怪しい屋敷
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アマノと共に大名の部屋を出る
今夜は各自の部屋で休むようにというお達しだった
「……ひとまず今夜は休め
けど、アンタの部屋は監視させてもらう」
『お好きにどうぞ』
「悪いな」
ふぅ、とシカマルは息を吐く
やりづらさを感じているようだった
『……奈良さん、』
「!
どうした」
『あの側近も、監視しといた方がいいんじゃないんですか』
「………。
理由を聞こうか」
アマノは声を潜め、周りをぐるりと確認する
誰も人がいないことを確認すると、仮面で隠された顔を俺に向けた
『側近をはじめ、この屋敷に従事する人間の大半がおそらく元忍びです
大名家ならば護衛に忍びを雇うことも珍しくはありませんが、この屋敷はあまりにも忍びの割合が高い
それも、忍びと悟られないように振る舞っている』
「……そうだな」
『少し、違和感を覚えます
それに大名様の寝台にあった食事…
あれは一見病院食のようでしたが、中身はまるで別物でした』
「というと?」
『老人に対して、普通は食べさせないものが多く含まれていました
病床の主人に食べさせる食事としては、あまりにも出来が悪い…
それに大名様の様子を見ても、医療的な処置を受けたとは思えない状態です』
「………。」
シカマルは顎に手を当て、少し考え込む
真っ向から否定しないあたり、彼も多少の違和感を抱いていたのだろう
『今回の奈良さんの任務は、どういう依頼内容だったのですか』
「……医療忍術や薬草の類に頼って治療をしていたが、何の成果も得られなかった
そこで大名が、どこかから、どんな病も治せる医者の噂を聞いた
その医者を探してきて欲しい…
そんな感じだったな」
『………。』
俺の返答に、アマノも同じように考え込む
そして、ぱ、と顔を上げた
『過去に大名様を治療したという人間がいるのですよね?
その方の情報は無いのですか』
「!
何も、聞いてない」
『………本当に、私よりも前に大名様を治療した人間は存在したのでしょうか?』
「………。」
『今までの医者が匙を投げたから、信憑性のかけらもない噂に飛びついた、ということですよね
でもそもそもそんな治療歴なんて無いんじゃないんですか?』
「だとしたらその目的は、だいぶヤベェことになんねぇか」
『えぇ、そうですね』
アマノはふいと顔を背ける
今の彼女の話と、おそらく彼女が考えている疑い
そこから導き出された、この依頼の裏の目的
『大名様は、今まで誰にも治療をされていない
噂の医者は、見つからないことを前提にした依頼
そして、屋敷の大半を仕切る元忍び…
この屋敷にいる人間は、あの大名様に早く死んで欲しいように思えます』
アマノは冷静に、静かに告げる
自分も同じ思考に辿り着いたが、それはあまりにも衝撃の強い話だ
*
この屋敷に着いてから抱いていた違和感
この屋敷は、大名様の屋敷を"取り繕っている"だけのハリボテの屋敷だ
おそらく私たち以外に医療関係者はここを訪れていない
あの大名様は、何の治療も受けていない
実際は忍びが牛耳る怪しげな屋敷に変わりない
「………アンタの話はよく分かった」
『!』
「あとはこっちで動く
アンタは明日、予定通り大名様の治療を始めてくれ」
『分かりました』
シカマルは深刻そうな顔でそう言うと、踵を返してどこかへ向かう
私は案内された自分の部屋に戻った
*
アマノの指摘は自分が抱いていた違和感を確信に変えるものだった
やけに忍びが多い屋敷
なかなか大名に会わせたがらない屋敷の人間
「(確かにおかしい
藁にもすがる思いで噂に頼ったのであれば、アマノの存在は救世主のはず
そのアマノをありがたく思うどころか、煩わしそうに扱う様子も、確かにおかしかった
この屋敷はおかしい)」
すぐに部下を集め、新しい仕事を任せる
各自が動き出したのを見計らい、自分も動き出した
*
自分の部屋に監視をつけるという話だったが、それは無くなったらしい
夜も更けてきた深夜、誰の気配もしない自分の部屋やその周りに、さすがに違和感を覚えた
コンコン
『………。』
だが、扉がノックされる
すぐに仮面を取り出して装着し、扉を開けた
「夜中に悪いな、少し入れてくれ」
『……どうぞ』
声を潜めたシカマルが扉の前にいて、すぐに部屋に招き入れた
彼の様子から、何かあったのだと悟る
「単刀直入に言う、この屋敷はクロだ」
『!
この短時間でもう分かったんですか』
「まぁな」
バサ、とシカマルは懐から小さな巻物を出す
それを部屋の中に備え付けてある机に広げた
『!
抜け忍の情報ですか』
「あぁ、大至急問い合わせた
さっきの側近の男は、岩隠れの抜け忍だった
そんな男が木の葉の大名の側近を務めているなんて明らかにおかしい
それに他の屋敷の人間も、調べたところ全員何かしら埃の出る人間たちだった
……そこで、悪いが先生、任務内容を変更する」
『……大名の保護ですか?』
「あぁ
アンタを元忍びと仮定して話を進めるぞ」
シカマルは次に、屋敷の大まかな見取り図を書いた図を取り出して広げる
大名の部屋と、複数ある出入り口にマークがされていた
「アンタには、俺と一緒に大名の部屋に潜入してもらう
そこで大名を保護、そのまま屋敷を脱出して避難する
木の葉隠れの里は距離があるし、夜中の移動は危険も多い
だからひとまず、屋敷から少し山を下った川沿いに仮拠点を作った
そこに部下が先回りして待機しているから、そこに大名を連れて合流する」
『……この短時間で、どうしてそこまで準備ができたんですか?』
食事をし、大名の部屋に謁見に行ってからまだ6時間程度しか経過していない
それなのにこの根回しの速さは、あまりにも異質だった
「アンタの言葉のおかげさ」
『え?』
「俺もこの屋敷には違和感を持ってたが、他の部下たちは特に何も感じていなかった
だから心配いらないかと思ってたが、アンタの言葉で確信できた
アンタと話した後にすぐ、木の葉に伝令を送って調べさせたよ
アンタの言う通り、あの大名を治療したという医者も忍者も、誰もいなかった
そこからすぐに大名を救出する作戦に切り替えて、動いてただけだ」
『………どうして』
どうして私の言葉を信用できたのか
それを真っ直ぐにシカマルにぶつければ、彼は少しだけ苦笑いを浮かべた
「何となくだよ」
『は…』
「アンタは根っからの悪人じゃねぇ、それはあの村での様子を見てれば分かる
アンタの言葉は信用できると思ったから、信用しただけだ
要は俺の直感だ」
『………………っはは』
「!」
仮面の下の表情はいつも読み取れなくて、彼女がどんな顔をしているのかはずっと分からなかった
だが今だけは分かる
彼女は、笑っているのだ
『分かりました
……気付かれる前に、行動に移しましょう』
アマノは身支度を整え、扉に手をかける
わずかに扉を開け、外の様子を伺った
『……誰もいませんね』
「行こう」
音を立てないように扉を開け、廊下を走り出す
アマノの走り方はもちろん、忍者特有のそれだった
*
大名様の部屋の前に辿り着く
牢屋のようだと言った自分の感性は、間違っていなかったようだ
『……結界の類いですかね、外部からの侵入と、内部からの脱出の両方を防いでいる』
「……………完全に閉じ込めているな」
扉からは禍々しい気配を感じる
手を触れようと手を伸ばしたその時、背後に人の気配を感じた
ば、と振り向く
そこには、大名の側近がいた
.