天下統一計画(仮)
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「あなたを止めに来ました、和海さん」
……セーラー服着た巫女だ。
可笑しい、俺は奥州に来たんだ。伊達に会いに来たのに…彼女は何者だ?
俺は約束通り朝食を食べて奥州へ向かった。
流石にいきなり城内へ飛び込むのは失礼かと思い、城門前へ向かった。
すると、セーラー服っぽい服装の少女と、銃を備えたかっこいい女性がいた。
てっきり伊達に用事があると思っていたのだが、彼女たちは俺を見た途端警戒した。
なに?俺ってば指名手配とかそんなんなってるの?
「はじめまして、わたしは鶴姫です。あなたにまつわる未来を見ました。
わたしに任せてください、ドーンと解決してみます!」
「あー…えっと、幸運の壺とかそういうの勧められても買う余裕ないです。
俺はザビー教だけで間に合ってます」
「姫巫女、宗教勧誘と勘違いされているぞ」
「ガガーン!なんということでしょう!違いますよ、そういう事じゃないんです。
ゴホン…わたしにはあなたの未来が見えたんです」
うん…やっぱり宗教勧誘だ。
「あの、忙しいんで。また後で」
城門を抜けようとすると、鶴姫と名乗った少女に手を掴まれた。
「!!!」
「……見えましたね?わたしはあなたを止めに来ました、和海さん」
断片的に見えた映像は、俺であって俺じゃない。
鳳凰寺とも呼べない。あれは怪物だ、死をまき散らすだけの獣。
「見えた未来へ歩ませないために、わたしはあなたを止めたいんです」
冗談で言っている訳じゃない、彼女は真面目に言っている。
でも、手を触れて見えたあれは……俺の過去じゃないのか?
「―――なかなか来ないと思ったら、朝っぱらからナンパか?和海」
「あ、政宗」
「……海神の巫女がこんな場所まで何の用だ?アンタは、ボディーガードってところか」
ふむ、伊達は彼女らの事を知っているようだ。
「姫巫女がどうしても会わなければならない人物がいると言ってな。
奥州に行けば会えるというから、こうして共に旅をしてきた」
「バッチリ逢えました!これも巫女の力です」
「巫女って便利だな~」
先見の明とでもいうのか、俺もそれ欲しいな。
「いや、ここでわちゃわちゃしてる場合じゃないんだよ。
えっと、鶴姫さんでしたね。火急の用があるので、お話はその後でもいいでしょうか?」
「―――はい。こちらでお待ちしております」
「いくぞ、政宗」
俺は逃げるように政宗の手を引いて陰に沈む。
到着した先は特に誰もいない街道だ。
もうしばらくすればこの場所を一揆衆が通る…気がする。
「はぁ……あの子なんだったんだ?」
とりあえずいつき達が来るまで俺はさっき見えた記憶を思い返していた。
「伊予河野の鶴姫だ。海神の巫女として予言の能力があるそうだ」
「巫女ね……まぁ、ジャストタイミングで奥州で俺と鉢合わせたっていうのは能力のおかげなのかね?
それで、政宗はどちらとも知り合いか?」
なんとも鶴姫は有名人らしい。なんか北条とも親しいそうだ。
そんで、あちらのかっこいい女性は雑賀衆の党首雑賀孫一らしい。
かっこいいな、おっぱいのついたイケメンってああいう人の事言うんだろうな。
雑賀とはちょっとした知り合いらしい。
「和海……巫女からはどんな死が見えた?」
伊達の表情は真剣そのものだった。
「そうだな……彼女とほぼ相打ちって感じだ。彼女を殺したけど、彼女の放った矢が最終的に俺に当たって死んだ。あと、……俺が俺じゃなかった」
どうするべきかと悩んでいるようだった。伊達はしばらく考えて、重い口を開いた。
「その時のお前が、俺の事を覚えていなかった和海だ」
「うーん、あれは分からんって。俺から見ても俺じゃないもん。バケモノだったわ」
褐色の肌、金色の瞳、無数の影を鞭の様にしならせ、触れるものみな殺していた。
自分が傷つけば、近くの命を奪って回復するという…うん、あれ人間ですらないわ。
あれが松永の言っていたヤバい俺か。
「まぁ、どうしてああなったのかは鶴姫が知っているようだから、帰ったら聞けばいいな。
とりあえず、今は彼女を連れて帰ろう」
次第に近づいてくる足音。
集団は俺達に気づいて足を止める。
「な、なんで青いお侍さんがここにいるだ?」
