天下統一計画(仮)
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「豊臣軍に仕官したく」
戦場に突如現れた黒い髪の奇妙な餓鬼は素手で俺に挑むと言ってきやがった。
「鬼を舐めてんのか?」
「舐めてはいません。貴方ほどの方と戦える機会は今を逃せばもう二度とないかもしれません」
恭しく頭を下げてはいるものの、どうにも胡散臭い。どこか猫をかぶっているような、演じているような態度が気に障った。
どんなつもりか知らないが、鬼を舐めたことを後悔させてやろうと思った。
―――結果、打ちのめされたのは俺の方だった。
たった2撃で意識が遠のいた。
赤い瞳の男は言葉通り、俺を舐めたわけじゃない。完全に勝てると確信していたのだ。
それからしばらくして俺が目を覚ました時、隣で竹中が気を失っていた。
「どうなってんだ?」
俺を倒し、豊臣軍に仕官することになったのかと思っていたが、交渉はうまくいかなかったのだろうか?
そんなことはどうでもいい。この戦は負け試合だ、さっさとこの場から去ろうと思ったのだが、持ってきていた武器がどこにも見当たらない。
「あー…どうも?」
さっきの餓鬼が申し訳なさそうな顔をしながら近づいてきた。
「お前は!おい、俺の武器どこに行ったか知らないか?」
「その…不幸な事故がありまして海に落ちてしまいました」
海の方へ視線を向ける。錨なので、海に落ちれば当然沈む。
「なんだと!」
回収することはほぼ不可能だろう。思わず俺は餓鬼の胸倉をつかみ上げた。
「まぁ落ち着けって。というか、仮に武器があったとしても渡すことはできない。アンタは俺に負けた。今は捕虜なんだ」
「捕虜だと!」
どうやらこの戦は気を失っている間に豊臣軍の勝利が確定したらしい。
「このまま大人しく捕まるか、俺の配下となるか、海に沈むのとどれがいい?俺としては部下募集中だから配下になってくれると嬉しいんだけど」
申し訳なさそうなに笑う餓鬼。どうやら目的は達成できたようだ。
「なんだ、俺を倒して晴れて豊臣軍に入ったってわけか」
ならなんで竹中は此処で倒れているのかが謎のままだった
「豊臣とは同盟だよ。入れてもらえなかったんだ」
明らかに肩を落としている。同盟関係になったってだけでも十分大したことあると思うんだが、この餓鬼は気に入らないらしい。
「だから俺の下に着いたからって、豊臣の兵になる訳じゃないから安心してよ。気に入らなきゃ俺の寝首をかけばいいだけだから、簡単だよ」
それがとてもいい案だと言わんばかりに嬉しそうに笑いながら話をする。
こいつは自分の事を殺せと言ったのだ。
本当にさっきの餓鬼なのだろうか?よく見れば琥珀色の瞳だ。
「…俺の部下はどうした」
訳が分からず、とりあえず仲間たちの安否を確認した。
「戦が終えた時点で生き残った人たちは全員捕虜となっている。俺の部下になるなら全員解放するよ」
「…俺に選択肢なんてねぇだろうが……」
逆らえば、仲間は処分される可能性がある。
「仲間思いなんだね、素敵な人を部下に迎えられて俺は満足だよ。それじゃあこれから宜しく」
手を差し出されたが俺はそれを払いのけた。
そのあとすぐ、仲間のいる場所へ案内された。
生き残った全員手当ても済み、食事をとっているところだった。
傷の手当は白い髪の子供が行ったという。そんな奴は後に豊臣軍に確認したが誰も知らないという。
その子供に手当てを受けた連中はどういう訳か傷の治りが異常に早かった。
この船で子供と呼べる奴は、俺を部下にすると言い出した男しかいない。
一体彼奴は何者なんだ?
