天下統一計画(仮)
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毛利に蹴られ、しぶしぶ姉川行きの準備を始める。
「よいか、必ず信者を連れてまいれ。さもなくば、城門に貴様の首が飾られることになろうぞ」
「……俺、一応城主なのになぁ」
「いきなり財産の半分を使い、カツカツの財政難にしたのはどこの誰だ」
「大変申し訳ございませんでした。でも、どうしても欲しかったんだもん」
はい、スマホが馬鹿みたいに高かったんです。
「死ぬ気で働け、捨て駒とされたくなければ資金を確保せよ」
「御意!」
おかしい、毛利の方がなんか立場上みたいになってる。いや、ザビー教的には実質トップだもん。
いやでも、一応毛利は俺の部下って事のはず…あれ?そう思っていたのは俺だけなのかな?
「まったく…このようなガラクタに何の価値があるのか」
毛利にもスマホを渡したけど、非常に不服そうだった。
「まあ、電話以外にも使えるから。ほら!ザビー様の成長記録を残せる!」
スマホで写真を撮ったり、動画を撮ったりできることを懇切丁寧に教えて、やっと覚えた頃には毛利はすっかりスマホのとりこになっていた。
いや、このスマホのストレージどうなってんの?
ものすごい勢いで動画や写真撮っているのに容量オーバーにならないとかすごいな。
とりあえず、今は毛利が静かになっているので戦に備えて寝ることにした。
明日の朝一番に姉川に飛んで、単身で話をつける。
一応話し合いがメインで、その話で二人をザビー教の一員にすることが目的だ。
問題は……話が通じるかなぁ。竹中に話をしたときは凄い自信満々だったが、今となっては不安しかない。
「あー…うまくいきますように」
―――――――――
翌朝、まだ日は出ていない。そんなに早く目が覚めてしまったのは、猿飛のせいだ。
「あの…なにか。」
起きてすぐ着替えられるか不安だったので、服を着たまま寝ていたからすぐに対応できた。
「いや、戦に行くにしては兵の準備してないし、どうしてかなって」
「俺一人で戦場に行くからですよ。今財政難なんで、あんまり兵を減らしたくないんですよ」
「あー…どこも大変なんだね」
ザビー城財政難は俺のせいなんで、特に何も言わないでおく。
「てっきりお帰りになったと思いました」
「あー、あの後帰ろうと思ったんだけどさ……和海、妙な技を使うからちょっと気になってね」
なんだろう、妙な事はあんまりしていないと思うんだけど。いや、したか。
「まさか、帰るの面倒になったから俺に送ってくれなんて言うんじゃないよな?」
「ご名答~☆いや、だって甲斐まで戻るの何日かかると思う?」
そうか、普通は船や馬で何日もかけて帰るんだよな。忍びって空飛んでびゅーんって帰るイメージだったんだけど違うのか。
「俺に何のメリット…いや得があるんだよ」
「んー…和海が3人の事をどう思っているか、御館様に報告しないであげる」
「よーし分かった。甲斐ってどこだ、地図で教えろ」
「流石、話が分かるねー。ああ、この辺でいいよ。ここに道場があるんだよね」
武田道場か……確かにこの南の端から、日本列島の真ん中あたりまで帰るのは大変だろう。
「分かった、それじゃあ俺の手をつかんで…え?」
「ん?どうしたの」
一瞬、変なものが見えた。いやゲームのワンシーンをふと思い出しただけか?
