監視役
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
空目一族が滅んだ後の三年間の記憶を取り戻したその日の夜
私は夢の中にいた
『………予知夢』
何度目だろうか、この感覚は
夢なのに、いやに意識がはっきりしてる
きょろ、と周りを見回すと、視界がだんだん明るくなってきた
最初に目に入ったのは橋
そして、ナルトとサクラの姿
それと見知らぬ木の葉の忍が2人
『………!!』
ナルトとサクラが睨む先にいたのは、大蛇丸と薬師カブトだった
『大蛇丸さ…!』
その名を呼ぶが、それは届くはずもなく
また視界が変わる
次に見えたのは、広範囲の地面がえぐられた、何とも凄惨な景色だった
『…!
このチャクラ…』
ビリビリと肌に伝わるチャクラは、覚えがある
修行中にも何度も遭遇したものだ
『ナルトが、尾獣化した』
だから地面が抉られているのか
合点がいったところで、視界に爆発が映る
弾かれたようにそちらを向けば、姿を変えたナルトが大蛇丸と戦っていた
『………これは、まずい』
自来也との修行中にみた時よりも、尾の数が多い
それはつまり、九尾に近づいている証
自来也と2人がかりでなんとか沈めた事があったが、この状況で尾獣化するのはあまりにキケンだ
彼を止める者がいないから
そこでまた視界が変わり、今度はどこかの基地のような場所に移った
「サスケ…くん…」
『!』
サクラの声が先に聞こえ、慌ててサクラの視線を追う
そしてその先にいる人物に、目を疑った
サスケがいたのだ、大蛇丸やカブトと共に
『サスケ…っ』
足を踏み出し、彼に近付こうとした
だがその瞬間に視界は暗くなり、何も見えなくなった
『………!』
ガバッ!と起き上がり、周りを見る
そこは自分の部屋だった
『………サスケに、ナルトの尾獣化、そして大蛇丸さん…
………これは、まずい』
慌ててベッドを出て、着替えて部屋を飛び出した
***
『綱手様!』
バン!と火影室に入れば、書類の山と格闘している綱手の姿が
そばに控えるシズネは、彼女の登場に少し驚いている
「なんだ騒々しい!」
『私を、ナルトとサクラの任務に同伴させてください』
「!
何だと?」
ペンをガリガリと走らせていた綱手が手を止め、トキを見る
「……どういう事だ?」
『夢を見ました、予知夢を
そこにナルトとサクラ、そして大蛇丸と薬師カブトの姿があって、大きな橋の上で睨み合っていた』
「………大蛇丸に復讐する気か?」
『そんなつもりはありません
ただナルトが大蛇丸と接触し、尾獣化しました
私と自来也様と修行をしていた時よりも、尾の数が多かった
あれを止められるのは私だけです』
「!!