疑問は膨らむばかりだったが、アイツの手を思い切り払いのけていたため、なんとなく声をかけにくかった。
そんな時、見計らっていたかのように竹中から声を掛けられた。
「ちょうどよかった。和海を呼んできてくれないかい?」
「……誰だ、そいつ」
竹中には呆れられた。
「君は彼の部下になったんだろう?」
そういわれて、あの男の名前も知らなかったのだと思い出した。
「名字はないのか?」
「さぁ…名乗らなかったから、おそらくないんじゃないかな。それよりも、そんな調子で大丈夫かい?」
「うるせぇ、好きでアイツの下に就いたわけじゃねんだよ」
「それは分かっているよ。気に入らなければ彼の提案通りに首でもはねたらどうだい?
負け犬の君たちが逃げても追う様な真似はしないから、尻尾を巻いて自分に国に帰ったらどうだい」
「なんだと!確かに俺はあの餓鬼に負けたが、アンタに負けた訳じゃね」
「そうだね。決着がお望みならいつでもお相手しよう。だが今は、和海を呼んできてくれたまえ。戦について相談したいことがあるんだ」
ハイハイと軽く流され、俺が何を言っても竹中には相手にされなかった。
仕方なく和海を探しに船の中を歩いて回る。
アイツは甲板で海を眺めていた。
「それにしても自分の城か……手に入ったら嬉しいな」
嬉しそうにこれから向かう城について思いを馳せていたようだ。
「なぁ……アンタはなんでここに居るんだ。一人で天下を目指せるんじゃねえのか?」
あの強さ、どこかの武将かと思ったが和海には名字がない。どこか名のある家の人間というわけではないようだ。
「一人きりで天下を取ってどうするんだよ。」
声を掛けたが、和海は振り返る様子はない。
「俺以外誰もいないなんて……それこそどこのぞ魔王のような独裁者になっちまうよ。
正確にはいろんな奴と戦いたい、天下を取るっていうのはおまけみたいなもんなんだよ。そんなおまけ感覚の奴に天下取られたら死んでいった奴らは報われないだろう?
だから表向きは豊臣軍が天下を取るって形にしたいんだ」
どんな顔をしているのか気になり、隣に立った。
身長は毛利と同じくらいだろうか?小さな餓鬼だ。
コイツの言い分は無茶苦茶だった。そして態度もちぐはぐだ。
声は明るい、けれど体は震えていた。武者震いというわけではなさそうだ。今にも泣きだしそうな顔をしている。
「……天下を取ったら、アンタはどこに行くんだ?ずっと豊臣と戦いを共にすんのかよ」
見てはいけないものを見たような気分だった。
とっさに視線を外したが、じっと見ていたこと気づかれただろうか?
「さぁ…天下の先は考えていないな。そういえばチカはどうして海の上で豊臣とやり合っていたんだ?」
「いきなり馴れ馴れしいな…。俺は大海原へ旅立とうとしていきなり豊臣軍と遭遇しちまったんだよ」
「運悪いね」
本当に憐れんでいる表情で俺を見るな。
「うるせえ…さらにわけわかんねぇガキに負けて部下になれとか…ほとほとついてねぇよ」
「本当だな、まぁそのうち良いことあるさ」
すっかり笑顔になっているが、さっきの態度と表情は何だったんだ?
単に部下が欲しくて俺を生かしたのか、殺すことができなかっただけなのか。
結局和海について何もわからず、逆にモヤモヤするだけだった。
―――――翌日
俺は和海と共にザビー城の攻略を行うことになった。
戦に参加するきっかけは、この城に腐れ縁の毛利元就がいるからだ。
建前はそうなっているが、もう少し近くで和海の事を見てみたいと思ったからだ。
相変わらず丸腰で城に向かう。そしてまさかの武器は現地調達。
「おい、まさかそれが得物だなんて言うんじゃねーだろうな?」
「そのまさかだよ。さあ、行くぞ。遅いと置いていくからな」
そういった和海の瞳は青かった。一体どうなっているんだ?それにこの速さ。
敵を蹴散らしながらだというのに、俺は一向に追いつけない。そして蹴散らした雑兵は全員気を失っているだけだ。
これだけの数を相手にして誰も殺していない。どういうつもりだ?ここを領地にした際に、自分の兵として使うためか?