そう思うよね、奥州からいつの間に自分たちを抜かしたんだってね。
「それはこっちのセリフだぜ、どうしてお前たちがこんな場所に居るんだ」
鋭い駄目の視線に射抜かれていつきは一瞬言いよどむが、覚悟を決めたのか負けない位強い視線でこちらを見つめてくる。
「おらは!悪いおさむらいさんをやっつけるだ!」
このまま進むと、当たるのは浅井……悪いお侍さん扱いか。可哀想に。
いつきが熱く語っているが、俺としてはあまり興味がないので伊達に話しかける。
「さて、政宗。ここで一戦交えるか?それとも連れて帰るか」
「……連れて帰れるのか?この人数を」
それなりに多い。まぁ、多いんだけどできるイメージは沸いている。
鶴姫に触れたときに、より陰の使い方が分かった気がする。
「このくらいなら余裕だ。それに、集団の後ろの方…さっさと手当してやらないとまずそうだ」
「なら俺の城へ。手当するついでに、一揆について詳しい話を聞きたいからな」
「了解。いつきさん、詳しいお話は帰ってからにしましょう」
目を閉じる。人の気配が鮮明になる。
生きている気配をすべて包み込むイメージだ。
一揆衆から悲鳴が上がるが、無視だ無視。伊達を含めすべてを抱擁し、そのまま闇に沈んだ。
思ったよりも簡単だった。沈むことは楽だったが、ここから浮上するのが難しかった。
気を抜くと永遠に沈んでしまいそうだったからだ。
その沈みゆく感覚がどこか心地よく、そのまま沈んでしまいたいと思う。
だが、この気持ちに飲み込まれてはいけないと脳が警鐘を鳴らしている。
奥州に帰らなければ。
パッと目を開いたとき、飛び込んできた景色は伊達の城だった。城門を抜けた、城の正面だった。
一揆衆は何が起きたかわからず混乱している。
伊達も一度陰での移動は経験済みのはずなのに驚いた顔をしている。
「……和海、大丈夫か?」
「え?俺は全然平気だけど」
なんでも俺は泣いていたようだ。なぜなのかは分からないが、確かに頬を濡らしていた。
「なんだろう、まぁ疲れたんじゃないか?」
涙を拭って笑いかけるが、伊達はまだ俺を心配そうに見ている。
「俺の事はいいから、ほら一揆衆の面倒見てやれよ。
俺は―――あっちで話を聞いてくる」
城門にいる鶴姫たちの方を指さすと、外じゃなくて城の中で話をするように言われた。
城の外で、忍びにでも話を聞かれたら厄介だからだという。
人払いをしてくれた部屋に俺と、鶴姫、雑賀と伊達の4人が集まった。
「いや、政宗……お前はここに居ちゃダメだろ」
「小十郎が対応しているから問題ねぇ」
うーん…片倉さん、お疲れ様です。
「それじゃあ、まぁ……改めまして。俺は和海
鶴姫さんは未来が見えるんですか?」
子供にしか見えないが、まぁいつきだって子供だけど戦闘力すごいし、見た目でどうこう言うのは愚かだろう。
「はい、ただ……実際にお会いして、未来がいくつか分岐しているんです」
俺がバケモノになった世界線はどうやら薄くなっているらしい。多分あれは未来じゃなくて過去だと思うんだけどな。
「それで、鶴姫さんはあの未来を止めたくて俺のもとに来たんですか?」
「そうですね……あの未来を止めたいのもありますが
あなたを守るためにも2つ、忠告です。
1つ目は、その血を使わないでください。あなたの願いは国を死に至らしめてしまいます。
血を使って願わなければ、きっとあの未来にはたどり着かないです」
「……血?」
雑賀は分からない様で不思議そうにつぶやいた。
ただ詳しく聞きたいというより、疑問で口から言葉が零れただけだろう。
……まぁ使うつもりもないし、多分自分自身の血は使えないんじゃないだろうか?
自分の血は使えなくても……もう一人の自分が流す血はどうなんだろうか。
「2つ目は、あちらの和海さんを殺してはいけません。
死なせてはいけないという事です。あの人はあなたの前世です」
パチリと、抜けていたパズルがハマった気がした。
なんで鳳凰寺が伊達にこの世界を前世と言ったのか。
あの和海が残した血筋が俺で、そして俺の前世でもあるのか。
「……わたしは、和海さんだった怪物を殺しきれず、封印しました。
おそらく、記憶の欠落があるのではありませんか?」
「確かに記憶の欠落はある。けど、だからどうした?
