旅立ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
思い出の場所でもある歓楽街を出発し、村を目指す
1日から2日はかかるだろう
その間、シカマルと二人旅となる
木の葉にいた時でさえ、二人きりになる事はあまり無かった
私とシカマルが一緒にいる時は、大抵そこにチョウジといのも居たからだ
歓楽街から離れ、山道を歩く
地図にも載っていないあの村に辿り着くには、途中から獣道を歩く必要もある
おそらく今夜は野営になるだろう
村の場所は自分が知っているし、危険の少ないルートも、短縮ルートも知っている
忍びじゃなければ通れない道を駆使すれば、多少は早く到着できるだろうと彼に話した
道中、シカマルから任務のその後についてを教えてもらった
サスケの手助けもあり、シカマルの小隊は無傷で里に帰還できたらしい
そして大名はシカマルの部下たちが責任を持って木の葉病院に連れて行き、現在は病院で治療とリハビリを受けているとのこと
経過も順調だそう
そして大名の屋敷には、木の葉から別の部隊が派遣され、内部の状況確認を行いつつ、賊の尋問等も行っているそう
「ようは、全部何とかおさまった、ってところだ」
シカマルは綱手様から休暇を言い渡されているため、私と一緒に里に戻る
休暇とは言いつつも、おそらく綱手様は、シカマルが私を説得する事を願っていたのだろう
『…そう、良かった』
大名のその後を聞いたトキは、ほ、と胸を撫で下ろしたように穏やかな表情を浮かべる
何だかんだ気にしていたのだろう
歓楽街からかなり離れ、歩き始めてからも数刻が経過していた
高かった日はだいぶ傾き、木々に囲まれた森は早くも薄暗くなっていた
「ここら辺で野営できる場所を探すか」
『だったらこっちに洞窟がある』
トキはこのあたりの地形も頭に入っているのだろう、そう言うと迷いなく歩き出す
少し歩くと、言った通りの洞窟が見えてきた
「…人の手が入ってるな」
『たぶん行商の人とかが経由地として利用してたんだと思う
旅の人とか、いろんな人が使ってる
ここなら危険もないし、焚き火とかもしやすいから』
「ここで今夜は休むか」
『うん』
洞窟の中には、寝床用に草木が集められた痕跡があったり、焚き火の跡らしき焦げ跡などがあった
彼女の言う通り、いろいろな人間がここで夜を明かしていたようだ
早々に支度を済ませ、適当な場所で横になる
トキが小さな声で"おやすみ"と言った
*
夜も深まった深夜のことだ
ふと何か気配を感じて、身体を起こした
「………トキ?」
洞窟の中を見回すと、彼女の姿はあった
それに胸を撫で下ろしつつ、違和感を感じて彼女に近付いた
「!」
彼女の身体は淡く光を放つ
夢見の力だとすぐに気付いた
肩に触れ、身体を揺すって起こす
だが彼女は目を開けない
「何だこれ……
おい、トキ!起きろ!」
カカシ先生の言っていた"呪い"という言葉が脳裏によぎった
*
洞窟で横になり、眠ったはずだった
だがすぐに違和感に気付いた
目を閉じたはずなのに、私の目の前には違う光景が広がっている
『……これは、過去の世界だ』
私の目の前に広がる景色は、空目一族の集落だった
今はもう残っているはずがない場所なのに
そしてまたぐるりと景色が変わる
次に見えたのは、かつての暁のアジト
そこには、今はもう死んだはずのかつての仲間たちの姿があった
そしてまた視界が変わる
ぐるぐると無限に変わる景色に、頭がおかしくなりそうだ
この症状が、夢見の呪い
私の身体に残ったわずかな夢見のチャクラが引き起こしている、身体への異変だ
「トキ!」
