短文ノック
吾輩はヒーローである。名前はある。考えに考えてつけたとっておきのヒーローネームがある。本題に関係ないので特に名乗らない。あと匿名性の担保のため。吾輩っていう一人称はキャラ付けだ。そういうのも時には必要なの。人気? 聞くなよな。地元じゃ愛されてるよ。そんな感じ。悪くはない。この前さ、デクに認知されててテンションあがっちゃったぜ。いくつになっても嬉しいもんだよな。
本題っていうのは吾輩が目撃してしまった二人のことだ、ベストジーニストと大・爆・殺・神ダイナマイト。トップヒーローも同業ならそれなりにお目にかかる機会はある。業務連絡で言葉を交わすことも。プライベートな話は……、どうだろうな。人によると思う。ダイナマイト相手に個人的な話をするやつっていうのはそうそういないんじゃないかな……。
ヒーローの役割、抑止・避難・撃退。この後ろ二つが一気に必要になることもある。そういう時俺は、やべ、俺って言っちゃった。忘れてくれ。吾輩は、避難の手伝いにあたることが多い。敵の撃退は最短で可能な実力があると判断されるヒーローがあたるものだ。つまり吾輩の実力は……って察さないでくれよな。個性が避難誘導にめちゃくちゃ向いているっていうのもあるんだよ。もちろん、もっと頼れるヒーローにはなりたい。吾輩の町のみんなが安心できるようなさ。
その日も対敵戦闘が行われている間避難誘導をして、避難中市民のみんなが不安にならないように駆け回ったりマジックもどきを披露したりして、安全が確認されるのを待っていた。迅速だったぜ。なんせあのベストジーニストとダイナマイトだ。支持率の差はあるけど、どっちも第一線級の超トップランカーだ。この比較的のどかな吾輩の地元で急に起きた事件だっていうのに、一瞬で現れてカタをつけたんだから。すげえよなあ。吾輩は呑気にもそんな風に考えていました……。
「おい袴田ァ!」
ダイナマイトの大声ってすごい迫力がある。ビビっちゃった市民をゆるーく落ち着かせながら解散してもらう。袴田、ってダイナマイトの知り合いでもいたのかと思ったがあれだな、ベストジーニストの実名だな?
全身黒い服のダイナマイトとデニムコート姿のベストジーニストだから遠目じゃわからなかったけど、吾輩は目が良い。よく見ると私服だ。ダイナマイトはスニーカー履いてるな。
「てめーちょっと戦闘中に身なりを気にしてんじゃねえよ!」
「私が一切気にしなくなったらそれはもう同一性を疑ってほしいんだが」
捕縛された敵を抱えながらこちらに歩いてくる。声は少し潜められたけど聞き取れる。吾輩は耳も良い。ちなみに手先も器用。
「デートだからって加減してんじゃねえだろうな」
「まさか」
おおっと? これ俺、ヴヴン、吾輩が聞いてて良いやつじゃない気がするな。でも二人は敵の引き渡しにこちらに近づいて来る。吾輩がこの地元の管轄のヒーローだ。当然逃げるわけにはいかない。
「ベストを尽くしたに決まっているだろう、これからのおまえとの時間を少しでも長くするために」
はえー……。カッケーな。
「そーかよ。今日の運勢最悪男」
ダイナマイトは塩対応だ。
「ラッキーアイテムは持ってるのにな」
「俺がな! スニーカーくらいあんたも持ってんじゃねーか! てめーで履けよ!」
「せっかくお前が選んでくれた靴だから今日はこれと決めていたんだ」
そーなんだ。あんなこだわりのありそうな二人が、お互いの服装に介入したりするのか。ラブラブじゃん、と思って直視できなくなってきた。
「というわけでこいつを頼んでも良いかい」
ついに吾輩の元へ辿り着いてしまった。聞こえていたことがバレている。直視しないわけにはいかない。引き渡す警察がここに着くのはもう少し時間がかかるということだったから、一度引き受けることにする。
「お二人とも、ご協力ありがとうございました」
ああ、と頷く仕草がなんだか似ていて、本当にデートの途中の二人なんだろうなと思った。すごいものを見ている。デートの行き先に我が町を選んだというのもいい。嬉しい。いい町なんだぜ、吾輩の地元は。
「引き渡しは間違いなく吾輩が引き受けます、良い一日を!」
