天下統一計画(仮)
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「くぅー…野宿にならないで済んでよかったぁ」
竹中に電話で起こしてもらわなければ、多分一晩森の中で過ごしてしまっただろう。
傷の手当てもしてもらい、体調は万全。
長曾我部が戻ってくるらしいので、俺はザビー城へ急いだ。
「しかし、食の台所と呼ばれる大阪。ご飯美味しかったな…」
あまり長いすると石田と出会ってしまう可能性もあるもんな。今度は豊臣軍が出陣しているときに大阪に行こう。そうしよう。
「それにしても、便利な能力が開花してくれたもんだ」
朝から風呂に入るのは俺くらいなものだろう。
都合よくお湯を沸かしてくれている。いやぁ…信者や城を回してくれている従者の人々に感謝しかないな。
脱衣所で他の人の服がないかを確認して、着替えもなさそうなので安心して浴場へ向かう。
「ヘイ、和海」
速攻で扉を閉めた。
何故か通常サイズにまで成長したザビーがいた。
いや、羽は生えていたんだけどさ、あれはザビーだよ。
「何故デース、裸の付き合い大切ネ!」
扉を開けようとガンガン叩いてくる。
こうなったら逆にザビーを風呂から叩き出せばいい。
扉を開けたと同時に俺は陰に潜りザビーの背後へ回って、脱衣所の方へ突き飛ばし浴場の戸を閉めた。
着替えが無かったのに何でザビーがいるんだ?もしかして疲れている俺の幻覚か?
それとも全裸で移動しているのか?……ダメだ、なんか頭が痛くなってきた。
風呂で体を温めると、頭痛も和らいだ気がする。
うーん、今度は風呂に入ろうとドンドン叩いているザビー……いや、どうしましょうね。
「和海、帰ってきたのか」
「あ、毛利。さっき帰ってきた所だよ。ちょっと薄汚れてたから、着替えてから挨拶に行こうと思ってたんだ」
「なるほど。して、どうしてザビーざまがここで泣いておられるのか」
うーん、おかしいな。木戸だから向こうが見えることはない筈なんだけど、武器を構えている毛利のシルエットが見える気がするぞー。
「すいません、いやあまりにも圧が強くて追い出しました。…ってかさ、いつ巨大化したわけ?」
「巨大化?何を言っておる。ザビー様は我が腕に収まる大きさよ」
やっぱり俺は幻覚を見ていたのか?
「そうか…なんか、疲れているみたいだ」
「なら仮眠をとってから我の元へ来るがいい。昨日の作戦結果を報告するように」
「分かりました」
やっぱり毛利は俺の上司って感じだよな。
「あ、そういえば前田はどうした?」
「あやつなら姉川へ向かうと言って昨日城を出ていった」
「そっか、よかった」
「……何故、前田には能力を隠す」
「なんでだろう……。戦にかかわるような話はアイツとはしたくないんだよな」
自分でもよくわからない感覚だ。なんか、前にもそんなことがあったような気もするけど思い出せない。
「とりあえず仮眠後に会いに行くから……そういえば、チカが帰ってくるらしい」
「その件は昨日確認済みよ。明日にはこちらに着くであろう。準備をしておけ」
「はーい」
風呂を上がり、自室で傷の手当てをして新しい服へ着替える。
それほど胸はないが、念のため晒しも巻き体系を隠す。
「毛利、待たせたな」
「仮眠はどうした。湯上りというのに顔色があまり良くないではないか」
「ちょっと貧血でね。寝るなら話をしてからの方がいいと思ってさ。それで……ジョシー黒田は何をしているんだ」
「畜生!ここでもこんな扱いかー!」
毛利に椅子にされている黒田。
「なに、こやつが和海の部屋をのぞこうとして居たのだ。これは躾」
「違う!小生は和海と話があっただけだー!」
とりあえず、毛利は俺の事を気にかけて黒田に処罰を与えてくれたようだ。
「そうだったのか、毛利ありがとう。ジョシー黒田は後で話を聞くよ。それで昨日の報告だけど―――」
姉川で敗走してみせて、そのあと大阪で寝て帰ってきたことを伝えると毛利は呆れ、黒田は何を言っているんだという顔をしていた。
「怪我はもうよいのか?明日はおそらく乱闘騒動になるであろう」
「だよな……。大丈夫、動かす分には何の問題もないし。利き手は無事だからな」
明日は何か武器を持っていこう。どうもこの世界は普通に訪問するっていう文化はないようだ。
「なら今日は早く休むがよい」
「分かった」
毛利の腕に抱かれ眠るザビーはやはり小さい。やっぱり俺は疲れているようだ…。
黒田を立ち上がらせるために手を貸す。
「……お前さん、いや何でもない」
「なんだよ、言いかけて止めるなよ」
俺の手に触れたとき、驚いた顔をされた。まさか、黒田も何か見えたのか?
