素晴らしい日々よ

 納得はしていた。これはオールマイトに誓って嘘じゃない。
 将来のためのヒーロー分析ノートが「僕の」将来だけじゃなく役に立っていることに誇らしく感じる気持ちだってあった。ちょっと驕ったことを言えばもしかしたら天職なんじゃないかとすら思っていた。
 ヒーローについて考えることはずっと好きだったから、この子たちがどんなヒーローになっていくのか考えるだけでわくわくと発想が止まらなくなる。未来は開けていて、それを生徒の肩越しに眺めるのは、悪くない気分だった。
 でも、緑谷先生じゃなくてデク先生と呼ばれていたのは、もしかしたら未練ってやつだったのかもしれない。麗日さんには稀に会えた時も「デクくん」と呼ばれていて、彼女にその名前で呼ばれるのは頑張ろうと思えて好きだった。ヒーロー・デクは残り火まで燃やしきったけど、僕は僕の形でかっこいい大人になろうって思えた。画面越しに見るみんなの輝かしい活躍はやっぱり嬉しくて、ことある度に相澤先生と彼ら彼女らの話になった。
 でもあの日、僕の、小さな僕のゆめはみんなの手によって現実になった。ふたたび。
 驚いた。アーマードスーツはぴったりと身に馴染んで、いつか持っていた個性たちに似た飛び道具が仕込まれていた。
 あの幼い日の挫折の延長線上に、中学のあの日の出会いの先に、戦いの末の痛みの先に、かけがえのない高校生活の先に、誰かを応援する師としての日常の先に、僕は立っている。どんなときも全力だった。やっぱり納得はしていた。
 それでもあの時、来い、と呼ばれて、彼女によって意味の変えられた「デク」は確かにヒーローネームで、やっぱり、やっぱり、嬉しかったんだ。
 誰もがそれぞれの形でヒーローになれるって僕は知ってる。職や個性には何の貴賤もない。それが証明されている。世界は少しずつ良くなろうとしている。僕も微力ながら、って思っていたけど。
 頑張れば僕にはもっとできるって信じて貰えた気がして、拳を握る。頑張ろうと思う。さらに、もっとその向こうまで。
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