呪いと提案
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大名の屋敷で意識を失い、サスケがトキを病院に運ぶ数時間前に遡る
場所は木の葉隠れの里、火影室
綱手から突然の呼び出しを受け、ナルト達が召集された
突然のことに同期たちは顔をこわばらせ、何かあったのかと、様子を伺っている
騒つくナルトたちの元に、綱手とシズネが小さな巻物を持って現れた
そして火影椅子に腰掛けるや否や、顔を上げ、ナルト達の顔を一人ずつ見た
「うちはサスケからの報告だ
先日任務に出たシカマル小隊が、空目トキを発見した」
綱手のその言葉に、火影室は一瞬で静寂に包まれる
第四次忍界大戦以降、その足取りは全く不明で、暗部でさえ見つけることができなかった彼女
生死も不明で、もう死んでいるのでは、なんていう噂も立っていた
チ「………どこにいますか」
綱「!
チョウジ?」
誰よりも先に口を開いたのは、同じ班のチームメイトであり、シカマル同様、彼女の幼馴染でもあったチョウジだ
そしてそれに追随するように、いのも一歩前に出て口を開いた
い「綱手様!トキはどこにいるんですか?!
場所を教えてください!!」
サ「ちょっといの…!」
い「トキは無事なんですよね?!生きてるんですよね?!
生きて、また、会えるんでよね?!」
チ「綱手様!
僕たちを行かせてください!!」
第十班の二人は、鬼気迫る勢いで綱手に詰め寄る
その様子は、普段の2人からは想像ができないほどの動揺っぷりだった
だがその気持ちが分からない訳ではない
サスケが木の葉の仲間として、また里に戻ってきた今
本当に何の手がかりも見つからなかったのは、トキだけだったのだから
その間、第十班がどんな思いで情報を探していたのか
特にシカマルが必死になっていたことは、同期の全員が知っている
それはもちろん綱手も理解している
だが綱手は、ふるふると首を横に振った
綱「トキはシカマルと一緒にいる
逃げていなければ、だがな」
チ「……逃げるって…」
い「トキがシカマルから逃げるなんて…」
綱「100パーセントあり得ない、とは言えないだろう?
現にアイツは木の葉から身をくらまし、逃げ続けていた
たとえ旧知の仲であるシカマルが相手でも、大人しく話を聞くかどうかわからない」
「「………。」」
いのとチョウジは綱手の言葉にうつむき、口を閉ざす
アスマの弔い合戦の時も、戦争中も、トキが木の葉との接触を避け続けていたのは事実なのだ
他の同期たちも口を閉ざす
だがナルトは、顔を上げて綱手を見た
ナ「けど綱手のばーちゃんは、トキを放っておくつもりは無いんだよな?」
綱「……当たり前だ、手は打っている
だがそれも賭けだ
そして、私の賭けが勝つかどうかは、シカマル次第だ」
い「え?」
チ「どういうことですか?」
綱手は、ふぅ、と一度息を吐く
そしてナルト達を見回し、に、と笑顔を浮かべた
綱「私はシカマルに賭けた
アイツならトキを連れ戻せるだろう、と
お前たちにも私と同じ賭けに乗ってもらう」
*
また場所を変え、トキの病室
トキとシカマルは背後に現れた人物を見て、目を見開いた
「カカシ先生…?!
何でここに…」
『……。』
「やっほー
……トキ、久しぶりだね」
後ろに現れたのは、はたけカカシ先生だった
あまりにも予想外な人物に、もう何も言葉は出てこない
そして今何が起きているのかも、わからなかった
カカシはトキを見ると、懐かしそうに目を細める
昔と変わらない風貌に、トキは懐かしさを感じていた
シ「……ちょっと待ってくださいよ
何なんですかこれ、何でカカシ先生が…」
綱「カカシを呼んだのは私だ
トキにある話をするためには、カカシがいなきゃ始まらないからな」
『え……?』
カカシも部屋に入り、関連性がわからない四人が顔を突き合わせて話すこととなる
シカマルはガシガシと頭を掻きむしり、理解ができない今の現状に混乱しているようだった
綱「カカシは6代目火影となる
そしてお前に、火影直属の部下になってもらいたい」
『え?』
シ「は?!」
予想の範疇をはるかに超えた話に、思わず目を見開いて綱手様を見つめる
『……意味が分からないです』
隣で静かに佇んでいたトキは、もはや諦めたような声色で呟く
俺も同じ意見だった
『抜け忍である私が、火影直系の部下なんて…
火影の面目を潰すつもりですか』
綱「そんなバカな賭けをしてる訳じゃない
これはお前の為でもある」
『私のため?
さっきから何の話を…「お前はまだ、"夢見"の呪いから解放されていないだろ」
!!!』
ハッ、と顔を上げ、カカシ先生の顔を見た
*
"呪い"
カカシ先生から出てきた不穏な言葉に眉を寄せる
夢見の呪いとは何だ、解放されていないとはどういうことだと
カ「第四次忍界大戦の結末…
戦争で荒廃した大地はもとの緑を取り戻し、怪我を負っていたはずの忍び達の身体は、全て元通りの身体に戻っていた
それは全て、君の時遁の力だと言うのは分かっている
それと同時に、一気に能力を発動させた事により、君の持つ"もう一つのチャクラ"が消失した、という報告も上がっている」
『………ナルトですか』
カ「そう
君が消息を断つ直前、最後に会ったのはナルトでしょ?