分からないままとにかく後を追いかけた。止まらず走り続けていた和海もやっと足を止めていた。おかげでやっと追いつけた。
「おい!ちょっと待て!!どんだけ足が速いんだよ!」
必死で息を整えながら、和海を睨みつける。
「チカを置き去りにするつもりで走っていたからね。追いつけなくて当然だ」
……瞳は琥珀色に戻っている。あの青い瞳は見間違えだったのか?
「それより……扉を開けるぞ。覚悟しておけよ」
神妙な顔つきに変わる。この先は名のある武将でもいるんだろうか。
「なんだよ急に…ああ油断はしねぇよ」
武器を構え、和海が扉を開けるのを待った。
ゆっくりと開いた扉の先にいたのは見慣れた男だった。
「来たな…我が名は日輪の申し子、サンデー毛利!!」
「本当に居やがった…」
和海は膝をついて崩れ落ちた。ここまで走り通して疲れが出たのか?
「おい、どうした和海」
心配して声をかける。よく見ると小刻みに揺れていた。
「ダメだ……俺はもうだめだ…笑いが堪えられない。日輪の申し子じゃな無くて日曜日の申し子じゃん、無理…しんどい」
毛利を指さし、腹を抱えて笑い出した。
いや、確かにあの毛利の変わりっぷりには驚くが、和海の笑いっぷりに若干引いた。
一体何が楽しいのか。
日曜日ってなんだ?
「はぁ、はぁ…ここはチカに任せた。俺は戦えそうにない」
「……アンタ、笑いの沸点低いんだな」
「行かせぬぞ、我が貴様を止めて見せよう」
毛利が和海に武器を向けるが、それを俺が振り払った。
「テメェの相手はこの俺だ。この長宗我部元親様が遊んでやるよ」
「……よかろう、いずれ貴様とも決着をつけねばならぬと思っていた所よ」
俺たちが戦い始めると、和海は一目散に先へ向かって走り出した。
「貴様が人に飼われるとは」
「んだと?テメェこそ胡散臭い宗教に嵌りやがって!」
「貴様、ザビー様を侮辱するとは万死に値する」
「やれるもんならやってみな!」
とはいえ、長年何度も刃を交えてきた相手だ。決着はなかなか付かない。
何とか相打ちに近い状態ではあったが、俺の勝ちだった。毛利の武器が壊れなかったら、俺がやられていたかもしれない。
満身創痍の体を引きずって、和海の行方を捜す。
「…アンタまでこの城にいたのか」
「おう、お前さんも来とったのか」
そこにいたのは島津、和海にやられたのか重傷だった。
「先にいってザビーどんと戦っとる頃じゃ。急いだほうがええぞ。
あの坊主もなかなかにひどい怪我じゃ」
やはり島津とやり合って無傷という訳にはいかなかったようだ。だが俺がたどり着いた時には決着はついていた。
すがすがしい笑顔でがらくた人形を殴り飛ばし、ザビーを吹き飛ばしているところだった。
「和海」
「よし、城は手に入れた。チカ、毛利はどうなった?」
毛利の事を聞きながら和海は俺の体を見て怪我の確認をしている。
……出血が多かったからか、目がおかしいようだ。和海の髪が白く見える。
「ああ?一応は生きてるよ。それよかアンタ、島津まで倒したのか」
「もちろん、じゃなきゃここまで来れないから。どう?一応俺がそれなりに戦えるって納得してもらえた」
ぺちぺちと和海は俺を叩きながら笑顔を見せた。
急に全身に血が巡るような妙な高揚感に襲われ、思わず目をそらした。
もう一度和海に視線を向けたときには、髪の色は黒く戻っている。
今のは何だったんだ?それに……体の痛みが引いている。痛みだけではない、小さな傷は治り刀傷も血が止まり傷口は塞がっている。
もしかして、俺の仲間を手当てしたのは和海なのか?
