天下統一計画(仮)
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「同盟……」
秀吉の言葉にめまいを覚えた。
どうしてあの得体のしれない存在と同盟を結ぼうと思ったのか、その時は理解できなかった。
船の中で一緒に過ごすうちに、和海という存在が良く分からなくなってきた。
どこかの密偵かとも思ったが、そういうわけではない。
名前以外は何も語らず、どこから来たのかもわからない。
初めて会った時は赤い目だったはずだが、今は琥珀色に変わっている。
農民からの成り上がり、にしては知識や戦略についても詳しい。
つい話が弾んでしまった所為で、和海の前でむせ込む姿を見せてしまった。
血は見せずに済んだと思う。けれど、和海は何か察したような表情を浮かべながら、僕の背をさすっていた。
その時、目の錯覚かと思ったが彼の髪は白く染まっていた。
一度せき込むと、しばらく苦しさが続くというのに和海にさすられてからは苦しさがない。
久しぶりにその夜は何の苦しさも感じずに眠ることもできた。
普段見る彼の髪は黒。あの日見た白い髪は何だったのか。
見間違いかとも思ったが、ザビー城を攻略した後の和海はまた白い髪になっていた。
一瞬の出来事ではあったが、髪色が確かに変わった。
ーーーーーあれは、和海の能力なのだろうか?
「元親君」
「あん…?何の用だ」
怪我した和海は秀吉によって運ばれていった為、僕と元親君だけがこの場に残された。
「君も見たんじゃないのかな、和海の髪色が変わるところ」
そう尋ねると、身を強張らせた。
「その様子なら、君も見たようだね。どんな能力かわかるかい?」
「知らねぇよ」
……なぜ照れるのか。
「あの状態の和海に僕も会ったことがあるんだ」
「は?まさかアンタも―――」
「僕がなんだっていうのかな?君はどんな気持ちになったんだい?」
顔を覆いながら、うめき声をあげる。
「わかんねぇ、なんか変な感じなんだよ。
アイツの事まともに見てられねぇ。戦の時とはまた違う、心臓がうるせぇんだ……」
「別に僕は君からのろけ話を聞きたいわけじゃないんだが」
「だぁ!アンタが話せっていうから話したんだろうが!」
僕の時と感じ方が違う?
どちらかといえば穏やかな気持ち、落ち着いた気持ちになれた。
「……これはなんだかおもしろそうだね」
その後、和海の怪我の様子を伺うために部屋に向かう。
医師の話では、傷はそれほど深くはないが、それよりも和海自身のもともとの怪我の多さに驚いた。
それと、背中に掘られた家紋のような鳥の紋……。
鳥の家紋と聞いて思いうかぶのは伊達、上杉。しかし医師の描いた鳥はまるで違う。
「鶴…いや、鳳凰?」
そんな家紋の武将は記憶にない。わざわざ自身の体に家紋を入れる必要もないはずだ。
和海は男ではなく、女だった。嫁ぐ身で家紋を彫るという話は聞いたことがない。
彼女はこの家紋の事を知っているのだろうか?
しばらく考えてみたが、答えは結局本人に聞く以外にないと思い、夜に彼女の部屋に訪れた。
昼間、人がいる場では話しにくい気がしたからだ。
特にここ数日、元親君がずっとついて回っている。まるで犬のようだ。
眺めている分には面白いが、話があるときは非常に邪魔だった。普通に挨拶するだけでも威嚇するかのように睨みつけてくる。
和海は面倒な狂犬を拾ってしまったようだと僕は内心笑っていた。
「やっべー、絶対怒られる―」
部屋に近づくと、彼女の声が聞こえる。まだ起きているようだ。
「夜は寝なさいと言っただろう!」
「うぉ!竹中!」
ちょっと驚かすつもりでふすまを開けると和海は勢いよく飛びあがり、そのまま背筋を伸ばした美しい正座をした。
「一体ブツブツと何を言っているんだい?まさか誰かいるとか?」
「居ません!寝れなかったので今後の事を考えていました!」
「……」
まさか部屋に元親君が来ているのかと思い、じっと彼女の顔を見つめる。
都合が悪い事でもあるのか、明らかに視線を逸らす。それが気に入らず、彼女の顔を抑えて無理やり視線を合わせる。
月明かりに照らされる彼女の瞳はやはり琥珀色で髪も黒いままだ。
普段の彼女はこの色なのだろう。色の変わる条件は一体何なのだろうか?