もしかして、それを取り戻す術があるというのか?」
鶴姫は頷いた。彼女は自分の領地にある神社に俺の記憶を封じているらしい。すごいな。
何でのありだな、この世界。
ただ、取り戻すにはリスクも伴うという。
「この時代の和海さん、封印された和海さん、そしてあなた。
皆さん自分の心を持っています。封印された記憶を取り戻したとき、いまの和海さんでいられるかわかりません」
記憶を取り戻すと、それまでの記憶を失ってしまうという奴らしい。
「……まぁ、今の俺がいなくなってもあんまり困らないだろうけど。
封印されたときの俺が復活するとまずいんだろ?」
「そうです、ただ……繰り返される旅路を終える為には記憶を取り戻す必要があるんです」
そうなると記憶を取り戻すしかないが……。
「記憶を取り戻すのは賛成だけど、それはもう少し先でもいいか?
ちょっと戦の予定があるんだ。終わったら半年くらいは暇になるはずだからさ
その時に……そちらの神社へ向かわせてもらいます」
俺が頭を下げると鶴姫はなぜか悲しそうな顔で謝ってきた。
いや、迷惑というか面倒かけているのは俺なので別に謝ってもらう必要はないんだけどな。
「話は変わりますが、お二人はどうやってここまで?
帰るなら、送っていきますけど」
「わたしは孫市ねえさまと巡礼というなの全国旅行中なので気にしないでください。
のんびり諸国をめぐって帰ります!」
「……ということだ。折角の申し出だが、遠慮させてもらおう」
キャッキャ楽しそうだなぁ。俺も諸国めぐりたかったなぁ……。
とりあえず鶴姫たちとは奥州で別れて俺は浅井のもとへ向かう事にした。
「今日は泊っていけばいいじゃねぇか」
すぐに国を出ようとする俺が気に入らないのか伊達に呼び止められた。
「これ以上片倉殿に苦労を掛けるわけにはいかないって」
「―――国を滅ぼしたって聞いて、あまり動揺していないんだな」
「一応驚いてはいる。記憶を取り戻して、また国を亡ぼすんじゃないかって不安もあるぞ」
「それなのに、記憶を取り戻すつもりなのか?」
「だって……せっかくなら知りたいじゃん。俺がどんなふうに生きてきたのかを」
その分死も見る事になるが、それでも忘れてしまっていることを全部思い出しておきたかった。
……セーラー服着た巫女だ。
可笑しい、俺は奥州に来たんだ。伊達に会いに来たのに…彼女は何者だ?
俺は約束通り朝食を食べて奥州へ向かった。
流石にいきなり城内へ飛び込むのは失礼かと思い、城門前へ向かった。
すると、セーラー服っぽい服装の少女と、銃を備えたかっこいい女性がいた。
てっきり伊達に用事があると思っていたのだが、彼女たちは俺を見た途端警戒した。
なに?俺ってば指名手配とかそんなんなってるの?
「はじめまして、わたしは鶴姫です。あなたにまつわる未来を見ました。
わたしに任せてください、ドーンと解決してみます!」
「あー…えっと、幸運の壺とかそういうの勧められても買う余裕ないです。
俺はザビー教だけで間に合ってます」
「姫巫女、宗教勧誘と勘違いされているぞ」
「ガガーン!なんということでしょう!違いますよ、そういう事じゃないんです。
ゴホン…わたしにはあなたの未来が見えたんです」
うん…やっぱり宗教勧誘だ。
「あの、忙しいんで。また後で」
城門を抜けようとすると、鶴姫と名乗った少女に手を掴まれた。
「!!!」
「……見えましたね?わたしはあなたを止めに来ました、和海さん」
断片的に見えた映像は、俺であって俺じゃない。
鳳凰寺とも呼べない。あれは怪物だ、死をまき散らすだけの獣。
「見えた未来へ歩ませないために、わたしはあなたを止めたいんです」
冗談で言っている訳じゃない、彼女は真面目に言っている。
でも、手を触れて見えたあれは……俺の過去じゃないのか?
