紅蓮の虚偽
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鼻歌交じりで家に向かう。明日はボーナスが入るから、ちょっとリッチな夕食を楽しもうと思っていた。
「んん?……あれは、ネックレス、いや小銭?」
地面に落ちているものを拾い上げようとしたとき、悲鳴が響き渡った。
なんかあったのだろうか?
顔をあげた時、そこは知らない天井だった。
「……」
和風の建物。天井に電気が無い。なんか、珍しい作りだな。
視線を横に流せば、迷彩のポンチョを着た男が驚いた顔をしている。―――どっかで見たことあるような気がする。
「真田の旦那……俺の事分かるか?」
「幸村、目覚めたのか!」
反対側へ視線を流すと、まぁ体格のいい男性が―――うん、どっかで見た顔だな。
私の意思に反して体は起き上がり、体格のいい男性に深く頭を下げる。
喉の様子がおかしいのか、喋ろうと口は動くが、言葉は出てこない。どこか傷でもあるのか、口腔内に血が溢れてくる。
「よい、よい。今は体を休めよ」
「ほら、口の周り酷い事になってるよ」
手拭いで、口を拭ってくれた面倒見がよいポンチョ男……そしてこの声。
「佐助よ、傷が開いたようだ。手当をしてやってくれ」
「はっ」
頭を下げる男の名前は佐助。うん、猿飛佐助だろうな。
目の前の体格のいい男性は、武田信玄。そして私の体はさっきから真田とか幸村って呼ばれている。
武田さんが居なくなって、佐助と二人きりになった。
人払いをしてくれたのか、もともとそういうものなのか分からないが、周囲に気配はない。
いや、気配ってなんだよ。妙に耳も良くなってるし、これは本当に私の体じゃなくて、真田幸村の体なの?
まってよ、異世界転生とか見かけるけど、ゲームの世界に転生して死亡ルートを回避するとかあるけど……私は死んだの?え?っていうか、そうしたら真田幸村本人はどうなったのよ!
「……旦那、でいいのか?」
『いい訳あるか!なんで、なんで真田幸村の体に入っているんですか、ねぇ!佐助さん!』
さっきは声が出なかったのに、今度は喋れた。
聞きなれた自分の声だ。え、ヤダ。この体で自分の声が出るって気持ち悪いわ。
「やっぱり、失敗か」
『失敗って何よ』
「あのさ…事情は話すから、その声で話すの辞めて。旦那の顔で可愛い女の子の声がするって気持ち悪い―――女の子!?」
この時私も気づいてしまった。
『男になってるー!!』
「佐助、一人で何を騒いでおる。幸村、よく食べ、よく寝て早く傷を癒すのだぞ」
大量のおにぎりを持ってきてくれた武田さん。
ああ、また私の意思とは関係なく体が動く。声が出ないのに叫んで、ああ…また口の中が血まみれだ。
「ちょっと、ちょっと!また血が出ちゃってる!」
どうも武田さんが近くにいると自動的に幸村の振る舞いが発動するようだ。って事は、真田さんもこの体の中で生きてはいるのかな。
傷の手当と安静の為に、数日間は武田さんとの接触は禁止となった。
『とりあえずはしばらくは出血しないで済むかな』
「しかし、その声は俺様にしか聞こえないみたいだね」
私の地声は佐助さんにしか聞こえず、真田自身が喋ろうとすると声が出ない。
原因は喉の怪我だ。だけど、このけがは喉だけじゃない。
『これ、一度首が落ちたでしょ。よくここまで繋いだね』
普通は首が落ちれば、蘇生は出来ない。現代医学でも無理なのに、この戦国の世なんてもっと無理だろう。
まぁ、私の世界の戦国時代ならダメかもしれないけど、ここはBASARAの世界っぽいし、アリなのか?
