! ベストジーニスト、この前も活躍のニュース見ました。咄嗟にショーウィンドウのセーターを使って意表をつくところなんてもう」
「ありがとう。君がそういうやつだってことをこれまで知れなかったのが惜しいな。これから知っていけるか」
僕は多分残り火が保たないのでプロヒーローにならないです、って言う話はあんまりするもんじゃないと思ってちょっと困った。悲しそうな顔をさせてしまうのが嫌だったのだ。すこし黙った僕に、ベストジーニストは共通の話題を振ってきた。
「君の幼馴染の矯正にはなかなか苦戦している」
「かっちゃんの……、偉業だと思います。取り組みの時点で」
ベストジーニストはちょっと笑った。
「あれで可愛げはあるんだがな」
僕は思った。いや、ノートには書かない。書かないよ。勘違いの可能性だってすっごくあるわけだし。僕の判断なんて当てにならない。特にこの手の話題においては。わかってる。肝に銘じている。かっちゃんについてはちょっとした例外。
いや、でも、これは。やっぱり気のせいかも知れないんだけど……、かっちゃん上鳴くんが言うところの『ワンチャン』あるんじゃない!? 当然だけど本人には言えない! 僕らはそういう幼馴染なので!
そう気がついたので、ノートに書きました。そのことを。
くれぐれも誤解のないように強く言っておきたいんだけど、僕のヒーロー分析ノートはヒーロー活動に関することだけをまとめたノートで、個人的なことは自分の分しか書いてない。どんな感情の時個性の制御が効かなくなりました、みたいな自分のことは書いた。でも、誰々が誰々を好きとか、書いたことない。これまでは。だってプライベートじゃないか。
それでもヒーローノートのかっちゃんの章にそれを書き足してしまったのは、あまりにも衝撃だったからだし、なんていうか、なんだろう、聞かれたら絶対かっちゃん怒るんだけど、幼馴染だからってちょっとした甘えみたいなものなのかも。かっちゃんは絶対幼馴染だからってプライベートに踏み込まれるのを許してくれないけど。というか僕だけ特筆して締め出されているような気がしないでもないけど。
でもかっちゃんが人を好きになるっていうのが結構……びっくりじゃない? そうでもないかな? 僕はかっちゃんにその手の情緒があると思ってなかった。なんだか置いてかれた気分なんだけど、かっちゃんが僕を無視して勝手にズンズン進んでいくのは今に始まったことじゃないというのはまあ確かにそうだ。
その日は寒い日だった。かっちゃんや常闇くんはインターンに行っていた。寮内では梅雨ちゃんが冬眠しそうになってて部屋はポカポカ温められていた。ちょっと暑く感じるくらいで、僕は走りに出た。残り火がなくなっても筋肉がなくなるわけじゃないし、鍛える習慣はそのままにしといた方がいいぞ、と言うのが僕の残り火のことを知る人それぞれから言ってもらったアドバイスで、だから鍛えてる。それもあるし、なんか頑張ってるぞーって気分になるからトレーニングは好きだ。頑張れるのって、嬉しい。
校門の方までやってくると、スマートでかつ厳つい車が入ってくる所だった。ベストジーニストの車だ。助手席からかっちゃんが降りてきた。二言三言何か言葉を交わした後に、車はスムーズにUターンして帰って行った。かっちゃんはその車が去っていくのを見えなくなるまで眺めていた。それで気がついてしまった。
かっちゃんてベストジーニストのこと好きなんだ。
ノートに書いてしまったし、かっちゃんのインターン前後でなんか変わったことないかってちょっと観察していたんだけど、(普段とあまり変わったことをしたつもりはないけど、なぜかかっちゃんは観察されているのに気がついて気持ち悪ぃなと僕に怒った)かっちゃんに特別変化はなかった。テンションもいつもと変わらなく見える。リハビリも順調らしい。さすがだ。
まあかっちゃんのことは僕には結構難しいのでわかったようなことは言えないんだけど、かっちゃんは恋をしてもかっちゃんだ。なんだか安心した。安心すると下世話な興味が湧いてきたんだけど、あいにく僕らは気安く恋バナをするような幼馴染ではないのだった。
かっちゃんてベストジーニストのどんなとこが好きなんだろ。
一度大きな会議があって、先の大戦では恐れ多くも作戦の中心人物だったので僕も呼び出された。その場には元が付くひともいるけどトップヒーロー勢揃いで壮観だった。ホークスが会議の進行をしていく。会議で出てくる議題はそれなりに痛みを伴うものも多かった。どうにか終わって、すこしため息が溢れた。
「お疲れ様。デク」
声を掛けてきたのはベストジーニストだった。かっちゃんの好きなひとだ。僕はなんだか憧れのヒーローに初めて会った子供みたいな挙動不審になってしまった。だってさあ、かっちゃんの……。
「おひゅかれさまです」
「? 何か緊張をしている?」
「大丈夫! です! ベストジーニスト、この前も活躍のニュース見ました。咄嗟にショーウィンドウのセーターを使って意表をつくところなんてもう」
「ありがとう。君がそういうやつだってことをこれまで知れなかったのが惜しいな。これから知っていけるか」
僕は多分残り火が保たないのでプロヒーローにならないです、って言う話はあんまりするもんじゃないと思ってちょっと困った。悲しそうな顔をさせてしまうのが嫌だったのだ。すこし黙った僕に、ベストジーニストは共通の話題を振ってきた。
「君の幼馴染の矯正にはなかなか苦戦している」
「かっちゃんの……、偉業だと思います。取り組みの時点で」
ベストジーニストはちょっと笑った。
「あれで可愛げはあるんだがな」
僕は思った。いや、ノートには書かない。書かないよ。勘違いの可能性だってすっごくあるわけだし。僕の判断なんて当てにならない。特にこの手の話題においては。わかってる。肝に銘じている。かっちゃんについてはちょっとした例外。
いや、でも、これは。やっぱり気のせいかも知れないんだけど……、かっちゃん上鳴くんが言うところの『ワンチャン』あるんじゃない!? 当然だけど本人には言えない! 僕らはそういう幼馴染なので!