大名救出作戦
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
側近の男が現れると、シカマルが私の前に壁になるように立つ
「……お客人方、主人様のお部屋に何か御用ですか?
治療は明日にお願いしていたはずですが…」
ニコリと愛想良く笑う側近だが、かすかにチャクラの動きを感じる
おそらく、臨戦体制だ
『夜分遅くに失礼なのは重々承知しております
ですが、夕食後にお会いした時の大名様の様子がどうも気になりまして…
私が隊長殿に無理を言って、ここまで着いてきて頂いたのです』
「………そうですか
しかし主人様は休まれています、こんな時間に訪ねたとしても、起きてこないですよ
朝までお待ちになってください」
「いや、そこを何とかお願いできませんかね
先生が言うには一刻も早く治療が必要だというんですよ
俺たちの任務のためにも、ここ、開けてくれません?」
あくまで友好的に
怪しまれないように
シカマルも愛想良く笑いながら話しかける
だが側近の男は、ギリ、と拳を握りしめた
「……そういえば、あなたの部下の方が屋敷から抜け出したようですね」
「『!!』」
「そんな話は聞いていないのですが…、部下の方はどこへ?」
「奴には里への報告を頼んだんです
無事に先生をお屋敷に連れて行きましたよ、って具合にね」
「ならば、夕食までの自由時間が使えたのでは?
屋敷の者の報告によると、あなた方が主人様の部屋を出られてからすぐに、飛び出すように出て行ったと聞きました」
「腹が減っては戦はできぬ、と言うでしょう」
へら、と笑いながらシカマルは言葉を繋げていく
だが、一瞬だけ殺気を感じた
『っ、避けて!!』
「!!」
咄嗟にシカマルの身体を突き飛ばす
彼が立っていた床には、ぽっかりと穴が開いていた
側近の男が、床を思い切りぶち抜いたのだ
「……そんな小細工はもういい
アンタら、俺らの正体に気付いたんだろ?
だから大名を助けに来た」
ぱら、と側近の男の拳から床のかけらがこぼれ落ちる
間違いなく、敵対行動だ
「……岩隠れの抜け忍だろ、目的は何だ」
シカマルも武器を取り出し、臨戦体制に入る
男はニヤリと笑うと、私を見た
「この屋敷の金目のモンを奪うこと
この屋敷を乗っ取ること、だな
けどあの大名には死なれちゃ困るから、じわじわと弱らせていたんだ
ギリギリ死なないラインをキープしながら毒を盛るのはなかなか骨が折れたぜ
けどあのジジィ、いつの間にか木の葉に依頼を飛ばしていたとは
案外抜け目のないジジィだ」
ケラケラと笑う男に、シカマルが印を組む動作を見せる
だがその瞬間に、男は私に目を向けた
「なぁアンタ
俺、アンタの正体知ってるぜ」
『!!!』
*
ピタ、と印を組む手を止めた
「何で木の葉と一緒にいる?
アンタの罪を考えれば、即殺されそうなものなのに」
側近の男はアマノにそう語りかける
だが彼女は、一切の反応を示さない
『……奈良さん、どうします』
「………とりあえず、大名の安全が最優先だ
アンタ、そこの扉なんとか出来るか?」
『……多少、時間を稼いでもらえますか』
「分かった」
シカマルは返事をすると、すぐに影を伸ばす
男はそれを察知すると、ばっと後ろに飛んで距離をとった
「木の葉の奈良一族か」
「悪いがアンタは捕まえる、大人しくしてもらおうか」
「はっ、俺より先にその仮面の女を捕まえなくていいのかよ」
チラリと後ろを見る
彼女は扉の結界を解除しようと動き出していた
*
シカマルが男の相手をしている間、注意は私から逸れるはず
『(致し方ないが、大名を助けるためだ)』
シカマルに見えないように、自分の身体で手元を隠す
『時遁、時空縛』
扉のドアノブに施された結界に向けて、時遁を使う
結界が張られる前に時間を戻して仕舞えば、こんなもの、造作もない
ガチャリ
『!
開いた…っ』
結界の効果が消失し、扉が開く
よし、と思い後ろを振り返る
振り向くと、私に向かって襲いかかる側近の男の姿が見えた
解除に必死で気配に気付かなかった
「アマノ!!!」
シカマルの叫ぶ声がする
相手の動きを止めるには時遁が早い
だがそれを使えば、シカマルに正体を気付かれる
迷う間にも、男の持つ刀が私に伸びてきていた
『(っ、とにかくクナイでかわして…!)』
ホルスターからクナイを取り出し、衝撃に備える
だがそんな私の目の前に、大きな背中が現れた
『え…』
ザク、という音と共に鮮血が舞う
刀はシカマルの身体を突き抜け、背中から飛び出していた
『シカマル!!!』
ブシュ、という音と共に男は刀を引き抜く
それにまた血が舞った
慌てて彼の身体を起こす
ぬる、という感触にはっとして、自分の両手を見た
『!!!!
