天下統一計画(仮)
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「あんたは…?」
「どうも、いつきちゃんのお姉ちゃんって呼ばれてます」
黒く短い髪で、外見だけでは一瞬少年と見間違えてしまった。
かなりの腕前で、一人で野党を追い払うほどだったという。
しばらく前にいつきの村に現れた、出身も名前も分からない不審者だった。
だが、すっかり村に打ち解けていた。名前が無いため、居候しているいつきの姉と呼ばれていた。
神出鬼没、正体不明、初めて和海に出会ったときに似ていた。
見た目もどこか近いものを感じてはいた。
『あなたに天下を。代わりに私に居場所を』
まっすぐこちらを見つめる瞳の強さも―――
「んんー?なにかな、私が誰かに似ているのかな?」
隙あらば抱き着いてくる。他人との距離が近い奴だった。
「…まぁ。知り合いに似ている奴がいたんだ」
不思議と嫌ではなかったし、抱き着かれるまでなぜか気づけない。
振り払ったと事で、いつのまにかまた抱き着いてくるのでもう諦めてもいる。
どうやら俺の事もいつきと同じ、可愛い子供という感覚らしい。どう見ても彼女の方が年下なのに、なんでそんな風に思うのかが疑問だった。
「世の中には3人は同じ顔の人がいるらしいからね。まぁ似ていても不思議ではないでしょ」
妙にニコニコと笑っている奴だった。
その明るさが村人に受け入れられたのだろうが、一人でいる時は妙に静かで、消えてしまいそうだった。
本来この場には存在しない、ありえない存在だと感じる。
この世界から浮いているようだった。
目を離したら、本当に消えてしまいそうで…いつしか、俺はずっと彼女の事を見ていた。
「……政宗様、またあの村へ行くつもりですか?」
小十郎に文句を言われても、何度も村へ足を向けた。
あいかわらず彼女に名前は無く、いつきのお姉ちゃんと呼ばれていた。
「名前が無いのは不便じゃないか?」
ずっと気になっていた疑問を
「……あんまり困ってないんだよね、これが。それに…名前が無い方がいい。
その名に縛られないからね。いつでも自由なんだ」
自由、そうは見えなかった。
自由になろうと、何かから逃げているようだった。
「……でも、名前あってもいいかもね。政宗には名前で呼んでほしいもん」
にっこり笑った彼女は和海に似ていたが、彼女とはまた違う笑顔だった。
こっちの笑顔の方が俺は好きだった。
ああ……そうか。初めこそ和海に似ているからと気になっていたが、今は違う。
彼女だから―――ははっ。
「なにか面白い事でも?」
「いや……こっちの話だ。なぁ、あんたとの付き合いも大分長くなっただろ。
俺もあんたを名前で呼びたい。あんたに名を贈ってもいいか?」
「……やったあぁ!」
今までで一番まぶしい笑顔だった。
その日から彼女は■■■となった。だけど、この名前は俺と彼女しか知らない。
彼女は名前を大切にしていた。俺意外に名を呼ばれたくないと可愛い事を言ってくれた。
「まぁ…立場上政宗と結婚は出来ないんだろうけど……でも、好きだって思うのは自由でしょ?
邪魔なんてしない。ただ……一緒に生きていたいな。
だから、政宗は戦で死んだりしないでよ?」
「当然だろう。まさか俺が死ぬとでも?」
「ないよね。だって政宗強いもんね!」
だが……そんな温かい日常はあっという間に終わりを告げた。
俺が戦へ出ている間、村を何者かが襲った。
連絡を受け、急ぎ村へ向かったが村は壊滅状態だった。
焼き討ちされ、生き残った者はいなかった。
村にただ一人立っていたのは■■■……だったものだ。
「……その腕」
ゆっくり振り返った■■■の瞳は眩い金色で、泣きはらし目元が腫れていた。
「ん…ああ、しくじった」
彼女の両腕は無く、代わりに黒い影のようなものが腕の形を成していた。
その手が握っていたものは、いつきの首だった。
「何も守れなかった。誰も救えなかった。俺にできたのは……殺すことだけだったよ」
力なく笑う■■■が再び和海の面影と重なった。
「頼む…村人たちを弔ってやってほしい」
いつきの首を俺に渡すと、フラフラとどこかへ歩いていこうとする。
「■■■!」
呼び止めても、彼女は振り返らない。
「俺にはもったいない名前だ。ごめんね、政宗。
私の名は鳳凰寺和海なんだよ。■■■の未来も、人生も……結局俺が殺しちゃったな」
和海の周りに影が渦のように巻く。
「次に会ったら多分私じゃいられない。だからどうか、もうこの世界では会いたくないな」
深い闇の中に沈んでいった。
伸ばした俺の手を掴むことは無い。掴む腕はもうないのだと和海は笑った。
それからしばらくして国中に妙な噂が流れ始めた。
バケモノが人を食い殺す、戦どころの話ではなくなっていた。
国々が協力しなければそもそも日本が滅んでしまう、そんな世界になった。
しかし、協力しても結局滅んだ。
何もかも破壊しつくして、誰もかれもを殺しつくして。
和海を見たのは関ケ原だった。各国の生き残った者があつまり、バケモノ退治だ。