二人ともよくお似合いです、と付け加えるのも忘れない。吾輩は気も良い。二人は軽く手を上げて小突き合いながら去っていった。二人のヒーローの休日姿を目撃してしまった。ラッキーなこともあるものだ。事件もつつがなく解決したし、これから事後処理だけど、今日の吾輩の一日も、悪くないものになるだろう。
本題っていうのは吾輩が目撃してしまった二人のことだ、ベストジーニストと大・爆・殺・神ダイナマイト。トップヒーローも同業ならそれなりにお目にかかる機会はある。業務連絡で言葉を交わすことも。プライベートな話は……、どうだろうな。人によると思う。ダイナマイト相手に個人的な話をするやつっていうのはそうそういないんじゃないかな……。
ヒーローの役割、抑止・避難・撃退。この後ろ二つが一気に必要になることもある。そういう時俺は、やべ、俺って言っちゃった。忘れてくれ。吾輩は、避難の手伝いにあたることが多い。敵の撃退は最短で可能な実力があると判断されるヒーローがあたるものだ。つまり吾輩の実力は……って察さないでくれよな。個性が避難誘導にめちゃくちゃ向いているっていうのもあるんだよ。もちろん、もっと頼れるヒーローにはなりたい。吾輩の町のみんなが安心できるようなさ。
その日も対敵戦闘が行われている間避難誘導をして、避難中市民のみんなが不安にならないように駆け回ったりマジックもどきを披露したりして、安全が確認されるのを待っていた。迅速だったぜ。なんせあのベストジーニストとダイナマイトだ。支持率の差はあるけど、どっちも第一線級の超トップランカーだ。この比較的のどかな吾輩の地元で急に起きた事件だっていうのに、一瞬で現れてカタをつけたんだから。すげえよなあ。吾輩は呑気にもそんな風に考えていました……。
「おい袴田ァ!」
ダイナマイトの大声ってすごい迫力がある。ビビっちゃった市民をゆるーく落ち着かせながら解散してもらう。袴田、ってダイナマイトの知り合いでもいたのかと思ったがあれだな、ベストジーニストの実名だな?
全身黒い服のダイナマイトとデニムコート姿のベストジーニストだから遠目じゃわからなかったけど、吾輩は目が良い。よく見ると私服だ。ダイナマイトはスニーカー履いてるな。
「てめーちょっと戦闘中に身なりを気にしてんじゃねえよ!」
「私が一切気にしなくなったらそれはもう同一性を疑ってほしいんだが」
捕縛された敵を抱えながらこちらに歩いてくる。声は少し潜められたけど聞き取れる。吾輩は耳も良い。ちなみに手先も器用。
「デートだからって加減してんじゃねえだろうな」
「まさか」
おおっと? これ俺、ヴヴン、吾輩が聞いてて良いやつじゃない気がするな。でも二人は敵の引き渡しにこちらに近づいて来る。吾輩がこの地元の管轄のヒーローだ。当然逃げるわけにはいかない。
「ベストを尽くしたに決まっているだろう、これからのおまえとの時間を少しでも長くするために」
はえー……。カッケーな。
「そーかよ。今日の運勢最悪男」
ダイナマイトは塩対応だ。
「ラッキーアイテムは持ってるのにな」
「俺がな! スニーカーくらいあんたも持ってんじゃねーか! てめーで履けよ!」
「せっかくお前が選んでくれた靴だから今日はこれと決めていたんだ」
そーなんだ。あんなこだわりのありそうな二人が、お互いの服装に介入したりするのか。ラブラブじゃん、と思って直視できなくなってきた。
「というわけでこいつを頼んでも良いかい」
ついに吾輩の元へ辿り着いてしまった。聞こえていたことがバレている。直視しないわけにはいかない。引き渡す警察がここに着くのはもう少し時間がかかるということだったから、一度引き受けることにする。
「お二人とも、ご協力ありがとうございました」
ああ、と頷く仕草がなんだか似ていて、本当にデートの途中の二人なんだろうなと思った。すごいものを見ている。デートの行き先に我が町を選んだというのもいい。嬉しい。いい町なんだぜ、吾輩の地元は。
「引き渡しは間違いなく吾輩が引き受けます、良い一日を!」
二人ともよくお似合いです、と付け加えるのも忘れない。吾輩は気も良い。二人は軽く手を上げて小突き合いながら去っていった。二人のヒーローの休日姿を目撃してしまった。ラッキーなこともあるものだ。事件もつつがなく解決したし、これから事後処理だけど、今日の吾輩の一日も、悪くないものになるだろう。