ぐるぐると目まぐるしく変わる景色に辟易していた時に聞こえた、聞き覚えのある声
『シカマル』
その声の主に気付いて名前を呼ぶと、視界がさぁっと開けた
*
「トキ!」
『!』
ぱ、とトキの目が開く
そしてその瞳は、黄緑色に変わっていた
『………あれ、朝?』
「あ?いや、まだ夜が明けるまで時間はある
……呪い、か?」
『………うん』
トキはゆっくりと身体を起こす
肩を上下させ、息も荒い
夢見の力は体力も奪っているようだ
「何か見たのか?」
『………過去の景色が見えた
空目一族の集落とか暁のアジトとか…
私が昔いた場所の夢』
「………。」
過去も未来も現在も、彼女の中ではごちゃごちゃに混在しているという
それが夢見の呪いの弊害だ
彼女の時間感覚は狂わされている
トキはふう、と息を吐くと、ごめんね、と謝った
『いつもの事なの、私は慣れてるから気にしないで
シカマルも寝て良いよ』
「……お前は寝れんのか?」
『……努力する』
「………………。」
シカマルは少し考え込むと、自分の寝床をずるずると私の隣に移動させる
そしてそのまま、私の隣に寝転んだ
『え、どうしたの』
「近くで寝た方がお前の異変に気付ける」
『大丈夫だよ、そんな事しなくて』
「俺がしたいだけだ、気にすんな
さっさと寝ようぜ」
『………。』
シカマルはくあ、と大きなあくびをすると、私も寝るように促す
仕方なくもう一度身体を横にし、シカマルと向かい合った
「ん、おやすみ」
『……おやすみ』
安心させるように優しく笑うと、シカマルは目を閉じる
私も同じように目を閉じたが、少し不安があった
『(また、夢を見るんじゃ)』
怖い夢では無い
だが自分がどの時間にいるのか分からなくなるのは、不安なのだ
だが眠気は襲ってくる
それに抗えず、意識を飛ばした
*
「(…寝たか)」
すぐにトキから寝息が聞こえてくる
目の下にクマがある彼女の顔を見て、ふ、と息を吐いた
彼女は寝るのが怖いのだろう
不安げな顔で目を閉じている
少しでもその不安が軽減されないかと思い、彼女の手を握った
*
光が差し込んでくる
眩しさに目を開けると、目の前にはシカマルの顔があり、思わずびっくりする
『!』
それと同時に、シカマルが私の手を握りしめながら眠っていることに気付いた
『……どうりで、』
朝まで夢も見ずに、ぐっすりと休めた
それはきっと、シカマルが手を握っていてくれたからだろう
『ありがとう、シカマル』
きゅ、と手を握りしめ返すと、彼は小さく身じろぎをした
「……あ?トキ…、起きたのか…」
『うん、おはようシカマル
おかげでよく眠れたよ、ありがとう』
「?」
寝起きでまだ頭が回らないのか、シカマルは少しぼーっとしている
だが手に気付いたのか、ガバっと身体を起こした
「わっ、るい!これは、他意があるわけじゃなくて…!
その、お前寝るの怖がってるみたいに見えたから…」
『…気付いてたんだ
でもありがとう、おかげで何も見なかった』
「…そう、なら良いんだけど」
ガシガシと頭をかき、恥ずかしそうに目を逸らすシカマルに小さく笑いかける
『さ、準備しよ
村はもう少しだよ』
*
洞窟を出てまたしばらく歩くと、見覚えのある景色に変わってくる
山中に広がるのどかな田舎の風景は、数週間前に訪れたばかりだ
「先生!」
村の入り口に着くと、すぐに村人たちが何人も駆け寄ってトキを囲む
彼女も笑顔で再会を喜んでいた
「良かった!俺ぁ忍び里に捕まったりしてねぇかと心配してたんだ!」
「帰ってきてくれて良かったよ!」
そんな言葉が次々と彼女に投げかけられる
だが、彼女と共に現れた俺を見て、村人たちは眉を顰めた
「……先生、そいつ忍びなんだろ?