俺が一瞬見えたのは黒田ががっくり肩を落として、北条とともに何かを追いかけるような映像だった。
なにしたんだろうなこの人……。
とりあえず立ち上がった黒田とともに俺の部屋に向かって移動を始める。
「いや、どうやって短時間で長距離を移動しているんだ。計算が合わんだろう」
「俺の能力だよ。ただし、大量の人を運ぶようなことはできないけどな」
試していないけど、多分無理だろう。
「いや…単身でもそれほどの距離を一瞬で移動されるのは恐ろしいな」
「みんなはどんな風に移動してるんだろう」
「徒歩や馬、船を使っても天候や疲労で時間はどうしてもかかるだろう」
「その辺の事、忘れそうだ」
「……なんだか顔色が悪いな。お前さん、その能力を使うときは気を付けたほうがいいぞ」
「ありがとう、今度限界を確かめてみることにするよ。ここから甲斐や姉川往復、大阪行きまでできたから奥州まで行けそうだな」
「お前さんは忍びにでもなった方がよかったんじゃないのか?」
「忍びか……あれはもう懲り懲りだ」
口をついて出た言葉に俺自身首をかしげる。
「なるほど、元忍びだったのか」
黒田は勝手に納得したような顔をしているが、俺は納得できない。
この間、猿飛と手をつないだ時に見えた映像の所為で記憶が混同してるんだろう。
武田の忍びとして佐助とともに戦場を駆け、そして―――
「はぁ、はぁ…」
「お、おい…どうしたんだ。おい、誰か来てくれ!」
うまく呼吸が出来なくなる。首は繋がっているのに、うまく酸素を取り込んでくれない。
あれは俺じゃない。だって俺はここで生きている。
「シッカリシテクダサーイ!」
「ひぃ!」
ドスドス足音を響かせてかけてきたのはザビーだった。
ぎゅっと俺を抱きしめて心配してくれているのは分かるんだが、窒息死そうだった。力が強い…
「おお、ザビー様!ついに覚醒成されたのですね!」
いや、毛利…そっちじゃなくて、俺を助けて――――――
すぅっと意識が遠のいていく。これ駄目だ、気を失うな。
―――――――――――
「真田の旦那!」
重傷で倒れる真田に駆け寄る佐助。彼が背を無防備にするなんて普段なら考えられない。
それほど焦っていたのだろう。
「佐助様!」
そう叫んでいるのは…俺か。
猿飛に向けて振り降ろされた刀を、俺が受け止める。
もう満身創痍で武器すら握ることが出来ない状態で、その斬撃を受け止めるというのは文字通り俺の体でだ。
「和海!」
猿飛が俺を抱きしめている?いや、俺の体はあちらに落ちている。
切り落とされた俺の首が倒れている真田の上に落ちたようだ。
この後、武田軍はどうなるんだろうか。忍びだった俺の記憶はそこで途切れた。
……最悪の夢だ。
もしかして、俺が武田軍についていたら、忍びとして猿飛の部下だったらあんな風に死んでいたのかもしれない。
あまりの生々しさに、口の中にまだ鉄の味が残っている錯覚に襲われる。
「おい、和海」
「……あれ、まだ夢か」
俺の顔を心配そうにのぞき込む長宗我部。まだ帰ってこないはずだ。
「貴様が気を失ってすでに2日は過ぎておる。昨日そこの馬鹿は帰ってきたのだ」
毛利も俺のそばに座っていて、その手には濡れた手ぬぐいがあった。看病してくれたのだろうか。
「は!嘘だろ、そんなに寝てたのか……」
慌てて飛び起きる。
「前田夫婦はどうした?」
「今客間の方で過ごしておる。どうする、会うつもりか?」
「一応ね、城主として挨拶はしておかないと」
体を起こそうとするが、うまく力が入らない。首が跳ねられる夢なんか見るからだよな……。
「しっかりしろ」
長曾我部に抱き起され、やっと体に力が入る。
「ありがとう、それじゃあ挨拶に行くか」
客間の方で楽しそうな夫婦の声が聞こえる。
食事中のようだ、うん。あの、その食材はどこから?
