朝焼け
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
衝撃的な予知夢を見て寝るに寝られず、起き上がってぼーっと時間を過ごす
そして、先ほどの夢の内容を整理した
まず山賊
あれは確実に起こるだろう
だがそれは村の自警団、シカマルたちが解決してくれる
問題はそのあと
なぜ私がシカマルを殺したのか、いや、殺しているのか?
シカマルは死んでいるのか?
分からないが、良くないことが起こるのは明確だ
*
翌朝、早朝に家を出る
まだ誰も起きていない、日の出の少し前
普段から静かな村ではあるが、この時間はより静かだ
村の中を歩き、丘を目指す
朝日が登る直前の白んだ空に雲が浮かぶ
丘に続く山道を抜けると、爽やかな風が吹き抜ける
『……いい天気だな』
高台にある丘は、地平線まで見渡せる
どこまでも続く森と、晴れ渡る青空だけが目に映る
至ってシンプルで、かつ美しい景色だ
「へぇ、良いところだな」
ざり、と土を踏みしめる音がすると、覚えのある声が後ろから聞こえてくる
振り返らなくてもわかる
尾行されていたのは気付いていた
『………こんな早朝から、何か用ですか?』
「へぇ、俺がいたことに驚かないのか」
『えぇ』
念のため、顔を隠す面をつけていた
そのまま振り向くと、予想通り、シカマルが立っていた
『わざと気取られるように歩いてましたよね』
「まぁ否定はしねぇな」
『……話があるのでしょう?』
「……。
まぁそんな警戒すんなよ」
へらりと笑って肩をすくめるシカマル
懐かしい仕草だ
「にしても、ずいぶん早起きなんだな
習慣か?」
『いえ、今日はたまたま早く起きただけです
たまに早く起きると、ここに来るのです
ここは私のお気に入りの場所なので
雲がゆっくりと流れるのを見ると、心が落ち着くんです』
「雲が好きなのか?」
『……まぁ、えぇ、そうですね』
「へぇ、気が合うな
俺も雲は好きだ」
知ってる、という言葉が出かかったが、なんとか飲みこむ
あなたが雲が好きだから、私も雲が好きになった
別段気にしていなかった空が美しいと感じられるようになったのも、雲の流れる様子に心が落ち着くと分かったのも、シカマルがいたからだ
「お前、どこの隠れ里の抜け忍だ?」
不意に訪れた静寂
このタイミングでこんなに直球な質問をしてくるとは、予想外だった
*
雲が好きだと言った医者
医者の話す姿に、なぜかトキの姿が重なった
我ながら女々しいものだ
あの大戦以降、ナルトの意向でトキの捜索は表立って行われていない
しかし暗部は、密かに彼女の捜索を続けていた
だが見つけられなかった
ナルトは、トキはどこかで生きているだろうと言う
仲間たちもそれを信じてる
だが一方で、まったく集まらない情報から、死んだのではないかとも言われていた
「(いつまで引きずってるんだろうな、俺は)」
もういなくなった幼馴染の影を追い、密かに情報を集めてる
だが何も手に入らない
もう、諦めた方がいいんじゃないかと、頭では分かっているんだ
「お前、どこの隠れ里の抜け忍だ?」
話が途切れたのを見計らい、核心をついた
コイツには回りくどいやり方が通用しないのは分かっているし、こちらを警戒して言葉の裏を探ろうとする
そして裏を探って、のらりくらりと質問の意図をかわすのだ
ならば裏表のない質問をぶつければ、逃げ道はなくなる
『………。』
多少の動揺が見られた
面で表情は分からないが、奴のまとう空気が変わったのだ
『………抜け忍は確定なのですか、証拠もないのに』
「確かに証拠はねぇ
だが噂にあった"なんでも治せる医者"…
これは医療忍術だろう
村の人間に話を聞いたが、お前は治療するときは周りに人を寄せない
そして治療された人間は、黄緑色の光が見えたと証言した
黄緑色の光といえば、医療忍術の特徴だ
だからお前は、どこかの隠れ里の医療忍者…
だがこんな辺境に流れ着いて住み着いてるということは、後ろ暗いものを持っている
…そして、今わざわざ身分を隠しているということは、抜け忍
そうだろう?」
『………この短い滞在時間で、よくもまぁそこまで推察できましたね』
パタパタとフードが風に揺れる
それを押さえながら、医者はため息をついた
「さらに言えば、俺たち木の葉の忍びを前に顔を隠すということは…
木の葉隠れの里の抜け忍じゃないのか」
シカマルの声が徐々に鋭く、暗くなる
それは敵を前にする彼の声だ
『仮にそうだとしたら、あなたは私をどうするのですか?』
*
背中がゾクっと冷えた
面越しでも感じ取れるほどの殺気に、この人物がかなりの実力者であることを悟る
「………仮に木の葉の抜け忍だとしたら、罪状次第でお前を木の葉に連行する」
『そう
ひとつ言っておきますが、私は村の外の人間が来たら相手は問わずに面をしています
別にあなた方が特別というわけではない』
「……だよな」
木の葉の俺たちだけに顔を隠していたら、今の推察は的中する
だがコイツは、誰に対しても平等に素顔を隠していた
「(木の葉かどうかは分からないが、ほぼ抜け忍で確定だな
問題は素性が分からないこと、罪状が分からないこと
それに何より、大名の前に参上できる人間じゃない可能性が高い
面倒くせぇなぁ…)」
はぁ、と隠す気もなくため息をつく
任務失敗か、と肩を落とした
『私の素性を暴いたところで、あなた方のお望みの人間ではないことはすぐ分かります
こんな地図にもない村のことなど忘れて、早々に里に戻ることですね』
では、と頭を下げ、来た道を戻ろうと医者が歩き出す
だがそのとき、来た道を誰かが猛スピードでこちらに向かう気配がした
速さと気配で、自分の部下だと気付く
「シカマル隊長!」
「どうした?こんな朝っぱらから」
「た、っ大変です!
