天下統一計画(仮)
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お説教が終わる頃には日が沈んでいた。
「はぁ……やっと終わった」
ぐったりしていると、久しぶりにスマホが鳴った。相手は黒田。
「もしもし」
『…んん?お前さん誰だ?』
「和海だよ。ちょっと喉を傷めてさ。ジョシー黒田は何の用だ?」
そんなに俺の声変わったのか?後で竹中にも電話してみるか。
『少々厄介なことになってな。こっちに来てくれ』
黒田の声は切羽詰まっているようだ。これから夕飯だが……。
「チカ、ちょっと出てくる!」
「どこに行くんだ?」
「小田原」
いうと同時に俺は陰に飛び込んだ。
――――――
すっかり日が沈んだ小田原城は不気味だった。どこか嫌な空気が流れている。
「和海!」
「いったい何があったんだ……ずいぶんと物騒な雰囲気じゃないか」
「重症じゃないか!何があったかは小生が聞きたい。お前さん…奥州で何してきたんだ」
「花火になりかけたり、ちょっと手合わせしてただけだよ。それより北条さんはどこに?」
「今は風魔がついている。おそらく敵は上杉じゃないかと思っているんだが……それよりも、お前さんには姉か妹は居るか?」
「姉は居たが死んでる。弟は居たが妹は居ない。それがどうした?」
北条のもとへ走りながら現状を説明してもらった。
今回黒田が同盟を持ち掛けたことで、北条は現在同盟中の上杉に対して今回の一件を伝えようと思ったところで上杉の忍びが向かってきたらしい。
「あー、そこら辺の事配慮するの忘れてたな。最悪俺らに脅されて断れなかったって方向で話持っていけない?」
「……お前さんに謝っておかないといけないことがある。もっと先に報告しとかなきゃならなかった話だ。
北条は織田に脅されてもともと上杉との同盟を破棄する予定だったらしい。その織田軍にお前さんと同じ名前の兵がいるそうだ。
北条が俺をあっさりと受け入れたのはお前さんの名前を出したからなんだ」
まぁ似た名前のやつがモブに居ても可笑しくは……いや可笑しいな。モブなんて名前はないはずだ。
「俺と同じ名前で、北条を脅せる影響力のある兵ってどういうことだ」
「こっちにいる間に北条殿と話をしてお前さんとは別の人間だって気づいてな。相談すべきか悩んでいたところでこの襲撃だ」
まさか同じ名前の人間だからってことで二人はアンジャッシュ状態で微妙なすれ違いを起こしていたのか。
思い出せ、小田原で夜のステージ…栄光門だったっけ?大きな扉の先にいるんだよな。
「黒田の足じゃ遅すぎる。北条さんの所に行くぞ」
黒田の引きずる鉄球に飛び乗り、そのまま黒田ごと陰に沈み北条の傍らに飛び出す。
「にょあー!……なんじゃ黒田殿か。どうやってここまで…それに隣の者は誰じゃ?」
「ああ、こいつが話した和海なんだ」
「このような形でのあいさつとなり大変申し訳ございません。
南のほうで大将を務めさせていただいております和海と申します。
この度は同盟の話を受け入れてくださりありがとうございます」
「……なんと、このものが和海なのか。別人じゃな。そもそも性別も違うではないか」
「だから言っただろ。北条殿が知っている和海とやらはもっと小柄な女だと言っていただろう」
声が変わったのがここで役立つとは。……小柄な女?
なんだか答えのわからない不快感が俺の中で渦巻いている。
「ちょっと俺はこちらに向かっているという敵の方に行ってくる。聞きたいことがあるからな」
陰に潜り門の向こう側へ向かうと忍び同士の戦が始まっていた。
風魔とかすが。俺が手を出せるような感じは全くないけど…割り込まないといけないよな。風魔を失うのは痛手だし、かすがを失うのも困る。
俺が割り込むより先に双方が俺に気づいて一斉に攻撃を仕掛けてきた。やめて、なんでそういう時は相性がいいんだよ。息ぴったりかよ。
「貴様、何者だ!」
距離を取りながらも追加のクナイを構えるかすが。風魔の方は姿をけし、北条の方へ戻ったようだ。
「南が大将を務める和海と申す!