夢と、同じ』
シカマルと再会した日に見た予知夢だ
血まみれのシカマルと、両手を血に染める自分
その夢は、これを示していた
「チッ、やっと死んだか
なぁアンタ、俺たちと組まないか?
アンタが仲間になってくれりゃあ百人力だ」
『………。』
「アンタも逃げ回るより、俺たちと一緒にいる方が何かと楽だと思うぜ
元暁の、空目一族の生き残りさん」
『………はっ、誰があんた達みたいな雑魚と組むの?』
「………………あ?」
シカマルは意識を失い、目を閉じている
出血が激しく、すぐに手当てを始めたいところだが、この男を片付けないと無理だろう
『私は元暁よ
私と組みたいのなら、一人で国を滅ぼせるほどの力のある人間を連れてきなさい
それ以下は興味ないわ』
「てんめぇ…っ!」
男が再び襲いかかる
私は真っ直ぐに、両手を男に向けた
『時遁』
目の前の男は、ぴたりと動きを止めた
*
「………………う、」
『!』
呻き声が聞こえる
側近の男の動きを封じ、すぐにシカマルを連れて大名様の部屋に避難した
そして結界の時間を元通りにし、中に籠城している
すぐにシカマルの怪我を時遁で元通りにし、私は大名の容態を確認していたのだ
「………ここは、」
『大名様の部屋です
起き抜けで悪いけど、時間がないの
身体はもう動くはずよ』
「!!」
ガバっと身体を起こす
部屋の中を見渡すと、そこは大名の部屋の中
「…何が起きて…
!!」
バッと自分の服をめくり、先ほど刀で刺されたはずの自分の身体を見る
「………何も、ない」
貫かれたはずの自分の身体には、何の傷跡も無い
自分はアマノを庇うために男に刀で身体を貫かれた
どんなに高度な医療忍術を使ったとしても、多少の傷跡は残る
だが俺の身体は、"時間が巻き戻ったかのように"、何も無くなっていた
「………まさか、」
ひとつの仮説が頭に浮かぶ
それを確認したくて口を開こうとする
だがそれをさせまいとするかのように、アマノは口を開いた
『奈良さん、正直言うと今とてもまずい状況です
簡潔に説明します
あなたの知恵を貸してください』
「!」
アマノはベッドを覗き込み、医療忍術を施している
その相手は大名だ
慌てて大名を覗き込む
そして部屋の外から聞こえる騒がしい声
明らかな異常事態だ
「……分かった、説明してくれ」
『はい
まず側近の男は部屋の外で動けなくしてあります
刺されたあなたを連れて、この部屋に避難し、あなたの怪我を治しました
そして今は、結界を利用してこの部屋に籠城している状態です
ですが、もう我々の動きに感付かれたらしく、外が騒がしくなってきました
ここが気付かれるのも時間の問題です』
「……なるほど」
『それと大名ですが、継続的な毒物の投与による衰弱だと分かりました
今は毒を体外に排除していますが、蓄積期間が長かったのか今すぐに全部取り除くことは無理です
なので、ここから逃げ出せるだけの体力回復をさせています』
ブゥゥゥン、と医療忍術特有の淡い光が大名を包む
多少顔色が回復したように見える
分かったと返事をする前に、大名の扉がバン!!!と殴られた
『!!』
「気付かれたか!」
扉がバンバンと叩かれる
おそらく外の男の異変に気付いたのだろう
『……あの扉の結界と、窓の結界は連動しています
チャンスは一回
あの扉の結界が破られた瞬間に、窓から飛び降りるしかない』
「………大名の容態は?」
『……ひとまず眠らせています
抱えて外に避難させるのは、かろうじて可能だと思います
ただ条件は、すぐに医者に見せること…』
「その条件はアンタで達成できるだろ」
『………分かりました』
シカマルはよしと呟くと、大名様の身体を起こし、背中に背負った
部屋の中にある布を使い、落ちないように身体に固定する
「結界が破られた瞬間に窓を蹴破って外に出る
そして仮拠点を目指して一気に走る
いけるか?」
『大丈夫です』
「よし……
背中は任せたぜ」
『!!』
ふ、と彼は小さく笑う
その笑顔は、かつて木の葉で一緒に過ごした日々の中で、何度も見た笑顔だ
『シ…』
シカマル、と呟こうとした
その瞬間、扉の結界が破られた
「行くぞ!!!」
バリン、とシカマルが窓を蹴破って外に飛び出す
私もそのあとを追った
.