衣を着るということ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ペインの後を追い、昔とは違うアジトに足を踏み入れる
暁の衣を後ろからじっと見つめた
この衣をこんな気持ちで見ることになるとは
昔は敵の証として睨みつけていたこれは、実は自分を示す証でもあったんだ
「あれから」
『!』
ペインがおもむろに口を開く
それを聞いて、ぴしっと背筋を正した
「お前が木の葉に向かったあの日から、暁にも変化があった
お前も知ってるだろうが、大蛇丸が暁を抜け、サソリがやられた」
『………知っています』
「お前は大蛇丸にもサソリにもよく懐いていた
ショックもあるだろう
だが、新しいメンバーも迎えた」
『!
新しいメンバー』
「あぁ、今から紹介する」
こっちだ、と背を向けたまま言うと、開けた場所に出た
そこに並ぶ、暁の衣
「仲間が1人、任務から帰還した」
その声に、そこにいた人間たちが一斉に振り返る
懐かしいその顔ぶれに、思わず目元が熱くなった
あぁ、私の大切な人たち
『ただいま戻りました』
声が震えた
***
「なんだァ?このガキ」
そう目の前ですごむのは、髪の毛をオールバックにした男
初めて見る顔だ
「久しぶりね、トキ
大きくなって」
『!
小南さん』
この人が新しいメンバーか、とじっと見つめ返していると、横から小南が現れた
彼女の登場にぱあっと顔を明るくするその様子に、近くで見ていたデイダラが「相変わらずだ、うん」と笑う
「おい飛段、コイツはお前より先に暁に入ってた。お前より先輩だ、うん」
「はぁ?!こんなガキが?!」
飛段と呼ばれたその男はデイダラの言葉に目を見開く
そのデイダラの横から、ぬっと人が現れた
「せんぱーい、この女の子誰ですか?珍しい髪の毛ですけど」
「おぅトビ、お前も挨拶しとけ、うん」
デイダラの隣に現れたのは、うずまき状の仮面の男
また新顔だと、驚きつつも頭を下げた
『初めまして、空目トキです
10年ほど前から暁のメンバーです』
「は、10年?!お前今いくつ?!」
『16です』
「16?!
じゃあ6歳の時から暁かよ?!」
『はい』
「飛段、黙れ」
『あ、角都さん』
離れたところにいた角都が、騒ぎ立てる飛段を一蹴する
それに不服そうに口を尖らせる様子を見て、意外と子供っぽい人なのかもしれない、とトキは感じた
『………!』
飛段をじっと観察してる時、一瞬だけ奇妙な視線を感じた
すぐにそちらを見れば、先ほどデイダラに声をかけていたトビと呼ばれる男が、自分のことを見ていた
『(……あれ)』
あの仮面
見た事があるような
『あの、あなたは』
「あっ、僕?
どうも~トビって言います!一番の新入りです!」
「トビはサソリの旦那に変わって俺とコンビ組んでるんだ、うん」
『そう、なんですか』
仲間の死をやすやすと受け入れることはまだ出来ないが、それを表に出すほど子どもでもない
何でもないかのように受け止めたが、心の中ではもやもやした気持ちが広がった
サソリを殺したのは、かつての友だ
「トキ」
『!
………イタチ、さん』
「少し話さないか」
自分の前に姿を現したのは、三年前にも一度会っているイタチ
その後ろで鬼鮫がに、と笑っている
無表情に見えるけれど、そうじゃない
サスケの事だと、すぐに分かった
***
アジトの外に出て、木々の間を抜ける
途中にあった大きな大木の根元に腰を下ろすと、イタチは「座るといい」と笑いかけた
「トキ」
『…はい』
「サスケと、親しいようだな」
『!』
す、と黒い瞳が彼女を見上げる
サスケと同じその目を見て、顔を歪める
『イタチさん、ずっと聞きたかったことがあるんです』
「………なんだ?」
『あの夜、あなたが涙を流していた理由です』
「!」
は、とイタチが顔を上げる
だが気にせずに、言葉を続けた
『あなたは、うちは一族を滅ぼした時にサスケを残した
サスケだけは殺さなかった
イタチさんは、自分のためにサスケを生かしたって言ってたけど、違いますよね?
本当は、サスケだけは殺せなかった
だから、あなたはあの夜、泣いていた』
「………そう言えば、予知夢で見たと言っていたな」
『………最初は見間違いだと思った
けどイタチさんを知っていくと、あの涙は本物だとしか思えなくて…
どうしてサスケに何も言わないんですか?
サスケは、あなたの事を恨んでる』
トキの言葉に、そうだな、とだけ返すイタチ
だがそれ以上は答えなかった
『……あなたは優しい人です
恨まれてもサスケの事を想ってる、私とサスケを重ねるくらいに
あなたはサスケを愛してる』
「あぁ…」
『……サスケは、純粋です
大蛇丸さんのもとにいる事で、アイツがどう変わるのか予想出来ません
けど私は、サスケの居場所はあそこではないと思ってる』
「なら、どこだと言うんだ?」
『………ナルト達がいる木の葉です
赤の他人であるサスケをあんなに必死で追いかけるナルトは、サスケにとって必要な人間だ』
ぐ、と手に力が入る
その様子を見ていたイタチは、すっと視線を逸らした
「昔、大蛇丸と話したことがある」
『?』
「トキの居場所は暁ではない、と大蛇丸に言ったことがある」
『………。
私には暁しかありません』
「昔なら、そうだったかもしれない
だが今はどうだ?