村の子どもが賊に攫われました!!」
『!!』
部下の言葉を聞くやいなや、医者は走り出した
慌ててその後を追いかけつつ、部下から詳細を聞く
昨夜の嵐に紛れて賊が村の近くに来ていたらしい
そのまま適当な民家を襲撃し、家の子供を拉致
行方をくらましたという
おそらくは人買いあたりだろう
適当な子供をさらって売り飛ばすつもりなのだ
村の中心に向かうと、すでに自警団が集まっていた
そこに部下たちもいたので合流する
「!
先生!」
『話は聞きました
逃げ道のアテはある?』
自警団の男が医者にいくつかのルートを伝える
どれも山を降りるルートでかつ、人里に近い場所に出られる道だそうだ
しかし人数の少ないこの村の兵力を考えると、分散して捜索することは難しい
確実なルートを押さえないと、子供を助けられない
『………なら、川沿いのルートに間違いない
おそらく昨日の嵐で、普段のルートは倒木だらけだ
慣れてない賊なら間違いなく道に迷う
山を確実に下りるなら川沿いを進むだろう
ただし川も増水している
捜索は慎重にいこう』
てきぱきと判断を下し、指示を出す医者
医者の判断に自警団は返事をすると、川を捜索できるよう装備を集めに走っていった
「シカマル隊長はどのルートだと思います?」
「………俺もあの医者と同じ判断だ、川沿いにいると思う」
「へぇ、あの医者やっぱりただの医者じゃないですね」
部下たちの感心をよそに、医者は自警団とともに走り去る
そして代わりに、村長が俺たちの前に来た
「賊の討伐は心配いらぬよ、あなた方は木の葉へお帰りください」
「えっ……、いやいや、手を貸しますよ!!
子供もそうだけど、賊を相手にするなら俺たちの方が…!」
部下の一人が村長に食い下がるが、村長はふるふると首を振った
「無償の施しは受けられません
ご覧の通り、うちは金のない貧村
これであなた方のご厄介になってしまえば、木の葉に借りを作ってしまう
借りを返せる村ではないのですよ」
「…見返りなんて求めてません
俺らも行きます」
「……ありがたいが、君たちはそう言ってくれても上は分からない
手助けしてやった代わりに何かを差し出せと言われても、何もできないのです
隠れ里と関わりを持てば、ここも属国を迫られる
それを避けたいのです」
村長のいうことはよく理解できた
どの国にも属していないこの村が、隠れ里の助けを受けたとなれば、国に所属するよう里から人材が派遣されるだろう
領地拡大を迫れば、隣接する国からも圧力をかけられるかもしれない
そうなれば、間違えればこの辺りで争いが生まれる
村長はそれを避けたいのだ
「……村長のお気持ちは分かります
ですが今は、子供の命の方が優先だ
俺たちも同行します
名目は、一晩泊めてくれた宿代でどうですか」
俺の提案に、村長はわずかに目を見開いた
そして、良いのですか、と、遠慮がちに言った
「えぇ
無理言って泊めてもらったんです。そのお礼に俺たちは子供を取り返しましょう
これならば心配ありませんよね」
「……ありがとうございます
どうか、よろしくお願いします」
村長は深々と頭を下げた
「………よし
俺たちも行くぞ、最優先は子供だ
村人が被害を被らないよう、賊の討伐も迅速に進めよう」
「「「はい」」」
部活たちに指示を出し、自警団のもとに向かう
自警団のリーダーに同行の旨を伝えると、ありがとう、と感謝された
『………。』
ただ一人、医者だけは表情が読み取れなかった
自警団は様々な武器を持ち、隊列を組んで移動を始める
目標は川沿いのルートの先回りだ
自警団の武器は種類がバラバラで、どこで手に入れたのかもよく分からないものばかりだった
生産場所も異なるものばかりだ
だが隊列の組み方は、戦争の時のそれと似ていた
.