「なんでもない、それじゃあ絶対に手を離さないでくれよ」
暗い部屋の中、闇に沈む。大阪よりも遠いからか、沈む時間が少しだけ長かった気がしたけど、無事に森の中にある道場にたどり着いた。
「いやー便利!また機会があったらお願いしちゃおうかなー」
「次は有料です」
「ケチー」
ケチではない、普通に移動する日数や資金を考えたら有料化しても文句はない筈だ。時は金なり。
「むむっ、そこにいるのは佐助ではないか?」
「あら、真田の旦那。朝早いね」
「あー……俺は帰るね。大丈夫、なんも見てないよー」
上半身裸の真田。見てはいけないものを見たような気持になる。
ほぼ脱げているような衣装だけど、やっぱり着てるか着てないかでこう…恥ずかしさというか、照れくささが変わる。
「あらら、旦那の体見て照れちゃったわけ?意外と初心じゃん」
「茶化すな!もう、帰る!」
闇の中に俺は飛び込んだ。
異性も同性も関係ない。人の素肌を見るのにすごく抵抗がある。
なんだろう、胸元が見えるとすごいいけないものを見た気になってしまう。自分が見られるのに抵抗あるのも理由かもしれない。
「……はぁ、慌てて飛び込んだのが間違えだったな」
武器も持たずに姉川に来てしまった。
しかも朝早すぎて誰もいない。
フラフラとステージとなる姉川の舞台を歩いて回る。
ここはたしか中央の砦に立てこもるんだよな。
「戦国最強砲……生で見てみたかったな」
ただ、あの技を見るためには槍の人たちを倒さなければいけない。あの人たちもザビー教入らないかな?
なんかこう…小さなお子様に人気でそうじゃないかな。
「一旦国に帰るか」
やっと朝日が顔を出し始めたが、まだ誰も来ない。食事をして戻ってきても余裕だろう。
自国にもどり、朝食を終えて身だしなみを整える。
「お、和海。どこか出かけるのか?」
「ああ、姉川まで。浅井夫婦に話があってさ」
そういうと前田の表情は少し暗くなる。
「そこを攻めるのか」
前田慶次の叔父、前田利家は織田の軍で、浅井も一応織田の関係者だ。
彼からしたら複雑な気持ちになるのかもしれないな。
「最悪戦になるかもしれない。……まぁ戦国の世だから仕方ないな。
一応穏便に会話で済むように交渉してくるつもりだよ」
「……なぁ、和海はどうして戦場に出るんだ。同盟という事は、秀吉の考えに賛同したのか?」
「うーん、確かに強い国っていうのはいい方針だと思っている。結局弱ければ何も守れないから……。ただ、豊臣の考えは少しとがってると思うんだ。
弱者に寄りそう考え方が足りないんだよね。その辺を補えればいいなと思って同盟してる感じかな。
ほら…あれだよ、あれ。愛だね、愛を広める予定だよ」
自分で何言っているか分からないくなってきた。
豊臣のそばにいるのは天下統一が早そうだからだけど、毛利からの圧もあってザビー教も布教しなきゃいけない。
混ざって現在の方針は天下にザビー教を広めるになりかかっている。
まてよ、そうなるといつきとは偶像崇拝対決で戦うことになるんだろうか。
……あんまり、戦いたくないな。
「愛…ね。気に入った、アンタの方針だったら俺も協力するよ」
「本当だね?言ったね、もう取り消しはできないから。
今日から貴方はラバーズ前田だ。頑張って、愛を広めてくれ!」
毛利から押し付けられていたザビー教勧誘のビラを一部前田に押し付ける。
「これを全国各地に配って、信者募集してくれ。愛の名のもとに集まる信者を募集中!」
「なんか変なあだ名付けられたな」
「あだ名ではなく、洗礼名。いや名乗りたくなければ名乗らなくてもいいよ。俺なんかパシリ和海だもん……」
ずーんと気落ちする。なんで、なんでだよ…俺この城の城主よ?何度も言うけど城主なんだぞ!
