受理完了
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
数日後、木の葉から暗部の人間が派遣された
そして賊が引き渡された
「ちょっといいか」
賊の引き渡しには立ち会わず、私はまた丘の上にいた
すると予想通り、シカマルが現れた
「暗部がアンタに用があるってよ
どうする」
『……どうするも何も、選択肢なんて無いですよね』
「え?
……!」
シカマルが気付いた時には、暗部の人間が私の目の前に立っていた
「あなたがこの村の医者ですね」
『……彼を尾行したのですね』
「何ぶん、こちらも急いでいるもので」
『で、ご用件は?』
「大名様の治療をしていただきたい」
「は?」
『……。』
思わず聞き返す
だが暗部の男は、真っ直ぐに医者を見つめていた
『……そこの方が依頼してきたのと同じ内容ですか
見返りは、私を見逃す、というところですか』
「………察しがよろしいようで
その通りです
抜け忍であるあなたを見逃し、この村で今後も生活していくことを保証します
その代わり、こちらの依頼を受けてください」
『…私の正体は、もう分かっていますか?』
「………。」
『………その様子だと、私の素性は判明していないようですね
木の葉も意外と爪が甘い』
「……ご同行、願えますか?」
暗部の言葉に苛立ちが混ざる
からかい過ぎたか、と小さく笑った
ちら、と仮面越しにシカマルを見る
彼は暗部が尾行してきたことに少し腹を立てているようだ
『………………わかりました』
「! おいアンタ…」
『ただし、こちらの条件を飲んでくれるのであれば、です』
仮面の医者は静かに、けど真っ直ぐに暗部を見つめ返す
暗部はその返答は予想していたのか、落ち着いて「何でしょう」と聞き返した
『一つ、仮面を常に着用することを許可してください。それがたとえ大名の御前であったとしても
一つ、私が治療を行う際、同じ部屋には患者以外入れないでください』
「ふむ、そのくらいならばこちらで大名様に通せるでしょう」
『最後に……
彼らを、この任務から外してください』
「!!」
医者は、俺たちを任務から外せと言ってきた
それは予想していなかった
その願いは暗部も予想外だったのか、雰囲気が少し変わる
「……それは、守れる保証はありません
もともと彼らの任務は、あなたを見つけ、あなたを大名様のもとまで護衛し、その後この村まで送り届ける…
その一連の流れ、すべてが奈良隊長率いる小隊の任務です」
『えぇ、なので外せと言っているのです
私に護衛は必要ありません
場所さえ教えてくれれば、勝手に行きます』
「それこそ許可できません
あなたは抜け忍…、犯罪者です
そんな犯罪者を、国の大事な大名様の御前に一人で参上させるわけにはいかない
彼らはあなたの護衛をすると同時に、あなたを見張る役目もあるのです
分かっていますでしょう」
『……そうですか』
ふー、と長いため息を吐く
せめてシカマルを遠ざけられれば、と思ったが、そうもいかないようだ
『では、人を代えることは?』
「それも無理です
ここは火の国からもかなりの時間を要する…、今から人を派遣するには遠すぎる
それに大名様の体調も、時間を長くかけられる状態ではない
最後の願い以外の、二つの願いは聞き届けましょう
それでどうか、この案件を受けていただきたい」
『………………。』
暗部の物腰が柔らかいうちに引き受けた方が良いのだろう
駄々をこねれば、ボロを出しかねない
それに木の葉であれば、信用はできる
『(シカマルと一緒に、というのは避けたかったな…)』
聡い彼のことだ、いつ私の正体を見破るかわからない
用心せねばと、改めて気を引き締めた
『分かりました
その依頼、引き受けましょう』
*
「(……護衛はいらない、と言い切れるほどの自信があるのか)」
暗部さえ正体を掴めていない仮面の医者
そいつの言葉を冷静に分析していた
護衛はいらないと跳ね除けた発言から、自分の実力に自信があることは伺える
先の賊が襲ってきた時は、どんな戦い方をしていたのか見ることができなかったが、一人で少女を救い出していた
その前の願いは、顔を見ないこと。これは俺たちにも最初に指定してきたことだ
そして二つ目の、治療中は部屋に入るな、というもの
こっちは少し違和感を持った
この医者が医療忍術を使える、ということは俺たちももう知っている
少女に治療をしていたところを見ていたし、本人にも話をしたからだ
なのに治療中に部屋に入るな、と言った
「(……医療忍術ではない、何か別の術を持っている?)」
もしかしたらその術が、医療忍術とは違って個人を特定できるほどの特徴がある術だったら?
