短文ノック
給湯室の使い方はこの事務所のサイドキックが丁寧に教えてくれていたから、たかがインターン生の爆豪でも迷わなかった。
ケトルがカチと音を立てて湯が沸いたことを知らせてくる。爆豪は茶器があたためてある事を手のひらで触れて確認した。茶葉の入った缶を取り出し、ティースプーンで二杯掬ってポットに入れる。そこに沸かしたての湯を一気に注ぐ。ともすれば雑に思われそうなくらいに勢いよく入った湯が茶葉を散らすのを見てから、タイマーをセットした。
三分。時間稼ぎも残りはカラータイマーが点滅するくらいになってしまった。やかんで湯を沸かすならもう少し時間がかかったかもな、と電化製品の企業努力をなんとなく恨めしく思う。
恋愛感情を告白して応えをもらおうとこの場に来たのに「茶ぁ淹れてくる」と言って逃げたのは爆豪の方だ。自分がコントロール出来ていなくて屈辱的でさえある。
残り一分三十秒。ポモドーロタイマーの名前に恥じないトマトの形をしたキッチンタイマーは容赦無くカウントダウンしていく。思わず睨みつける。時よ止まれと歌ってやろうか。柄じゃないことこの上ない。これだから恋愛感情に気がついた時に嫌だったんだ。
前触れなく、給湯室の戸が開かれた。振り返る。
「まだ紅茶出来てねえぞ!」
タイマーは残り一分。そこにいるのはいつも通りの顔をした告白対象だった。
袴田は戸棚を開けると、誰かの出張土産と思しき小分けの菓子を取り出した。
「茶菓子もあると伝えにきた。そんな毛を逆立てるようにすることないだろう」
「何にもすんなよ」振るんだったら。それとも告白されることに気がついてないのだろうか。そんなことがあるか? 後者裏に呼び出すような時間の作らせ方をしたのだ。気がつくだろう。というか前から気が付かれていたのではないだろうか。決して弄ばれたりはしなかったが、なんとなく、一対一の時お互いの間に線を引くようなコミュニケーションがされている。爆豪が気がつく程度にはそういう雰囲気は隠されていない。
「そうもいかない。大切なインターン生だからね、できる限りのもてなしをしなければ」
ほら、こうだ。思わず唇を噛んだ。タイマーは着々と数字をゼロに近づけている。十五、十四、十三。
「それに私としてもお前が特別大切な相手になってしまったから、なんでもしてあげたくなってしまって困るんだ」
ビリリリリリリ!
「…………は? それってどういう」
「君のことが好きだよ。意識して最近どうにもぎこちなくなってしまうくらい」
鳴り響くタイマーの音が爆豪の脳内でエマージェンシーを叫んでいる。紅茶はこのままだとさぞ濃くなるだろう。
参考:紅茶のいれ方|日本紅茶教会(https://www.tea-a.gr.jp/make_tea/)
ケトルがカチと音を立てて湯が沸いたことを知らせてくる。爆豪は茶器があたためてある事を手のひらで触れて確認した。茶葉の入った缶を取り出し、ティースプーンで二杯掬ってポットに入れる。そこに沸かしたての湯を一気に注ぐ。ともすれば雑に思われそうなくらいに勢いよく入った湯が茶葉を散らすのを見てから、タイマーをセットした。
三分。時間稼ぎも残りはカラータイマーが点滅するくらいになってしまった。やかんで湯を沸かすならもう少し時間がかかったかもな、と電化製品の企業努力をなんとなく恨めしく思う。
恋愛感情を告白して応えをもらおうとこの場に来たのに「茶ぁ淹れてくる」と言って逃げたのは爆豪の方だ。自分がコントロール出来ていなくて屈辱的でさえある。
残り一分三十秒。ポモドーロタイマーの名前に恥じないトマトの形をしたキッチンタイマーは容赦無くカウントダウンしていく。思わず睨みつける。時よ止まれと歌ってやろうか。柄じゃないことこの上ない。これだから恋愛感情に気がついた時に嫌だったんだ。
前触れなく、給湯室の戸が開かれた。振り返る。
「まだ紅茶出来てねえぞ!」
タイマーは残り一分。そこにいるのはいつも通りの顔をした告白対象だった。
袴田は戸棚を開けると、誰かの出張土産と思しき小分けの菓子を取り出した。
「茶菓子もあると伝えにきた。そんな毛を逆立てるようにすることないだろう」
「何にもすんなよ」振るんだったら。それとも告白されることに気がついてないのだろうか。そんなことがあるか? 後者裏に呼び出すような時間の作らせ方をしたのだ。気がつくだろう。というか前から気が付かれていたのではないだろうか。決して弄ばれたりはしなかったが、なんとなく、一対一の時お互いの間に線を引くようなコミュニケーションがされている。爆豪が気がつく程度にはそういう雰囲気は隠されていない。
「そうもいかない。大切なインターン生だからね、できる限りのもてなしをしなければ」
ほら、こうだ。思わず唇を噛んだ。タイマーは着々と数字をゼロに近づけている。十五、十四、十三。
「それに私としてもお前が特別大切な相手になってしまったから、なんでもしてあげたくなってしまって困るんだ」
ビリリリリリリ!
「…………は? それってどういう」
「君のことが好きだよ。意識して最近どうにもぎこちなくなってしまうくらい」
鳴り響くタイマーの音が爆豪の脳内でエマージェンシーを叫んでいる。紅茶はこのままだとさぞ濃くなるだろう。
参考:紅茶のいれ方|日本紅茶教会(https://www.tea-a.gr.jp/make_tea/)