その戦でも結局止めることは出来なかった。
身も心もすべてバケモノになっていたのなら、俺はためらわなかっただろう。
その身がバケモノになっていても、和海は自分の意識があった。
最後に向けた、俺への願い事が「殺して」だなんて……
名を受け取り、共に生きたいと言った時と同じ笑顔で死を乞われ、願いの通りその身を切り捨てても……彼女は死ななかった。
代わりに死んだのは俺の方だった。
人の命を食らい、死ぬことも許されなくなったバケモノがどうなるのか……
たった一人残される悲しさを知っていたから、薄れゆく意識の中和海のその後を案じていた。
それから、また再び俺は戦国の世を生きている。
そういった人生があったという記憶を継承しているというのだろうか。
とはいえ、全く同じ人生の歩みは無かった。どこかで何かが違い未来はいつも異なっていた。
この世界では、いつきの村にいつきの姉などと名乗る存在はいなかった。
だが―――再び同じ村で、彼女と巡り合った。
あの時と同じように短い髪で、俺の事を知らないという和海に出会った。
この出会いが、どこか運命めいて感じたのは……前の別れがつらかったからかもしれない。
あの時の記憶を覚えていないというのは、幸いだった。
賭けとして、記憶を戻すきっかけとなる接触でも、和海はバケモノになった記憶を思い出すことは無かった。
ならそのまま忘れていればいい。
しかし、巫女の神託はそれを許さなかった。
全ての記憶を取り戻す必要がある。それが和海に必要な事だと。
あんなことをした記憶を取り戻して……いくら今回の彼女はタフだとしても耐えられるのか?
だが、一度決めた事を無理やりにでも達成しようとするのが和海だ。
「……辛くなったら、ここに逃げてこい。和海の過去の事も含め受入れてやるよ」
「ははっ、流石伊達政宗!懐が広いね、ありがとう。
逃げ場があるっていうのは、いいね。それじゃ行ってくるよ」
陰に飛び込み和海は奥州から離れた。
「はぁ……過去は過去なんて、こっちは割り切れねぇんだよ」
俺が過去を引きずっているって言ったら、和海はどんな顔をするんだろうな。
「どうも、いつきちゃんのお姉ちゃんって呼ばれてます」
黒く短い髪で、外見だけでは一瞬少年と見間違えてしまった。
かなりの腕前で、一人で野党を追い払うほどだったという。
しばらく前にいつきの村に現れた、出身も名前も分からない不審者だった。
だが、すっかり村に打ち解けていた。名前が無いため、居候しているいつきの姉と呼ばれていた。
神出鬼没、正体不明、初めて和海に出会ったときに似ていた。
見た目もどこか近いものを感じてはいた。
『あなたに天下を。代わりに私に居場所を』
まっすぐこちらを見つめる瞳の強さも―――
「んんー?なにかな、私が誰かに似ているのかな?」
隙あらば抱き着いてくる。他人との距離が近い奴だった。
「…まぁ。知り合いに似ている奴がいたんだ」
不思議と嫌ではなかったし、抱き着かれるまでなぜか気づけない。
振り払ったと事で、いつのまにかまた抱き着いてくるのでもう諦めてもいる。
どうやら俺の事もいつきと同じ、可愛い子供という感覚らしい。どう見ても彼女の方が年下なのに、なんでそんな風に思うのかが疑問だった。
「世の中には3人は同じ顔の人がいるらしいからね。まぁ似ていても不思議ではないでしょ」
妙にニコニコと笑っている奴だった。
その明るさが村人に受け入れられたのだろうが、一人でいる時は妙に静かで、消えてしまいそうだった。
本来この場には存在しない、ありえない存在だと感じる。
この世界から浮いているようだった。
目を離したら、本当に消えてしまいそうで…いつしか、俺はずっと彼女の事を見ていた。
「……政宗様、またあの村へ行くつもりですか?」
小十郎に文句を言われても、何度も村へ足を向けた。
あいかわらず彼女に名前は無く、いつきのお姉ちゃんと呼ばれていた。
「名前が無いのは不便じゃないか?」
ずっと気になっていた疑問を
「……あんまり困ってないんだよね、これが。それに…名前が無い方がいい。
その名に縛られないからね。いつでも自由なんだ」
自由、そうは見えなかった。
自由になろうと、何かから逃げているようだった。
「……でも、名前あってもいいかもね。政宗には名前で呼んでほしいもん」
にっこり笑った彼女は和海に似ていたが、彼女とはまた違う笑顔だった。
こっちの笑顔の方が俺は好きだった。
ああ……そうか。初めこそ和海に似ているからと気になっていたが、今は違う。
彼女だから―――ははっ。
「なにか面白い事でも?」
「いや……こっちの話だ。なぁ、あんたとの付き合いも大分長くなっただろ。
俺もあんたを名前で呼びたい。あんたに名を贈ってもいいか?」
「……やったあぁ!」
今までで一番まぶしい笑顔だった。
その日から彼女は■■■となった。だけど、この名前は俺と彼女しか知らない。
彼女は名前を大切にしていた。俺意外に名を呼ばれたくないと可愛い事を言ってくれた。
「まぁ…立場上政宗と結婚は出来ないんだろうけど……でも、好きだって思うのは自由でしょ?