戦場に突如現れた黒い髪の奇妙な餓鬼は素手で俺に挑むと言ってきやがった。
「鬼を舐めてんのか?」
「舐めてはいません。貴方ほどの方と戦える機会は今を逃せばもう二度とないかもしれません」
恭しく頭を下げてはいるものの、どうにも胡散臭い。どこか猫をかぶっているような、演じているような態度が気に障った。
どんなつもりか知らないが、鬼を舐めたことを後悔させてやろうと思った。
―――結果、打ちのめされたのは俺の方だった。
たった2撃で意識が遠のいた。
赤い瞳の男は言葉通り、俺を舐めたわけじゃない。完全に勝てると確信していたのだ。
それからしばらくして俺が目を覚ました時、隣で竹中が気を失っていた。
「どうなってんだ?」
俺を倒し、豊臣軍に仕官することになったのかと思っていたが、交渉はうまくいかなかったのだろうか?
そんなことはどうでもいい。この戦は負け試合だ、さっさとこの場から去ろうと思ったのだが、持ってきていた武器がどこにも見当たらない。
「あー…どうも?」
さっきの餓鬼が申し訳なさそうな顔をしながら近づいてきた。
「お前は!おい、俺の武器どこに行ったか知らないか?」
「その…不幸な事故がありまして海に落ちてしまいました」
海の方へ視線を向ける。錨なので、海に落ちれば当然沈む。
「なんだと!」
回収することはほぼ不可能だろう。思わず俺は餓鬼の胸倉をつかみ上げた。
「まぁ落ち着けって。というか、仮に武器があったとしても渡すことはできない。アンタは俺に負けた。今は捕虜なんだ」
「捕虜だと!」
どうやらこの戦は気を失っている間に豊臣軍の勝利が確定したらしい。
「このまま大人しく捕まるか、俺の配下となるか、海に沈むのとどれがいい?俺としては部下募集中だから配下になってくれると嬉しいんだけど」
申し訳なさそうなに笑う餓鬼。どうやら目的は達成できたようだ。
「なんだ、俺を倒して晴れて豊臣軍に入ったってわけか」
ならなんで竹中は此処で倒れているのかが謎のままだった
「豊臣とは同盟だよ。入れてもらえなかったんだ」
明らかに肩を落としている。同盟関係になったってだけでも十分大したことあると思うんだが、この餓鬼は気に入らないらしい。
「だから俺の下に着いたからって、豊臣の兵になる訳じゃないから安心してよ。気に入らなきゃ俺の寝首をかけばいいだけだから、簡単だよ」
それがとてもいい案だと言わんばかりに嬉しそうに笑いながら話をする。
こいつは自分の事を殺せと言ったのだ。
本当にさっきの餓鬼なのだろうか?よく見れば琥珀色の瞳だ。
「…俺の部下はどうした」
訳が分からず、とりあえず仲間たちの安否を確認した。
「戦が終えた時点で生き残った人たちは全員捕虜となっている。俺の部下になるなら全員解放するよ」
「…俺に選択肢なんてねぇだろうが……」
逆らえば、仲間は処分される可能性がある。
「仲間思いなんだね、素敵な人を部下に迎えられて俺は満足だよ。それじゃあこれから宜しく」
手を差し出されたが俺はそれを払いのけた。
そのあとすぐ、仲間のいる場所へ案内された。
生き残った全員手当ても済み、食事をとっているところだった。
傷の手当は白い髪の子供が行ったという。そんな奴は後に豊臣軍に確認したが誰も知らないという。
その子供に手当てを受けた連中はどういう訳か傷の治りが異常に早かった。
この船で子供と呼べる奴は、俺を部下にすると言い出した男しかいない。
一体彼奴は何者なんだ?
