やっと見つけた
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
長い夢を見ているようだった
目に映るのは、私の大切な人たち
いの、チョウジ、ナルト、サクラ、他にもたくさんの、かつての仲間たちの姿
そして、シカマルの姿
みんなが私に笑いかけ、手を差し出していた
そんな未来、訪れる訳がないのに
『(………あぁ、そっか、この夢は…
ただの私の願望だ、予知夢なんかじゃない…)』
予知夢でも何でもない
ただの夢だと悟ってしまった
*
『………………………!』
ふ、と目が覚めた
そしてすぐに身体を起こした
私はあれからどうなったんだ、ここは何処なのか、と
『………病院…?』
自分はベッドで眠っていて、周りは病室のようだった
まさか、木の葉病院なんじゃと、背筋が冷える
すぐにベッドから降りて窓の外を確認した
『………違う、木の葉の里じゃ、ない』
窓の外に広がる光景は、ちょっとした繁華街の景色だった
木の葉の里では無い
道行く人の様子を見るが、忍び装束の人間は少なく、一般人が目立った
自分は屋敷から逃げるシカマルを庇い、山中で賊と対峙
その後サスケに助けられて、そこで記憶が途切れている
おそらくそのタイミングで意識を失ってしまったのだろう
ならばサスケが、私をここに運んだのか
周りを見ると、半分に割れた仮面とアスマ先生のライターが、ベッドサイドに置かれていた
『………………。』
私は仮面だけを手に取り、窓を開ける
このまま、逃げ出してしまおうと
窓枠に手をかけ、ぐ、と力を込めたその時、身体の動きが止まった
いや、止められた
『……………影真似の術』
「その通り」
足が動かないが、それ以外はある程度自由に動かせる
恐る恐る後ろを振り向けば、彼がいた
『………シカマル、』
*
シカマル
目の前の彼女の口から呼ばれたその名前に、自分でも驚くくらい動揺した
本当に、自分の目の前に彼女がいる
窓の外に広がる青空と同じ、真っ青な髪の毛に、吸い込まれそうなほど澄んだ青い瞳
大戦後、行方不明になった幼馴染が、目の前にいた
「………トキ、逃げないでくれ
頼む……」
『…………。』
手を組み、自分の影を彼女の影と繋げたまま言う
お前が了承してくれれば、すぐに術を解くつもりだとも伝えた
だが目の前の彼女は口を閉ざし、何か考え込んでいるようだった
無理やりシカマルの術を突破する方法も、取れないことは無い
彼が私を縛る力はかなり優しいものだったから
だがそれが出来ないのは、私自身が、彼から逃げるのを躊躇っているから
でも今さら、シカマルに何を言えば良いのか、分からない
ぐるぐると頭が回る
まだ身体も重い
振り切って逃げたところで、きっとすぐ捕まるだろう
何も言葉を出せない私を、シカマルは急かすわけでもなく、じっと待っていてくれた
「シカマル、術を解いてやれ」
『!』
「サスケ…」
シカマルの後ろ、病室の廊下からサスケが現れる
そしてシカマルの肩に手を乗せ、術を解くように言った
「トキはもう逃げない」
『………………。』
シカマルはサスケの言葉に、少しだけ考えて、手を解いた
するすると伸びていた影がシカマルの影に戻っていき、身体の自由が戻る
「……トキ、もう逃げるのはよせ
無駄だというのはお前も分かっているだろう」
『………なに言って…』
手も声も震えた
自分でも驚いた
声が震える
気付けば涙は頬を伝い落ちていた
「トキ…」
『っもう、私の名前なんて呼ばないで…!』
「!!」
頬をつたい落ちる涙は、そのまま床に落ちる
トキは泣いていた
『どうして…、何で私の前に現れたの…!
私はもう、あなたに会わせる顔なんて無いのに!!』
「!!」
『みんなには私のことなんて忘れて、幸せになって欲しかった!!
もう私のことなんてっ…!!』
お願いだから忘れて欲しかった
私のことなんて、記憶から、過去から消し去って、幸せな人生を歩んで欲しかった
あなたの幸せを願っていた
そこに私は居なくて良かったのに
『私のことなんて忘れてくれれば良かったのに!!!』
そう叫んだ
その時、頬に鋭い痛みが走った
次いで、ぱしん、と乾いた音が聞こえた
「……ふざけんな」
『…シカマル………』
「ふざけんな、何が忘れればいいだ
忘れられるわけねえだろ、お前は、俺にとって…!!」
シカマルが目の前で顔を歪ませ、言葉を詰まらせる
じんじんと痛む頬を自分の手で押さえながら、ぼろぼろと涙を流した
*
忘れてくれれば良かったのに
トキがそう叫んだ時、無意識に手が動いていた
そしてそのまま彼女の頬を叩いていた
殴られた衝撃で彼女は横を向き、俯く
空色の髪がさらりと流れ、彼女の横顔を隠した
「……ふざけんな」
『…シカマル………』
「ふざけんな、何が忘れればいいだ
忘れられるわけねえだろ、お前は、俺にとって…!!」
拳を握りしめる
彼女の頬を叩いた手のひらが、ジンジンと痛み始めた
「………誰よりも、お前が大事だった
大切だった」
『!』
「大戦のあとお前がいなくなって…、ずっと探してた
やっと会えたのに、そんな事言うな
………頼むから」
シカマルは目を伏せる
そんな顔で、そんな声で言われてしまえば、それ以上口を開くことは出来なかった
「……トキ、」
不意に名前を呼ばれる
それはサスケだった
「いつまでも逃げるなんて出来ない
お前は向き合う必要がある」
『………………それは、サスケの経験談?』
「………ふ、そうだな
俺はナルトやサクラとたくさん話した
嫌って言うほどな
だがそれのおかげで、俺は今アイツらとの繋がりを持てている
お前にも、同じだけの時間が必要だろう」
『………。』
「お前、一度でもシカマルと向き合った事あるのか?」
『!!』
どき、とした
私はずっと、彼から逃げ続けていた
修行を終えて里に戻り、そこで暁の記憶も取り戻した
そこからずっと彼を騙し続けた
里を抜けた時も、その後も、シカマルと直接話すことを避け続けた
最後にシカマルとちゃんと話したのはいつだろう
思い出せないくらい、私は彼から逃げていたのだ
「お前が何を思おうと、言葉にしなければ相手に伝わることはない
逃げればその言葉は、伝わる機会を失う
……お前が抱く罪悪感は、俺も理解できる
けどもう、終わりにしても良いんじゃ無いのか」
『……勝手なこと言わないでよ……』
流れ続ける涙を抑えるように、目元をこする
もう何もかもがめちゃくちゃだ
.