我が城の備蓄だとすると、とんでもなく痛手なんだけど。なんで夫婦の食事で宴会並みの量用意されてんの?
「お食事中失礼いたします。城主の和海と申します。
私自身、碌なお出迎えもできず、お恥ずかしい限りです」
二人の前に正座し、謝辞を述べながら頭を下げる。
おい、長曾我部。その顔は何だ、俺だって頭を下げるくらいできるぞ。
「いやいや、某たちも事前に文も出さずに訪れたのだ、すまなかった」
「お加減はいかがでしょうか、病の中押しかけてしまい申し訳ございませんでした」
二人も食事の手をとめ、頭を下げてくれた。
「お二人は伝説の食材を求めていらしたとか」
「ええ、先ほど毛利様に分けていただきましたわ。食事が済み次第、お暇させていただきまする」
「そうでしたか。あ、先日あなた方の甥である慶次殿にお会いいたしました。何でも姉川の方へ向かうと3日前に此方を立ちましたよ」
だから長曾我部、その顔は何だ。それなりに会話することもできるんだよ。
「まぁ!慶次が?犬千代様、急ぎましょう!」
「ああ、そうだな!和海殿、長曾我部殿世話になった。この礼はいつか」
「あまりお気になさらず、気を付けてお帰り下さい」
忙しく走り去る前田夫婦。食卓にはまだ手を付けていない料理も残っている。
「勿体ないから俺が食べましょう」
「……なぁ、和海は何者なんだ」
女中さんに茶碗と箸を用意してもらい料理を食べ始めると、長曾我部は不思議そうに俺を見る。
「なにものって言われても、俺は俺だよ。それよかチカ。お前一回も俺に電話寄こしてないだろう。一応俺が大将なんだぞ、頼りなくても連絡はしろよ」
「いや悪かったって。あの二人は釣りをしに来たんだけどよぉ、釣れた魚で宴会になってな……」
「連絡忘れか。まぁいいや、無事そうで何よりだ」
「和海は何があったんだよ。その腕の怪我は」
「自傷だから問題ない、敵をだますために必要だったんだよ。もう治ってるから気にすんな。
それより、言い忘れてたな。チカ、お帰り。お疲れさまでした」
「お前は…はぁ、まあいいか。おう、ただいま」
ここ数日でいろんなことが起きすぎた。少しばかり、のんびり過ごしたいぞ。
竹中に電話で起こしてもらわなければ、多分一晩森の中で過ごしてしまっただろう。
傷の手当てもしてもらい、体調は万全。
長曾我部が戻ってくるらしいので、俺はザビー城へ急いだ。
「しかし、食の台所と呼ばれる大阪。ご飯美味しかったな…」
あまり長いすると石田と出会ってしまう可能性もあるもんな。今度は豊臣軍が出陣しているときに大阪に行こう。そうしよう。
「それにしても、便利な能力が開花してくれたもんだ」
朝から風呂に入るのは俺くらいなものだろう。
都合よくお湯を沸かしてくれている。いやぁ…信者や城を回してくれている従者の人々に感謝しかないな。
脱衣所で他の人の服がないかを確認して、着替えもなさそうなので安心して浴場へ向かう。
「ヘイ、和海」
速攻で扉を閉めた。
何故か通常サイズにまで成長したザビーがいた。
いや、羽は生えていたんだけどさ、あれはザビーだよ。
「何故デース、裸の付き合い大切ネ!」
扉を開けようとガンガン叩いてくる。
こうなったら逆にザビーを風呂から叩き出せばいい。
扉を開けたと同時に俺は陰に潜りザビーの背後へ回って、脱衣所の方へ突き飛ばし浴場の戸を閉めた。
着替えが無かったのに何でザビーがいるんだ?もしかして疲れている俺の幻覚か?
それとも全裸で移動しているのか?……ダメだ、なんか頭が痛くなってきた。
風呂で体を温めると、頭痛も和らいだ気がする。
うーん、今度は風呂に入ろうとドンドン叩いているザビー……いや、どうしましょうね。
「和海、帰ってきたのか」
「あ、毛利。さっき帰ってきた所だよ。ちょっと薄汚れてたから、着替えてから挨拶に行こうと思ってたんだ」
「なるほど。して、どうしてザビーざまがここで泣いておられるのか」
うーん、おかしいな。木戸だから向こうが見えることはない筈なんだけど、武器を構えている毛利のシルエットが見える気がするぞー。
「すいません、いやあまりにも圧が強くて追い出しました。…ってかさ、いつ巨大化したわけ?」
「巨大化?何を言っておる。ザビー様は我が腕に収まる大きさよ」
やっぱり俺は幻覚を見ていたのか?