木の葉での時間は、お前に何も与えなかったのか?
友も、仲間も、師も、お前は何も得ていないのか?」
『………。』
「サスケを追う者がいるように、お前にも、お前を追う者がいるはずだ
お前の仲間は、お前を木の葉に連れ戻したいと思ってるはずだ」
『……たとえそうだとしても、私は戻るつもりはありません
この身も心も、全て暁のためにある
私の居場所は、私が決めます』
真っ青な瞳がイタチを見つめる
空を描く青空のように真っ青なその瞳には、吸い込まれそうになる
しばらくの睨み合いの中、ざ、と土を踏みしめる音がした
「トキ、リーダーが任務について話したいとおっしゃっていますよ
アジトの中へ」
『!
分かりました』
鬼鮫が草むらから現れ、トキにそう告げる
話を中断されたものの、これ以上の議論は無意味だと感じていたトキは、イタチに頭を下げ、アジトに戻っていった
***
アジトに戻り、ペインの部屋に入る
中には小南と、角都と飛段がいた
「来たか」
『任務の話だと聞きました、何でしょうか』
角都と飛段は二人組で行動している、その二人と自分がなぜ一緒に呼ばれたのだろうと首を傾げた
ペインは三人を見回すと、トキに目を留める
そして、相変わらずの無表情で口を開いた
「トキ、お前はしばらく角都と飛段について行け」
『えっ』
思わぬ宣告に驚いていると、小南が補うように口を開く
「飛段はあなたの能力について知らないし、あなたも飛段の能力について知らないでしょう?
これから仲間として動くには、味方の手の内はある程度知っておかないといけないから」
『あぁ……、なるほど』
確かに、自分が木の葉にいる間に加入した飛段の能力については知らない
暁という組織に属している以上、常識はずれな能力を持っていても不思議ではない
昔から暁にいた角都と違って、飛段の能力は彼女にとって未知だ
「トキっつったか?
いーか、俺はガキの命令に従うなんてまっぴらだぜ
先に暁に入ってたらしいが、お前みたいな子供の言うことはきかねーからな
先輩だろーが、俺は俺だ、勝手にするぞ」
『構いません
私だって年上の方に偉そうな態度をとるのは気が引けるので、むしろその方がありがたいです』
「……ふん、物分かりの良いガキなこった」
「飛段、トキはお前よりはるかに賢いし能力も異質だ
お前と組むよりトキと組む方が楽だし面白い」
「角都テメェ!!」
ぎゃんぎゃんと騒がしくなる飛段を呆れ気味に眺める小南
はぁ、と息を吐き、喧嘩はその辺で、と仲裁に入る
『で、私が角都さん飛段さんコンビに加わるとして、任務は何ですか』
「お前たちの任務はニ尾の捕獲、それと金稼ぎだ
角都は暁の金銭管理全てを担っているからな、必要な金を稼いでもらう」
『………賞金稼ぎとか、その類ですか
それと尾獣狩り……
分かりました』
くる、と角都を振り向く
それを分かっていたのか、彼はすぐに口を開いた
「まずはニ尾の回収だ
お前の時遁の力、久しぶりに利用させてもらおう」
『お安い御用です』
ふ、と強気な笑みを見せる
飛段も同じように、ニヤリと笑った
「時遁、話には聞いてるが、実際に見ることが出来るとはなぁ
楽しませてもらおうじゃねェか」
ジャリ、と飛段の大鎌が音を立てる
***
雷の国に出発するため、3人で集まる
その時、後から来た角都がぽいとトキに服を投げた
『うわっ、と』
「それを着ろ」
『!』
頭から思い切りそれをかぶってしまい、視界が奪われる
それをどかして目で確認し、思わず目を見開いた
『……暁の、衣』
「小南が用意したものだ
それを着て、任務に出る」
『……はい』
黒地の布に、赤い雲
暁を表すその衣は、ずしりと重く感じた
腕を通し、前を閉める
ふ、と息を吐くトキを見て、角都は口を開いた
「分かっているな」
『?』
「それに腕を通したということは、お前は暁の構成員として見られる
それを着ている時に自分に近づく者は、全て敵だと思え
かつての仲間であろうと、だ」
『……!』
「かつては仲間だったかも知れないが、そいつらがお前を殺しに来る
そしてお前も、かつての仲間を殺す事になる
覚悟は出来ているんだろうな」
『………。』
ぐさりぐさりと胸に突き刺さる言葉に、トキは一瞬目を伏せる
かつての仲間を手にかける事に、全く抵抗が無い訳ではない
だが
『私は忍びです』
「……。」
『任務とあらば、心を殺します
誰であろうと、己の刃を向けるつもりです
だから私は、木の葉を抜ける時に仲間の首筋に刀を向けた』
私がサクラの首筋に刀を向けた時の、恐怖と驚きに満ちた彼女の表情が頭に浮かんだ
仲間に殺意を向けられたことにショックを隠せない様子だった
『私は暁です
心は暁と共にある』
「………その言葉、忘れるなよ」
『…はい』
きゅ、と衣の裾を握りしめる
真新しいその衣は、私を縛りつける鎖のように感じた
第9話
衣を着るということ
.