此度は北条殿と同盟を結びたくこちらへ参った次第」
「……貴様は豊臣の下についたものだな。北条は上杉と同盟中と知っての行動か!」
「すいませんでした!知らなかったんです!」
相手が動揺する勢いでスライディング土下座を決める。
「はぁ?」
「いや、手柄立てなきゃなーって離島からこっちのほうに来たからこの国のあたりの関係性詳しくなかったんですよ。
知らないからで許される話じゃないって分かっています。だからどうか上杉殿に弁明の機会をいただけないでしょうか?」
「そんな機会は存在しない!」
顔は上げているとはいえ、土下座スタイルの人間にクナイを投げちゃダメでしょう!
とっさに身をひるがえすが避けそこない頬をクイナがかすめる。
「あれー、和海じゃないか?」
反撃の一手を考えている間に緊張感が解ける声が聞こえる。
「前田慶次……貴様も邪魔をするのか?」
かすがの標的は何も知らずにやってきた前田に向いた。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺は夜桜を眺めに来ただけだって!
はは、パシリ和海はここでも布教活動中か?」
「布教だと?」
「まぁ近いようなもんだけどね。それで彼女を怒らせてしまって」
不思議と前田が来たら殺伐とした空気は和らいだ。
「しかたないよな、和海は田舎出身だもんな」
「やめて…その件で今謝ってるところだから」
「貴様、この不届き者と知り合いだったのか?」
やっとかすがは武器を下げてくれた。
「ああ、南の大将でザビー教のパシリをやっている俺の友人だよ。和海の手伝いで布教活動たまーにしているんだけどさ。
かすがちゃんもどう?愛の宗教だってさ」
「下らん…。まさか……」
どうやら俺が何も知らずに同盟という名の宗教勧誘に来たのだと思ったようだ。
そしてザビー教はこの国ではとっても迷惑な宗教で圧が強いことが知られている。
今のかすがの顔には北条に対する哀れみすら感じられる。
「ぎょえー!!」
「今の悲鳴は!」
かすがは門を飛び越え、俺は陰に潜り門を抜ける。
「おやおや、いけませんねぇ……。勝手にほかの国と同盟を結ぼうだなんて…」
腰を抜かした北条に向かい鎌を振り上げていたのは明智光秀だった。
黒田と風魔はどうしたんだ?周囲を見回すと、血を流して倒れる黒田と戦闘中の風魔がいた。
なかなかの手練れのようで風魔が北条を守ることができていないようだ。
「貴様も北条を狙っていたのか!明智光秀!」
かすがは明智に向けてクナイを投げつけるが、あっさりと鎌で振り払ってしまう。
その瞬間に俺は北条を抱えて慶次のもとへ連れていく。
「な、なんじゃ…いま闇に…いやいやここはどこじゃ!」
「お、じいちゃん。久しぶり!」
「ひさしぶりじゃのう…じゃないぞ!風魔が圧されておるのじゃ!」
「前田、北条さんを任せたぞ。織田にも狙われてる」
再び陰に潜ろうとするが、腕を掴まれて止められる。
「和海…あんたはどうする気だ。そのケガで戦えるのか?」
額の傷も開いたようで顔が血まみれだが、大したことはない。派手に血が見えるだけで軽傷だ。
「戦えるから行くんだよ。……すみません、北条さんの槍かりますね」
門の向こうへ再び向かう。
「黒田、生きてるよな?」
「ああ…生きている。小生悪運は強いんだよ」
けど出血はひどい。
「おとなしく寝ててくれ。終わったら手当してやる」
地面に落ちていた北条の槍を拾い、明智へ攻撃を仕掛ける。
「貴様、邪魔をするな!」
「邪魔する気はない。こいつより、風魔を手伝ってやってくれ。あの速さに俺はついていけない」
「……殺すなよ、聞きたいことが山ほどある」
かすがは明智から離れ風魔のもとへ向かった。風魔と戦っているのは奇妙な剣を振り回している。
雷BASARA持ちか…あんな奴いたかわからない。けれど、俺が知らない武将ほかにもいるからな…後で確認すればいい。
「おやおや…素敵な姿ですねぇ。それにとても、いい匂い。彼女と同じ血の匂いがしますよ」
舌なめずりをする明智に不快感を覚える。
「意味が分からないな。それより、かすがさんがあんたに聞きたいことあるって言ってからさ。
おとなしく捕まってくれよ!」
「いやですよ。それよりも、私を愉しませてください!」
二本の鎌を振り回す明智には槍を持っておいて正解だった。素手じゃ不利だっただろう。
「ああ…いい……。その血に染まった瞳、美しいですねぇ」
どうやら戦闘モードには切り替われたようだ。
「アンタを楽しませる術を俺は知らねぇよ」
明智はダメージを与えても嬉しそうにしているだけで、攻撃が通じているのか不安になる。けれど、数回切りあったところで明智が逃げた。
「和海…引きますよ」
「は…なんで」
なんで明智が俺の名前を知っているんだ?