「アンタ、本当に偉い立場の人間なのか?」
「そのはずだけど、他の人が怖すぎるんです……。はぁとりあえず、俺は姉川に行ってくるので。そのうちまた会おう」
おにぎりを背負いグローブを装備して、俺は前田と別れた。
影移動の能力はあまり人に見せないようにしよう。便利な運び屋としてこき使われても困る。
厩の方へ向かい、周囲を確認して陰に飛び込む。
姉川にたどり着いたが、人はほとんどいない。どちらかというと、砦の点検などをして戦に備えているようだった。
……あ、もしかして普通は何日かかかってここに来るわけだから、準備期間中だったのか?
「見慣れない格好をしているな、貴様何者だ!」
全身黒のザビー教信者の服は浮いているようだ。確かに足軽たちと比べたら異質だろう。
「あの浅井夫婦にお話があってきたのですが」
何人かがこそこそ話をしている。一部でザビー教について知っている人がいたようで、俺はその信者だろうという話になった。
まぁ単身でいる時点で、戦に来ているとは思われないだろう。
「この忙しい時期に文もよこさずいきなりきて、お会いするわけがないだろう」
ここの現場監督のような人にめちゃくちゃ怒られた。
とりあえず会えないか、アポを取ってほしい事を頼んだが断られてしまった。ただ、彼らの視線などから浅井が居そうな場所は見当がついたので一時撤退した。
どうやら中央の拠点から、指示を出しているようだった。
それなら直接乗り込んでいけばいいだけだ。俺は陰に飛び込んで中央拠点に向かったが、予想外の事が起こった。
闇から出れないのだ。
無数の腕につかまれているような感覚。これはまさか、お市の闇か?
逆に腕のような何かをつかんで引っ張ると、俺の目の前にお市が現れた。
「……貴方はだあれ?」
あ、闇の中って会話できるんだ。
「初めまして。和海です、近々お邪魔する予定だった南の者なのですが、日程を間違えまして……」
「貴方、面白い人ね。この闇が怖くないの?」
「そうですね……闇、だけど完全に何も見えないわけじゃないのでそれほど怖くないですね」
「そうなのね、それで貴方は何をしに来たの?市を虐めに来たの?」
弱弱しい声で泣き出しそうなお市に困惑する。
「虐めませんよ!そんなことするわけ無いじゃないですか!俺は貴方と浅井様に旅行のお誘いに来ただけです」
「…旅行?」
「とりあえず、地上に出ましょう。浅井様にもお伝えしたいことですから」
お市はコクンと頷いて、地上に俺を出してくれた。……けど、陰の手はがっちり俺をつかんだままなので信用はされていないようだ。
「市、大丈夫か!」
いきなり地面に消えたとなれば驚くよね。うん、わかるよ。
「長政様……市は大丈夫。あのね、面白い人を捕まえたの」
「……変なものを拾ってくるんじゃない!」
「変なものじゃない!ザビー教よりきた愛の伝道師、パシリ和海だ!」
言っていて悲しくなる。毛利が考えた口上なので言わなかったら怒られる。
「何の用だ。無駄口を叩けば削除なり!」
「いえ、お二方に新婚旅行として南の島に遊びに来ていただけないかと。ご宿泊所としてお城でのんびり過ごしていただければと思っております。
ザビー教体験していただき、お気に召しましたら入信していただけないかなーと。
勿論こちらのお誘いなので、ご宿泊費などはいただこうなんて思っておりません」
スラっと浅井は刀を抜いた。
「待って、待って!ほんと、だまされたと思って遊びに来てくださいよ!」
「黙れ、我らは数日後に戦を控えており貴様の戯言に付き合っている隙はない!」
「じゃあ、日帰り旅行!戦前に気分転換はどうですか!
今日行って、今日帰ってくる。それならどうですか!」
「……長政様…、市ね、長政様と旅行してみたい」
黒い手につかまって喚く俺が哀れになったのか、お市が助け舟を出してくれた。
「本当に、今日中に帰ってこれるんだろうな」
「もちろんです。それじゃあ、早速行きましょうか!」
何とか南へ連れていく方向で話はまとまった。後は俺のプレゼンで彼女たちが信者になってくれるかどうかだ。
頑張れ俺!