疑問は膨らむばかりだったが、アイツの手を思い切り払いのけていたため、なんとなく声をかけにくかった。
そんな時、見計らっていたかのように竹中から声を掛けられた。
「ちょうどよかった。和海を呼んできてくれないかい?」
「……誰だ、そいつ」
竹中には呆れられた。
「君は彼の部下になったんだろう?」
そういわれて、あの男の名前も知らなかったのだと思い出した。
「名字はないのか?」
「さぁ…名乗らなかったから、おそらくないんじゃないかな。それよりも、そんな調子で大丈夫かい?」
「うるせぇ、好きでアイツの下に就いたわけじゃねんだよ」
「それは分かっているよ。気に入らなければ彼の提案通りに首でもはねたらどうだい?
負け犬の君たちが逃げても追う様な真似はしないから、尻尾を巻いて自分に国に帰ったらどうだい」
「なんだと!確かに俺はあの餓鬼に負けたが、アンタに負けた訳じゃね」
「そうだね。決着がお望みならいつでもお相手しよう。だが今は、和海を呼んできてくれたまえ。戦について相談したいことがあるんだ」
ハイハイと軽く流され、俺が何を言っても竹中には相手にされなかった。
仕方なく和海を探しに船の中を歩いて回る。
アイツは甲板で海を眺めていた。
「それにしても自分の城か……手に入ったら嬉しいな」
嬉しそうにこれから向かう城について思いを馳せていたようだ。
「なぁ……アンタはなんでここに居るんだ。一人で天下を目指せるんじゃねえのか?」
あの強さ、どこかの武将かと思ったが和海には名字がない。どこか名のある家の人間というわけではないようだ。
「一人きりで天下を取ってどうするんだよ。」
声を掛けたが、和海は振り返る様子はない。
「俺以外誰もいないなんて……それこそどこのぞ魔王のような独裁者になっちまうよ。
正確にはいろんな奴と戦いたい、天下を取るっていうのはおまけみたいなもんなんだよ。そんなおまけ感覚の奴に天下取られたら死んでいった奴らは報われないだろう?
だから表向きは豊臣軍が天下を取るって形にしたいんだ」
どんな顔をしているのか気になり、隣に立った。
身長は毛利と同じくらいだろうか?小さな餓鬼だ。
コイツの言い分は無茶苦茶だった。そして態度もちぐはぐだ。
声は明るい、けれど体は震えていた。武者震いというわけではなさそうだ。今にも泣きだしそうな顔をしている。
「……天下を取ったら、アンタはどこに行くんだ?ずっと豊臣と戦いを共にすんのかよ」
見てはいけないものを見たような気分だった。
とっさに視線を外したが、じっと見ていたこと気づかれただろうか?
「さぁ…天下の先は考えていないな。そういえばチカはどうして海の上で豊臣とやり合っていたんだ?」
「いきなり馴れ馴れしいな…。俺は大海原へ旅立とうとしていきなり豊臣軍と遭遇しちまったんだよ」
「運悪いね」
本当に憐れんでいる表情で俺を見るな。
「うるせえ…さらにわけわかんねぇガキに負けて部下になれとか…ほとほとついてねぇよ」
「本当だな、まぁそのうち良いことあるさ」
すっかり笑顔になっているが、さっきの態度と表情は何だったんだ?
単に部下が欲しくて俺を生かしたのか、殺すことができなかっただけなのか。
結局和海について何もわからず、逆にモヤモヤするだけだった。
―――――翌日
俺は和海と共にザビー城の攻略を行うことになった。
戦に参加するきっかけは、この城に腐れ縁の毛利元就がいるからだ。
建前はそうなっているが、もう少し近くで和海の事を見てみたいと思ったからだ。
相変わらず丸腰で城に向かう。そしてまさかの武器は現地調達。
「おい、まさかそれが得物だなんて言うんじゃねーだろうな?」
「そのまさかだよ。さあ、行くぞ。遅いと置いていくからな」
そういった和海の瞳は青かった。一体どうなっているんだ?それにこの速さ。
敵を蹴散らしながらだというのに、俺は一向に追いつけない。そして蹴散らした雑兵は全員気を失っているだけだ。
これだけの数を相手にして誰も殺していない。どういうつもりだ?ここを領地にした際に、自分の兵として使うためか?
