短文ノック
いかに実践的なインターンといえど学生にさせられることは限られている。インターン生が夜半までのミッションに関わるなら雄英に許可を取る必要がある。だからそろそろ帰らせなければ、と思い作業を切り上げさせるタイミングを伺っていた。ぐうと爆豪が伸びをしたのを見て声をかける。
「もう時間だ。帰り支度をしてくれ」
「……す」
「返事はシュア」
「…………シュア」
こう言わせることができるようになるまで長かった。本当に。隣にいたサイドキックと頷きあう。爆豪は嫌そうな顔をする。達成感でじんとしていると、視界の端でおもむろに爆豪が窓のブラインドを上げた。
「どうした。有事か?」
「いや。今日中秋の名月だろ。月見えるかと思ったけど」
袴田も窓に近づいて覗き込む。周りのビル群がまだ明るい。月は見えない。それにしても意外だった。
「おまえは案外時候のイベントを気にするんだな」
爆豪は顔を顰めて見せる。
「満月の時には変態が増えるっつったのあんただろうが」
「断じてそんな言い方はしていないはずだが」
何故だかわからないがベストジーニストに露出のアイデアの方向性で挑んでくる(挑んでくる、という言い方もなんだが、大体そのような表情をしているのだ)敵は満月になると増えるし元気になる気がする、と言う話を確かに何の気なしにした覚えはあるが、学生に聞かせるべき話ではなかったようだ。情緒的な面もあるんだな、と言う関心が一気に露出敵のイメージに塗り替えられてしまった。なかなか最悪だ。
休憩どうぞ、と言われたのを良いことにイメージを塗り替え直そうと窓を一つひとつブラインドを上げては月が見えるか確かめる。たしかにいつもより空が明るい気がする。爆豪は袴田が月を探すのに着いてきた。
「月が好きか?」
「好きも嫌いもねえよ。そこにあるだけ。月が明るけりゃヒーローは忙しくなる」
「その通りだが。団子でも用意しておけば良かったな」
来年はそうしようか、と頭の片隅に留めておく。窓からは月は見つけられない。それを察して帰ろうとする爆豪を手招きした。
「んだよ」
「屋上へ行こう」
「そこまでして?」
「良いだろ。季節のイベント好きなんだ」
エレベーター向かおうとしたら当たり前のような顔で爆豪が外階段のドアを開けたので着いていくことにした。カンカン、カン。足音が響く。夜風にはまだ温度がある。暗い中に爆豪の輪郭が溶け込んで見える。紙原もそうだが気配を消す方が向いていそうだ。
屋上についてあたり一面ぐるっと見渡すと、ようやく月が見つかった。なぜ分からなかったのか不思議なくらい眩しく光っている。
「見事だ」
あたりにはまだ煌々と明るいビルが立ち並んでいて、それでも月は大きく、はっきりと明るかった。ビルの中の市民たちは気がついているだろうか。気がついているといい。すこしでも月が目に入るといい。自分の守る街のことを考えた。どれだけの人が月を見る余裕があるだろうか。
ふうと意識を近場に戻して、隣を見ると爆豪がすこし目を細めて月を眺めていた。路上のざわめきが遠く聞こえる。爆豪の頬がすこし白く光を反射していた。睫毛が震えるときらきらと光が散る。すぐに爆豪は見られていることに気がついて、袴田の方を向いた。
「何?」
「おまえの髪の色が月に似ていると思って。綺麗だ」
それまで爆豪は静かな顔をしていたと言うのに眉根を寄せてしまった。
「『月が綺麗ですね』? それ出典不明らしいぞ」
「まさか。もし口説くならもっと、自分の言葉でしゃべるさ」
「ジーパン言葉で? わかんなそ」
口角をすこし上げた爆豪の輪郭は月の光で薄く光っていて、ああ、やっぱり、綺麗だ。
「もう時間だ。帰り支度をしてくれ」
「……す」
「返事はシュア」
「…………シュア」
こう言わせることができるようになるまで長かった。本当に。隣にいたサイドキックと頷きあう。爆豪は嫌そうな顔をする。達成感でじんとしていると、視界の端でおもむろに爆豪が窓のブラインドを上げた。
「どうした。有事か?」
「いや。今日中秋の名月だろ。月見えるかと思ったけど」
袴田も窓に近づいて覗き込む。周りのビル群がまだ明るい。月は見えない。それにしても意外だった。
「おまえは案外時候のイベントを気にするんだな」
爆豪は顔を顰めて見せる。
「満月の時には変態が増えるっつったのあんただろうが」
「断じてそんな言い方はしていないはずだが」
何故だかわからないがベストジーニストに露出のアイデアの方向性で挑んでくる(挑んでくる、という言い方もなんだが、大体そのような表情をしているのだ)敵は満月になると増えるし元気になる気がする、と言う話を確かに何の気なしにした覚えはあるが、学生に聞かせるべき話ではなかったようだ。情緒的な面もあるんだな、と言う関心が一気に露出敵のイメージに塗り替えられてしまった。なかなか最悪だ。
休憩どうぞ、と言われたのを良いことにイメージを塗り替え直そうと窓を一つひとつブラインドを上げては月が見えるか確かめる。たしかにいつもより空が明るい気がする。爆豪は袴田が月を探すのに着いてきた。
「月が好きか?」
「好きも嫌いもねえよ。そこにあるだけ。月が明るけりゃヒーローは忙しくなる」
「その通りだが。団子でも用意しておけば良かったな」
来年はそうしようか、と頭の片隅に留めておく。窓からは月は見つけられない。それを察して帰ろうとする爆豪を手招きした。
「んだよ」
「屋上へ行こう」
「そこまでして?」
「良いだろ。季節のイベント好きなんだ」
エレベーター向かおうとしたら当たり前のような顔で爆豪が外階段のドアを開けたので着いていくことにした。カンカン、カン。足音が響く。夜風にはまだ温度がある。暗い中に爆豪の輪郭が溶け込んで見える。紙原もそうだが気配を消す方が向いていそうだ。
屋上についてあたり一面ぐるっと見渡すと、ようやく月が見つかった。なぜ分からなかったのか不思議なくらい眩しく光っている。
「見事だ」
あたりにはまだ煌々と明るいビルが立ち並んでいて、それでも月は大きく、はっきりと明るかった。ビルの中の市民たちは気がついているだろうか。気がついているといい。すこしでも月が目に入るといい。自分の守る街のことを考えた。どれだけの人が月を見る余裕があるだろうか。
ふうと意識を近場に戻して、隣を見ると爆豪がすこし目を細めて月を眺めていた。路上のざわめきが遠く聞こえる。爆豪の頬がすこし白く光を反射していた。睫毛が震えるときらきらと光が散る。すぐに爆豪は見られていることに気がついて、袴田の方を向いた。
「何?」
「おまえの髪の色が月に似ていると思って。綺麗だ」
それまで爆豪は静かな顔をしていたと言うのに眉根を寄せてしまった。
「『月が綺麗ですね』? それ出典不明らしいぞ」
「まさか。もし口説くならもっと、自分の言葉でしゃべるさ」
「ジーパン言葉で? わかんなそ」
口角をすこし上げた爆豪の輪郭は月の光で薄く光っていて、ああ、やっぱり、綺麗だ。