「そうか…なんか、疲れているみたいだ」
「なら仮眠をとってから我の元へ来るがいい。昨日の作戦結果を報告するように」
「分かりました」
やっぱり毛利は俺の上司って感じだよな。
「あ、そういえば前田はどうした?」
「あやつなら姉川へ向かうと言って昨日城を出ていった」
「そっか、よかった」
「……何故、前田には能力を隠す」
「なんでだろう……。戦にかかわるような話はアイツとはしたくないんだよな」
自分でもよくわからない感覚だ。なんか、前にもそんなことがあったような気もするけど思い出せない。
「とりあえず仮眠後に会いに行くから……そういえば、チカが帰ってくるらしい」
「その件は昨日確認済みよ。明日にはこちらに着くであろう。準備をしておけ」
「はーい」
風呂を上がり、自室で傷の手当てをして新しい服へ着替える。
それほど胸はないが、念のため晒しも巻き体系を隠す。
「毛利、待たせたな」
「仮眠はどうした。湯上りというのに顔色があまり良くないではないか」
「ちょっと貧血でね。寝るなら話をしてからの方がいいと思ってさ。それで……ジョシー黒田は何をしているんだ」
「畜生!ここでもこんな扱いかー!」
毛利に椅子にされている黒田。
「なに、こやつが和海の部屋をのぞこうとして居たのだ。これは躾」
「違う!小生は和海と話があっただけだー!」
とりあえず、毛利は俺の事を気にかけて黒田に処罰を与えてくれたようだ。
「そうだったのか、毛利ありがとう。ジョシー黒田は後で話を聞くよ。それで昨日の報告だけど―――」
姉川で敗走してみせて、そのあと大阪で寝て帰ってきたことを伝えると毛利は呆れ、黒田は何を言っているんだという顔をしていた。
「怪我はもうよいのか?明日はおそらく乱闘騒動になるであろう」
「だよな……。大丈夫、動かす分には何の問題もないし。利き手は無事だからな」
明日は何か武器を持っていこう。どうもこの世界は普通に訪問するっていう文化はないようだ。
「なら今日は早く休むがよい」
「分かった」
毛利の腕に抱かれ眠るザビーはやはり小さい。やっぱり俺は疲れているようだ…。
黒田を立ち上がらせるために手を貸す。
「……お前さん、いや何でもない」
「なんだよ、言いかけて止めるなよ」
俺の手に触れたとき、驚いた顔をされた。まさか、黒田も何か見えたのか?
俺が一瞬見えたのは黒田ががっくり肩を落として、北条とともに何かを追いかけるような映像だった。
なにしたんだろうなこの人……。
とりあえず立ち上がった黒田とともに俺の部屋に向かって移動を始める。
「いや、どうやって短時間で長距離を移動しているんだ。計算が合わんだろう」
「俺の能力だよ。ただし、大量の人を運ぶようなことはできないけどな」
試していないけど、多分無理だろう。
「いや…単身でもそれほどの距離を一瞬で移動されるのは恐ろしいな」
「みんなはどんな風に移動してるんだろう」
「徒歩や馬、船を使っても天候や疲労で時間はどうしてもかかるだろう」
「その辺の事、忘れそうだ」
「……なんだか顔色が悪いな。お前さん、その能力を使うときは気を付けたほうがいいぞ」
「ありがとう、今度限界を確かめてみることにするよ。ここから甲斐や姉川往復、大阪行きまでできたから奥州まで行けそうだな」
「お前さんは忍びにでもなった方がよかったんじゃないのか?」
「忍びか……あれはもう懲り懲りだ」
口をついて出た言葉に俺自身首をかしげる。
「なるほど、元忍びだったのか」
黒田は勝手に納得したような顔をしているが、俺は納得できない。
この間、猿飛と手をつないだ時に見えた映像の所為で記憶が混同してるんだろう。
武田の忍びとして佐助とともに戦場を駆け、そして―――
「はぁ、はぁ…」
「お、おい…どうしたんだ。おい、誰か来てくれ!」
うまく呼吸が出来なくなる。首は繋がっているのに、うまく酸素を取り込んでくれない。
あれは俺じゃない。だって俺はここで生きている。
「シッカリシテクダサーイ!」
「ひぃ!」
ドスドス足音を響かせてかけてきたのはザビーだった。
ぎゅっと俺を抱きしめて心配してくれているのは分かるんだが、窒息死そうだった。力が強い…