「あ、分かっちゃうんだ。結構綺麗に傷は塞がったっぽかったのに」
確かに、鏡ごしに首を見たが、喉元の一か所に切り傷はあるが、ほかは塞がっているように見える。
だけどずきずきと首元全体に痛みと違和感がしっかり残っている。
一応敵の一撃を避けた際に、刃先が喉元をかすめたと武田さんには説明してあるらしい。
「俺様の手とか足もそうだけどね、これ他人のものなんだよ」
小手を外して腕を見せてくれた。普通の人なら継ぎ目に気づかないだろう。だけど、私が今、同じような状態だからだろうか、腕を繋ぐために黒い靄のようなものが絡みついている。
「ある程度馴染んだら、普通に使えるようにはなるんだけどさ、それまではこうして固定してるって訳。
自分の体では試したことあったけど、人の体ではうまくいくか分かんなくってね」
それでも、佐助さんは真田さんが死ぬという運命が受け入れられなかったのだろう。無理やり捻じ曲げた結果、なんかよく分からない事態になってしまったようだ。
「それで、中の人の名前は?」
『ああ、えっと和海って言います。まぁ、名乗った所でここじゃ使う事も無いだろうけどね』
「和海……ね。本当に女子なんだ」
『だから困ってるんだよぉ。目に毒だよ、なんだこのいい体は!それよりも、これから風呂とかどうするのさ、男の体の使い方なんか分からないぞ!』
「まぁ、俺様が手伝うし、何とかなるでしょ。それよりも心配なのは戦だ」
『それは問題ないと思うよ。意識は私が表面上にいるけど、真田さんもここにはいるみたいだし。
戦場では自身で戦うんじゃないかな?さっきも武田さんに喉から血を出しながら叫んでたし』
「あ、あの動きってやっぱり旦那だったんだ。いや、即興にしては演技がうますぎるなって思ってたんだよね」
だから、佐助さんは術が上手くいって、無事に真田さんが生き返ったと思ったらしい。
『でもさ、良かったの?今は私が動かしているけどさ、本当に真田さんが目覚めた時に死をなかったことにしたって話受け入れられるの?武士とかって、死に一種の美学を持ってるでしょ』
「まぁ…その時はその時でしょ。大丈夫、忍びのやる事さ、何でもありっていえば押し通せるって」
そんなものなのだろうか。
しかし、喋れないままっていうのは困るよな。
多分、私がこの体に馴染んでいないから声が出ないって感じだけど……馴染んでしまったら、和海って人格はどうなるんだろう。
うまい事人格が混ざって真田幸村になるのか。
それとも、だんだん私が薄くなって、真田さんが完全覚醒かな?
『はぁ~…折角ボーナスが入るから豪遊しようと思ってたのにな』
「ぼーなすってなに、野菜の一種?」
『特別手当だよ。お仕事頑張ったねって、いつもの給金とは別に支払ってもらえるの』
「特別手当、いい響きだね。俺様も欲しいなぁ」
『真田さんが目覚めたら直接言って。それじゃあ、私は食事をしたら少し寝るね。早くこの体治したいし。
それに、ご本人に会いたいでしょ?』
大きなおにぎりだけど、ぺろりと食べられる。
―――もしかして、真田さんの体って燃費が悪すぎるんじゃないの?
食べても食べても、食べれるよ?
それとも、怪我を治すために体が頑張っちゃっているのかな?
いや分かんない。怖い、この体やっぱり怖いわ。
「和海はさ……俺様の事怒らないの?」
『ん?怒った所でどうにもならないでしょ。それより、「佐助!お茶」』
私と佐助さんは思わず見つめ合ってしまった。
私の口から真田さんの声が出た。
『え、ええ?なんで?』
「もしかしてだけど……和海、旦那っぽくしゃべれる?」
なりきれって事かな?
「―――佐助、今日の団子はまだか?」
「ぶっは、似てるー!っていうか旦那じゃん」
成程、私の気持ちが真田っぽいときは真田の体でちゃんと喋れるのか。
『うん、真田さんっぽい感じ出せるようにこれからも精進するよ。そしたら早く馴染みそう』
それに、馴染まないと私…早々に死にそうなんだよな。頑張れ私、頑張って起きて、真田さん!!!