分からないままとにかく後を追いかけた。止まらず走り続けていた和海もやっと足を止めていた。おかげでやっと追いつけた。
「おい!ちょっと待て!!どんだけ足が速いんだよ!」
必死で息を整えながら、和海を睨みつける。
「チカを置き去りにするつもりで走っていたからね。追いつけなくて当然だ」
……瞳は琥珀色に戻っている。あの青い瞳は見間違えだったのか?
「それより……扉を開けるぞ。覚悟しておけよ」
神妙な顔つきに変わる。この先は名のある武将でもいるんだろうか。
「なんだよ急に…ああ油断はしねぇよ」
武器を構え、和海が扉を開けるのを待った。
ゆっくりと開いた扉の先にいたのは見慣れた男だった。
「来たな…我が名は日輪の申し子、サンデー毛利!!」
「本当に居やがった…」
和海は膝をついて崩れ落ちた。ここまで走り通して疲れが出たのか?
「おい、どうした和海」
心配して声をかける。よく見ると小刻みに揺れていた。
「ダメだ……俺はもうだめだ…笑いが堪えられない。日輪の申し子じゃな無くて日曜日の申し子じゃん、無理…しんどい」
毛利を指さし、腹を抱えて笑い出した。
いや、確かにあの毛利の変わりっぷりには驚くが、和海の笑いっぷりに若干引いた。
一体何が楽しいのか。
日曜日ってなんだ?
「はぁ、はぁ…ここはチカに任せた。俺は戦えそうにない」
「……アンタ、笑いの沸点低いんだな」
「行かせぬぞ、我が貴様を止めて見せよう」
毛利が和海に武器を向けるが、それを俺が振り払った。
「テメェの相手はこの俺だ。この長宗我部元親様が遊んでやるよ」
「……よかろう、いずれ貴様とも決着をつけねばならぬと思っていた所よ」
俺たちが戦い始めると、和海は一目散に先へ向かって走り出した。
「貴様が人に飼われるとは」
「んだと?テメェこそ胡散臭い宗教に嵌りやがって!」
「貴様、ザビー様を侮辱するとは万死に値する」
「やれるもんならやってみな!」
とはいえ、長年何度も刃を交えてきた相手だ。決着はなかなか付かない。
何とか相打ちに近い状態ではあったが、俺の勝ちだった。毛利の武器が壊れなかったら、俺がやられていたかもしれない。
満身創痍の体を引きずって、和海の行方を捜す。
「…アンタまでこの城にいたのか」
「おう、お前さんも来とったのか」
そこにいたのは島津、和海にやられたのか重傷だった。
「先にいってザビーどんと戦っとる頃じゃ。急いだほうがええぞ。
あの坊主もなかなかにひどい怪我じゃ」
やはり島津とやり合って無傷という訳にはいかなかったようだ。だが俺がたどり着いた時には決着はついていた。
すがすがしい笑顔でがらくた人形を殴り飛ばし、ザビーを吹き飛ばしているところだった。
「和海」
「よし、城は手に入れた。チカ、毛利はどうなった?」
毛利の事を聞きながら和海は俺の体を見て怪我の確認をしている。
……出血が多かったからか、目がおかしいようだ。和海の髪が白く見える。
「ああ?一応は生きてるよ。それよかアンタ、島津まで倒したのか」
「もちろん、じゃなきゃここまで来れないから。どう?一応俺がそれなりに戦えるって納得してもらえた」
ぺちぺちと和海は俺を叩きながら笑顔を見せた。
急に全身に血が巡るような妙な高揚感に襲われ、思わず目をそらした。
もう一度和海に視線を向けたときには、髪の色は黒く戻っている。
今のは何だったんだ?それに……体の痛みが引いている。痛みだけではない、小さな傷は治り刀傷も血が止まり傷口は塞がっている。
もしかして、俺の仲間を手当てしたのは和海なのか?