私は自由になりたかった
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
無限月読に飲み込まれ、意識を失ったあと
俺は夢を見た
その夢には、大人になった仲間たちの姿があった
それぞれがさらなる活躍をし、恋をし、家族を持ち、次の世代を育てている…
そんな、幸せな夢だった
だが、その夢の中に、トキの姿は無かった
どこを探しても見つからない、晴れ渡る青空のような空色の髪の毛
澄み切った青い瞳
その影を探しても、どこにも見つからない
『さよなら』
姿は見えないが、声だけが聞こえた
トキの声だった
何がさよならだ、ふざけんな
そう言い返そうとした時、視界が光に包まれた
***
「………………!」
は、と目がさめる
急いで身体を起こすが、周りの景色に言葉を失った
「何だこれ、どうして…」
俺たちは戦場のど真ん中、しかも最前線にいたはずだ
だから大地は荒れ果て、どこもかしこも地面が裂けていたはずだ
「何で、自然が元に戻ってるんだ」
荒れ果てていたはずの大地は緑を取り戻し、みんなが倒れていた地面には草が生い茂っている
しかも緑だけじゃない
「怪我が治ってる!」
どこからか聞こえてきた声に、は、とある答えにたどり着いた
怪我をして倒れていたはずの忍たちは、怪我の箇所を見て驚いている
傷だらけだった身体には、今は何も傷がない
まるで、"時間が巻き戻された"かのように
「トキの能力だ」
立ち上がり、あたりを見回す
だがどこにも彼女の姿は無かった
「シカマル!
ねぇ、これってトキの能力よね?!」
「トキが時間を元に戻したんだよ!
じゃなきゃ、こんなこと有り得ない!」
「自然を元に戻して、みんなの怪我ももと通りにしたってのか?!
こんな大きな規模で時遁の力を使ったら、いくらなんでもチャクラが足りねえよ!
こんな規模のでかい能力の使用は、命に関わるぞ!?」
意識を取り戻し、状況を確認したいの、チョウジ、キバが騒ぎ出す
その通りだ
こんな現象は、トキの時遁の力で無ければ起こり得ない
だが、こんな大きな範囲で能力を使用したとなれば、トキのチャクラは底をつくはずだ
「………この状況は、トキの時遁に間違いない
トキを探そう」
シカマルの言葉に、同期たちは大きく頷いてそれぞれが探しに行こうとする
だがそれを止める人間がいた
無限月読に飲み込まれ、意識を失ったあと
俺は夢を見た
その夢には、大人になった仲間たちの姿があった
それぞれがさらなる活躍をし、恋をし、家族を持ち、次の世代を育てている…
そんな、幸せな夢だった
だが、その夢の中に、トキの姿は無かった
どこを探しても見つからない、晴れ渡る青空のような空色の髪の毛
澄み切った青い瞳
その影を探しても、どこにも見つからない
『さよなら』
姿は見えないが、声だけが聞こえた
トキの声だった
何がさよならだ、ふざけんな
そう言い返そうとした時、視界が光に包まれた
***
「………………!」
は、と目がさめる
急いで身体を起こすが、周りの景色に言葉を失った
「何だこれ、どうして…」
俺たちは戦場のど真ん中、しかも最前線にいたはずだ
だから大地は荒れ果て、どこもかしこも地面が裂けていたはずだ
「何で、自然が元に戻ってるんだ」
荒れ果てていたはずの大地は緑を取り戻し、みんなが倒れていた地面には草が生い茂っている
しかも緑だけじゃない
「怪我が治ってる!」
どこからか聞こえてきた声に、は、とある答えにたどり着いた
怪我をして倒れていたはずの忍たちは、怪我の箇所を見て驚いている
傷だらけだった身体には、今は何も傷がない
まるで、"時間が巻き戻された"かのように
「トキの能力だ」
立ち上がり、あたりを見回す
だがどこにも彼女の姿は無かった
「シカマル!
ねぇ、これってトキの能力よね?!」
「トキが時間を元に戻したんだよ!
じゃなきゃ、こんなこと有り得ない!」
「自然を元に戻して、みんなの怪我ももと通りにしたってのか?!
こんな大きな規模で時遁の力を使ったら、いくらなんでもチャクラが足りねえよ!
こんな規模のでかい能力の使用は、命に関わるぞ!?」
意識を取り戻し、状況を確認したいの、チョウジ、キバが騒ぎ出す
その通りだ
こんな現象は、トキの時遁の力で無ければ起こり得ない
だが、こんな大きな範囲で能力を使用したとなれば、トキのチャクラは底をつくはずだ
「………この状況は、トキの時遁に間違いない
トキを探そう」
シカマルの言葉に、同期たちは大きく頷いてそれぞれが探しに行こうとする
だがそれを止める人間がいた
***
大木にぶら下がるマユたちは、やがて解放されるだろう
だからその前に事を済ませ、この場から立ち去りたい
『………時遁』
技の名前などもう不要だ
言わなくても力は溢れてくる
合わせた両手を地面につけ、力を込める
自分の手元から、放射線状に緑が蘇っていく
『次は……』
息も絶え絶えになりながら、力を振り絞る
大木の幹に手を触れ、また力を送る
『これで、もと通りに、なる』
時遁の能力を使い、荒れ果てた大地の時間を戦争が始まる前に巻き戻した
さらに、負傷した人間たちの怪我を、負傷する前まで時間を戻した
これで意識を取り戻した時には、怪我をする前の元気な状態になっているはずだ
『あとは……』
自分の力がほとんど底をついていることは分かっている
だがあと少しだ
両手を天に掲げ、月を視界に入れる
曇天が覆う暗い空に、青空を取り戻す
そして、術をかける媒介とされた月を、元に戻す
『………さすがに、死ぬかな』
自分のチャクラは底をついた
だが今も術を発動することができるのは、自分のチャクラとは別の、夢見の力のおかげだ
これも使い切れば、死ぬだろう
『!