「んん?……あれは、ネックレス、いや小銭?」
地面に落ちているものを拾い上げようとしたとき、悲鳴が響き渡った。
なんかあったのだろうか?
顔をあげた時、そこは知らない天井だった。
「……」
和風の建物。天井に電気が無い。なんか、珍しい作りだな。
視線を横に流せば、迷彩のポンチョを着た男が驚いた顔をしている。―――どっかで見たことあるような気がする。
「真田の旦那……俺の事分かるか?」
「幸村、目覚めたのか!」
反対側へ視線を流すと、まぁ体格のいい男性が―――うん、どっかで見た顔だな。
私の意思に反して体は起き上がり、体格のいい男性に深く頭を下げる。
喉の様子がおかしいのか、喋ろうと口は動くが、言葉は出てこない。どこか傷でもあるのか、口腔内に血が溢れてくる。
「よい、よい。今は体を休めよ」
「ほら、口の周り酷い事になってるよ」
手拭いで、口を拭ってくれた面倒見がよいポンチョ男……そしてこの声。
「佐助よ、傷が開いたようだ。手当をしてやってくれ」
「はっ」
頭を下げる男の名前は佐助。うん、猿飛佐助だろうな。
目の前の体格のいい男性は、武田信玄。そして私の体はさっきから真田とか幸村って呼ばれている。
武田さんが居なくなって、佐助と二人きりになった。
人払いをしてくれたのか、もともとそういうものなのか分からないが、周囲に気配はない。
いや、気配ってなんだよ。妙に耳も良くなってるし、これは本当に私の体じゃなくて、真田幸村の体なの?
まってよ、異世界転生とか見かけるけど、ゲームの世界に転生して死亡ルートを回避するとかあるけど……私は死んだの?え?っていうか、そうしたら真田幸村本人はどうなったのよ!
「……旦那、でいいのか?」
『いい訳あるか!なんで、なんで真田幸村の体に入っているんですか、ねぇ!佐助さん!』
さっきは声が出なかったのに、今度は喋れた。
聞きなれた自分の声だ。え、ヤダ。この体で自分の声が出るって気持ち悪いわ。
「やっぱり、失敗か」
『失敗って何よ』
「あのさ…事情は話すから、その声で話すの辞めて。旦那の顔で可愛い女の子の声がするって気持ち悪い―――女の子!?」
この時私も気づいてしまった。
『男になってるー!!』
「佐助、一人で何を騒いでおる。幸村、よく食べ、よく寝て早く傷を癒すのだぞ」
大量のおにぎりを持ってきてくれた武田さん。
ああ、また私の意思とは関係なく体が動く。声が出ないのに叫んで、ああ…また口の中が血まみれだ。
「ちょっと、ちょっと!また血が出ちゃってる!」
どうも武田さんが近くにいると自動的に幸村の振る舞いが発動するようだ。って事は、真田さんもこの体の中で生きてはいるのかな。
傷の手当と安静の為に、数日間は武田さんとの接触は禁止となった。
『とりあえずはしばらくは出血しないで済むかな』
「しかし、その声は俺様にしか聞こえないみたいだね」
私の地声は佐助さんにしか聞こえず、真田自身が喋ろうとすると声が出ない。
原因は喉の怪我だ。だけど、このけがは喉だけじゃない。
『これ、一度首が落ちたでしょ。よくここまで繋いだね』
普通は首が落ちれば、蘇生は出来ない。現代医学でも無理なのに、この戦国の世なんてもっと無理だろう。
まぁ、私の世界の戦国時代ならダメかもしれないけど、ここはBASARAの世界っぽいし、アリなのか?