「避けろ!」
かすがの言葉に咄嗟に後ろへ飛んだ。
俺が立っていた周辺に雷撃が降り注ぐ。
「また会いましょう。次は最後まで…どちらかが息絶えるまで踊りましょう」
雷撃とともに姿を消していく明智ともう一人の女。あれが…もう一人の和海なのか?
咄嗟にスマホで写真を撮るがぼけてあまりよく映らなかった。
なんとなく背格好くらいはわかるだろうか?
「すいません。逃げられました」
「いや、こちらも仕留めきれなかった…。謙信様に指示を仰がねばならないが……当面はお前と北条の同盟については認めてやろう。
織田に落とされるよりはマシだ。いずれ貴様からも話を聞くからな」
そう言ってかすがは闇へ消えていった。とりあえず撤退してくれたけど…訳が分からないぞ。
「風魔さん…ですよね。怪我はありませんか?」
首を横に振る。しかし、少し服に赤い色が滲んでいる。あの攻防で無傷というわけにはいかなかったようだ。
だが、本人が怪我がないというのだからこれ以上俺は何も言わなかった。
それより黒田の手当てが先決だ。首や背中を狙われていた。
「ジョシー黒田。終わったぞ、まだ生きているよな?」
血の跡を拭うが黒田に傷はない。……なんで?
「言っただろう、悪運が強いってな。それより…お前さんこそ大丈夫か。その色…」
「大丈夫、よくあることだから。とりあえずもうしばらく黒田は此処にいて上杉からの連絡を待ってもらえるか?
また織田が来る可能性もある。北条殿を守ってほしいんだ」
「そいつは構わないが……。お前さん一度ちゃんと医者に診てもらったほうがいいぞ」
「帰ったら医者に行くよ。それじゃ、北条さんによろしく言っておいて。俺はチカを待たせてるから帰るわ。
風魔さん、しばらく黒田がお世話になります。よろしくお願いいたします」
お辞儀をしてから奥州へ戻ったのだが、前田に声をかけてくるのを忘れてしまった。
後で黒田経由で謝っておいてもらおう。あのタイミングで来てくれたおかげでかすがが武器を下げてくれたもんな。
「和海帰ってきたのか…ってどうしたんだお前!」
おにぎりを持っていた片倉に見つかってしまった。こっそり部屋に戻るつもりだったのに見つかったらすごく心配されてしまった。
「おい和海…その髪どうした」
片倉の声に伊達と長曾我部も飛び出してきた。
なんだ?俺の髪が変なのか?