何でまた…」
「仕事は終わったんでしょ?ならもう帰ってくれれば良いのに」
忍びへの当たりは相変わらず強いようだが、トキはすぐに「待って」と村人たちの声を遮った
『……シカマルには、私が頼んで一緒に来てもらったんです
みんなに、話さないといけないことがあるので』
トキの真剣な眼差しに、何かを感じ取ったのか、村人たちは静かになる
そしてすぐに、集会場に人を集める運びとなった
*
俺たちが寝泊まりした大きな寺に、村の大人たちの大半が集まる
俺は一番後ろの壁際に行き、事の流れを見届けることにした
そしてトキは、自分の本当の名前と、木の葉出身であること、自分が忍びであること
かつて暁という組織に属し、戦争に加担していたこと
戦争が終わってからは素性を偽り、この村に居たことを全て打ち明けた
『……村の皆さんには感謝してもしきれません
私を村の一員として受け入れてくれたこと…、本当に感謝しています
勝手なことは重々承知していますが、木の葉に戻ることとしました
今日はそれをお伝えし、皆さんに全てを打ち明けるために戻ってきたのです』
そう締めくくる
集会場はしんと静まり返り、みなが言葉を失っていた
だがそんな中で口を開いたのは、村長だった
「奈良さん」
「!
はい」
「アマノ先生……、いや、トキさんは、木の葉に戻ったら処刑されるのですか?」
その言葉に集会場がどよめく
だが村長は気にも止めず、俺を真っ直ぐに見つめていた
「……彼女の処遇は今後、里の上層部で協議されます
ですが命は保証されていますし、我々は彼女を仲間として迎えに来ました
彼女は木の葉隠れの里で、もう一度我々の仲間として生きていくことが出来ます」
「……それを、アマノ先生は望んだのですか?」
「……。」
「彼女が素性を隠していたのは知っていました、何かに怯えているようにさえ見えていた…
そうして何年も生きてきた彼女が、急に里に戻るとは…
申し訳ないが、私はあなた方を信用できない
彼女を無理やり連れていくというのなら、私は、彼女を渡したくはありません」
村長の言葉に、もう一度静かさが襲ってくる
村長は純粋にトキを思い、トキを気遣っているのだ
『私が戻ると決めました
強制されたわけではありません』
「!
トキ…」
『村長、それにみんなも…
そこにいる奈良さんは、私の幼馴染です
里にとって大罪人である私を、ずっと仲間だと信じ、探し続けてくれた…
シカマルは、私を許すと言ってくれた
だから私は、自分の罪から逃げるのを辞めることにしたんです』
広い集会場で、トキの声はよく響いた
彼女の言葉を聞き、村長は、ふう、と息を吐く
「……先生が決めたならば何も言いません
ですがひとつ、覚えていて欲しいことがあります」
『はい』
「この村はあなたの居場所だ
いつでも帰ってきていいですからね」
『!
ありがとう、ございます…!』
「そして奈良さん、私たちの先生を、どうぞよろしくお願いします」
「……もちろんです」
深く頭を下げる
そのままトキは村人たちから激励の言葉を投げかけられ、涙を浮かべながら別れの挨拶をしていた
*
村人たちに旅立つことを伝え終えると、彼女が住んでいた家に向かった
家財道具の類は、元々この家にあったものをそのまま使わせてもらっていたとのこと
『だから私の個人的な持ち物は、これだけ』
彼女が棚から取り出したのは、一枚の写真だけだった
「!
これ、班の写真…」
『………里を抜ける時、これだけ持ち出したの
それ以外は全て、部屋に置いてきた』
唯一持っていた写真は、アスマ班の集合写真
アスマ班なら全員待っている写真だ
ナルト達と任務に出る時、里を抜けると分かっていたから荷物は整理しておいた
そして持ち出したのはこの写真だけ
だがきっと私が住んでいたあの部屋も、もう全て処分され、新しい住人が住んでいることだろう
『ありがとうシカマル、これだけあれば十分だから
行こう』
「!
あぁ」
村を出て、これから木の葉隠れの里に向かう
やっと、彼女が里に戻ってくるのだ
.
やっと元通りになりそうな所まで進みました
里に戻った後ももちろん話は続けます
長くなりそうです
お付き合いいただけるとありがたいです
.