そうしたら部屋に入るな、と言った説明がつく
「(医療忍術以外で、治療が出来る忍術?
そもそも聞いたことがないな
だがそういう特別な忍術が存在するのか?
そしてそれは、この医者の正体を特定しかねないのか?
治療に使う忍術で特徴的なものといえば…)」
サスケが昔仲間にしていた香燐という忍者、自分の身体を噛ませ、そこから治療する術を持っている
だがそいつは木の葉で所在を把握している
「(……あとは、トキの時遁の医療忍術…)」
あの術も特徴はある
なにせ時間を巻き戻すのだから。それに治療、とは一概に言えないグレーゾーンな術
違うか、と無理やり頭の中の話を切り上げた
また部下に調べさせることが増えた、とため息をつき、目の前のやりとりに注目し直す
「では、我々はこれで
あとは奈良隊長、よろしくお願いします」
「あぁ…、了解です。綱手様にも続報を連絡しといてください」
『(綱手様…)』
懐かしい名前が出てきて少しおかしかった
そのすぐ後に、暗部は全員その場から去り、気配を消した
おそらく村に戻り、賊を木の葉に連行するのだろう
「そんじゃ、改めて」
『!』
くる、とシカマルが振り返る
その様子はいつも通り、飄々として、気だるさもあった
「アマノ先生、よろしくお願いしますよ」
『………こちらこそ』
「ま、結局アンタとは長い付き合いになりようだ
仲良くしよーぜ」
『………村に戻ります
私が不在になることを村の皆に伝えますので
村を出る時間は後ほど教えてください。準備します』
ぺこ、と頭を下げてその場から歩き去るアマノ
「感じわりぃな」
は、と鼻で笑ってしまう
仲良くしたくない、関わりたくない
それが全面に出ていたからだ
*
村に戻り、村長をはじめとした村の人間に、しばらく家を空けることを伝える
みな暗部からある程度聞かされていたらしく、気をつけて、無理はしないでと、似たようなことをたくさん言われた
「早く戻ってくるんだよ」
その言葉が純粋に嬉しかった
村の一員として待っていてくれるのだ
『すぐ終わらせてきます』
仮面の下で笑顔を浮かべた
そんな村人とのやり取りの最中、シカマルの部下の青年がやってきて、数刻後に村を発つ、と告げられた
*
家に戻り、荷物をまとめる
医療具と、もしもに備えた武器も持った
戦闘になることは無いと信じたいが、あの予知夢はまだ起こっていない
それが気がかりだった
『!』
ザ、と目の前が霞む
『(この感覚は、まさか)』
予知夢だ、と認識した時には、もう視界は変わっていた
*
目の前には倒れるシカマル
そして真っ赤に染まる自分の手と、自分のクナイ
あの時と同じ映像だ
だが、周りが前よりも鮮明に見えた
『(室内、患者用のベッド
ベッドには…)』
ベッドには、老人の姿があった
気を失っているのか、目を閉じている
この人が大名、ということか
『(大名の治療中に襲われる?
でもなぜシカマルが倒れてる?
私は血塗れになっている?
シカマルを刺したのは誰?
これだけじゃ何もわからない
もっと前の未来が見たい)』
だが、大戦の時に予知夢の力はほとんど失った
そんな私に、もう予知夢を操る力は無かった
そこでプツンと映像は途切れ、村の自分の家に意識が戻ってくる
『………シカマルだけは、絶対助ける』
カバンに詰めようとしている自分のクナイを握りしめ、静かに決意した
未来なんて壊してやる
.