「―――なかなか来ないと思ったら、朝っぱらからナンパか?和海」
「あ、政宗」
「……海神の巫女がこんな場所まで何の用だ?アンタは、ボディーガードってところか」
ふむ、伊達は彼女らの事を知っているようだ。
「姫巫女がどうしても会わなければならない人物がいると言ってな。
奥州に行けば会えるというから、こうして共に旅をしてきた」
「バッチリ逢えました!これも巫女の力です」
「巫女って便利だな~」
先見の明とでもいうのか、俺もそれ欲しいな。
「いや、ここでわちゃわちゃしてる場合じゃないんだよ。
えっと、鶴姫さんでしたね。火急の用があるので、お話はその後でもいいでしょうか?」
「―――はい。こちらでお待ちしております」
「いくぞ、政宗」
俺は逃げるように政宗の手を引いて陰に沈む。
到着した先は特に誰もいない街道だ。
もうしばらくすればこの場所を一揆衆が通る…気がする。
「はぁ……あの子なんだったんだ?」
とりあえずいつき達が来るまで俺はさっき見えた記憶を思い返していた。
「伊予河野の鶴姫だ。海神の巫女として予言の能力があるそうだ」
「巫女ね……まぁ、ジャストタイミングで奥州で俺と鉢合わせたっていうのは能力のおかげなのかね?
それで、政宗はどちらとも知り合いか?」
なんとも鶴姫は有名人らしい。なんか北条とも親しいそうだ。
そんで、あちらのかっこいい女性は雑賀衆の党首雑賀孫一らしい。
かっこいいな、おっぱいのついたイケメンってああいう人の事言うんだろうな。
雑賀とはちょっとした知り合いらしい。
「和海……巫女からはどんな死が見えた?」
伊達の表情は真剣そのものだった。
「そうだな……彼女とほぼ相打ちって感じだ。彼女を殺したけど、彼女の放った矢が最終的に俺に当たって死んだ。あと、……俺が俺じゃなかった」
どうするべきかと悩んでいるようだった。伊達はしばらく考えて、重い口を開いた。
「その時のお前が、俺の事を覚えていなかった和海だ」
「うーん、あれは分からんって。俺から見ても俺じゃないもん。バケモノだったわ」
褐色の肌、金色の瞳、無数の影を鞭の様にしならせ、触れるものみな殺していた。
自分が傷つけば、近くの命を奪って回復するという…うん、あれ人間ですらないわ。
あれが松永の言っていたヤバい俺か。
「まぁ、どうしてああなったのかは鶴姫が知っているようだから、帰ったら聞けばいいな。
とりあえず、今は彼女を連れて帰ろう」
次第に近づいてくる足音。
集団は俺達に気づいて足を止める。
「な、なんで青いお侍さんがここにいるだ?」
そう思うよね、奥州からいつの間に自分たちを抜かしたんだってね。
「それはこっちのセリフだぜ、どうしてお前たちがこんな場所に居るんだ」
鋭い駄目の視線に射抜かれていつきは一瞬言いよどむが、覚悟を決めたのか負けない位強い視線でこちらを見つめてくる。
「おらは!悪いおさむらいさんをやっつけるだ!」
このまま進むと、当たるのは浅井……悪いお侍さん扱いか。可哀想に。
いつきが熱く語っているが、俺としてはあまり興味がないので伊達に話しかける。
「さて、政宗。ここで一戦交えるか?それとも連れて帰るか」
「……連れて帰れるのか?この人数を」
それなりに多い。まぁ、多いんだけどできるイメージは沸いている。
鶴姫に触れたときに、より陰の使い方が分かった気がする。
「このくらいなら余裕だ。それに、集団の後ろの方…さっさと手当してやらないとまずそうだ」
「なら俺の城へ。手当するついでに、一揆について詳しい話を聞きたいからな」
「了解。いつきさん、詳しいお話は帰ってからにしましょう」
目を閉じる。人の気配が鮮明になる。
生きている気配をすべて包み込むイメージだ。
一揆衆から悲鳴が上がるが、無視だ無視。伊達を含めすべてを抱擁し、そのまま闇に沈んだ。
思ったよりも簡単だった。沈むことは楽だったが、ここから浮上するのが難しかった。
気を抜くと永遠に沈んでしまいそうだったからだ。
その沈みゆく感覚がどこか心地よく、そのまま沈んでしまいたいと思う。
だが、この気持ちに飲み込まれてはいけないと脳が警鐘を鳴らしている。
奥州に帰らなければ。
パッと目を開いたとき、飛び込んできた景色は伊達の城だった。城門を抜けた、城の正面だった。
一揆衆は何が起きたかわからず混乱している。
伊達も一度陰での移動は経験済みのはずなのに驚いた顔をしている。
「……和海、大丈夫か?」
「え?俺は全然平気だけど」
なんでも俺は泣いていたようだ。なぜなのかは分からないが、確かに頬を濡らしていた。
