愛について語るときに俺たちの語ること



「……うぉっ、おまえか。誰かと思ったわ。久々だなあ。あれか、卒業式ぶり?や、違うな。飲み会あったわ。
「そうだよ。ボール、実家のやつ送ってもらおうと思ったんだけどもう寿命っぽくてさあ。せっかくだからな。
「いやーしっかし知り合いに会うとか考えても見なかったわ。え、ああ、ひとりだよ。おまえは?
「あーなんだよ、おまえもひとりなんじゃねえか。そんなこと聞くから誰か待たせてんのかと思ったわ。
「そう、久々に。マジで久々なんだよな。コート行くどころかボールに触りもしてなかった。
「あーあのさ、うーん……。いいか。時効だよな。
「三井のこと覚えてる?」

「そうそ、あの三井。まあ覚えてるよなあそりゃ。
「おれも忘れらんねえよ。あのスリーポイント。
「あー飲み会来なかったんだっけ。あいつそういうとこあるよなあ。
「おれけっこーあの頃さー、三井に憧れてたんだよね。最初の方。
「三井、いやまずバスケが上手いじゃん。まずな。シンプルに。
「そんでさーコミュ力が謎にすごすぎたじゃんあいつ。あいつに聞けば何でも過去問出てきたの覚えてる? 自分が取ってない授業もさー。
「そうそうそうそう。おれがガイロン突破できたのマジ三井のおかげ。三井サマサマ。
「おれが大学卒業できたの三井のおかげっつって過言じゃねえからな。
「でもなのに彼女とか作らねーし異様にストイックだったじゃん。バスケに。それな。不思議なくらい。
「流石に口に出せねえけどなんかなんでそんな必死でやるんだよとはさー、思ってたんだよな。
「不思議だったしなんつーかさー、何て言うんだ? 嫉妬、みたいなさ。
「いやわかってるんだけどね。そもそもの土台が違すぎて嫉妬の土俵にも立てないやつだったと思うよおれ。
「あっわり慰めてくれてありがと。いや本気で落ち込んでるわけじゃないんだけどさ。ステージが違うっつか、そういうことだろうけど。
「でもあの頃あんまわかってなかったんだよな。あのさー、マジこれ、オフレコで頼むんだけど、聞いてくれる?
「三年のインカレ前くらいの時に、三井怪我したじゃん。再発っつって。
「あんときそんな必死でやるからだよってちょっと思った。性格悪すぎな、おれ。
「なんか見てると苦しかったんだよな。ほんとにバスケが好きならあのくらいするものだろって言われてる気分になって。
「いや自意識過剰だってあの時だってわかってたつもりだけど今思い出すと言いがかり甚だしいな。
「でも今見てもなんかさー、気が引けちゃうだろうな……。
「バスケ以外何もいらないみたいな生き方はさー、できねえよ。
「したいと思ってもいなかったしなあ……。
「あいつなんでもできただろうにバスケばっかでさ、あれがバスケに本気のやつなんだって思ったんだよ。おれは。
「引退してからほとんどバスケから離れてたんだ。おまえも? ああわかる。まあ自分から調べないってくらいだけどさ。
「オリンピックな! あれは調べなくても聞こえてきた。やっぱすげーなープロ!
「でもさー、最近スポーツニュースじゃなくても普通のニュースでやるじゃん。そう! 流川楓!!
「見ちゃうとなーやっぱ、やりたくなるよな。
「そう、それでボール、買いに来たんだ。
「えっ、おまえも?! うわーっ、はっずかしー……。恥ずかしいついでに言うけど、おれらってさあ、あの時バスケ好きだったんだよなあ。おれらなりに。
「えっ今も? もっと恥ずかしいこと言うじゃん。……おれもだよ。
「やっぱなあ、かっこいいよなあ。好きになっちゃうよなあ、バスケ。
「えっああ、好きだよ。流川楓のことも。
「なんかさ、流川旋風? あるじゃん。見てるとさ、おれの方が流川のすごいとこわかるんだぞみたいな気持ちがたまにある。やばくね?
「リアコかもしんね。笑うなよ!」

「時間ある? よっしゃ。もうちょっと話そうぜ。
「コート探したら行ける? 服アレだけどまあ。
「今天気やべえな。晴れすぎ。時間潰すか。
「歳とるともう日差しのダメージがな、シャレにならん。いや笑い事じゃねえからなマジ。死活問題だよ。おまえも気をつけたほうがいいって。
「サングラス買おうかな。どう?
「おい濁すなよ。
「ブルーライトとかも言うよな。光って身体に悪いのかな。
「液晶に囲まれて生きてるから。もう逃げらんねえわ。
「そういやテレビいいやつにしたいんだよなー、Blu-ray見たくてさ。電気屋見ていい?」

「うおーでっけーな。値段なに? やべー!
「こういうテレビって誰が買うんだろ。こんな置ける家ある?
「流川! 流川はでっかい家に住んでて欲しいわー。
「えっ噂をしたら流川じゃん。でけえテレビでみると顔の迫力すげえな。
「えっ。
「えっ? 三井?
「あれ三井だよな。えっ? 結婚?
「なまほうそう……。けっこんかいけん……。
「はー……。
「誕生日なんだ三井……。おめでとう……。
「結婚もおめでとうだな……。衝撃すぎてよくわかんなくなってたわ。
「おれのリアコが一瞬で……。おれの流川……。いやおれのじゃねえ……。
「えっ、十年っつったよな三井、今。
「十年っつったらさあ。
「はぁー……。
「とんだ全取り野郎じゃんアイツ。バスケしか眼中にねえと思ってたわ。
「まじかー……」

「もう……。あれだ。幸せであれよ!!」
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