「ひょんとれす…あと言い訳考えてました」
「…言い訳?」
やはりこの部屋に誰かいたという事だろうか。手を放して彼女が弁明できるようにする。
「あー…竹中さんはもうご存じだと思うんですが、俺が性別を伝えていなかった事なんですけど」
僕の事は名で呼ばないのに、なぜ元親君の事は愛称で呼んでいるんだろうか。
「なにか言い訳をしないといけないことがあるのかな?」
性別に関しては、本人が言いたがっていなかったので特に問う事をしなかったのはこちらだ。
「その……お風呂の事とか?医者の手当の件とか気を遣わせることになってすみません?」
男だと思ってたら女だったというのは、確かに医師は驚いたかもしれない。僕は話で聞いただけなのでそれほど驚きはしなかった。
「何故疑問形なのかな?まあ、驚いたのは確かだけど、それだけの事だよ。君が隠したがっているようだったから他の人には伏せておいたけどね」
「ありがとうございます」
僕の方を見て、なんだか感動しているような様子だった。
今だったら、質問に答えてくれるだろうか?
「それで……僕から質問したいことがあるんだけど、いいかな?」
「なんですか?」
「君の背中……あれは家紋かい?」
和海は眉をしかめ、ぺちぺちと自分の背中を叩いている。どうやら家紋の事を知らないようだった。
「その…背中って自分じゃ見えなくて、どうなってたんですか」
「鳥…かな?」
たったそれだけの言葉だったのに、和海の顔からは血の気が引いて青白くなった。
この紋にどんな意味があるというのだろうか。
「顔色が悪いようだ、大丈夫かい?」
「あの…はい。大丈夫だと思います。その…知らない間にそんなものが刻まれていた事実に驚いてまして」
和海は過去を語らない。
もしかして、和海は過去を覚えていないのだろうか?
あの家紋を調べていけば和海について何か分かるかもしれない。けれど―――
「君について、何も知らないから……いつか君から話してくれるのを待つことにするよ」
「……待ってくれて、ありがとうございます」
ほっとした表情を浮かべる。やはり深く追及するべきではないと判断し、今日の質問は此処までにすることにした。
「あまり長い時間待つ余裕はないからね。それじゃあそろそろ寝たまえ。明日は次の戦について相談したいからね」
「分かりました」
少しは顔色が落ち着いてきたようだ。明日にはいつも通りの和海だろう。
翌朝。
確かに和海にも元親君にも話があるといったが、一緒に来いとは言っていない。
さも当然のように元親君は和海の隣を歩いていた。
「おはよう、おや随分と仲が良くなったようだね」
冗談として声を掛けた。元親君はそれが嫌味だと思いこちらを睨みつけてくるが和海は全然気づいていない。
「そうなら嬉しいけどな。次はどこと戦う予定なんだ」
はにかみながら和海が答えると、元親君はまた両手で顔を覆って、今日は天を仰いでいた。
―――なんなんだ。俺のものだと言わんばかりに周りを威嚇して歩いているくせに、その反応は何なんだ?
「和海には姉川を目指してもらうつもりだ」
真剣に僕の話に耳を傾ける和海、いまだに天を仰ぐ元親君。
「……元親君、君はいい加減座ったらどうだい?」
「あ、ああ…」
やっと現実に帰ってきた元親君は当然のように彼女の横に座る。
こんな状態で別々の場所で戦があると伝えて、動けるのだろうか?
