思わぬ再会
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガシャァァン
という轟音と共に窓ガラスを蹴破り、外に脱出する
大名を背負って走るシカマルを気にしつつ、後ろを見た
『(!
追手だ)』
賊と呼んでも大差ないだろう
複数の男たちが私たちを追いかけてきた
この屋敷は大名の屋敷だが、その実態は賊が占拠している
おそらく側近役の男が少しずつ大名を衰弱させ、その間に賊を手引きして占拠したのだろう
大名は病床に伏せたため、この事実に気付かないままだったようだ
そこに現れた、噂の医者と木の葉の小隊
さぞ焦った事だろう
そして私たちを取り逃せば、自分たちが追われるのだ
『(そりゃ必死にもなるか)』
足を進めながらシカマルを見る
大名を抱えながら走る彼は疲労が見える
夜に見知らぬ土地で山道を、しかも人を抱えながら走って降りるのは、彼にとっても簡単なことではないのだろう
『奈良さん』
「!」
隣に来たアマノは俺に声をかける
何となくその声色に、嫌な予感を感じ取った
『任務はここで終了です』
「は?」
『大名は特別な人間の処置ではなく、医療忍者にさえ見せれば何も問題はありません』
「おい、何考えてる」
『私が連中の足止めをします
あなたはその隙に大名様を連れて山を下ってください』
「!!」
一方的に話すと、アマノはくるりと身体の向きを変えた
そして立ち止まる
「おい待て!そんなことさせる訳ねぇだろ!
一緒に避難するんだ!
部下たちと合流できれば…『その前に追い付かれますよ』
!!」
『あなたが優先すべきは火の国の大名様であって、私のような怪しい人間ではない
切り捨てるなら私でしょう』
「ダメだ、止まらず走れ!
俺と来い!!」
シカマルが私に手を差し出す
あの時と一緒だ
飛段さんが殺されたあの森の中、そこで私に彼が手を差し伸べた
『……私はあなたの手を取れない』
「え?」
『さよなら』
「!!」
ザァ、と突然木の葉が吹き荒れる
視界が奪われると、彼女や追手は姿を消していた
「ふざけんなアイツ…!」
*
シカマルと大名を逃し、私は屋敷の追手と向き合う
その集団の先頭は、先ほどの側近の男だ
『……軽く術をかけただけとは言え、案外復活が早かったわね』
「血継限界が自分だけだと思ってるのか?
でもまぁ、噂の"時遁"をお目にかかれて光栄だったぜ」
男たちの人数は数十人ほど
全員が武器を装備している
「木の葉の抜け忍が、なぜ木の葉とつるんでる?
お前、里に許されたのか」
『まさか、』
はっ、と鼻で笑った
キン、とクナイが月明かりに光る
私が里に許された?
そんなこと、未来永劫あり得ない
『私は暁だったのよ
そんな私が許されることなんて一生あり得ない
……彼らは、私の正体を知らないだけよ』
クナイと短刀をそれぞれ構え、足を踏み出した
『けどそれをバラされたくないの
だからあなた達には消えてもらう』
*
「隊長!!」
「ご無事ですか!」
山を駆け下り、仮拠点に辿り着く
そこで部下たちと合流し、大名を預けた
「あぁ、俺は平気だ
だがアマノが囮になってる
俺はアイツを助けに行く、お前らは大名様を連れて里を目指せ!」
「えっ…」
「隊長、お言葉ですが…!」
もう一度外に出ようとする俺に、部下が声をかける
その顔を見て、何を言おうとしているかを何となく察する
「……隊長、彼女は抜け忍です
助ける義務は、ないと思います」
「俺も同意見です
確かにあの人は危害を加えるような人じゃないかも知れない、けど、隊長が命を張って守る必要は…」
「俺はアイツを知ってるんだ」
部下たちの言葉を遮る
みんなが戸惑うのが分かった
「……勘違いじゃなきゃ、アイツは俺の知り合いだ
だから、確かめに行く」
「隊長!」
「………………悪い
大名の病状は継続的な毒の投与による衰弱だ、身体から毒を排出さえ出来れば何も問題は無い
あとを頼む」
そう言って仮拠点を出て行こうと足を踏み出す
だがその行く手を遮られた
自分の目の前に現れた人間を見て、思わず目を見開いた
「お前っ、何で…?!」
*
一人、また一人と地面に落として行く
だいぶ視界が広がったと、ふぅと息を吐いた
「……おいおいマジかよ
たった一人に、こんなにやられるもんなのか…?」
側近の男は数歩後退りしながら、震える唇で呟いた
そして私を見て、バケモノめ、と吐き捨てる
『………だから言ったでしょう
私を仲間にしたいのなら、国を落とせる人間を連れて来いと
私は強いのよ、時遁に頼らずともね』
「っ!!
裏切り者のバケモノが!!調子に乗るんじゃねぇぞ!!!」
まだ動ける数名が、束になって襲いかかってくる
『(……まずいな)』
目が霞んでいる
前線を退いてから数年、ブランクが全く無いわけではない
命は奪わないよう、手加減をしているものの、多勢に無勢だ
足元もおぼつかなくなってきていた
ガツン!!