アイツから聞いた」
綱「お前の中に存在していた"もう一つのチャクラ"……、お前はそれを"夢見の力"と呼んでいたそうだが、それはもう無くなった
だが全て無くなったわけでは無いのだろう?
まだお前の身体には夢見の力が残っている
そしてそれは、まだ呪いとなってお前を蝕んでいる
………違うか?」
『………。』
トキはぐっと拳を握り締め、真っ直ぐに綱手様たちを見つめている
反論しないということは、図星なのだろう
シ「……呪いって何ですか
そんな話、俺たちは何も…」
綱「知らないのは当然だ
空目一族に関わる資料は、一族が滅ぶのと同時にほとんど全て焼失した
私も探し出すのは骨が折れたよ」
カ「トキがいなくなってからも、空目に関する情報収集は秘密裏に続けられていたんだ
それでようやく、"夢見の呪い"に関する情報を手に入れた」
『えっ…』
カ「………トキ、君は長いこと苦しめられてたみたいだね」
シ「………?」
カカシ先生は気遣うようにトキを見つめると、懐から何かの巻物を取り出す
随分と古い、歴史を感じるようなものだ
カ「夢見の力…、それは時遁の力の暴走であり、突然変異による力
血継限界の力を色濃く引き継ぎ、かつ強大なチャクラを得た人間が、ごく稀にその力を手に入れる
……偶然にも君は、これに該当してしまった」
綱「予知夢の力は強大だが、お前自身でコントロール出来るものではなかった
時間、場所を問わず、予知夢は突然お前の頭に流れてくる
あの村でも時折、意識を失って倒れることがあったらしいな?」
『………。』
綱「それにサスケからも話は聞いている
話し終えて歩き出したお前が突然倒れたと思ったら、目が緑色に染まり、目を開けたまま意識を失っていた、と…
それが夢見の呪い
自分の意思とは関係なく、夢に乗っ取られる症状…
そうだな?」
『………えぇ、そうです』
私の身体はまだ蝕まれている
昼間だろうが夜だろうが、突然視界を奪われる感覚
強制的に予知夢を見せられる
私が今見ている景色が、現在なのか未来なのか、時折分からなくなる
この症状はずっと昔から続いていた
トキが肯定すると、綱手様はふぅと息を吐いた
そして俺はその話を、ただただ驚きながら聞いていた
シ「……トキの状況は分かりましたけど、それが何で次期火影の専属になることと話が繋がるんです?」
カ「それは、交換条件を提示したいから、かな?」
『交換条件…?』
カカシ先生はそう言うと、ばさ、と巻物を開く
その古びた巻物には、何やら封印術のような術式について説明がされているようだ
綱「これはお前の"呪い"を封印する術式だ
これをカカシがお前に施す代わりに、火影の専属の暗部になって欲しい」
『!!』
シ「は……?」
窓の外は、青空から茜空へと変わっていく
夕陽が差し込む病室で、トキは頭が痛くなる思いだ
『お断りします』
隣に立つトキは、はっきりと返事をした
*
トキの言葉は予想通りだったのか、綱手様は大きくため息をつく
カカシ先生は苦笑いを浮かべていた
綱「いいのか、呪いはお前の今後にも響く…
生死に直接関わらない、とは断言できないものでもあるぞ」
『覚悟しています』
カ「………呪いと一緒に生きていくことが、罪滅ぼしだとでも言うのかい」
シ「………。」
『………………私は里には戻りません
大罪人には、それに相応しい最期を与えてください
殺すと言うのであれば、私はそれを謹んでお受けします』
綱「そんな事はしないし、私がさせない」
『………。』
殺してくれた方が、いっそ楽になれる
そう思ってしまう自分に、自分でも呆れてしまった
話が進展する事は無いと感じたのか、綱手は一度引き上げると言う
綱「里に仕事を残してきてるからな、戻らないとシズネにどやされる
シカマル、お前には今日からしばらく休暇を与える」
シ「え?」
綱「他の隊員には、大名の屋敷の追加調査と、大名を里の病院に連れていく仕事をそれぞれ追加で与えてある
それが終われば他の隊員にも休暇を与える予定だ
ここの歓楽街は有名な観光地でもある
たまには休むと良い」
シ「………はぁ」
綱「里に戻ってくる時は連絡を入れるように
そうしたら"迎え"をやる」
シ「……了解です」
はぁ、とシカマルもため息を吐く
それににっこりと笑うと、綱手様とカカシ先生は病室を後にした
『……。』
「………嵐のような時間だったな
トキ、俺は一度宿に戻る
お前の退院は明日だ、その時に迎えに来る」
『………その時にはもう、私はいないかもしれないのよ』
「……………そしたらまた、探しに行くさ」
シカマルは困ったように笑うと、私の頭をぽん、と一度撫でてから病室を後にした
私はしばらく、その場から動けなかった
.