尾獣化だと?!」
『はい、その任務でナルトは間違いなく尾獣化します
こうなってしまえば、一緒にいるサクラにも危険が及ぶ
けど私なら、止められる』
真剣な眼差しは、事の重大さを表していた
ナルトの尾獣化は危険だし、大蛇丸も登場となるとさらに危険だ
綱手はしばらくの間頭に手を当て、考え込む
それを見たトキは、すぅ、と息を吸った
『それともう1つ、私が見たものがあります』
「……何だ?」
『うちはサスケです』
「!!」
「サスケだと?!」
シズネと綱手が揃って顔を上げ、トキを見た
ガタン、と立ち上がりトキを見つめる綱手
トキはその視線を真っ直ぐに見つめ返し、口を開くと
『どういう流れかまでは分かりませんでしたが、どこかの基地のような場所で大蛇丸とカブトと共にサスケも現れました
サスケを連れ戻す、チャンスだと思います』
「………そうか」
『だから、お願いします
私を第七班と一緒に行かせてください
ナルトとの連携もサクラとの連携も、私なら問題ないでしょう?』
綱手様、と呼びかけると、綱手は頭を押さえ、大きく息を吐いた
「………………分かった
お前の同伴を許可し「それはならん」
!!」
『!!』
突然聞こえてきた第三者の声
火影室の扉を振り向くと、そこには見知らぬ老人がいた
「……何の用だ、ダンゾウ」
『(……ダンゾウ…、暗部の根の)』
現れたダンゾウに、綱手は敵意を示す
トキは、じっとダンゾウを見た
「この娘を大蛇丸と接触させる事は許さない」
「トキもサスケと同じように、大蛇丸の手に堕ちるとでも言う気か?」
「その通りだ
空目トキは、木の葉を裏切り里を抜ける危険性がある」
『………。』
「木の葉が所持する唯一の時遁の力だ、よそに逃げられては木の葉の戦力が落ちる」
「トキは道具ではない!」
ダン、と拳で机を叩く
だがそれを面白いと言わんばかりに、ダンゾウな口元を歪めた
『……私は行きます』
「どうしてもと言うのなら、こちらにも考えがある」
「なんだと?」
「空目トキ、お前に監視をつける
暗部の根の者も、その任務に同行させよう」
「『!』」
監視、その言葉に眉をよせる
だがトキは、ふ、と笑った
『私はどちらでも構いませんよ、ナルト達と一緒にいれればそれで良い
まぁ、私を監視したところで無意味でしょうけど』
「それはこちらが決めること…
良いな、綱手」
「……っくそ、勝手にしろ!」
ダンゾウは綱手の言葉を聞き、にやりと笑う
そのままトキを一瞥し、火影室を後にした
「監視の者とはすぐ会えるだろう、楽しみにしていろ」
そう残して
***
「……ダンゾウめ、何を考えている」
『……私は危険因子ですか、なるほど』
「トキさん、気にすることないわ」
『ありがとうございます、シズネさん』
にこ、とシズネに笑いかけ、視線を綱手に戻す
『綱手様、ナルトとサクラはどこですか?
私も任務に同伴する事を伝えたいのですが』
「サクラは木の葉病院にいるはずだ
ナルトは、この任務の人員が足りないから探してくる、と出て行った
大方、お前たちの同期にでも当たっているだろう」
『そうですか、分かりました
探してきます』
「トキ」
くる、と背を向けて火影室を出ようとしたら、綱手が彼女を呼び止めた
はい、と返事をして綱手を振り返る
「サスケ奪還任務の時みたいに、無茶なことは考えるなよ
お前の命はお前だけのものではない」
『!
……分かっています』
にこりと微笑み、火影室を後にした
パタン、と扉を閉め、廊下を歩く
トキの口元は弧を描いていた
***
「だから、俺は中忍試験の係員任されてんだよ」
「そんなぁ~!!」
「チョウジだってアスマやいのとの任務があるんだ、悪いけど他当たれよ」
目の前で大袈裟に悲しむナルトに、はぁ、と息を吐く
サスケを連れ戻せるかもしれない、という任務だが、あいにく自分は参加できそうになかった
それはチョウジも同様だ
『ナルト!』
「「「!」」」
ひらりと現れた青色に、3人で目を向ける
現れたのはトキだった
「トキ!どうしたんだってばよ?」
『うん、私も任務に行く
サスケを連れ戻す』
「!」
しっかりとナルトの目を見据える青い瞳は、揺るぎない決意に満ちていた
「っしゃあ!トキが来てくれるなら心強いってばよ!」
「……おいトキ、良いのかよ?そんな事言って」
『大丈夫だよ、綱手様の許可は下りてる』
「………。」
トキの言葉にシカマルは微妙な顔をする
それに気づいたチョウジが、ひょこ、と顔を覗かせた
「トキ、シカマルは心配してるんだよ
また無茶するんじゃないかって」
「あ、おい!」
慌ててチョウジの口をふさぐシカマルに、トキはふっと優しく笑う
『分かってるよ
みんなに黙って無茶しないから』
「………俺に隠し事したら絶交、って話はまだ有効だからな」
『うわ、まだ覚えてた』
「ったりめーだ
お前は目を離すと直ぐ無茶する」
ふふ、と笑うトキに笑いかけていると、は、と彼女が後ろを振り向いた
『シカマル!チョウジ!』
トキが声を上げるのを合図に、シカマルはナルトを突き飛ばす
トキはクナイを構え、チョウジの後ろに下がった
「どりゃあ!」
部分倍加の術で拳を大きくしたチョウジが、大きく腕をふるう
そして、突然飛びかかってきた獅子を殴り飛ばした
『!
