面越しの再会
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
噂を整理し、そこから推測をした結果、この国境の山奥が怪しいと睨んだ
そこで、鳥を操れる忍に頼み、上空から山を観察した
すると、奥山に地図にも載っていない小さな集落のようなものがあった
ダメ元で訪れてみると、忍世界や戦いとはかけ離れた、のどかで穏やかな、自然に囲まれた村にたどり着いた
「この村に、どんな病気も治すことが出来る医者がいるという噂を聞きつけてやって来ました
もし本当に、噂通りの医者がいるというのなら、お目通り願いたい」
俺たちを出迎えたのは、警戒心をあらわにする村の男たちだった
中には村長もいた。かなりの老齢だが、しっかりと自分の足で立ち、俺たちを見つめる
「……忍びが、こんな辺境の地に一体なんの御用でしょうか
ここはどの国にも、どの隠れ里にも属していない完全なる自治村…
火の国といえど、言うことを聞く義務はございません」
はっきりとした物言いに、後輩がむ、と顔をしかめるのが分かった
ある程度の地位や権限を持っている忍を、ここまで頭ごなしに拒絶する人間は珍しい
「その返事から推測するに、噂の医者は実在するんですね?
そしてその医者は、この村に本当にいる」
「………。」
村長は表情こそ崩さなかったものの、周りの男たちの表情は明らかだった
「確かに、この村にはとても腕の良い素晴らしいお医者様がいます
しかし、あなた方のおっしゃる噂通りかと言われると、やや異なる点もある」
「その医者はもともとこの村の人間なんすか?」
村人たちのつぶやきや村長の話を聞いていて、ふと気になって尋ねてみる
随分と他人行儀な感じを受けたのだ
「いや、よそから来た、いわば流れ者です
故郷は別にあるらしいのですが、詳しくは存じ上げていません」
「………。」
一問一答形式で質問を重ねていくと、村長が途中で村の男の1人に声をかけた
そのあとで、俺に話しかけてきた
「失礼、あなたの名前を聞いてもいいですか
どうやらあなたが代表のようだ」
「あぁ…、奈良シカマルと言います
この隊の隊長を務めています」
「ありがとう
そこの、先生のところに行ってきなさい」
「はい」
たたた、と男が村の中に走り去って行き、残された村長と他の男たちは、また俺たちを見つめる
「先生にあなた方の来訪は伝えます
ですが、先生が来るかどうかは分かりません」
「と言うと?」
「大の人嫌いでしてね」
ふふ、と笑う村長に、村の男たちも苦笑する
どうやら、その通りらしい
期待は出来ないかな、と心の中でうんざりしていると、村の男が戻ってきた
***
知らせに来た男の言葉に、ドクドクと心臓が早まっていく
『…なんで、木の葉の忍が』
「なんでも、噂の医者を探しに来たとかなんとか…
今は村長たちが相手をしてるんだが、特に危害を加える気はなさそうだ
けど、リーダーの男が、腹の中を見せない感じの食えないやつだ
気をつけた方がいい」
『(リーダーがいるということは、小隊?任務か何かで私を探しに来たということ?)
素性は分かってるんですか?』
「あぁ、村長がそのリーダーの男の名前を聞いたよ
すんなり答えてくれた」
『名前は?』
子供たちが不思議そうに私たちの会話を聞いている
だがそれに構っている余裕もない
男は、あぁ、と言うと、村長が聞き出した名前を答えた
「奈良シカマル、という男だ」
サァ、と血の気が引くのが分かった
あの日背中を向けたあの人が、なぜ、今になってまた現れる?
第四次忍界大戦が終わり、数年が経った
もう、自由になれたと思っていたのに
「どうする?先生
奴らは先生に会わせろと言ってきてる
俺たちはあんたの意向に従うよ」
『………………。』
ドクドクと鼓動が激しくなる
頭が真っ白で、整理が追いつかない
『………1つ、条件を付けてください』
***
村の男が戻ってきた
だが一人で戻ってきたのが分かり、任務失敗か、と落胆する
「どうだった?」
「はい、先生は
"条件を飲んでくれるのならば会ってもいい"と」
「条件?」
聞き返すと、男はちらりとこちらを見て、気まずそうに口を開いた
「"顔を見せないこと"が条件だ」
「………え?」
「面を付けた状態なら話を聞くが、先生の顔を見ないことが条件だ
その条件を飲むのなら、村の中の集会場で会うと」
「………面、か」
流浪の医者で、話を聞く限りは素性が訳ありなのだろう
素性も顔も分からない人間をいきなり大名のもとに参上させる訳にもいかないが、まずは会わなければ話が進まない
仕方ないか、と息を吐いた
「分かった
その条件を飲みましょう」
はっきり明言をすると、男は「ではこちらに」と俺たちを案内し始める
村長たちも、「先生が良いと言うのなら」と、大人しく道を通してくれた
***
村の奥に、大きな寺があった
それを村の人間たちは「集会場」と呼んでいるらしい
「先生、連れてきましたよ」
中に入り、大きな広間に通される
そこには、真っ白なマントのようなものを着て、フードを深くかぶり、顔には暗部が身に付けるような面をした人間が待っていた
「(……何だこいつ)」
マントのせいで体格が分からないし性別も分からない、フードを深くかぶっているから顔もよく見えない
そもそも面をしているから、どんな顔なのかは一切分からない
視覚から得られる情報を極限まで排除するこの徹底っぷりは、異常だ
「………火の国、木の葉隠れの里から参りました。奈良と言います
あなたが、どんな病も治すことができるという噂の医者ですか?」
『……根も葉もない噂を確認するためだけに、こんな場所まで足を運んだということはないでしょう?