「おお、ザビー様!ついに覚醒成されたのですね!」
いや、毛利…そっちじゃなくて、俺を助けて――――――
すぅっと意識が遠のいていく。これ駄目だ、気を失うな。
―――――――――――
「真田の旦那!」
重傷で倒れる真田に駆け寄る佐助。彼が背を無防備にするなんて普段なら考えられない。
それほど焦っていたのだろう。
「佐助様!」
そう叫んでいるのは…俺か。
猿飛に向けて振り降ろされた刀を、俺が受け止める。
もう満身創痍で武器すら握ることが出来ない状態で、その斬撃を受け止めるというのは文字通り俺の体でだ。
「和海!」
猿飛が俺を抱きしめている?いや、俺の体はあちらに落ちている。
切り落とされた俺の首が倒れている真田の上に落ちたようだ。
この後、武田軍はどうなるんだろうか。忍びだった俺の記憶はそこで途切れた。
……最悪の夢だ。
もしかして、俺が武田軍についていたら、忍びとして猿飛の部下だったらあんな風に死んでいたのかもしれない。
あまりの生々しさに、口の中にまだ鉄の味が残っている錯覚に襲われる。
「おい、和海」
「……あれ、まだ夢か」
俺の顔を心配そうにのぞき込む長宗我部。まだ帰ってこないはずだ。
「貴様が気を失ってすでに2日は過ぎておる。昨日そこの馬鹿は帰ってきたのだ」
毛利も俺のそばに座っていて、その手には濡れた手ぬぐいがあった。看病してくれたのだろうか。
「は!嘘だろ、そんなに寝てたのか……」
慌てて飛び起きる。
「前田夫婦はどうした?」
「今客間の方で過ごしておる。どうする、会うつもりか?」
「一応ね、城主として挨拶はしておかないと」
体を起こそうとするが、うまく力が入らない。首が跳ねられる夢なんか見るからだよな……。
「しっかりしろ」
長曾我部に抱き起され、やっと体に力が入る。
「ありがとう、それじゃあ挨拶に行くか」
客間の方で楽しそうな夫婦の声が聞こえる。
食事中のようだ、うん。あの、その食材はどこから?
我が城の備蓄だとすると、とんでもなく痛手なんだけど。なんで夫婦の食事で宴会並みの量用意されてんの?
「お食事中失礼いたします。城主の和海と申します。
私自身、碌なお出迎えもできず、お恥ずかしい限りです」
二人の前に正座し、謝辞を述べながら頭を下げる。
おい、長曾我部。その顔は何だ、俺だって頭を下げるくらいできるぞ。
「いやいや、某たちも事前に文も出さずに訪れたのだ、すまなかった」
「お加減はいかがでしょうか、病の中押しかけてしまい申し訳ございませんでした」
二人も食事の手をとめ、頭を下げてくれた。
「お二人は伝説の食材を求めていらしたとか」
「ええ、先ほど毛利様に分けていただきましたわ。食事が済み次第、お暇させていただきまする」
「そうでしたか。あ、先日あなた方の甥である慶次殿にお会いいたしました。何でも姉川の方へ向かうと3日前に此方を立ちましたよ」
だから長曾我部、その顔は何だ。それなりに会話することもできるんだよ。
「まぁ!慶次が?犬千代様、急ぎましょう!」
「ああ、そうだな!和海殿、長曾我部殿世話になった。この礼はいつか」
「あまりお気になさらず、気を付けてお帰り下さい」
忙しく走り去る前田夫婦。食卓にはまだ手を付けていない料理も残っている。
「勿体ないから俺が食べましょう」
「……なぁ、和海は何者なんだ」
女中さんに茶碗と箸を用意してもらい料理を食べ始めると、長曾我部は不思議そうに俺を見る。
「なにものって言われても、俺は俺だよ。それよかチカ。お前一回も俺に電話寄こしてないだろう。一応俺が大将なんだぞ、頼りなくても連絡はしろよ」
「いや悪かったって。あの二人は釣りをしに来たんだけどよぉ、釣れた魚で宴会になってな……」
「連絡忘れか。まぁいいや、無事そうで何よりだ」
「和海は何があったんだよ。その腕の怪我は」
「自傷だから問題ない、敵をだますために必要だったんだよ。もう治ってるから気にすんな。
それより、言い忘れてたな。チカ、お帰り。お疲れさまでした」
「お前は…はぁ、まあいいか。おう、ただいま」
ここ数日でいろんなことが起きすぎた。少しばかり、のんびり過ごしたいぞ。