任務開始
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
村を出て、シカマルの率いる小隊と共に山道を下っていく
「このまま火の国に入り、大名のもとに参上する
あとは先生が大名の治療をする
それが終わったら、また村まで俺たちが同行する
いいな」
『えぇ、承知してます』
「ま、道のりはそこそこ長いんだし、気楽に行こうぜ」
へら、とゆるく笑うと、シカマルは前を向いて歩き始める
この任務は、便宜上は私の護衛任務となっているようだ
隊員と話しているシカマルを見て、ふと、昔のことが思い出された
サスケ奪還任務で、彼が初めて隊長を務めた時の姿と重なった
『(……そうか、私は結局、あの時以来同じ隊になってなかったんだ )』
心の底から湧き上がる懐かしい気持ち
それに蓋をした
*
シカマルの小隊について行くこと数時間
木の葉隠れの里からはかなり離れたところに、その大名の屋敷はあった
『(……まるで要塞だな)』
その大名の屋敷は、まるで城のようにそびえ立っている
要塞のように塀が囲っており、外部からの侵入者を遮断している
シカマルが門番らしき武装した男に声をかけ、何か話している
少しするとこちらを振り返り、中に入ろうと声をかけた
*
ゾロゾロと中に入る
廊下は豪華絢爛、様々な年代の美術品や調度品などを揃えており、まさに金持ちの家という感じだ
側近だという男に、応接間に通される
そこも調度品が広がり、見栄を張った部屋だというのは一目瞭然だ
『(………。)』
側近の男は私がくだんの医者だと知ると、ソファに腰かけるよう促す
大人しく指示に従って座ると、隣にシカマルも座った
他の部下の方々は、部屋の中でバラバラに位置取る
その配置は、いつ攻撃を受けても動けるように考えられた配置だ
側近の男は一度席を外すと言って、応接間から出て行く
おそらく大名のもとに向かったのだろう
彼を待つ間、私は側近の男の顔を思い出していた
『(………今の男…)』
カタギの人間では無いだろう
おそらく元忍びだ
こちらを観察する目付き、細かな動作の中に垣間見える忍び特有の動き
それらが隠しきれていない
もしくはわざと気付かせるようにそうしているのか
じ、と彼が出て行った扉を見ていると、隣からふぅ、と息を吐く声がした
「堅苦しいな、大名のお屋敷ってのは」
『………。』
シカマルが部屋の中にいる全員に聞こえるようにぼやく
彼の部下たちは苦笑いを浮かべながらも、小さく頷く人もいた
だが私はそれを無視した
少しだけ応接間内の空気が柔らかくなったところで、不意にシカマルが声のトーンを落とした
「今の男、元忍びだろうな」
『!』
私にしか聞こえない小さな声で呟いた彼
思わず顔をシカマルに向けた
「アンタだって気付いてるんだろ?」
『………………えぇ』
「だよな」
ふ、と小さく笑うシカマル
私はすぐに、ふいと顔を背けた
その時、廊下から足音が聞こえてきた
ノックの音と共に先ほどの側近が入ってくる
「主様は今休まれております
ご挨拶ができるのはおそらく夜になってしまいますが、如何されますか」
寝ているから挨拶は夜にしろ、という事だろう
シカマルはそれに「分かりました」と愛想良く返す
側近は、別の館の者に屋敷の案内や今夜の宿泊する部屋を案内させると申し出る
断る理由も無いため、それを受けることにした
*
側近とは別の男が応接間に現れ、その男に案内をされる
部屋の場所、立地、もし外部からの攻撃を受けた場合の避難経路などを考えながら屋敷を歩いた
一番後ろを歩くアマノをちらりと振り返る
仮面では視線の動きは分からないが、おそらく彼女も同じような観点で屋敷を見ているのだろうと思った
「(…逃げ出すような事はしないだろうが…)」
アマノもまだ信用できる人間では無い
特に治療中が最も危険だ
彼女が提示した条件は、治療中に部屋に人を入れるな、というもの
大名と密室で二人きりになるのは正直危険だ
警戒は怠れない
*
部屋の案内が終わり、少し時間が開く
大名はまだ眠っているらしく、時間を潰してくれと頼まれた
「そっすか、分かりました
だったら…」
シカマルは部下に配置を指示する
先ほどの屋敷案内で目星を付けたらしい監視ポイントだろう
屋根の上や塀の上、中庭などに部下を分散させていた
「よし
んで、先生
アンタには悪いが、俺と一緒にいてもらう」
『………構いませんよ』
外部からの侵入に対しては彼の部下が、そして私の監視はシカマルが請け負うのだろう
「つっても、アンタがどっか行きたいならそこに着いていくぜ
俺のことは無視してくれていい
どっか行きたいところあるか?」
『………。
そう、ですね』
顔を背け、彼女は周りを見る
そして一点に顔を向け、あそこ、と呟いた
『屋上、雲が見たいです』
「!