「なんだろう、まぁ疲れたんじゃないか?」
涙を拭って笑いかけるが、伊達はまだ俺を心配そうに見ている。
「俺の事はいいから、ほら一揆衆の面倒見てやれよ。
俺は―――あっちで話を聞いてくる」
城門にいる鶴姫たちの方を指さすと、外じゃなくて城の中で話をするように言われた。
城の外で、忍びにでも話を聞かれたら厄介だからだという。
人払いをしてくれた部屋に俺と、鶴姫、雑賀と伊達の4人が集まった。
「いや、政宗……お前はここに居ちゃダメだろ」
「小十郎が対応しているから問題ねぇ」
うーん…片倉さん、お疲れ様です。
「それじゃあ、まぁ……改めまして。俺は和海
鶴姫さんは未来が見えるんですか?」
子供にしか見えないが、まぁいつきだって子供だけど戦闘力すごいし、見た目でどうこう言うのは愚かだろう。
「はい、ただ……実際にお会いして、未来がいくつか分岐しているんです」
俺がバケモノになった世界線はどうやら薄くなっているらしい。多分あれは未来じゃなくて過去だと思うんだけどな。
「それで、鶴姫さんはあの未来を止めたくて俺のもとに来たんですか?」
「そうですね……あの未来を止めたいのもありますが
あなたを守るためにも2つ、忠告です。
1つ目は、その血を使わないでください。あなたの願いは国を死に至らしめてしまいます。
血を使って願わなければ、きっとあの未来にはたどり着かないです」
「……血?」
雑賀は分からない様で不思議そうにつぶやいた。
ただ詳しく聞きたいというより、疑問で口から言葉が零れただけだろう。
……まぁ使うつもりもないし、多分自分自身の血は使えないんじゃないだろうか?
自分の血は使えなくても……もう一人の自分が流す血はどうなんだろうか。
「2つ目は、あちらの和海さんを殺してはいけません。
死なせてはいけないという事です。あの人はあなたの前世です」
パチリと、抜けていたパズルがハマった気がした。
なんで鳳凰寺が伊達にこの世界を前世と言ったのか。
あの和海が残した血筋が俺で、そして俺の前世でもあるのか。
「……わたしは、和海さんだった怪物を殺しきれず、封印しました。
おそらく、記憶の欠落があるのではありませんか?」
「確かに記憶の欠落はある。けど、だからどうした?
もしかして、それを取り戻す術があるというのか?」
鶴姫は頷いた。彼女は自分の領地にある神社に俺の記憶を封じているらしい。すごいな。
何でのありだな、この世界。
ただ、取り戻すにはリスクも伴うという。
「この時代の和海さん、封印された和海さん、そしてあなた。
皆さん自分の心を持っています。封印された記憶を取り戻したとき、いまの和海さんでいられるかわかりません」
記憶を取り戻すと、それまでの記憶を失ってしまうという奴らしい。
「……まぁ、今の俺がいなくなってもあんまり困らないだろうけど。
封印されたときの俺が復活するとまずいんだろ?」
「そうです、ただ……繰り返される旅路を終える為には記憶を取り戻す必要があるんです」
そうなると記憶を取り戻すしかないが……。
「記憶を取り戻すのは賛成だけど、それはもう少し先でもいいか?
ちょっと戦の予定があるんだ。終わったら半年くらいは暇になるはずだからさ
その時に……そちらの神社へ向かわせてもらいます」
俺が頭を下げると鶴姫はなぜか悲しそうな顔で謝ってきた。
いや、迷惑というか面倒かけているのは俺なので別に謝ってもらう必要はないんだけどな。
「話は変わりますが、お二人はどうやってここまで?
帰るなら、送っていきますけど」
「わたしは孫市ねえさまと巡礼というなの全国旅行中なので気にしないでください。
のんびり諸国をめぐって帰ります!」
「……ということだ。折角の申し出だが、遠慮させてもらおう」
キャッキャ楽しそうだなぁ。俺も諸国めぐりたかったなぁ……。
とりあえず鶴姫たちとは奥州で別れて俺は浅井のもとへ向かう事にした。
「今日は泊っていけばいいじゃねぇか」
すぐに国を出ようとする俺が気に入らないのか伊達に呼び止められた。
「これ以上片倉殿に苦労を掛けるわけにはいかないって」
「―――国を滅ぼしたって聞いて、あまり動揺していないんだな」
「一応驚いてはいる。記憶を取り戻して、また国を亡ぼすんじゃないかって不安もあるぞ」
「それなのに、記憶を取り戻すつもりなのか?」
「だって……せっかくなら知りたいじゃん。俺がどんなふうに生きてきたのかを」
その分死も見る事になるが、それでも忘れてしまっていることを全部思い出しておきたかった。