邪魔なんてしない。ただ……一緒に生きていたいな。
だから、政宗は戦で死んだりしないでよ?」
「当然だろう。まさか俺が死ぬとでも?」
「ないよね。だって政宗強いもんね!」
だが……そんな温かい日常はあっという間に終わりを告げた。
俺が戦へ出ている間、村を何者かが襲った。
連絡を受け、急ぎ村へ向かったが村は壊滅状態だった。
焼き討ちされ、生き残った者はいなかった。
村にただ一人立っていたのは■■■……だったものだ。
「……その腕」
ゆっくり振り返った■■■の瞳は眩い金色で、泣きはらし目元が腫れていた。
「ん…ああ、しくじった」
彼女の両腕は無く、代わりに黒い影のようなものが腕の形を成していた。
その手が握っていたものは、いつきの首だった。
「何も守れなかった。誰も救えなかった。俺にできたのは……殺すことだけだったよ」
力なく笑う■■■が再び和海の面影と重なった。
「頼む…村人たちを弔ってやってほしい」
いつきの首を俺に渡すと、フラフラとどこかへ歩いていこうとする。
「■■■!」
呼び止めても、彼女は振り返らない。
「俺にはもったいない名前だ。ごめんね、政宗。
私の名は鳳凰寺和海なんだよ。■■■の未来も、人生も……結局俺が殺しちゃったな」
和海の周りに影が渦のように巻く。
「次に会ったら多分私じゃいられない。だからどうか、もうこの世界では会いたくないな」
深い闇の中に沈んでいった。
伸ばした俺の手を掴むことは無い。掴む腕はもうないのだと和海は笑った。
それからしばらくして国中に妙な噂が流れ始めた。
バケモノが人を食い殺す、戦どころの話ではなくなっていた。
国々が協力しなければそもそも日本が滅んでしまう、そんな世界になった。
しかし、協力しても結局滅んだ。
何もかも破壊しつくして、誰もかれもを殺しつくして。
和海を見たのは関ケ原だった。各国の生き残った者があつまり、バケモノ退治だ。
その戦でも結局止めることは出来なかった。
身も心もすべてバケモノになっていたのなら、俺はためらわなかっただろう。
その身がバケモノになっていても、和海は自分の意識があった。
最後に向けた、俺への願い事が「殺して」だなんて……
名を受け取り、共に生きたいと言った時と同じ笑顔で死を乞われ、願いの通りその身を切り捨てても……彼女は死ななかった。
代わりに死んだのは俺の方だった。
人の命を食らい、死ぬことも許されなくなったバケモノがどうなるのか……
たった一人残される悲しさを知っていたから、薄れゆく意識の中和海のその後を案じていた。
それから、また再び俺は戦国の世を生きている。
そういった人生があったという記憶を継承しているというのだろうか。
とはいえ、全く同じ人生の歩みは無かった。どこかで何かが違い未来はいつも異なっていた。
この世界では、いつきの村にいつきの姉などと名乗る存在はいなかった。
だが―――再び同じ村で、彼女と巡り合った。
あの時と同じように短い髪で、俺の事を知らないという和海に出会った。
この出会いが、どこか運命めいて感じたのは……前の別れがつらかったからかもしれない。
あの時の記憶を覚えていないというのは、幸いだった。
賭けとして、記憶を戻すきっかけとなる接触でも、和海はバケモノになった記憶を思い出すことは無かった。
ならそのまま忘れていればいい。
しかし、巫女の神託はそれを許さなかった。
全ての記憶を取り戻す必要がある。それが和海に必要な事だと。
あんなことをした記憶を取り戻して……いくら今回の彼女はタフだとしても耐えられるのか?
だが、一度決めた事を無理やりにでも達成しようとするのが和海だ。
「……辛くなったら、ここに逃げてこい。和海の過去の事も含め受入れてやるよ」
「ははっ、流石伊達政宗!懐が広いね、ありがとう。
逃げ場があるっていうのは、いいね。それじゃ行ってくるよ」
陰に飛び込み和海は奥州から離れた。
「はぁ……過去は過去なんて、こっちは割り切れねぇんだよ」
俺が過去を引きずっているって言ったら、和海はどんな顔をするんだろうな。