「まさか抜けてる?どこか剥げてる?」
「……小田原でけが人が出たのか」
長曾我部は俺を見てけが人の有無を確認してきた。そりゃ血まみれならそう思うよな。
「ああ、黒田が襲われて…でも変なんだよ。出血のわりに傷は見当たらないし」
がしっと顔を掴まれる。泣きそうな顔をする長曾我部に俺はどうしていいのかわからない。
「和海は……もう少し自分を大切にしろ」
「……なんか、ごめん。あ、それより面倒なことが起きてる。
政宗も、こいつを見てくれ」
話題をそらすためにスマホの写真を取り出す。
長曾我部と伊達は写真を見て表情が引き攣った。
「織田軍にいる和海だ。属性は雷、何か知らないか?」
多分何か知っているだろうが、二人とも言葉を失っている。
「ha~……この話は明日だ。和海は飯食って早く寝ろ。小十郎、その前にこいつを風呂に」
「かしこまりました」
「…ああ。じゃあ先に失礼する」
俺は片倉に案内されて風呂を済ませた。いつの間にか傷も治っていたので、おにぎりを頂き早めに床に就いた。
「はぁ……やっと終わった」
ぐったりしていると、久しぶりにスマホが鳴った。相手は黒田。
「もしもし」
『…んん?お前さん誰だ?』
「和海だよ。ちょっと喉を傷めてさ。ジョシー黒田は何の用だ?」
そんなに俺の声変わったのか?後で竹中にも電話してみるか。
『少々厄介なことになってな。こっちに来てくれ』
黒田の声は切羽詰まっているようだ。これから夕飯だが……。
「チカ、ちょっと出てくる!」
「どこに行くんだ?」
「小田原」
いうと同時に俺は陰に飛び込んだ。
――――――
すっかり日が沈んだ小田原城は不気味だった。どこか嫌な空気が流れている。
「和海!」
「いったい何があったんだ……ずいぶんと物騒な雰囲気じゃないか」
「重症じゃないか!何があったかは小生が聞きたい。お前さん…奥州で何してきたんだ」
「花火になりかけたり、ちょっと手合わせしてただけだよ。それより北条さんはどこに?」
「今は風魔がついている。おそらく敵は上杉じゃないかと思っているんだが……それよりも、お前さんには姉か妹は居るか?」
「姉は居たが死んでる。弟は居たが妹は居ない。それがどうした?」
北条のもとへ走りながら現状を説明してもらった。
今回黒田が同盟を持ち掛けたことで、北条は現在同盟中の上杉に対して今回の一件を伝えようと思ったところで上杉の忍びが向かってきたらしい。
「あー、そこら辺の事配慮するの忘れてたな。最悪俺らに脅されて断れなかったって方向で話持っていけない?」
「……お前さんに謝っておかないといけないことがある。もっと先に報告しとかなきゃならなかった話だ。
北条は織田に脅されてもともと上杉との同盟を破棄する予定だったらしい。その織田軍にお前さんと同じ名前の兵がいるそうだ。
北条が俺をあっさりと受け入れたのはお前さんの名前を出したからなんだ」
まぁ似た名前のやつがモブに居ても可笑しくは……いや可笑しいな。モブなんて名前はないはずだ。
「俺と同じ名前で、北条を脅せる影響力のある兵ってどういうことだ」
「こっちにいる間に北条殿と話をしてお前さんとは別の人間だって気づいてな。相談すべきか悩んでいたところでこの襲撃だ」
まさか同じ名前の人間だからってことで二人はアンジャッシュ状態で微妙なすれ違いを起こしていたのか。
思い出せ、小田原で夜のステージ…栄光門だったっけ?大きな扉の先にいるんだよな。
「黒田の足じゃ遅すぎる。北条さんの所に行くぞ」
黒田の引きずる鉄球に飛び乗り、そのまま黒田ごと陰に沈み北条の傍らに飛び出す。
「にょあー!……なんじゃ黒田殿か。どうやってここまで…それに隣の者は誰じゃ?」
「ああ、こいつが話した和海なんだ」
「このような形でのあいさつとなり大変申し訳ございません。
南のほうで大将を務めさせていただいております和海と申します。
この度は同盟の話を受け入れてくださりありがとうございます」
「……なんと、このものが和海なのか。別人じゃな。そもそも性別も違うではないか」
「だから言っただろ。北条殿が知っている和海とやらはもっと小柄な女だと言っていただろう」
声が変わったのがここで役立つとは。……小柄な女?
なんだか答えのわからない不快感が俺の中で渦巻いている。
「ちょっと俺はこちらに向かっているという敵の方に行ってくる。聞きたいことがあるからな」
陰に潜り門の向こう側へ向かうと忍び同士の戦が始まっていた。
風魔とかすが。俺が手を出せるような感じは全くないけど…割り込まないといけないよな。風魔を失うのは痛手だし、かすがを失うのも困る。
俺が割り込むより先に双方が俺に気づいて一斉に攻撃を仕掛けてきた。やめて、なんでそういう時は相性がいいんだよ。息ぴったりかよ。
「貴様、何者だ!」
距離を取りながらも追加のクナイを構えるかすが。風魔の方は姿をけし、北条の方へ戻ったようだ。
「南が大将を務める和海と申す!