………そりゃ良いな、付き合うぜ」
*
屋上に出ると爽やかな風が吹き抜けて行った
アマノはフードが外れるのが嫌なのか、頭を軽く押さえて歩き出す
少し時間が経っていることもあり、太陽は沈みかけている
空は夕焼け空へと変わりかけている
青からオレンジ色へと変わり始めている空を、アマノはじっと見上げていた
「………。」
適当なところに腰を下ろし、ごろんと寝転ぶ
アイツは逃げたりしないだろうと、何となく感じた
ただただ突っ立って空を見上げる彼女の姿に、ふとトキの姿が重なった
「(………くそ、ダメだな)」
とうの昔に消えた彼女の姿が思い出される
目元を腕で覆って、はぁ、と息を吐いた
「……もう、潮時なんだろうな」
密かに自分がトキの情報を探っているのは、同期たちは全員知っている
それを咎められたことも、止められたことも無い
だがそれも数年続けば、心配の声が混ざってくる
つい先日も、チョウジに言われた
前に進むことも必要だと
俺だけはいつまでも、あの戦場に何かを忘れてきているようだと
そう言われた
*
『………!』
シカマルの気配が変わったように感じて振り返る
彼は屋根の上で寝転んでいて、腕で顔を隠していた
西陽が眩しいのかと思って様子を見ていたが、微動だにしない
『………寝てる』
不安になって近寄ると、彼は寝息を立てていた
嘘でしょ、と思わず苦笑いをした
*
「っ!!」
ハッと目が覚め、飛び起きた
今は何時だ、ここは何処だ
任務中、しかも警戒人物の監視をしている時に眠るなんてあり得ない
今さらこんなミスをするなんて、と驚いていると、隣から「あ」という声がした
『……眠れましたか』
「………………アンタ…」
飛び起きた俺のすぐ近くでアマノが膝を抱えて座っていた
『寝てたのは数分ですよ、任務に支障は無いと思います』
「………………そう、か
悪い」
『お疲れなんですね』
「………いや、気を抜いたみたいだ」
『え?』
ふー、と長いため息を吐くと、シカマルはまたごろんと寝転んだ
口元は笑っていて、どこか楽しそうだ
「アンタがいるの忘れてた」
『……大丈夫ですか、それ』
「はは、ダメだよな
アンタに気を許しすぎてるみてぇだ」
『………。』
ドキ、と心臓がはねる
私はそれに、何も返事をしなかった
*
しばらく二人で過ごしていると、他の部下がシカマルのもとに来た
側近が呼んでいるとの事だ
応接間に全員で移動すると、側近が待っていた
「主人様がお目覚めになりました
ですが時間も時間ですし、先にお食事はいかがですか
主人様も先にお召し上がりになるというので」
なかなか大名様に会わせない側近に、多少の違和感は抱く
だがそこは自分のつっこむ所ではないと割り切り、シカマルの判断を仰ぐ
シカマルはすぐにでも治療を始めた方がいいのではと進言するが、側近はそれを頑なに拒否した
シカマルも違和感を抱いているようだが、強く言えないのだろう
分かりました、と渋々了承した
*
さすがは大名の屋敷
ご飯はどれも豪勢で、あの貧村ではお目にかかれないようなものばかりだ
和やかな空気で食事は進み、全員の食事が済む
「では先生、主人様のもとにご案内します」
側近の男が声をかけてくる
「俺も行きます」
すかさずシカマルが口を挟む
側近は嫌そうな顔を一度だけ向けるが、任務を任されている隊長としての責務だと、うまく言いくるめていた
*
屋敷の中でも一番奥の部屋
そして大きく、厳重そうな扉
そこがこの屋敷の主人であり、大名のお部屋だという
『……牢屋みたいな扉ですね』
「え…」
ぼそ、と呟いたアマノに、側近が少し戸惑う様子を見せる
だが彼女は構わずに、部屋を開けた
部屋の中も調度品が溢れ、真紅を基調とした絨毯と寝台が置かれていた
『………初めまして、大名様
アマノと申します』
寝台で横になっている大名様に挨拶をする
老年の大名は、よろよろと身体を起こすが、声を出す前に激しく咳き込んだ
側近が慌てて背中をさする
大名が落ち着くまで、ざっと部屋の様子を観察する
大きな窓はあるが、閉め切られ、重そうなカーテンが日差しを遮っている
寝台の横にあるサイドテーブルには食事が置かれており、病院食のようなものだった
だがその病院食も、あまり手を付けられていないようだった
『……………。』
違和感を覚える
だがそれは、口にしないことにした
シカマルと共に軽く挨拶を済ませるが、大名様は話せる状態では無い
今夜は一度お開きとし、明日、大名様の治療を行うこととなった
.