短文ノック
ヒーロースーツ以外の姿を久々に見た。爆豪が袴田の事務所から抜ける形で独立してから二年になる。身にあったスリーピースを見てテーラーのあたりをつけてしまうのはもはや習い性だ。よく似合っている。
新サポートアイテム企業のお披露目会で周りには名士が溢れているというのに爆豪は壁の花に徹している。爆豪とその事務所には熱烈なスポンサーが付いているから売り込みは必要ないのだろう。ではなぜ来たのかと疑問に思う。袴田は完全に付き合いで来たのだが。
「久しぶり」
私服の袴田を見て爆豪は眉根を寄せてみせた。
「うわ。あー、俺があんたのとこから独立してからだから……二年か」
「君がうちの主力の事務員を無理やり引き抜きしてから二年だな」
「まだそれ根に持ってんのか?」
その件に関するぶつかり合いが高じて二年間私事においてほとんど没交渉になっていたというのにこの言い様である。
「君しばらくうちの事務部の中で『アイツ』って呼ばれてたんだぞ」
「知ってるわ」
引き抜かれた当人はいまだにジーニアスと密なやりとりがあるらしい。惜しい人材だったと今でも思うが爆豪の事務所の成功にはかの人が必要不可欠だったろうとも思う。
「サポートアイテムを増やす予定が?」
「いや……なんか癖になっちまってるんだよ、アーマー技術の最先端追うのが。良さそうだったらサイドキックに紹介してやろうとは思って来たんだが」
言葉を止めたと同時に同じ方向を向いた。
「やっぱりそう思うか」
「どうもそうじゃねえの」
このやたらヒーローの少ないパーティー会場に対する違和感は爆豪も感じていたらしい。ただでさえこの手の場を面倒がる男だったから、こうなれば壇上に興味は向くべくもない。
情報収集だ。退屈そうにしていた瞳がきらと光るのを見て、呆れるのと同時に少し笑いが込み上げてきた。
「んじゃこっからが『本当のパーティー』だな」
「君『タイタニック』なんて」
「見てるわそれくらい」
意外だ、と呟けば小さな威嚇が返ってきた。
「それでは仲直りをしよう」
「別に仲違えてたわけでもないだろ。同じ仕事やってんだ、目指すところも変わんねえだろ」
ほお、と頷く。
「私はこの二年寂しかったんだがな」
「は、ぁ?」
ギョッとした顔でこちらを向くのによそゆきの笑顔を返すとうんざりしたような顔になった。
「散々チームアップもしたってのに?」
「『爆豪』、久しぶり」
あー、と声に出しながら爆豪は後頭部を掻いた。
「わぁったよ。行くぞジーパン野郎」
「うん、行こう」
結局やることはヒーロー活動の範疇だが、足を踏み出すには少し新鮮な気持ちがある。懐かしくもある感覚だ。不謹慎にも少しワクワクしながら連れ立ってドアに向かった。
新サポートアイテム企業のお披露目会で周りには名士が溢れているというのに爆豪は壁の花に徹している。爆豪とその事務所には熱烈なスポンサーが付いているから売り込みは必要ないのだろう。ではなぜ来たのかと疑問に思う。袴田は完全に付き合いで来たのだが。
「久しぶり」
私服の袴田を見て爆豪は眉根を寄せてみせた。
「うわ。あー、俺があんたのとこから独立してからだから……二年か」
「君がうちの主力の事務員を無理やり引き抜きしてから二年だな」
「まだそれ根に持ってんのか?」
その件に関するぶつかり合いが高じて二年間私事においてほとんど没交渉になっていたというのにこの言い様である。
「君しばらくうちの事務部の中で『アイツ』って呼ばれてたんだぞ」
「知ってるわ」
引き抜かれた当人はいまだにジーニアスと密なやりとりがあるらしい。惜しい人材だったと今でも思うが爆豪の事務所の成功にはかの人が必要不可欠だったろうとも思う。
「サポートアイテムを増やす予定が?」
「いや……なんか癖になっちまってるんだよ、アーマー技術の最先端追うのが。良さそうだったらサイドキックに紹介してやろうとは思って来たんだが」
言葉を止めたと同時に同じ方向を向いた。
「やっぱりそう思うか」
「どうもそうじゃねえの」
このやたらヒーローの少ないパーティー会場に対する違和感は爆豪も感じていたらしい。ただでさえこの手の場を面倒がる男だったから、こうなれば壇上に興味は向くべくもない。
情報収集だ。退屈そうにしていた瞳がきらと光るのを見て、呆れるのと同時に少し笑いが込み上げてきた。
「んじゃこっからが『本当のパーティー』だな」
「君『タイタニック』なんて」
「見てるわそれくらい」
意外だ、と呟けば小さな威嚇が返ってきた。
「それでは仲直りをしよう」
「別に仲違えてたわけでもないだろ。同じ仕事やってんだ、目指すところも変わんねえだろ」
ほお、と頷く。
「私はこの二年寂しかったんだがな」
「は、ぁ?」
ギョッとした顔でこちらを向くのによそゆきの笑顔を返すとうんざりしたような顔になった。
「散々チームアップもしたってのに?」
「『爆豪』、久しぶり」
あー、と声に出しながら爆豪は後頭部を掻いた。
「わぁったよ。行くぞジーパン野郎」
「うん、行こう」
結局やることはヒーロー活動の範疇だが、足を踏み出すには少し新鮮な気持ちがある。懐かしくもある感覚だ。不謹慎にも少しワクワクしながら連れ立ってドアに向かった。