此度は北条殿と同盟を結びたくこちらへ参った次第」
「……貴様は豊臣の下についたものだな。北条は上杉と同盟中と知っての行動か!」
「すいませんでした!知らなかったんです!」
相手が動揺する勢いでスライディング土下座を決める。
「はぁ?」
「いや、手柄立てなきゃなーって離島からこっちのほうに来たからこの国のあたりの関係性詳しくなかったんですよ。
知らないからで許される話じゃないって分かっています。だからどうか上杉殿に弁明の機会をいただけないでしょうか?」
「そんな機会は存在しない!」
顔は上げているとはいえ、土下座スタイルの人間にクナイを投げちゃダメでしょう!
とっさに身をひるがえすが避けそこない頬をクイナがかすめる。
「あれー、和海じゃないか?」
反撃の一手を考えている間に緊張感が解ける声が聞こえる。
「前田慶次……貴様も邪魔をするのか?」
かすがの標的は何も知らずにやってきた前田に向いた。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺は夜桜を眺めに来ただけだって!
はは、パシリ和海はここでも布教活動中か?」
「布教だと?」
「まぁ近いようなもんだけどね。それで彼女を怒らせてしまって」
不思議と前田が来たら殺伐とした空気は和らいだ。
「しかたないよな、和海は田舎出身だもんな」
「やめて…その件で今謝ってるところだから」
「貴様、この不届き者と知り合いだったのか?」
やっとかすがは武器を下げてくれた。
「ああ、南の大将でザビー教のパシリをやっている俺の友人だよ。和海の手伝いで布教活動たまーにしているんだけどさ。
かすがちゃんもどう?愛の宗教だってさ」
「下らん…。まさか……」
どうやら俺が何も知らずに同盟という名の宗教勧誘に来たのだと思ったようだ。
そしてザビー教はこの国ではとっても迷惑な宗教で圧が強いことが知られている。
今のかすがの顔には北条に対する哀れみすら感じられる。
「ぎょえー!!」
「今の悲鳴は!」
かすがは門を飛び越え、俺は陰に潜り門を抜ける。
「おやおや、いけませんねぇ……。勝手にほかの国と同盟を結ぼうだなんて…」
腰を抜かした北条に向かい鎌を振り上げていたのは明智光秀だった。
黒田と風魔はどうしたんだ?周囲を見回すと、血を流して倒れる黒田と戦闘中の風魔がいた。
なかなかの手練れのようで風魔が北条を守ることができていないようだ。
「貴様も北条を狙っていたのか!明智光秀!」
かすがは明智に向けてクナイを投げつけるが、あっさりと鎌で振り払ってしまう。
その瞬間に俺は北条を抱えて慶次のもとへ連れていく。
「な、なんじゃ…いま闇に…いやいやここはどこじゃ!」
「お、じいちゃん。久しぶり!」
「ひさしぶりじゃのう…じゃないぞ!風魔が圧されておるのじゃ!」
「前田、北条さんを任せたぞ。織田にも狙われてる」
再び陰に潜ろうとするが、腕を掴まれて止められる。
「和海…あんたはどうする気だ。そのケガで戦えるのか?」
額の傷も開いたようで顔が血まみれだが、大したことはない。派手に血が見えるだけで軽傷だ。
「戦えるから行くんだよ。……すみません、北条さんの槍かりますね」
門の向こうへ再び向かう。
「黒田、生きてるよな?」
「ああ…生きている。小生悪運は強いんだよ」
けど出血はひどい。
「おとなしく寝ててくれ。終わったら手当してやる」
地面に落ちていた北条の槍を拾い、明智へ攻撃を仕掛ける。
「貴様、邪魔をするな!」
「邪魔する気はない。こいつより、風魔を手伝ってやってくれ。あの速さに俺はついていけない」
「……殺すなよ、聞きたいことが山ほどある」
かすがは明智から離れ風魔のもとへ向かった。風魔と戦っているのは奇妙な剣を振り回している。
雷BASARA持ちか…あんな奴いたかわからない。けれど、俺が知らない武将ほかにもいるからな…後で確認すればいい。
「おやおや…素敵な姿ですねぇ。それにとても、いい匂い。彼女と同じ血の匂いがしますよ」
舌なめずりをする明智に不快感を覚える。
「意味が分からないな。それより、かすがさんがあんたに聞きたいことあるって言ってからさ。
おとなしく捕まってくれよ!」
「いやですよ。それよりも、私を愉しませてください!」
二本の鎌を振り回す明智には槍を持っておいて正解だった。素手じゃ不利だっただろう。
「ああ…いい……。その血に染まった瞳、美しいですねぇ」
どうやら戦闘モードには切り替われたようだ。
「アンタを楽しませる術を俺は知らねぇよ」
明智はダメージを与えても嬉しそうにしているだけで、攻撃が通じているのか不安になる。けれど、数回切りあったところで明智が逃げた。
「和海…引きますよ」
「は…なんで」
なんで明智が俺の名前を知っているんだ?