「よいか、必ず信者を連れてまいれ。さもなくば、城門に貴様の首が飾られることになろうぞ」
「……俺、一応城主なのになぁ」
「いきなり財産の半分を使い、カツカツの財政難にしたのはどこの誰だ」
「大変申し訳ございませんでした。でも、どうしても欲しかったんだもん」
はい、スマホが馬鹿みたいに高かったんです。
「死ぬ気で働け、捨て駒とされたくなければ資金を確保せよ」
「御意!」
おかしい、毛利の方がなんか立場上みたいになってる。いや、ザビー教的には実質トップだもん。
いやでも、一応毛利は俺の部下って事のはず…あれ?そう思っていたのは俺だけなのかな?
「まったく…このようなガラクタに何の価値があるのか」
毛利にもスマホを渡したけど、非常に不服そうだった。
「まあ、電話以外にも使えるから。ほら!ザビー様の成長記録を残せる!」
スマホで写真を撮ったり、動画を撮ったりできることを懇切丁寧に教えて、やっと覚えた頃には毛利はすっかりスマホのとりこになっていた。
いや、このスマホのストレージどうなってんの?
ものすごい勢いで動画や写真撮っているのに容量オーバーにならないとかすごいな。
とりあえず、今は毛利が静かになっているので戦に備えて寝ることにした。
明日の朝一番に姉川に飛んで、単身で話をつける。
一応話し合いがメインで、その話で二人をザビー教の一員にすることが目的だ。
問題は……話が通じるかなぁ。竹中に話をしたときは凄い自信満々だったが、今となっては不安しかない。
「あー…うまくいきますように」
―――――――――
翌朝、まだ日は出ていない。そんなに早く目が覚めてしまったのは、猿飛のせいだ。
「あの…なにか。」
起きてすぐ着替えられるか不安だったので、服を着たまま寝ていたからすぐに対応できた。
「いや、戦に行くにしては兵の準備してないし、どうしてかなって」
「俺一人で戦場に行くからですよ。今財政難なんで、あんまり兵を減らしたくないんですよ」
「あー…どこも大変なんだね」
ザビー城財政難は俺のせいなんで、特に何も言わないでおく。
「てっきりお帰りになったと思いました」
「あー、あの後帰ろうと思ったんだけどさ……和海、妙な技を使うからちょっと気になってね」
なんだろう、妙な事はあんまりしていないと思うんだけど。いや、したか。
「まさか、帰るの面倒になったから俺に送ってくれなんて言うんじゃないよな?」
「ご名答~☆いや、だって甲斐まで戻るの何日かかると思う?」
そうか、普通は船や馬で何日もかけて帰るんだよな。忍びって空飛んでびゅーんって帰るイメージだったんだけど違うのか。
「俺に何のメリット…いや得があるんだよ」
「んー…和海が3人の事をどう思っているか、御館様に報告しないであげる」
「よーし分かった。甲斐ってどこだ、地図で教えろ」
「流石、話が分かるねー。ああ、この辺でいいよ。ここに道場があるんだよね」
武田道場か……確かにこの南の端から、日本列島の真ん中あたりまで帰るのは大変だろう。
「分かった、それじゃあ俺の手をつかんで…え?」
「ん?どうしたの」
一瞬、変なものが見えた。いやゲームのワンシーンをふと思い出しただけか?