髪が』
月が本来の姿を取り戻し、曇天の隙間から青空が見え始める
すると、青空と同じ色のはずの自分の髪の毛が、少しずつ黄緑色に染まっていくのが分かった
予知夢を見る時、または夢見の力に乗っ取られる時、自分の瞳は黄緑色に変化することを思い出す
トキではなく、夢見の力が動いているのだ
「トキ!」
立っているのもやっとの状態で、空に力を送り続ける
息が切れ、心臓は張り裂けそうなほどに動悸し、滝のような汗が流れ、目が霞む
死の間際であることは自分でもよく分かった
そんな時、視界にオレンジ色が入り込んできた
「トキ!もうやめるってばよ!
それ以上はお前が死んじまう!!」
『………ナル、ト』
「もう大丈夫だ、ここまで世界を元に戻してくれればもう十分だ…!
だからもうやめるってばよ、トキ
トキが死ぬ必要はねーんだ!」
肩を掴まれ、天に掲げていた手を降ろされる
強制的に術の発動を妨害され、その場に膝から崩れ落ちた
『……ほらね、ナルト、私の言った通りじゃない』
「え?」
『本当の救世主は、ナルトだった』
「!」
息も絶え絶えで、顔を上げる余裕すらない
今にも消えてしまいそうな弱々しい声に、ナルトは口を閉ざした
「………違う
エロ仙人が言った救世主ってのは、俺と、お前のことだ」
『え…?』
「俺は、世界の脅威を取り除くことはできた
でも、世界を元に戻すことは出来ない
今、トキは俺が戦いで壊しちまった世界を元に戻してくれただろ?」
『……。』
「だから、エロ仙人のいう救世主ってのは、俺たち2人のことだ
俺たちは、2人で一人前の救世主だったって事だってばよ」
ニカッと太陽のように笑うナルトに、ふっと笑顔がこぼれた
だがそれも、すぐに見えなくなった
「!
トキ?!
待ってろ、すぐサクラちゃんのところに連れて行くから!」
『その必要はないよ』
ナルトが肩にかけた手を、トキは払いのけた
「トキ、髪が…」
黄緑色に染まった髪の毛が、元の青を取り戻す
そして、自分の手のひらから、サラサラと何かがこぼれ落ちるような感覚を覚えた
『ナルト
最後のお願い』
「!
………殺さねーぞ」
『なんだ、残念
じゃあ、このお願いなら聞いてくれる?』
そしてトキの最後のお願いを聞いたナルトは、驚いて目を見開くものの、最後には「分かった」と了承した
***
トキを探そうとするシカマルたちを止めたのは、ナルトだった
「………何で止めるんだよ、ナルト」
「トキの、最後の願いだからだ」
「え?」
ナルトの口から出た、トキの最後の願いという言葉
全員が口を閉ざし、ナルトの言葉を待った
「トキの最後の願いはこうだ
………"私を殺して"」
その瞬間、シカマルはナルトの胸ぐらを掴む
チョウジが慌てて仲裁に入るが、ナルトはシカマルをまっすぐに見つめ返した
「………トキを、殺したのか」
「んなことするわけねーってばよ、アイツは生きてる」
「じゃあ、何で探しに行くのを止める?」
「トキは、死にたがってるんだってばよ」
「仲間が死ぬのを見殺しにすんのか」
「違う
トキは、"暁"でも"木の葉"でもない存在になりたいんだ」
「!」
「………分かるだろ?」
ナルトはそこで初めて、シカマルから目をそらした
暁の一員として生きながらも、途中で木の葉隠れの里の忍びとしても生き、さらには稀少な血継限界の一族の生き残りとしても扱われていたトキ
大切なものが多すぎるが故に、最後はそれで苦悩していた
「もう、トキを自由にさせたいんだってばよ
アイツは、暁でも木の葉でもない、ただの空目トキになりたいんだ
だから、俺はトキをそのまま見送った」
「………。」
「シカマル
トキはもう、死ぬことは選ばない
けど、木の葉に戻ることもない
アイツはこの世界のどこかで、ただの空目トキとして生きるんだ
今まで背負ってきたものをすべて捨てて、やっと自由に生きられるんだってばよ
だから頼む
トキを自由にさせてくれ」
「………………。」
ずる、とナルトの胸ぐらを掴んでいた手を下ろす
「………そうか」
トキが飛段を殺したあの場所で叫んだ「助けて」は、「私を解放してほしい」という意味だったんだ
あの小さな背中には重すぎるものを背負っていたトキの、心の叫びだったんだ
「暁でも木の葉でも何でもない、普通の人間として生きたかったんだな…」
背中にいくつものつながりを背負いながら、1人で戦い続けたトキの、本当の願い
「…………それをトキが望んでいるのなら、」
探すのはやめよう
小さく呟いた言葉には、誰も反抗しなかった
第四次忍界大戦は幕を下ろし、多くの戦死者を出した
だが、負傷者は無し
そして戦場も緑を取り戻し、すぐに平和が訪れた
トキは戦死者として処理され、その後、彼女の墓標が空目一族の慰霊碑のとなりに建てられた
そして時が流れるにつれて人々の記憶から空目の名は消えていき
その一族には、世界を揺るがすほどの大きな力を持ち、それ故に残酷な運命を辿った少女がいたことすら、忘れ去られていった
その少女がどうなったのか
今は誰も知らない
過去と未来
-終-
あとがきといくつか補いたい点
→