別行動だと伝えると、元親君は想像通り不機嫌になる。この先が不安だった。
「きっとチカなら大きな騒ぎにならずにうまくことを収めてくれるって信じてるよ」
「お、おう!当然だ、俺に任せておけ!」
褒められた犬のように嬉しそうだ。
元親君は扱いやすい男ではあったが、より扱いやすい方法が分かった気がした。
秀吉の言葉にめまいを覚えた。
どうしてあの得体のしれない存在と同盟を結ぼうと思ったのか、その時は理解できなかった。
船の中で一緒に過ごすうちに、和海という存在が良く分からなくなってきた。
どこかの密偵かとも思ったが、そういうわけではない。
名前以外は何も語らず、どこから来たのかもわからない。
初めて会った時は赤い目だったはずだが、今は琥珀色に変わっている。
農民からの成り上がり、にしては知識や戦略についても詳しい。
つい話が弾んでしまった所為で、和海の前でむせ込む姿を見せてしまった。
血は見せずに済んだと思う。けれど、和海は何か察したような表情を浮かべながら、僕の背をさすっていた。
その時、目の錯覚かと思ったが彼の髪は白く染まっていた。
一度せき込むと、しばらく苦しさが続くというのに和海にさすられてからは苦しさがない。
久しぶりにその夜は何の苦しさも感じずに眠ることもできた。
普段見る彼の髪は黒。あの日見た白い髪は何だったのか。
見間違いかとも思ったが、ザビー城を攻略した後の和海はまた白い髪になっていた。
一瞬の出来事ではあったが、髪色が確かに変わった。
ーーーーーあれは、和海の能力なのだろうか?
「元親君」
「あん…?何の用だ」
怪我した和海は秀吉によって運ばれていった為、僕と元親君だけがこの場に残された。
「君も見たんじゃないのかな、和海の髪色が変わるところ」
そう尋ねると、身を強張らせた。
「その様子なら、君も見たようだね。どんな能力かわかるかい?」
「知らねぇよ」
……なぜ照れるのか。
「あの状態の和海に僕も会ったことがあるんだ」
「は?まさかアンタも―――」
「僕がなんだっていうのかな?君はどんな気持ちになったんだい?」
顔を覆いながら、うめき声をあげる。
「わかんねぇ、なんか変な感じなんだよ。
アイツの事まともに見てられねぇ。戦の時とはまた違う、心臓がうるせぇんだ……」
「別に僕は君からのろけ話を聞きたいわけじゃないんだが」
「だぁ!アンタが話せっていうから話したんだろうが!」
僕の時と感じ方が違う?
どちらかといえば穏やかな気持ち、落ち着いた気持ちになれた。
「……これはなんだかおもしろそうだね」
その後、和海の怪我の様子を伺うために部屋に向かう。
医師の話では、傷はそれほど深くはないが、それよりも和海自身のもともとの怪我の多さに驚いた。
それと、背中に掘られた家紋のような鳥の紋……。
鳥の家紋と聞いて思いうかぶのは伊達、上杉。しかし医師の描いた鳥はまるで違う。
「鶴…いや、鳳凰?」
そんな家紋の武将は記憶にない。わざわざ自身の体に家紋を入れる必要もないはずだ。
和海は男ではなく、女だった。嫁ぐ身で家紋を彫るという話は聞いたことがない。
彼女はこの家紋の事を知っているのだろうか?
しばらく考えてみたが、答えは結局本人に聞く以外にないと思い、夜に彼女の部屋に訪れた。
昼間、人がいる場では話しにくい気がしたからだ。
特にここ数日、元親君がずっとついて回っている。まるで犬のようだ。
眺めている分には面白いが、話があるときは非常に邪魔だった。普通に挨拶するだけでも威嚇するかのように睨みつけてくる。
和海は面倒な狂犬を拾ってしまったようだと僕は内心笑っていた。
「やっべー、絶対怒られる―」
部屋に近づくと、彼女の声が聞こえる。まだ起きているようだ。
「夜は寝なさいと言っただろう!」
「うぉ!竹中!」
ちょっと驚かすつもりでふすまを開けると和海は勢いよく飛びあがり、そのまま背筋を伸ばした美しい正座をした。
「一体ブツブツと何を言っているんだい?まさか誰かいるとか?」
「居ません!寝れなかったので今後の事を考えていました!」
「……」
まさか部屋に元親君が来ているのかと思い、じっと彼女の顔を見つめる。
都合が悪い事でもあるのか、明らかに視線を逸らす。それが気に入らず、彼女の顔を抑えて無理やり視線を合わせる。
月明かりに照らされる彼女の瞳はやはり琥珀色で髪も黒いままだ。
普段の彼女はこの色なのだろう。色の変わる条件は一体何なのだろうか?