本当の目的は何ですか
私に、何の御用でしょうか』
こちらの話に明確に返事をせず、自分の話に話題をすり替える
食えないタイプの人間だな、と自分なりに目の前の人間を分析する
面を通した声だから、声もくぐもっており、よく聞こえない
「……我々は、火の国の大名の勅命を受けて参りました」
『(大名?)』
「大名は現在、大病を患っています
それを治せる医者を探していると、あなたの噂にたどり着きました
我々の目的は、あなたに火の国に参上していただき、大名の治療を行ってもらうことです」
『……………なるほど』
面のそいつは、少しだけ考えるそぶりを見せる
しかし
『人違いです』
ばっさりと、そう吐き捨てた
***
「火の国、木の葉隠れの里から参りました」
集会場に現れた彼は、私の記憶からほとんど変わっていなかった
面のわずかな穴から覗くだけだが、切れ長の瞳に気だるさを感じる座り方
昔の記憶と重なる部分が多い
『(問題は……)』
なぜ、大戦が終わって数年の歳月が流れた今頃になって、彼が私の目の前に現れたのか、だ
『(ナルトが約束を破るとは思えない
シカマルが個人的に探しに来たって訳でもなさそうだし…
理由が分からないな)
……私に何の御用でしょうか』
質問をぶつけると、シカマルは一瞬だけ顔をしかめた
不快そうに眉をひそめるも、すぐに理由を教えてくれた
シカマルの言う噂は、おそらく私のことだ
どんな病も治すというのは、時遁の力による時間の巻き戻しのこと
病にかかる前に時間を戻すだけで、治している、とは少し異なる
『……今、あなたがおっしゃられた噂は、すべて根も葉もない噂にすぎません
私はただのしがない医者です
人違いです』
はっきりと伝えると、集会場の中に沈黙が走る
村人たちは不安げに様子を伺い、シカマルたちは怪訝な顔をした
「……そうっすか」
『………。』
さぁ、どう出る
頭の切れるシカマルのことだ
何か代案を出してくるに違いない
こちらが予想もできないような、突飛な作戦を立てるはずだ
そして予想通り、シカマルは口を開いた
「申し訳ないんスけど、村に一泊させてくれませんか?」
『………えっ?』
あまりに予想外の発言に、私は思わず拍子抜けした
何を言いだすんだ、と村人たちもざわつき始める
「もうじき夜になる
今この村を出ても、日が出ているうちにあの山を越えて麓に戻るのはかなり厳しいッス
だから、この村に一泊して、明日、里に戻ります
お願い出来ませんかね?」
に、と笑うシカマルに、嘘だと確信した
暗い山道を一般人が歩くのと、鍛錬を積んだ忍びが歩くのとでは天地の差がある
山を下ることくらい簡単なはずなのに、滞在を求めるということは、何か考えているのだ
「それくらいなら構いません」
『「!」』
私の代わりに返事をしたのは、村長だった
「この山も、少し離れれば人の手が一切入っていない自然がそのまま残っている場所ばかりです
獣も多く、道も悪くて危険も多い
遭難する可能性もある
この集会場を使ってください、最低限の宿泊設備は整っています」
「ご厚意に感謝します」
『………………わざわざ来られたのに、お役に立てなくて申し訳ありません
せめて今夜はゆっくり身体を休まれてください
何かあれば、村の者に言ってください』
ぺこりと頭を下げ、あとは村長に任せようと集会場を後にするために立ち上がる
すると、思い出したようにシカマルが声をかけてきた
「あなたの名前を教えてくれませんか?」
真っ直ぐに見つめる瞳が、私の心をざわつかせる
それから逃げるように、目をそらした
『……"アマノ"と言います』
彼に嘘をつくのは何度目だろう
.