「あ、分かっちゃうんだ。結構綺麗に傷は塞がったっぽかったのに」
確かに、鏡ごしに首を見たが、喉元の一か所に切り傷はあるが、ほかは塞がっているように見える。
だけどずきずきと首元全体に痛みと違和感がしっかり残っている。
一応敵の一撃を避けた際に、刃先が喉元をかすめたと武田さんには説明してあるらしい。
「俺様の手とか足もそうだけどね、これ他人のものなんだよ」
小手を外して腕を見せてくれた。普通の人なら継ぎ目に気づかないだろう。だけど、私が今、同じような状態だからだろうか、腕を繋ぐために黒い靄のようなものが絡みついている。
「ある程度馴染んだら、普通に使えるようにはなるんだけどさ、それまではこうして固定してるって訳。
自分の体では試したことあったけど、人の体ではうまくいくか分かんなくってね」
それでも、佐助さんは真田さんが死ぬという運命が受け入れられなかったのだろう。無理やり捻じ曲げた結果、なんかよく分からない事態になってしまったようだ。
「それで、中の人の名前は?」
『ああ、えっと和海って言います。まぁ、名乗った所でここじゃ使う事も無いだろうけどね』
「和海……ね。本当に女子なんだ」
『だから困ってるんだよぉ。目に毒だよ、なんだこのいい体は!それよりも、これから風呂とかどうするのさ、男の体の使い方なんか分からないぞ!』
「まぁ、俺様が手伝うし、何とかなるでしょ。それよりも心配なのは戦だ」
『それは問題ないと思うよ。意識は私が表面上にいるけど、真田さんもここにはいるみたいだし。
戦場では自身で戦うんじゃないかな?さっきも武田さんに喉から血を出しながら叫んでたし』
「あ、あの動きってやっぱり旦那だったんだ。いや、即興にしては演技がうますぎるなって思ってたんだよね」
だから、佐助さんは術が上手くいって、無事に真田さんが生き返ったと思ったらしい。
『でもさ、良かったの?今は私が動かしているけどさ、本当に真田さんが目覚めた時に死をなかったことにしたって話受け入れられるの?武士とかって、死に一種の美学を持ってるでしょ』
「まぁ…その時はその時でしょ。大丈夫、忍びのやる事さ、何でもありっていえば押し通せるって」
そんなものなのだろうか。
しかし、喋れないままっていうのは困るよな。
多分、私がこの体に馴染んでいないから声が出ないって感じだけど……馴染んでしまったら、和海って人格はどうなるんだろう。
うまい事人格が混ざって真田幸村になるのか。
それとも、だんだん私が薄くなって、真田さんが完全覚醒かな?
『はぁ~…折角ボーナスが入るから豪遊しようと思ってたのにな』
「ぼーなすってなに、野菜の一種?」
『特別手当だよ。お仕事頑張ったねって、いつもの給金とは別に支払ってもらえるの』
「特別手当、いい響きだね。俺様も欲しいなぁ」
『真田さんが目覚めたら直接言って。それじゃあ、私は食事をしたら少し寝るね。早くこの体治したいし。
それに、ご本人に会いたいでしょ?』
大きなおにぎりだけど、ぺろりと食べられる。
―――もしかして、真田さんの体って燃費が悪すぎるんじゃないの?
食べても食べても、食べれるよ?
それとも、怪我を治すために体が頑張っちゃっているのかな?
いや分かんない。怖い、この体やっぱり怖いわ。
「和海はさ……俺様の事怒らないの?」
『ん?怒った所でどうにもならないでしょ。それより、「佐助!お茶」』
私と佐助さんは思わず見つめ合ってしまった。
私の口から真田さんの声が出た。
『え、ええ?なんで?』
「もしかしてだけど……和海、旦那っぽくしゃべれる?」
なりきれって事かな?
「―――佐助、今日の団子はまだか?」
「ぶっは、似てるー!っていうか旦那じゃん」
成程、私の気持ちが真田っぽいときは真田の体でちゃんと喋れるのか。
『うん、真田さんっぽい感じ出せるようにこれからも精進するよ。そしたら早く馴染みそう』
それに、馴染まないと私…早々に死にそうなんだよな。頑張れ私、頑張って起きて、真田さん!!!
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