空を眺めていただけなのに、長曾我部に泣きそうな顔をされた。
何故だか理由がわからなくて、しばらく抱きしめられていた。
やっと落ち着いた長曾我部はまじまじと俺の顔を見る。
「どうしたんだよ、何かついているのか？」
「いや…和海がちゃんとここに居るって実感したくてよぉ」
何を訳の分らないことを……。
しかし長曾我部は真面目な顔だ。
「怖い夢でも見たのか？」
「……まぁ、そんなところだ。
どこからともなくフラッと現れたアンタだ、消える時もフラッといなくなりそうで不安なんだよ」
んー、そればかりは何とも言えない。
どういう理由でここに居て、どのタイミングで元の世界に帰れるかもわからないからだ。
「まぁ、消えることがあるなら必ず一言残していくさ」
「そこは消えないって言えよ」
「……人生どうなるかわかんないからさ。下手なことは言えないって」
俺の答えが気に入らなかったのだろう。
ムニムニとほほを揉まれる。
「えーっと、なるべくそうならない努力はする」
「おう、そうしろ」
「逆の立場にならないように気を付けてくれよ」
俺が消えるだけじゃない、武将である長曾我部が先に討たれる可能性だってある。
武将が討たれても、違うステージで復活してくれればいいがそう上手くいくとも限らない。
自分の体で身をもって感じた。
目で見る分にはゲーム的表現がまだ多いこの世界だが、死ぬときは死ぬ。
「俺だって、死なれたら辛いんだからな」
長曾我部には聞こえないようにつぶやいた、俺のか細い声は夜の闇へと消えていった。