「避けろ!」
かすがの言葉に咄嗟に後ろへ飛んだ。
俺が立っていた周辺に雷撃が降り注ぐ。
「また会いましょう。次は最後まで…どちらかが息絶えるまで踊りましょう」
雷撃とともに姿を消していく明智ともう一人の女。あれが…もう一人の和海なのか?
咄嗟にスマホで写真を撮るがぼけてあまりよく映らなかった。
なんとなく背格好くらいはわかるだろうか?
「すいません。逃げられました」
「いや、こちらも仕留めきれなかった…。謙信様に指示を仰がねばならないが……当面はお前と北条の同盟については認めてやろう。
織田に落とされるよりはマシだ。いずれ貴様からも話を聞くからな」
そう言ってかすがは闇へ消えていった。とりあえず撤退してくれたけど…訳が分からないぞ。
「風魔さん…ですよね。怪我はありませんか?」
首を横に振る。しかし、少し服に赤い色が滲んでいる。あの攻防で無傷というわけにはいかなかったようだ。
だが、本人が怪我がないというのだからこれ以上俺は何も言わなかった。
それより黒田の手当てが先決だ。首や背中を狙われていた。
「ジョシー黒田。終わったぞ、まだ生きているよな?」
血の跡を拭うが黒田に傷はない。……なんで?
「言っただろう、悪運が強いってな。それより…お前さんこそ大丈夫か。その色…」
「大丈夫、よくあることだから。とりあえずもうしばらく黒田は此処にいて上杉からの連絡を待ってもらえるか?
また織田が来る可能性もある。北条殿を守ってほしいんだ」
「そいつは構わないが……。お前さん一度ちゃんと医者に診てもらったほうがいいぞ」
「帰ったら医者に行くよ。それじゃ、北条さんによろしく言っておいて。俺はチカを待たせてるから帰るわ。
風魔さん、しばらく黒田がお世話になります。よろしくお願いいたします」
お辞儀をしてから奥州へ戻ったのだが、前田に声をかけてくるのを忘れてしまった。
後で黒田経由で謝っておいてもらおう。あのタイミングで来てくれたおかげでかすがが武器を下げてくれたもんな。
「和海帰ってきたのか…ってどうしたんだお前!」
おにぎりを持っていた片倉に見つかってしまった。こっそり部屋に戻るつもりだったのに見つかったらすごく心配されてしまった。
「おい和海…その髪どうした」
片倉の声に伊達と長曾我部も飛び出してきた。
なんだ?俺の髪が変なのか?
「まさか抜けてる?どこか剥げてる?」
「……小田原でけが人が出たのか」
長曾我部は俺を見てけが人の有無を確認してきた。そりゃ血まみれならそう思うよな。
「ああ、黒田が襲われて…でも変なんだよ。出血のわりに傷は見当たらないし」
がしっと顔を掴まれる。泣きそうな顔をする長曾我部に俺はどうしていいのかわからない。
「和海は……もう少し自分を大切にしろ」
「……なんか、ごめん。あ、それより面倒なことが起きてる。
政宗も、こいつを見てくれ」
話題をそらすためにスマホの写真を取り出す。
長曾我部と伊達は写真を見て表情が引き攣った。
「織田軍にいる和海だ。属性は雷、何か知らないか?」
多分何か知っているだろうが、二人とも言葉を失っている。
「ha~……この話は明日だ。和海は飯食って早く寝ろ。小十郎、その前にこいつを風呂に」
「かしこまりました」
「…ああ。じゃあ先に失礼する」
俺は片倉に案内されて風呂を済ませた。いつの間にか傷も治っていたので、おにぎりを頂き早めに床に就いた。