「なんでもない、それじゃあ絶対に手を離さないでくれよ」
暗い部屋の中、闇に沈む。大阪よりも遠いからか、沈む時間が少しだけ長かった気がしたけど、無事に森の中にある道場にたどり着いた。
「いやー便利!また機会があったらお願いしちゃおうかなー」
「次は有料です」
「ケチー」
ケチではない、普通に移動する日数や資金を考えたら有料化しても文句はない筈だ。時は金なり。
「むむっ、そこにいるのは佐助ではないか?」
「あら、真田の旦那。朝早いね」
「あー……俺は帰るね。大丈夫、なんも見てないよー」
上半身裸の真田。見てはいけないものを見たような気持になる。
ほぼ脱げているような衣装だけど、やっぱり着てるか着てないかでこう…恥ずかしさというか、照れくささが変わる。
「あらら、旦那の体見て照れちゃったわけ?意外と初心じゃん」
「茶化すな!もう、帰る!」
闇の中に俺は飛び込んだ。
異性も同性も関係ない。人の素肌を見るのにすごく抵抗がある。
なんだろう、胸元が見えるとすごいいけないものを見た気になってしまう。自分が見られるのに抵抗あるのも理由かもしれない。
「……はぁ、慌てて飛び込んだのが間違えだったな」
武器も持たずに姉川に来てしまった。
しかも朝早すぎて誰もいない。
フラフラとステージとなる姉川の舞台を歩いて回る。
ここはたしか中央の砦に立てこもるんだよな。
「戦国最強砲……生で見てみたかったな」
ただ、あの技を見るためには槍の人たちを倒さなければいけない。あの人たちもザビー教入らないかな?
なんかこう…小さなお子様に人気でそうじゃないかな。
「一旦国に帰るか」
やっと朝日が顔を出し始めたが、まだ誰も来ない。食事をして戻ってきても余裕だろう。
自国にもどり、朝食を終えて身だしなみを整える。
「お、和海。どこか出かけるのか?」
「ああ、姉川まで。浅井夫婦に話があってさ」
そういうと前田の表情は少し暗くなる。
「そこを攻めるのか」
前田慶次の叔父、前田利家は織田の軍で、浅井も一応織田の関係者だ。
彼からしたら複雑な気持ちになるのかもしれないな。
「最悪戦になるかもしれない。……まぁ戦国の世だから仕方ないな。
一応穏便に会話で済むように交渉してくるつもりだよ」
「……なぁ、和海はどうして戦場に出るんだ。同盟という事は、秀吉の考えに賛同したのか?」
「うーん、確かに強い国っていうのはいい方針だと思っている。結局弱ければ何も守れないから……。ただ、豊臣の考えは少しとがってると思うんだ。
弱者に寄りそう考え方が足りないんだよね。その辺を補えればいいなと思って同盟してる感じかな。
ほら…あれだよ、あれ。愛だね、愛を広める予定だよ」
自分で何言っているか分からないくなってきた。
豊臣のそばにいるのは天下統一が早そうだからだけど、毛利からの圧もあってザビー教も布教しなきゃいけない。
混ざって現在の方針は天下にザビー教を広めるになりかかっている。
まてよ、そうなるといつきとは偶像崇拝対決で戦うことになるんだろうか。
……あんまり、戦いたくないな。
「愛…ね。気に入った、アンタの方針だったら俺も協力するよ」
「本当だね?言ったね、もう取り消しはできないから。
今日から貴方はラバーズ前田だ。頑張って、愛を広めてくれ!」
毛利から押し付けられていたザビー教勧誘のビラを一部前田に押し付ける。
「これを全国各地に配って、信者募集してくれ。愛の名のもとに集まる信者を募集中!」
「なんか変なあだ名付けられたな」
「あだ名ではなく、洗礼名。いや名乗りたくなければ名乗らなくてもいいよ。俺なんかパシリ和海だもん……」
ずーんと気落ちする。なんで、なんでだよ…俺この城の城主よ?何度も言うけど城主なんだぞ!
「アンタ、本当に偉い立場の人間なのか?」
「そのはずだけど、他の人が怖すぎるんです……。はぁとりあえず、俺は姉川に行ってくるので。そのうちまた会おう」
おにぎりを背負いグローブを装備して、俺は前田と別れた。
影移動の能力はあまり人に見せないようにしよう。便利な運び屋としてこき使われても困る。
厩の方へ向かい、周囲を確認して陰に飛び込む。
姉川にたどり着いたが、人はほとんどいない。どちらかというと、砦の点検などをして戦に備えているようだった。
……あ、もしかして普通は何日かかかってここに来るわけだから、準備期間中だったのか?