「ひょんとれす…あと言い訳考えてました」
「…言い訳?」
やはりこの部屋に誰かいたという事だろうか。手を放して彼女が弁明できるようにする。
「あー…竹中さんはもうご存じだと思うんですが、俺が性別を伝えていなかった事なんですけど」
僕の事は名で呼ばないのに、なぜ元親君の事は愛称で呼んでいるんだろうか。
「なにか言い訳をしないといけないことがあるのかな?」
性別に関しては、本人が言いたがっていなかったので特に問う事をしなかったのはこちらだ。
「その……お風呂の事とか?医者の手当の件とか気を遣わせることになってすみません?」
男だと思ってたら女だったというのは、確かに医師は驚いたかもしれない。僕は話で聞いただけなのでそれほど驚きはしなかった。
「何故疑問形なのかな?まあ、驚いたのは確かだけど、それだけの事だよ。君が隠したがっているようだったから他の人には伏せておいたけどね」
「ありがとうございます」
僕の方を見て、なんだか感動しているような様子だった。
今だったら、質問に答えてくれるだろうか?
「それで……僕から質問したいことがあるんだけど、いいかな?」
「なんですか?」
「君の背中……あれは家紋かい?」
和海は眉をしかめ、ぺちぺちと自分の背中を叩いている。どうやら家紋の事を知らないようだった。
「その…背中って自分じゃ見えなくて、どうなってたんですか」
「鳥…かな?」
たったそれだけの言葉だったのに、和海の顔からは血の気が引いて青白くなった。
この紋にどんな意味があるというのだろうか。
「顔色が悪いようだ、大丈夫かい?」
「あの…はい。大丈夫だと思います。その…知らない間にそんなものが刻まれていた事実に驚いてまして」
和海は過去を語らない。
もしかして、和海は過去を覚えていないのだろうか?
あの家紋を調べていけば和海について何か分かるかもしれない。けれど―――
「君について、何も知らないから……いつか君から話してくれるのを待つことにするよ」
「……待ってくれて、ありがとうございます」
ほっとした表情を浮かべる。やはり深く追及するべきではないと判断し、今日の質問は此処までにすることにした。
「あまり長い時間待つ余裕はないからね。それじゃあそろそろ寝たまえ。明日は次の戦について相談したいからね」
「分かりました」
少しは顔色が落ち着いてきたようだ。明日にはいつも通りの和海だろう。
翌朝。
確かに和海にも元親君にも話があるといったが、一緒に来いとは言っていない。
さも当然のように元親君は和海の隣を歩いていた。
「おはよう、おや随分と仲が良くなったようだね」
冗談として声を掛けた。元親君はそれが嫌味だと思いこちらを睨みつけてくるが和海は全然気づいていない。
「そうなら嬉しいけどな。次はどこと戦う予定なんだ」
はにかみながら和海が答えると、元親君はまた両手で顔を覆って、今日は天を仰いでいた。
―――なんなんだ。俺のものだと言わんばかりに周りを威嚇して歩いているくせに、その反応は何なんだ?
「和海には姉川を目指してもらうつもりだ」
真剣に僕の話に耳を傾ける和海、いまだに天を仰ぐ元親君。
「……元親君、君はいい加減座ったらどうだい?」
「あ、ああ…」
やっと現実に帰ってきた元親君は当然のように彼女の横に座る。
こんな状態で別々の場所で戦があると伝えて、動けるのだろうか?
別行動だと伝えると、元親君は想像通り不機嫌になる。この先が不安だった。
「きっとチカなら大きな騒ぎにならずにうまくことを収めてくれるって信じてるよ」
「お、おう!当然だ、俺に任せておけ!」
褒められた犬のように嬉しそうだ。
元親君は扱いやすい男ではあったが、より扱いやすい方法が分かった気がした。