『!!』
仮面でこの人数を相手に戦うのも、あまりにも無謀だった
狭い視野の外から飛んできた手裏剣が、私の仮面に直撃する
バキ、という嫌な音を立てて仮面が割れ、地面に落ちた
落ちた仮面を目で追う
その時、仮面の横に光る何かを見つけた
『え…』
私の顔を隠す仮面は真っ二つに割れた
そしてその横に落ちていた光るものは、ライターだった
それもただのライターでは無い
『アスマ先生のライター…』
周りも見ずに、私はそのライターに手を伸ばし、掴んでいた
「死ねぇ!!バケモノがぁ!!!」
ライターを掴んだその時、すぐ目の前に攻撃が迫ってきていた
もうかわせない
時遁を使おうにも、片手はライターで塞がって印が組めない
もう、終わりなのだろうかと、目を閉じた
『………………………?』
側近の男の攻撃を覚悟して目を閉じた
だがいつまで待っても何も起こらない
そして聞こえてくる、ドサ、という音
不思議に思って目を開けて、周りを見た
そして言葉を失った
私に襲いかかってきていた賊は全員倒れ、地面に崩れていた
そして賊の中心に立つ、一人の男
真っ黒のコートに、真っ黒の髪
スラリと伸びる刀の刀身が月明かりに輝いている
『…………え、まさか、』
その男には片腕が無かった
思わず呟いた私の声が聞こえたのか、男がゆっくりとこちらを振り向く
真っ黒な髪の間から覗く瞳は、真っ赤に染まった
その色を、その瞳を、私はよく知っている
『……………サスケ……?』
うちはサスケ
彼が私の目の前にいた
*
「お前っ、何で…?!」
仮拠点を飛び出そうとする俺の行く手を遮ったのはサスケだった
大戦後、里に戻ったわけではなく、サスケは各地を転々としている
贖罪のため、ナルトに協力しているのだと聞いていたが、会うのは大戦の時以来だった
「何でお前がここにいるんだよ…?!」
「……説明は後だ
シカマル、お前は大名を連れて早く行け
………そっちは俺が行く」
「!!
じゃあやっぱりアマノは…!!」
トキなんだな
確信を持って呟いたシカマルに、サスケは肯定も否定もしなかった
あのサスケがわざわざ助けに行く相手だということは、そういう事なんだろう
「………シカマル、」
「………………何だ」
部下が大名を担ぎ、不穏な空気を出す俺たちを見て不安げに顔を顰めている
先に行ってろ、とだけ指示を出した
「もしその"アマノ"がトキだったら、お前はどうする
里に連れ戻すのか?」
「!!」
サスケの問いかけに、少し考える
だがその答えは、昔から変わらない
*
目の前の光景が信じられなくて、言葉を失う
サスケは私の顔を真正面から見つめると、ゆっくり歩みを進めた
「久しぶりだな、トキ」
『!!
やっぱり…、サスケなのね
どうしてここに…』
「ナルトとの約束があるからな」
『え…?』
サスケはふいと顔を背けると、彼が倒した賊と私が倒した賊のそれぞれに目を向ける
全員意識を失っているだけで、誰も死んではいない
「殺してないんだな」
『………鈍ったみたい』
サスケが大戦後、里に戻らなかったことは知っていた
私もあの村に腰を据えるまではあちこちを放浪し、いろんな情報を仕入れていたからだ
だが彼は、世界の英雄であるナルトに恩を返すべく、木の葉を里の外から守ろうとしているのだということも、知っていた
そんな彼がこのタイミングで現れたのは、偶然では無いように感じていた
それと同時に、長居は無用だとも悟った
『サスケ』
「!」
ぽん、とサスケに向けてライターを投げる
「…?これは?」
『アスマ先生のライター
シカマルの大切なものだと思うから、返してあげて』
「お前が返せばいい」
『………本気で言ってるの?』
思わず眉を寄せる
二つに割れた仮面を拾い上げ、呆れたように笑った
『私はもう行くよ
あの村にも戻らない
また、新しい場所を探さないと』
仮面を懐にしまい、サスケに背中を向けて歩き出す
『後始末は任せる
………最後に会えて良かったよ、サスケ』
逃げるようにその場から立ち去ろうと、歩みを進める
だがその時、ざ、と視界が光に包まれた
*
白昼夢だ
夢見の力はもう無いはずなのに、また夢を見るなんて
何が待ち受けているのだろうかと、目の前の景色に目を向けた
*
ドサ
「!
トキ?」
ライターを投げ渡してきた彼女は、逃げるようにその場を後にする
だが数歩歩いたところで、どさりと倒れた
「トキ!」
慌てて駆け寄ると、彼女はうっすら目を開けながらも、意識を失っていた
その目が青から緑に変わっているのを見て、かつて仲間に聞いた話を思い出す
「………予知夢、か?」
彼女のチャクラの流れは乱れている
だがそのチャクラは間違いなく彼女自身のもので、夢見の力は失われているようだった
「(…元々2つあったチャクラのうちの1つを失ったことによる異常、か?)」
ナルトのような人柱力では無いが、彼女も2つチャクラを持っていた
その1つを大戦で失ったことは、ナルトから聞いていた
自分の力を半分失ったと言っても過言では無い彼女の身体は、多少なりとも弊害をもたらしているらしい
サスケは彼女の身体を抱き上げ、歩き出した
.