「見慣れない格好をしているな、貴様何者だ!」
全身黒のザビー教信者の服は浮いているようだ。確かに足軽たちと比べたら異質だろう。
「あの浅井夫婦にお話があってきたのですが」
何人かがこそこそ話をしている。一部でザビー教について知っている人がいたようで、俺はその信者だろうという話になった。
まぁ単身でいる時点で、戦に来ているとは思われないだろう。
「この忙しい時期に文もよこさずいきなりきて、お会いするわけがないだろう」
ここの現場監督のような人にめちゃくちゃ怒られた。
とりあえず会えないか、アポを取ってほしい事を頼んだが断られてしまった。ただ、彼らの視線などから浅井が居そうな場所は見当がついたので一時撤退した。
どうやら中央の拠点から、指示を出しているようだった。
それなら直接乗り込んでいけばいいだけだ。俺は陰に飛び込んで中央拠点に向かったが、予想外の事が起こった。
闇から出れないのだ。
無数の腕につかまれているような感覚。これはまさか、お市の闇か?
逆に腕のような何かをつかんで引っ張ると、俺の目の前にお市が現れた。
「……貴方はだあれ?」
あ、闇の中って会話できるんだ。
「初めまして。和海です、近々お邪魔する予定だった南の者なのですが、日程を間違えまして……」
「貴方、面白い人ね。この闇が怖くないの?」
「そうですね……闇、だけど完全に何も見えないわけじゃないのでそれほど怖くないですね」
「そうなのね、それで貴方は何をしに来たの?市を虐めに来たの?」
弱弱しい声で泣き出しそうなお市に困惑する。
「虐めませんよ!そんなことするわけ無いじゃないですか!俺は貴方と浅井様に旅行のお誘いに来ただけです」
「…旅行?」
「とりあえず、地上に出ましょう。浅井様にもお伝えしたいことですから」
お市はコクンと頷いて、地上に俺を出してくれた。……けど、陰の手はがっちり俺をつかんだままなので信用はされていないようだ。
「市、大丈夫か!」
いきなり地面に消えたとなれば驚くよね。うん、わかるよ。
「長政様……市は大丈夫。あのね、面白い人を捕まえたの」
「……変なものを拾ってくるんじゃない!」
「変なものじゃない!ザビー教よりきた愛の伝道師、パシリ和海だ!」
言っていて悲しくなる。毛利が考えた口上なので言わなかったら怒られる。
「何の用だ。無駄口を叩けば削除なり!」
「いえ、お二方に新婚旅行として南の島に遊びに来ていただけないかと。ご宿泊所としてお城でのんびり過ごしていただければと思っております。
ザビー教体験していただき、お気に召しましたら入信していただけないかなーと。
勿論こちらのお誘いなので、ご宿泊費などはいただこうなんて思っておりません」
スラっと浅井は刀を抜いた。
「待って、待って!ほんと、だまされたと思って遊びに来てくださいよ!」
「黙れ、我らは数日後に戦を控えており貴様の戯言に付き合っている隙はない!」
「じゃあ、日帰り旅行!戦前に気分転換はどうですか!
今日行って、今日帰ってくる。それならどうですか!」
「……長政様…、市ね、長政様と旅行してみたい」
黒い手につかまって喚く俺が哀れになったのか、お市が助け舟を出してくれた。
「本当に、今日中に帰ってこれるんだろうな」
「もちろんです。それじゃあ、早速行きましょうか!」
何とか南へ連れていく方向で話はまとまった。後は俺のプレゼンで彼女たちが信者になってくれるかどうかだ。
頑張れ俺!