あそこだ』
「見たことねー奴だってばよ、でも木の葉の額当てだ」
「さぁな
ただ、あーいう手合いは捕まえて尋問部隊に引き渡す!」
ばば、と素早く印を結び、影を伸ばす
それを確認すると、トキは何も言わずに飛び出した
目標は、道の先の屋根に座っている、同年代の男
「ナルト!トキと行け!」
「オゥ!」
トキの後を追い、ナルトも走り出す
それを見た男は、サラサラと巻物に筆を走らせた
そして巻物から何体もの獅子が現れ、先に走っていたトキに飛びかかる
『シカマル!』
「分かってる!
影縫い!」
トキの声に合わせ、影が形を変える
シカマルの影は獅子を貫き、墨へと形を変えさせた
さすが、と呟き、舞い散る墨をくぐり抜けて一気に屋根の上に飛び乗る
腰から短刀を抜いて思い切り振りかざした
キィィィィイン!!!
刀同士がぶつかり、特有の金属音が響く
『……あなた、夢で見た』
「………君が空目トキさんだね」
『!』
目の前の男の口から出てきた自分の名前に、眉を寄せる
そこで、1つの仮説が浮かんだ
『………そういう事
あなたが、私の監視役の人か』
「………ご名答」
「は…?!
どういう事だってばよトキ!」
『監視対象の実力を調べに来た、といったところ?』
「それもありますね」
ナルトが屋根に登ってくる
クナイを構え、隙あらば攻撃を仕掛けるだろう
分が悪いと考えたのか、目の前の男は後ろに下がった
「また会いましょう」
そう告げて、彼は消えた
「大丈夫かお前ら「おいトキ!どういう事だってばよ!」
?
何だ、どうした?」
奴が消えたのを確認し、シカマルとチョウジがナルトとトキに駆け寄る
だがナルトは、突然彼女の胸ぐらを掴んだ
『………今言った通りよ
私に、暗部の監視がついてる』
シ「は?」
チ「どういうこと?なんでトキが監視されなきゃいけないの?」
『………。』
黙り込むトキを睨んだまま、ナルトがする、と腕を離す
彼女は口を開かなかった
「トキ」
『………。』
「隠し事はなし、ってさっき話したばっかだろ」
じ、と見つめるシカマルの視線に耐えられなくなったのか、彼女は口を開いた
『………私が、サスケに影響されて木の葉を抜ける可能性があるから
木の葉に仇なす要注意人物だと思われているから』
「「「!」」」
淡々と告げられた言葉に、ナルト達は目を見開く
『私とサスケが似てるから、私もいずれ里を抜けて、木の葉を裏切る
っていう考えらしいよ、上層部は』
ナ「…んなめちゃくちゃな理由で、監視なんてつけるのかよ!」
チ「大丈夫なの?」
『平気
この監視もすぐ解けるだろうから』
シ「そうなのか?」
『うん』
にこ、と何ともないように笑うトキにナルトとチョウジはほっと息を吐く
だがシカマルは、彼女の顔を見つめたままだ
『さて、ナルト
サクラのもとに行こう
任務の話をしないと』
「あ、おぅ。分かったってばよ」
『またね、2人とも』
ひらひらと手を振り、トキとナルトがその場を去る
残されたシカマルとチョウジは、ぼんやりとその背中を見送った
第4話
監視役
.